読書日和

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「カラフル」森絵都

2014-07-01 23:36:28 | 小説
今回ご紹介するのは「カラフル」(著:森絵都)です。

-----内容-----
生前の罪により、輪廻のサイクルから外されたぼくの魂。
だが天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。
自殺を図った少年、真(まこと)の体にホームステイし、自分の罪を思い出さなければならないのだ。
真として過ごすうち、ぼくは人の欠点や美点が見えてくるようになるのだが……。
不朽の名作ついに登場。

-----感想-----
冒頭からいきなり突飛な展開になりました。

主人公は死んだはずの「ぼく」。
プラプラという名の天使が言うには、
「あなたは大きなあやまちを犯して死んだ、罪な魂です。通常ならばここで失格、ということになり、輪廻のサイクルから外されることになります。つまり、もう二度と生まれ変わることができない。しかし、そんな殺生な、という声も高いことから、うちのボスがときどき抽選で当たった魂にだけ再挑戦のチャンスを与えているのです。あなたは見事その抽選に当たったラッキー・ソウルです!」
とのこと。
プラプラの役職はガイドで、「ぼく」の担当となりました。
「ぼく」を再挑戦の地に導いていくのが任務となります。

再挑戦とは、「ぼく」が前世で失敗した下界で、もう一度修行を積んでくることを言います。
そして修行とは、「ぼく」の魂がある一定の期間、下界にいる誰かの体を借りて過ごすことを言います。
この修行を、天使の業界では「ホームステイ」と言っているとのことです。

「ぼく」がホームステイすることになったのは、小林真という中学三年生の少年の体。
小林真は三日前に服薬自殺を図った少年で、いまだに意識が戻らず、危篤の状態が続いています。
プラプラによると、「ここだけの話、もうすぐ死ぬ」とのこと。
死んだら魂が抜けるから、「ぼく」が変わりに小林真の体に入って、しばらく体を受け継ぐということです。
そして一定の期間小林真として過ごして修行します。
修行が順調に進むと、ある時点で「ぼく」はおのずと前世の記憶を取り戻すことになっていて、前世で犯したあやまちの大きさを「ぼく」が自覚したその瞬間にホームステイは終了となります。
「ぼく」の魂は借りていた小林真の体を離れて昇天し、無事に輪廻のサイクルに復帰することになるとのことです。

天使のプラプラは「ぼく」が小林真として修行を始めてからも、「ぼく」の前に現れて助言をしたり忠告をしたりします。
小林真はなぜ服薬自殺を図ったのか、その理由がプラプラによって明らかになります。
9月10日、それが小林真の悲劇の一日で、立て続けに嫌な光景を見てしまい、精神的に大ショックを受け、ついに限界になってしまいました。
それを聞いて「ぼく」も真の両親や兄の満に嫌な感情を持ち、家では家族とろくに会話もしないまま過ごすことになりました。

中学校では桑原ひろかと佐野唱子という二人の女の子が登場します。
桑原ひろかは一学年下の後輩で、真の初恋の相手でもあります。
佐野唱子は真と同じ三年A組のクラスメイトで、さらに真と同じ美術部員でもあります。
この子はすごく勘が鋭くて、久々に登校した真を見て「真は以前の真じゃない」と突っかかってきます。
しかもプラプラによると「ぼく」が入る前の小林真には佐野唱子のこれといった記憶はなく、つまり真にとっては眼中にない存在だったとのことです。
そんな相手が真の変化を敏感に察知してあれこれ追及してきて、「ぼく」の入った小林真は戸惑っていました。

印象的だったのは以下の言葉です。

真の母親の言葉
「平凡な毎日のなかにも非凡な喜びや悲しみは生まれる」

真の父親の言葉
「いいことがいつまでも続かないように、悪いことだってそうそう続くもんじゃない」

「ぼく」の入った真の胸中の言葉
人は自分でも気づかないところで、だれかを救ったり苦しめたりしている。
この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも迷ってる。
どれがほんとの色だかわからなくて。
どれが自分の色だかわからなくて。


「いいことがいつまでも続かないように、悪いことだってそうそう続くもんじゃない」は特に印象的で、日はまた昇るという気にさせてくれる言葉です
最初は嫌悪感から家族に冷たい態度を取っていた真も、父、母、そして兄の満と話すうちに、段々と気持ちが変わっていきます。
意外と良い面があるんだなと気付くことになりました。
そしてやがて、真の体を真に返してあげたいと思うように。。。
しかしそれには、「ぼく」が犯した前世での罪を思い出さねばなりません。
「ぼく」は前世で一体何をしたというのか。
その結末を見て、なるほどな…と思いました。
「再挑戦」とはこういうことだったのかと思いました。
小林真のために何としても前世の罪を思い出そうとした「ぼく」の姿、格好良かったです。


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