読書日和

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「鴨川ホルモー」万城目学

2015-12-27 22:52:30 | 小説
今回ご紹介するのは「鴨川ホルモー」(著:万城目学)です。

-----内容-----
このごろ都にはやるもの、勧誘、貧乏、一目ぼれ。
葵祭の帰り道、ふと渡されたビラ一枚。
腹を空かせた新入生、文句に誘われノコノコと、出向いた先で見たものは、世にも華麗な女(鼻)でした。
このごろ都にはやるもの、協定、合戦、片思い。
祇園祭の宵山に、待ち構えるは、いざ「ホルモー」。
「ホルモン」ではない、是れ「ホルモー」。
戦いのときは訪れて、大路小路にときの声。
恋に、戦に、チョンマゲに、若者たちは闊歩して、魑魅魍魎は跋扈する。
京都の街に巻き起こる、疾風怒濤の狂乱絵巻。
都大路に鳴り響く、伝説誕生のファンファーレ。
前代未聞の娯楽大作、碁盤の目をした夢芝居。
「鴨川ホルモー」ここにあり!!

-----感想-----
これはかなり特徴的な作品でした。
冒頭の「はじめに」でホルモーという言葉について語られます。
ホルモーとは対戦型の競技で、競技人数は20人、敵と味方でそれぞれ10人ずつになり、敵方と競って勝敗を決めるとありました。

主人公は安倍という京都大学の新入生。
京都が舞台で京都大学の学生が主人公ということで、すぐに森見登美彦さんの作品が思い浮かびました。
文章も少し似たものを感じます。
安倍は5月15日に行われる京都三大祭の一つ、葵祭(あおいまつり)の”路頭の儀”にエキストラのアルバイトで参加していました。
そこで同じくアルバイトで参加していた京都大学の新入生、高村(たかむら)と知り合います。
二人で話しながらの帰り道、菅原という男から「京大青竜会」なるサークルへの勧誘を受けます。
胡散臭く感じながらも安倍はお金がないことから、このサークルの新勧コンパに参加して無料で料理を食べまくろうと考え、新勧コンパの会場である三条木屋町居酒屋「べろべろばあ」に行ってみます。
「べろべろばあ」には高村も来ていて再会することになりました。
さらに早良京子という美しい女性が来ていて、安倍はこの人に一目惚れします。
ただ安倍は早良京子の鼻の美しさに惹かれていて、何だか異様な一目惚れの仕方でした
コンパの挨拶で京都大学青竜会第499代会長である菅原真(まこと)が登場。
安倍と高村を勧誘してきた人物であり、499代とはすごい長さだなと思います。
後日安倍は京大青竜会が二年に一度しか新入部員を勧誘しない謎のサークルであることを知ります。

この作品にも森見登美彦さんの「宵山万華鏡」と同じく「祇園祭宵山」が出てきました。
1ヶ月に渡って続く祇園祭において「本祭」に次ぐ盛り上がりを見せる「宵山」、一度は見てみたいものです。

スガ氏(菅原)の策略で安倍も高村も京大青竜会のメンバーに入れられます。
他にも安倍が想いを寄せる早良京子、安倍と因縁の仲になる芦屋、ミステリアスな雰囲気の楠木ふみなど、計10名が京大青竜会の新たなメンバーになりました。

安倍のアパートの部屋は六畳で、森見登美彦さんの作品の代名詞でもある「四畳半」ではなくて良かったです(笑)
また、安倍は部屋にクーラーがないので、夏の深夜になると鴨川の川べりのベンチでしばらく涼んでから部屋に戻って寝るようにしています。
ある日、隣のベンチで女性が泣いているところに遭遇し、何とそれが早良京子でした。
早良京子がなぜ泣いていたのかが謎でした。

祇園祭宵山の日、四条烏丸交差点で4つの浴衣軍団が一堂に会する場面は印象的でした。
京大青竜会が全員何の模様もない青一色の浴衣を着ているのに対し、他にも白の浴衣、真っ黒の浴衣、朱色の浴衣の一団が現れます。
青の浴衣が京都大学、白の浴衣が立命館大学白虎隊、黒の浴衣が京都産業大学玄武組、朱色の浴衣が龍谷(りゅうこく)大学フェニックス。
いずれもホルモーをやっているサークルであり、この4チームで長い年月の間、京都の街を舞台にホルモーを競ってきました。
ちなみにどのチームも上回生10人、新入生10人の20人で、4チーム合わせて80人の集団が三条木屋町居酒屋「べろべろばあ」で大宴会を行いました。
4チームの浴衣の色には意味があり、まず御所を中心にして東に京都大学、南に龍谷大学、西に立命館大学、北に京都産業大学があります。
そして4チームのチーム名は青竜、朱雀(フェニックス)、白虎、玄武。
この4つは四神(しじん)と呼ばれていて方角がそれぞれ決まっています。
東の青竜、南の朱雀、西の白虎、北の玄武です。
ホルモーは「鬼や式神を使って争い事をする」と言われていて、この時点では現実感が乏しかったのですが、この青竜、朱雀、白虎、玄武の話を読んだら現実味が増してきました。

やがて吉田神社での「吉田代替りの儀」を経て上回生が引退。
安倍達がホルモーを戦うことになります。
吉田代替りの儀における儀式を経て安倍達も「オニ」が見えるようになっていました。
オニ達は茶巾絞りの「絞り」のような顔をしているとあり、どんなものなのか気になるところでした。
そして安倍達は2回生になり、ホルモーが始まります。
ここからは「オニ」を駆使した戦いが行われました。
ただホルモーをするだけではなく失敗による挫折や失恋などがあり、青春物語になっています。

「杳(よう)として」という言葉が出てきた時は、使い方の意味は違いますが山陽でよく聞く「ようせんぞ」「よう食えんです」といった言葉が思い浮かびました。
ネットで調べてみると西日本では「よう○○しない」といった言い回しがよく使われるようです。
早良京子への恋が儚く散った時の「空中楼閣が空中分解」の言い回しは面白かったです。
言い回しにも森見登美彦さんと似たものがあります。
「有頂天家族」でよく出てくる「下鴨神社糺(ただす)の森」も出てきました。

やがて安倍と芦屋が対立。
芦屋はホルモーでは圧倒的に強いのですがだいぶ傲慢なところがあり、高村がミスをした時の態度を見て安倍の怒りが爆発しました。
京大青竜会に分裂騒動が起こります。
鍵を握るのは「ホルモーに関する覚書」第17条で、これが何なのか気になるところでした。

『京都には八坂神社を中心に神社間をつなぐ”龍穴”という地下通路が縦横無尽に走っている』というのは興味深かったです。
調べてみるとどうやら本当にあるようです。

ホルモーという謎の対戦型競技を軸に、挫折、失恋、サークル内分裂騒動などがある青春物語になっていました。
最初はホルモーという謎めいた言葉が出てきてどうなるかと思いましたが面白く読める物語でした。
続編の「ホルモー百景」があるようなのでいずれそちらも読んでみたいと思います。


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