読書日和

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「島はぼくらと」辻村深月

2013-07-11 23:59:50 | 小説


というわけで、ついに「小説」カテゴリーの通算200レビュー目
今回ご紹介するのは「島はぼくらと」(著:辻村深月)です。

-----内容-----
瀬戸内海の小さな島、冴島。
島の子はいつか本土に渡る。
17歳、ともに過ごせる最後の季節。
母と祖母の女三代で暮らす、伸びやかな少女、朱里。
美人で気が強く、どこか醒めた網元の一人娘、衣花。
父のロハスに巻き込まれ、東京から連れてこられた源樹。
熱心な演劇部員なのに、思うように練習に出られない新。
島に高校がないため、4人はフェリーで本土に通う。
「幻の脚本」の謎、未婚の母の涙、Iターン青年の後悔、島を背負う大人たちの覚悟、そして、自らの淡い恋心。
故郷を巣立つ前に知った大切なこと―
旅立ちの日は、もうすぐ。
別れる時は笑顔でいよう。
すべてが詰まった傑作書き下ろし長編。
直木賞受賞、第一作。

-----感想-----
通算200レビュー目は、私の好きな作家である綿矢りささん、三浦しをんさん、伊坂幸太郎さんのいずれかの作品にしたいなと考えていました。
しかし綿矢りささんと三浦しをんさんの新作は出ておらず、伊坂幸太郎さんも未読の作品が文庫本で出ていたものの、200レビュー目でなくても良いのかなと思いました。
意外と節目に何を読むかは迷うものですね。

そんな時、書店で「島はぼくらと」を見かけ、興味を持ちました。
この作品は表紙に惹かれました。
夏の青空の元、瀬戸内海の海辺に佇む4人の高校生。
何だか200レビュー目に相応しい爽やかさではないですか
私の感性にも合うイラストのタッチでした。
そんなわけで200レビュー目はこの作品にしようと思い、読み進めていきました

物語は全部で四部構成。
主人公は池上朱里(あかり)、榧野衣花(かやのきぬか)、矢野新(あらた)、青柳源樹の四人。
いずれも物語スタート時は高校二年生。
物語の舞台は瀬戸内にある「冴島」という架空の島です。
火山島であり、かつて噴火したこともあります。
冴島には中学校までしかないため、高校にはフェリーに乗って本土に行きます。
この高校生四人を中心に、冴島で起きるちょっとした事件やそれぞれが抱える悩みなどが描かれています。
冴島の同級生はこの四人だけなので、島で何かあった場合は四人で連絡を取り合って協力することが多いです。

序盤では、霧崎ハイジという自称作家の男が冴島にやってきて、冴島にあるとされる”幻の脚本”を探していて、それに注目が集まりました。
果たして冴島に本当にそんなものがあるのか―。
主人公4人は大いに疑問に思います。
とある有名脚本家が遺したとされる、世に出ていない文字通りの”幻の脚本”。
またこの霧崎ハイジという男、非常に胡散臭いところがあり、幻の脚本を探す中で暗躍し、冴島の平穏を脅かす存在にもなっていました。
そんな中、4人が考えた秘策はなかなか大胆なもので、それによって霧崎ハイジをさっさと追い払おうと考えます。
この作戦が上手く行くのか、興味深かったです。

ちなみに、物語の最初は高校二年生の7月でしたが、第三章の冒頭では次の年の2月になっています。
さらに第四章の始めでは高校三年生の6月に。
ゆったりとした話のようで、時間は着々と経過していっていました。

第四章では衣花が語り手。
四人それぞれが島に残るか、それとも本土に行くかの決断をすることになります。
網元の一人娘である衣花は島に残ることを宿命付けられていて、本人もそれを納得してはいますが、それでもやはり、みんなが島の外に行ってしまって自分だけ残るのかという寂しさはあるようです。

そしてなんと、第四章で再び”幻の脚本”に注目が集まります。
やはり冴島には幻の脚本が実在するのか。
終盤まで伏線として引っ張る辺り、さすがにミステリー的な小説を書く辻村深月さんだなと思いました。

第四章が一番活発に動きがあって、修学旅行で東京に行った時、ある目的を果たすために新橋の劇場での演劇鑑賞を四人でこっそり抜け出したりと、かなりスリリングなことをしていました。
その後さらなる手がかりを求めて大阪に行ったりもしましたし。
冴島の外に出ての活動が活発化する第四章でした。

本の帯に「旅立ちの日は、もうすぐ。別れる時は笑顔でいよう」とあるように、クライマックスでは旅立ちの時を迎えます。
冴島から羽ばたいていく人もいれば、島に残る人もいて、でもそれは決して今生の別れではなくて、きっとまた会えるという希望を感じさせるものがありました。
最後まで読んでみて思いましたが、やはり200レビュー目をこの作品にして良かったと思います。
節目に相応しい素敵な作品でした


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ビオラ)
2013-07-16 22:17:17
200レビュー目は、結構意外な選択でした^^

でも節目としてのイメージには、ふさわしい作品だったようですね^^

それにしても、ブログデビューの頃に比べて、記事内容が濃いし、量も多くなったし、力感じますね^^

爽やかで良さそうな小説を、200レビュー目に紹介できて、沢山の人が、興味持って下さり、さらに、読書日和のファンも増えると良いなと思います~
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ビオラさんへ (はまかぜ)
2013-07-17 01:06:38
私としてもこれは意外な選択でした(笑)
ただ選んで良かったなと思える良い作品でした

そうですね、記事を書きながら試行錯誤を重ねて、段々完成度が上がってきたと思います。
今後も多くの人がその作品に興味を持ってくれるような、良いレビューを書いていきたいなと思います
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