非国民通信

ノーモア・コイズミ

学校勤めも似たようなもの

2010-10-25 22:59:59 | ニュース

非正規教員、7人に1人 財政難で毎年増加し10万人超(朝日新聞)

 各地の公立小中学校で、正規採用の教員ではない常勤講師や非常勤講師が増え、昨年は約10万5千人と全体の15.1%を占めた。文部科学省の調査でわかった。この7年間で約3万7千人増えており、こうした「非正規教員」が7人に1人を超えるまでになっている。財政難の自治体が、安い給料で済む非正規の採用に動いているためだが、任期が限られ、「教育活動の水準を保てない」と懸念する声が上がっている。

 文科省によると、全国の非正規教員のデータがあるのは2002年以降で、同年(5月1日)の人数は約6万8千人と教員全体(約67万3千人)の10.1%だった。以後、毎年増え続けており、09年は約10万5千人に。全体の15%を占めるまでになった。

 内訳をみると、正規採用の教員と同じようにフルタイムで勤める常勤講師は02年の約4万1千人から09年には約5万7千人と38%増加。授業時間だけ勤務するなど、パートタイムで働く非常勤講師は02年の約2万7千人から09年には約4万8千人と8割近く増えた。

 非正規教員の増加の背景には、少人数指導や35人以下学級を進めるため、給与のより安い教員で頭数をそろえようという自治体側の姿勢がある。国の規制緩和が後押しした。

 文科省は、1クラス40人を標準とした学級編成を01年から都道府県レベルで弾力化。続いて06年には市町村も、自前で教員を雇えば少人数学級にできるようにした。また04年、教員給与の半分を負担していた義務教育費国庫負担制度を緩め、国の計算した総額内なら、給与や人数を自由に決められるようにした。自治体側は人件費を抑制する動きを加速させ、非正規の採用が拡大した。

 公立校の教職員の間でも、非正規への置き換えが増えているようです。日本中どこでも、規制緩和がたどり着く先は同じようですね。先の民主党代表選で小沢一郎は地方へ交付する予算の総額を減らす代わりに使途を自治体に任せるみたいな改革案を主張していましたけれど、予算の使い道を自治体の判断に委ねた場合にどうなるか、ここで挙げられた事例は端的に示しているように思います。

 ともあれ、公立校で起こっていることと民間企業で起こっていることは一緒です(おそらく官公庁での雇用も似たようなものではないかと推測されます)。非正規雇用へのシフトを進めることで人件費を削って経営を改善させる、財政のために働く人を犠牲にするわけです。まぁ、学校は営利企業と違って「売上を伸ばす」という選択肢がないだけに、人件費削減が唯一の手段となってしまうことに情状酌量の余地はあるのかも知れませんが。

 ただ引用元でも指摘されているように、任期の限られる非正規雇用で教育水準が保たれるのかどうかという懸念もあります。民間企業でも非正規への置き換え、そして繰り返される使い捨てによって技術の継承ができなくなっていることが指摘されてきたわけです。とりわけ勉強よりも生活指導や人格形成的な面に重きを置く日本の学校教育にとって、細切れ雇用で生徒との関わりも浅くなりがちな非正規雇用は相性が良くないように思われます。もうちょっと割り切った「勉強するところ」として学校を位置づけるならいざ知らず、生活する場所として学校を位置づけているのなら継続的に生徒と関われるような形で教員を雇用しないと整合性がとれないでしょう。

 〈常勤講師と非常勤講師〉 常勤講師は正規教員と同じくフルタイム(週約40時間)働き、学級担任もできる。非常勤講師は「直接担当する授業時間だけ」「週20時間」といった限られた時間の指導を担う。いずれも、非正規の身分で教壇に立ちながら正規採用を目指す人が多い。

 月給は、たとえば大阪府の小中学校の場合、大卒の正規採用は、初任給が19万9700円、45歳では38万3500円、60歳は42万1500円。一方、常勤講師は初任給が19万5900円で、途切れず働き続けられたとしても45歳で31万円となった後は頭打ちに。非常勤講師は時間給で2790円と、さらに安い。

 この辺も、民間企業の場合と同じですね。正規雇用の人と同じように働く人も少なからずいる、しかし初任給の時点でこそ大差ないもののその後の昇給で大きな差が出る、基本的には正規採用を目指す人が多い――と。ただ問題の「語られ方」は少しだけマシでしょうか。これが民間企業の非正規雇用の問題ともなりますと、「(フルタイムで働けないなどの理由で)非正規の就労環境を必要としている人もいる」などと強調して、圧倒的多数を占める「正規雇用を望むけれどやむなく非正規でいる人」の存在を追いやろうとする論調も強いわけです。そういうことを語る輩が出てこない分だけ、まだ正常に受け止められているのかも知れません。

 もっとも問題を解決しようとする動きが出てくるかどうかは、甚だ怪しいものです。歳出削減、とりわけ人件費削減という錦の御旗の元、公立校教員の人件費削減もまた継続的に進められていくことでしょう。それで教育水準が下がったり子供の学力が低下したりしても、その辺は個人の責任に帰したり世代論を振りかざしたりするだけで済ませてしまう、我が子の教育に投資を惜しまない親であっても、教員の人件費を増やすことには良い顔をしない、そんな未来(半分は既に到来している気がしますけれど)が予測されます。



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7 コメント

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自治体に (介護員)
2010-10-26 00:38:38
丸投げだ
自治体に丸投げだから、悪いのは民民主党 少人数学級だから先生沢山要るから非正規だなんて!
全然雇用対策もしてない嘘つき、
少人数学級実現ー先生の需要ー雇用に結び付くはず 、
正規で教育も行き届さ。
ばかな政府だな。話によると、非正規の先生けっこう虐めに会うらしいよ!
これで虐め自殺「子供の」起きたら、なんと言い訳するか、正規の先生たりないから、なんて言うかな 。
自治体やら政府も、現場に指導強化を?
でたらめは辞めろ。民間企業カイゴ業界であるまいさ。カイゴも非正規増えてる応募見たもの、特養ですら。
先生って何する人だったかしら (不備)
2010-10-26 01:19:36
 大学教員は昨今7-8割が非常勤と言われ、血反吐を吐いている高等教育現場を目の当たりにしているだけに、せめて小中高はと思っていましたが、公立でこれとは。

 パートタイム教員だらけで教育現場を回す弊害というのは、
1.パートタイム教員はまず固定の部屋・机など拠点がないことが多い = 生徒と親密なコンタクトが取りにくく、興味関心や授業改善点など双方で話し合う機会が減る。生徒個人の問題などに気付いてやれるチャンスが低い。
2.教員が生活費を稼ぐために別所での授業を担当せざるを得ない(同一校での担当はどうしても数が限られる)ので、担当一つ一つの内容が不十分になる。必要な道具類の支給も不十分な場合が多い。
3.自分自身に経済的・社会的余裕がないため、困窮する生徒たちの支援が十分にできない。身銭・時間には限りがある。
4.人によってはですが、教員・事務方・生徒・保護者もそれぞれ、「所詮パートタイム」的な考え方をすることがある。
5.非パートタイムの教員になるために、別の仕事で業績を上げるための成果を求められ、かつ目の前の授業よりそちらのが評価されるため、教育業務よりそればかり重視する教員もいる(高等教育の場合)。

と、ちょっと考えて挙げられる現実がこんなにあります。
 あくまで、支援として手が空いている有資格・経験者に、「非常の」こととして支援してもらう制度なら良いんですが、現状は安いから全部担当させてるだけですので、「誰にとっても」悲惨でしかありません。

 先日のエントリでも申しましたが、何をするにもお金は掛かるし、ましてや大事な教育なのに、掛かる予算が少ない方が教育の質が低下することよりも良し、とされているかの如くな社会ですね。
Unknown (非国民通信管理人)
2010-10-26 23:07:25
>介護員さん

 少人数学級に伴って教職員の増員も必要になるわけですが、どこも人件費削減が至上命題ですからね。本当は人件費を増やしていくことが必要で、そうしてこそ雇用情勢の改善にも繋がるのですが、実際は正反対のことをしているのですから救いようがありません。

>不備さん

 何事も悪い方に合わせるのが昨今の流れですからね。いずれは小中学校も非常勤講師が主流になって正規の教員は管理職候補だけ、みたいなことになっても不思議ではありません。雇用の問題、教育の質の問題のどちらをとっても好ましくないはずなのですが、しかるに歓迎されるのは人件費カットの方ばかり……
Unknown (24)
2010-10-26 23:25:06
例えば大学だと教養科目・基礎科目の授業はパートタイムの講師にある程度やってもらうというのは合理的だと思うんですね。研究に忙しい教授・准教授に多くの授業を押しつけるのは好ましくない。まあやりすぎは避けなければいけないのですけれど。
小学校・中学校でも理科・図画工作・体育などの補助教員としてなら、担任の負担を減らすという意味では好ましいと思うのです。

要するにパートタイムの流動性を生かした形で、正規教員の弱点を補えるようになっていれば何の問題はないわけです。そこを、パートタイムにも常勤と同じようなことをさせ、給料も減らすから意味不明なことになる。
私は「パートタイムを利用して教育費を減らせ」というのは間違いで、パートタイムの利点を使って教育費の増大・教育の充実をするのが正しい方向だと思っております。

他の方と同じようなこと言ってますね。はい。
Unknown (非国民通信管理人)
2010-10-27 00:59:27
>24さん

 ただパートタイムを上手く使って教育する側を効率化できた場合でも、今度は講師として働く人の生活や雇用の問題もありますからね。その辺をも含めて教員採用は考えられなければならないはずですが、現状では経費削減あるのみですから困ったものです。
初等教育から他人の未来を壊す気かよ! (不肖の弟子)
2010-10-27 21:59:46
夏休みの間先生が不在の為に小学校が開放されていないことで教師に不信感を抱く親戚がいました。
この件で管理人様が仰ることが関係しているという仮定を得ました。
「~小学校だけで教鞭を執る~先生」というようにきちんとした身分保障も待遇が得られる人が恒常的に確保できていないから先述の状況になっているとも解釈ができますので。

来年度の指導要綱でどこの科目にも道徳心や伝統を教えるようになります。
これだけでも的外れなのですが分量を増やしておいて授業時間を確保しないことで「できない人はそのままでいい」という確信犯的行為が実施されることは有害と見なせます。
Unknown (非国民通信管理人)
2010-10-27 23:16:26
>不肖の弟子さん

 非正規で「授業のあるときだけ」の契約ですと人件費節減にはなるのでしょうけれど、イレギュラーな時間帯の対応はできなくなりますからね。託児所的な機能も強い日本の学校であるからには、やはり正規の教員の方が相性は良いはずなんですが……

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