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非国民通信

ノーモア・コイズミ

労働力の値引き販売

2010-05-17 22:59:16 | 編集雑記・小ネタ

517 :Trader@Live!:2010/05/14(金) 13:05:47 ID:7X6rS7Hz
好きで引きこもってるわけじゃない
収入ないから、面接に出向く以外は極力交通費その他を節約しないといけないんだ

昨日行ったセミナーでドン引き
「就職活動は自分を売り込む営業活動です!」
ココまではいい
「デフレの世の中、同じ質なのに他より高いものが売れますか?」
「「募集条件はこうですが、私はこの給与より2万円安くてもいい。お願いだから働かせてください」こう言うんです!」
これからの求職者はこう主張しろ、と
将来的に昇給があるかもしれない。未来のために今多少の苦労をするのは必要なリスクだそうだ
うん。そういう表現だと確かにもっともらしく聞こえるな
ただ、基本給15万の仕事を13万で雇ってくれと頼んで、それで生活できるのか?

 某所にて、こんな書き込みを見つけました。ハローワーク主催のセミナーですと、ハウツー本の類でさんざん繰り返されているようなことしか言われないので役にも立たなければネタにもならないのですが、どこかのコンサル系統のセミナーだったらこんなのも珍しくないのでしょうかね。さて引用元では「基本給15万の仕事を13万で雇ってくれと頼んで、それで生活できるのか?」と指摘されています。これはもっともな指摘ですが、基本給25万の仕事を23万で雇ってくれと頼むとしたらどうでしょうか? 独身なら生活できる範囲ですけれど、それでもやはり問題があるはずです。

 これは私の職場ではなく知人の職場の話ですが、その職場では派遣会社A社から1時間当たり2200円(うち派遣社員の取り分は1550円)で派遣契約を交わしていました。ところが、別の派遣会社B社が1時間当たり2000円(うち派遣社員の取り分は1400円)で営業をかけてきたわけです。結果、知人の派遣先企業は1時間当たり2000円でスタッフを派遣してくれるB社に乗り換えることにしました。そしてA社との契約打ち切りに伴い、A社から派遣されている派遣社員もまた契約打ち切り、希望があればB社の派遣社員(時給1400円)になれるよう斡旋するとの話があったそうです。派遣契約打ち切りで失業するか、時給1400円のB社に登録を変更するか選べというわけですね。「私は今の時給より150円安くてもいい。お願いだから働かせてください」と言えば働かせてもらえると……

 普通の商品であれ労働力という商品であれ、値引きをすることによって売れ残る確率を減らすことはできます。商品の品質の違いを購入希望者が理解できなければ、当然のことながら安いものの方が売れますから。だから、売れ残りの不良在庫として廃棄処分にすることは避けたい、何とかして売り上げたい――そういう思いから値引き販売に走ってしまうケースは多々あるのではないでしょうか。そこで派遣社員という商品の場合もまた同様、値引きによって売れ残りになることを避け、新たな顧客を獲得することもあるわけですが、結果としてどのような影響が出るかは言うまでもないと思います。

 そして新入社員の場合も同様です。もしかしたら「私はこの給与より2万円安くてもいい」という値引き販売によって売れ残りにならずに済む、企業に「買われる」可能性は増えるかも知れません。しかし、それがもたらす影響を考えてください。本来ならば15万円で雇われるはずだった人の代わりに、月給13万円でポストを得る人が出てくるわけです。たとえ本人が「13万でも仕事があるだけありがたい」と思っていたとしても、全体を見れば月給15万のポストが失われて13万のポストに置き換えられているだけ、15万円で働けるはずだった人が就業機会を失うだけ、つまり就労環境の悪化を招いているのです。売上増ではなく人件費圧縮によって利益確保を目指す日本型経営からすれば望ましいことなのかも知れませんが……

 上述の派遣会社の例も含めて、低価格(低賃金)でのオファーを禁止する枠組みを作る必要があるような気がします(元より同一労働同一賃金の考えを適用するなら、同じ仕事なのに所属する派遣会社の違いによって賃金が異なるようなことはあってはならないわけで、同じ仕事に対して特定の派遣会社が他社よりも安い価格で派遣契約を結ぶようなことは好ましくないはずです)。「自分を売り込む営業活動」にしたところで、値引き販売が広まれば当然のことながら定価では労働力が売れなくなるわけです。そういう事態の発生を避けるためには、「本人の同意や申し出があっても」募集要項に記載した「以上」の賃金を支払わなければならない規定でも作っておいた方が良いのではないでしょうかね。

 

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 ちなみに求人サイトで、履歴書/職務経歴書の添削サービスを受けられるのですが、試しに申し込んでみたところ「自己アピールにはこういう文言を付け加えてみてはいかがでしょう?」とのアドバイスがありました。アドバイザーが提案した文例はというと――“「○○を扱う」夢の実現には、年収ダウンも厭わない覚悟でおります。”とか。これが転職サイトの担当アドバイザーの考える有効なアピールの仕方みたいです。


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21 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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日本は終了しました (ピンク映画好き)
2010-05-17 23:19:38
不条理ギャグマンガのような話ですね。
こんなふうに労働者をコケにしていたら、質が低下していって、国が没落して行くと思います。
科学技術立国なんて、昔話になるでしょう。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-05-17 23:27:34
>ピンク映画好きさん

 経営コンサルタントとかそういう類の連中は、とかく非常識なことを主張するわけですけれど、こうした人々の作る「お約束」に合わせないと生きていけないようになっていくのでしょうね。労働力の値段も下がる一方、ひたすら後退を続けていくようです。
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低価格商法は市場を破壊すると (不備)
2010-05-18 00:29:31
 発想がまず、「値引き」の方に導かれている前提こそがおかしいんですよね。
 商品にせよ人にせよ、価値基準はコストだけではないはずで、一見同質に見える人・モノの中に見合った価格を払うべき異質の評価点・良さを見出すべきであって、それが見つけられないならば、評価する側の能力不足なはずです。
 性能の評価は、0か1か、ではなくて、こっちのベクトル、あっちのベクトル、と様々な方向に伸びている利点から判断すべきなのに。それが、評価される側の一方的な失点であるかのように導こうとする社会的な風潮を、なんとか変えられないかといつもウンザリしています。
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いい加減にしろ (介護員)
2010-05-18 00:47:31
仕事を与えず、チヤンス奪い。スキルアップの機械や訓練させながら働かせろ。賃金は誰でも最低は20万だ!当たり前だ!?我が儘言ってみる。
ダンピングするならしてみるがいいさ、
なんかかえって労働者の心歪み?とにかく荒れ狂うのさ!心身体精神。
贅沢精神で行こうよ!
手取り最低20万でなきゃ働かないぞ!
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うひゃー (Bill McCreary)
2010-05-18 06:16:49
>アドバイザーが提案した文例はというと――“「○○を扱う」夢の実現には、年収ダウンも厭わない覚悟でおります。”とか。これが転職サイトの担当アドバイザーの考える有効なアピールの仕方みたいです。

ありそうな話ですが、こんなことが公然とされているのではお話にもなりません。行政とかの指導が入ったっていいくらいです。
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日本の労働組合では・・・ (かたかん)
2010-05-18 06:24:40
日本は労働組合が企業別ですから、どんなに「労働力を買い叩くな」といっても各個撃破されるだけなんですよね・・・。
ヨーロッパのようにまず市民がギルドに加盟してそこから労働者を企業に送り込むタイプならむしろ労働価格吊り上げも可能だとおもうんですよ。
そう考えると企業別労働組合は労働組合として機能していないですよ。
企業内で労働者のジンケン守っても外に労働力を買い叩いて作ったサービスがでまわってたらサービス残業しないと対抗できませんからね。
マルクス先生の偉さが最近わかるようになってきました。
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経営戦略上の誤り (northeast)
2010-05-18 07:01:27
低価格戦略が成り立つのは、低価格化により高シェアが獲得でき、かつ高シェア獲得までの間耐えられる財務体質を持っている時だけ。労働市場は全くこの条件にあてはまらないので「低価格戦略をとっていはいけない」というのが経営戦略上の常識。だからそのコンサルタントは、経営コンサルタント失格です。
労働者は合法的に利用できる権利、労働組合、労働法制を用いて、より有利な交渉を行うのが正しい戦略ということになる。実は採用交渉の場合にはこれ等の手段がほとんど使えないというのが問題である。既存の企業内組合が採用について経営に圧力を十分かけるというのが短期的に可能な戦略だが、企業内組合がどう動くのかにかかってしまう。「団結せよ万国の労働者」という結論になってしまうのは忸怩たるものがある。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-05-18 13:59:48
>不備さん

 本分で「日本的経営」という言葉を出しましたが、コストカットばかりを重視するのが現代の日本的経営になっていると思うんですよね。モノの善し悪しなんて、もはや付加的なものでしかないのでしょう。

>介護員さん

 フルタイムの仕事なら最低でも20万円からじゃないと話にはならないのですが、安月給の仕事が増えるばかりですよね。どうにも世論も低賃金に納得しているフシがありますし。

>Bill McCrearyさん

 本当、こういうことに対する規制の一つも用意して、労働力の安売り合戦にならないように対策を採る必要があると思います。大手の転職支援サイトですら、こんなものですから……

>かたかんさん

 労組が分断されているのも痛いですね。そもそも労組がない職場の方が多数派でしょうし。企業の括りに収まらない大きな労組が必要ですが、でも経営目線の日本の労働者には歓迎されないのかも知れません。

>northeastさん

 どうにもコンサルタントとは、的確な助言のできる人ではなく単なる太鼓持ちである場合が多いですからね。経営側の機嫌が良くなりそうなことを、したり顔で語ってみせるのが役目なのでしょう。
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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2010-05-18 17:13:19
ttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100518-00000603-reu-spo

こんなサッカー選手もいます。彼の決断は日本の世論的に考えたらおおむね好意的に迎えられそうですが(コメントも彼の決断を好意的にとらえている様子であり、「給料泥棒」を揶揄するコメントもあり…)果たして諸手を挙げて歓迎すべき要素だけなのでしょうか?
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引用しました。 (伊東勉)
2010-05-18 17:31:41
 こんにちは、伊東です。
 今日の拙稿に記事を引用しました。該当記事はTBしました。
 ほとんどはその文に書いたとおりでコメント欄で書く事なくなってしまいましたが、なんでそこまで卑屈にならなきゃならないのかな、という根本的な疑問がわいています。

 卑屈な心をもった付き合いは脆いものでしかありません。

 て、かっこつけた所で、今日は失礼します。
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