非国民通信

ノーモア・コイズミ

地域主権と愛国心

2010-05-18 22:55:50 | ニュース

大阪の国旗常時掲揚、府立高はわずか4校(産経新聞)

 大阪府議会で昨年12月、府立学校を含む官公庁での国旗掲揚を求める決議が可決された後、平日に掲げる「常時掲揚」を実施する府立高校(全日制課程)は、全142校のうち4校にとどまることが、市民団体の調査で分かった。一方、大阪市立高校は4月の始業式以降、大半が常時掲揚を始めた。

 市民団体「大阪の教育を正す府民の会」(会長、瀧藤尊教・四天王寺元管長)が全日制課程の府立高校142校と市立高校19校を対象に、4月中~下旬の平日日中に敷地の周囲から校舎屋上やグラウンドのポールなどを目視で調査した。

 その結果、府立高校では4校、市立高校では大半の16校で常時掲揚を確認。府立の掲揚率はわずか3%弱にとどまり、市立の84%と比べ圧倒的な差が生じた。

 府民の会は「橋下知事は国歌斉唱には熱心で、今春の職員任命式で『声が小さい』と一喝した。国旗の常時掲揚でも同じ姿勢をみせてほしい。知事の決断次第ですぐに実施できる」としている。

 なんでも右翼の鈴木邦男氏は若い頃国旗を常時掲揚していたそうですが、野ざらしにされた国旗がボロボロに痛んでいることに気づき、それ以降は必要なとき以外は大事に保管するようになったと著書に書いていました。それはさておき「大阪の教育を正す府民の会」なる市民団体が国旗の常時掲揚を求めているようです。橋下府知事に。まぁ高校に直接乗り込まれても迷惑ですけれど、橋下のところに言いつけに行くというのも何でしょうかね、ジャイアンに告げ口するスネ夫みたい。

 これぞ純然たる「ムダ」と言えますが、ともあれ他人に国旗を掲げさせたい、国歌を大声で歌わせたい人がいるわけです。そのためにはわざわざ監視要員を各校に派遣する自治体もあったりしますけれど、こういうことに税金を使う分には非難が出ないのですから不思議なものです。天下りでも鯨研なんかは決して槍玉に挙げられないですし、たぶん「他人の嫌がることをやる」分には有効な税金の使い道として認知されているのでしょう。

 わざわざ市内の学校を覗き回った市民団体はたぶん暇なのだと思いますが、府立の掲揚率が3%弱で市立は84%と大きな差があるのは面白いデータかも知れませんね。管轄する教育委員会の立場の違いが出たのでしょうか。市の教育委員会は上意下達の精神が行き届いているようです。

 しかし、地方分権だの地域主権だのと賑々しい中、その地方分権を最も声高に唱えている首長のお膝元で、国旗・国歌の強制もまた盛んであるというのはどういうことでしょう。府や市の旗を掲げようというのなら筋は通りますけれど、地方分権を要求する一方で「国」を象徴するものを掲げさせようというのですから矛盾もいいところです。

官房長官、徳之島町議に「国も困っている」(読売新聞)

 沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題を巡り、平野官房長官は12日、自衛隊機で鹿児島市を訪問し、同市内のホテルで政府が普天間飛行場の基地機能の一部の移転先として検討している鹿児島県・徳之島の徳之島町議と約1時間30分間、会談した。

 その後、平野長官は記者団に、徳之島への移設方針を説明したことを明らかにし、その上で「町民の声が大変厳しいということは聞いた。日本全体の問題だから協議をお願いしたいと申し上げた」と述べた。

 会談には16人いる徳之島町議のうち5人が出席。政府側からは松野頼久、滝野欣弥両官房副長官が同席した。出席した池山富良町議は記者団に「徳之島では厳しいと伝えた。(会談では)賛成の意見は一つもなかった」と説明。「(町議が)9人か10人来る予定だったが、報道陣がいっぱいいて、怖くなって出られなかった」と、地元の複雑な思いもにじませた。池山氏によると、平野長官は「国も困っているから島の状況を教えてほしい。沖縄や米国との約束を果たせない。協力できるのだったら、お願いしたい」と述べた。別の出席者によると、町議側は「基本的には反対の立場だが、首相が徳之島への海兵隊の移転は『最大1000人』と言ったようで、そういう話を聞きたかった」と、詳細な説明を求めた。

 ちょっと前のニュースになりますが、平野官房長官曰く「国も困っているから」だそうです。これもなんだか筋違いであるように思えます。国が困っているから地方の島が助けを出せということでしょうか。逆なら話はわかりますけれど、国が困っているから地方が何とかしろと言うのでは順序が違うはずです。徳之島サイドとしても「知るかボケしばくぞ」ってな感じでしょうね。

 民主党もまた地方分権/地域主権には積極的な政党ですが、その理念に照らしてこの基地問題はどう評価されるべきものなのでしょうか。どうも地方分権が謳われるのとセットで、「国」への帰属意識は今まで以上に強く求められるようになっている気がします。要するに地方分権とは自治体が自由にナショナルミニマムを切り捨てられるようにすること、自治体首長が自由に権勢を振るえるようになることであって、少なくとも地域社会が「国」の干渉から解放されるようなものではなさそうです。

 

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9 コメント

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大きなお世話というよりも (薬瓶)
2010-05-19 04:20:53
公立校だったり公務員なわけですから公務の一部のはずですよ?
好きで掲げたり掲げなかったりする分には勝手にしていても良いのでしょうが、職務として定められているのならやってもらわないと困るでしょう。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-05-19 15:31:27
>薬瓶さん

 典型的な、バカの一つ覚えですね。学校の本来業務である教育に何ら関係がなく、かつ思想信条の自由を侵すという意味で憲法上の疑義がある恣意的な命令に振り回される謂われはないでしょう。知事の趣味に調子を合わせるのが公務員の仕事ではありません。あなたのオウム並の頭で理解できるかどうかは知りませんが。
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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2010-05-19 18:33:25
国家には金と力があることは間違いないと思いますが、その金と力が例えば福祉のような赤字を生むけど止めるとまずいことより誰かを罰することに使われることが望まれているふしがあるような。「どうせ分け前は回ってこない」「罰せられるのは悪い奴だから自分には累はおよばない」ということでしょうか。誰かが酷い目に遭うことでその分自分が幸福になる、という幸福のパイの奪い合いという考え方でしょうか。
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Unknown (takmaki)
2010-05-19 21:26:25
そもそも地方分権って何を指して言っているのかよくわかりませんよね。
地方分権ってのが言われ始めて少なくとも10年以上は経っていると思いますが、どのように分権化が進んでいるのか、またこれからどのように進めようとしているのか、いまいちわかりません。
そして日本国民がどのくらい/どのような地方分権を求めているのかもわかりません。

ただし、地方分権と国旗・国家教育の必要性は反比例するものではないと思います。個人的に、国旗・国歌軽視教育の最大の弊害は、愛国心云々よりも「世界の人々が国旗・国歌をどれほど尊重しているか」がわからなくなってしまうことにあると思います。逆説的ですが、これから日本人がどんどん海外に出て行く時代になるとするならば、国旗・国歌に対する基本的な儀礼を教育する必要性はますます高まるのではないかと思います。とはいえ、現状では国旗国歌教育の「推進派」にも「反対派」にも、そういう視点が見受けられないのは残念に思います。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-05-19 23:22:27
>ノエルザブレイヴさん

 「罰」を与える側への感情移入も強いですしね。公権力が誰かを罰することで、自分もまた誰かを罰した、正義の側に立っているかのような気分になっているところもあるのでしょう。例によって勧善懲悪的な、「悪い奴を懲らしめる」的なものが「公」の役目だと勘違いしているのかも知れません。

>takmakiさん

 これだけ強制が蔓延っていながら、国旗・国歌軽視教育等と言えるのは著しく国際感覚を欠いているように見受けられます。世界に出て行く云々の前に、ネットの外の世界でもごらんになったらいかがですか? ま、日本よりも国旗・国家を尊重しているであろう、どこぞやの独裁国家への進出を考えていらっしゃるなら話は別ですが。
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Unknown (ヒイロ)
2010-05-20 22:55:18
橋下とそれにご注進をしたがる連中は、「国旗・国歌に疑問を呈しないことが当たり前。それが先進国の常識だ」という思考回路に基づいて行動していると思わずにいられません。他の首長にもそういうのがいますが、今回は省略します。

それほど多くの本を読んでいませんが、「国旗や国歌で意見が割れる国」は存在していることが確かにあることを最後に付け加えます。
購入した際には、このエントリに書く予定でいます。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-05-20 23:20:08
>ヒイロさん

 付け加えて言えば、「日本式」の国旗/国歌の扱いが常識だと、勝手に脳内で設定しているところもありますね。国歌は黙って聞くのが常識の国もありますし、国旗を寄せ書きの台紙代わりに使うなんて日本以外の国ではあり得ない話ですが、その辺は力強く無視されるところです。
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Unknown (太郎)
2010-05-22 01:51:17
地方分権を最も声高に唱えている首長のお膝元で、国旗・国歌の強制もまた盛んであるというのはどういうことでしょう。

常時掲揚をする必要性は感じませんが、地方分権を進めたからといって大阪は日本なので、入学式や卒業式は国旗掲揚すべきだとおもいます。国旗掲揚は国への感謝の気持ちだと思います、何がいけないのでしょう?
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-05-22 10:19:41
>太郎さん

 典型的な論理のすり替えですね。国に感謝したければ勝手に感謝すればいい話ですが、それを強制される謂われはありませんし、感謝とは国旗の常時掲揚によって示されると思い込んでいるとしたら、何ともばかげた話です。自分ルールがあなたの外の世界でも通用すると思ったら大間違いですよ。
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