非国民通信

ノーモア・コイズミ

神奈川新聞の印象操作が酷い

2010-04-20 22:59:23 | ニュース

生活保護費が膨れ上がり財政圧迫、個人市民税収の半分に相当する自治体も/神奈川(神奈川新聞)

 景気低迷に伴う生活困窮者の急増で県や市の生活保護費が膨れ上がり、財政難に拍車を掛けている。2010年度当初予算では、生活保護費総額が個人市民税収(見込み額)の約半分に相当する自治体も出現。雇用情勢の大幅な改善が見通せない状況で、財政難にあえぎながら「社会保障の最後の砦(とりで)」を堅持する自治体の苦悩があらためて浮き彫りとなった。

 神奈川新聞社の調査によると、今年1月現在の県内の生活保護世帯数は、前年同期比14・1%(1万1439世帯)増の9万2384世帯。これを受け、県(町村分を負担)と県内19市が10年度当初予算に計上した生活保護費は16・2%(316億円)増の計2265億円に膨れ上がった。その75%は国の交付金が充てられるとはいえ、義務的経費全体の増加につながり、さらなる財政硬直化が懸念される。

 「就労支援で資格を取ってもらっても働き口がなく、八方ふさがりの状況だ」。市内の30世帯に1世帯の割合、2万300世帯が生活保護を受ける川崎市。地域によっては減少傾向にあった保護世帯数が、08年秋の世界同時不況以降、「異常な増加傾向」(保護指導課)に転じた。10年度の生活保護費は、同市が1年間に見込む個人市民税収額の46・9%に相当する510億円に上った。川崎に次ぐ高比率の横浜市は38・7%、座間市が38・5%の順だった。

 生活保護費の前年度比増加率が県内最大の35・4%(2億円)となった三浦市。生活保護費の50%近くを医療扶助費が占める。被保護者の高齢化率が高い上、不況の影響のためか若年層の入院患者も増加傾向。300世帯の家庭を3人のケースワーカーで訪問するが、「突発的な入院などに対応できなくなる」と、5月から面接専門員(非常勤職員)を配置する。

 生活保護費の半分は医療費であることを伝えている辺り部分的にマシな部分もあるのですが、何とも酷い見出しではないでしょうか。曰く「生活保護費が膨れ上がり財政圧迫、個人市民税収の半分に相当する自治体も」とのこと。生活保護を筆頭とする社会保障費を財政危機の悪玉とする風潮は何かと根強いですが、いくら何でも「個人市民税収の半分に相当」とは悪質に過ぎます。この生活保護費や、それから公務員の人件費など慣例として誇張した報道が容認されているものもありますけれど、それにしたってこの神奈川新聞の報道はやり過ぎです。

 こちらのリンク先では大阪市の生活保護費を取り上げたのですが、その際「保護費は10年度当初予算で過去最高の2888億円(うち市負担分722億円)となり、一般会計の歳出の17%」と報道されていました。この場合は「(生活保護費国庫負担分+生活保護費自治体負担分)÷自治体一般会計」という計算方法によって「17%」という数値が導かれていたわけです。国庫負担分、すなわち自治体が払うわけではない保護費を分子に加えることは明らかに不適切であり、あくまで自治体負担分のみを分子として計算すべきなのですが、生活保護費の負担を重く見せかけるためには、これくらいの誇張は許容されているようです。

 しかるに、今回の神奈川新聞の場合はどうでしょうか。「個人市民税収の半分に相当」と、分母を一般会計ではなく個人市民税に限定しています。そして当然のことながら、分子となる生活保護費の方は「国庫負担分+自治体負担分」を用いているわけです。とりあえず、具体的な数値を並べてみましょう……

川崎市2010年度予算案

一般会計:6117億
(うち個人市民税:1088億
特別会計:4433億
公営企業会計込み:2124億
予算合計:12674億

川崎市の生活保護費:510億
(うち自治体負担分:128億)

 たしかに、「川崎市の生活保護費(国庫負担分含む)÷個人市民税」ならば報道されているように46.9%、すなわち「半分」に近い値が得られますけれど、この計算式には何か理由でもあるのでしょうか。国庫負担分を含めた生活保護費が個人市民税から支払われているのなら上記の計算式にも一理ありますが、もちろんそんなことはないわけです。常識的な計算式としては「川崎市の生活保護費(自治体負担分)÷一般会計」辺りが考えられますけれど、そうなると保護費の割合は2%にしかなりませんから、「生活保護費が市の財政を食いつぶしている!」かのように煽りたい連中からすれば受け入れられないものなのかも知れません。できるだけ保護費の割合を大きく見せかけたい、だから分子に国庫負担分を含めただけでは飽きたらず、分母を個人市民税に限るという極めて恣意的な操作まで行ったものと考えられます。

 まぁ神奈川新聞の印象操作は悪質に過ぎますけれど、似たようなことは他紙でも散見されるわけです。できるだけ生活保護費の割合を高く見せかけたい、そういうモチベーションを持っている人が多い、そういう報道を待ち望んでいる人が多いのでしょう。私なんかからすれば税金が社会保障目的に使われている割合が高いのは好ましいことに思われるのですけれど、世論の体制にとっては全く逆のようです。税金の大部分が社会保障目的に使われることに危機感を抱いている人が多いようですから。社会保障のために税金を使わずして、いったい何に税金を使えというのでしょうね。

 

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13 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ノエルザブレイヴ)
2010-04-20 23:07:35
>社会保障のために税金を使わずして、いったい何に税金を使えというのでしょうね。
まあ、「(生活保護を受けている奴らより苦労している)自分のため」なのでしょう。それを言いたくはないから建前で飾ることはあるのでしょうが。
しかし、それは自分が社会保障の世話になっていることを忘れている考え方でもあるわけですけど。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-04-20 23:57:58
>ノエルザブレイヴさん

 「自分が一番かわいそう」というか、自分以外の社会的弱者を不当な受益者と見なし、自分こそが本来の受益者である、みたいな風潮も強いように思います。そうであるからには、結局どこに税金を投じても、その投入先「以外」からは非難囂々、足の引っ張り合いになるのでしょうね。
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Unknown (HANAKO)
2010-04-21 00:21:29
そうかと言っていざ助けようと水を向けると拒絶する奇怪なプライドが蔓延しているような因みに私も会社から自宅待機を命じられた口です
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川崎市は (とっぺんぱらり)
2010-04-21 00:58:40
立派だ。憲法に定められている「健康で文化的な最低限の生活」を具現しようとしている。本来ならば100%国が負担しなければならない生活保護費だ。『門前払い』で名を馳せている北九州市などは見習うべきだ。

神奈川新聞というのはサンケイと同じスタンスのようだ。コイズミの放送塔で有り続けたいのだろう。

江川詔子さんが見限った体質の持ち主なのだろう。
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結局 (最下層公務員)
2010-04-21 01:11:22
調子のいい事言ってる石原みたいな奴に個人的に使って頂きたいんでしょう。
北朝鮮の脅威から守る為に使って貰いたいんでしょう。もしかしたら、戦前の軍事費が予算の殆どなんてのが理想なのかも知れません。
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‥‥‥! (伊東勉(激情態))
2010-04-21 14:31:57
 地方の新聞は、ある程度地域にすむ人と近いから、とんでもない記事は書けない、と思っていた私がバカでした。
 ひどい見出し。
 大体税金は何のかのと集め方あるけども、それらをまとめた上で、じゃあどれに使いましょうか、とやるわけで「生活保護費は個人市民税の部分から使います」とかいう風な使い方は聞いた事ございません。

 立場上、あまり『根底で思っている事』を話すとまずいので、普段は控えている?部分もありますが、この記事がいわゆる“民意”の反映だとしたら、一体俺は何のために…。

 マスコミがまず考えてほしいのは『何故仕事も失い、生活保護にいたる人が多くなったか』を探る事で、生活保護を受給している人を追い詰める事ではない気がしますが。それともこの記事で“気付いて”レミングスみたいな“集団行動”すれば良いですか?

 まだ怒り収まらないですが、これ以上書くと非国民通信さんのブログ汚しますので自分の記事でやります…。
 ゴンぼほり(怒り)状態ですみません、今日はここで失礼します。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-04-21 18:51:53
>HANAKOさん

 受給資格者側にも変なプライドがあって、受給を拒むケースもあると聞きますね。自立心が強すぎるのか、失業しても実家に戻るくらいならホームレスになる若者が増えているとも聞きますし……

>とっぺんぱらりさん

 税金を社会保障費に回していることは、本来なら賞賛されるべきことなんですけれどね。それでも門前払いで受給資格者を追い返し、歳出削減を果たした自治体が賞賛される時代なのでしょう。

>最下層公務員さん

 たぶん、「富国強兵」に結びつく予算ぐらいですかね、理解が得られるのは。少なくとも社会的弱者のために予算を使うのは好まれないようですから。

>伊東勉さん

 私も地方紙の方が全国紙よりもマシと思っていた頃がありましたが、今回のような記事を見ると認識を改めざるを得ません。国政よりも地方自治体の方がより過激なポピュリストを選出するところもありますし、実は地方紙の方が誰かをスケープゴートに仕立て上げようとする傾向もあるのかも知れませんね。
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嫌な世の中ですね (コンポコ)
2010-04-21 19:03:12
こういう記事を見ますとつくづくそう思います。
コネズミによる凄まじいまでの洗脳(入れ知恵byアメリカ&築地CIAこと電通)の賜物ですね。

神奈川新聞がどういう新聞か知りませんでしたが、北国新聞や静岡新聞と並ぶ程度の低い右翼新聞なのは確実ですね。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-04-21 22:01:29
>コンポコさん

 まぁ、どこかの入れ知恵なんかなくても、「民意」に媚びればこんなものでしょう。党機関誌みたいな代物ならいざ知らず、一般向けの新聞ならどこもこれぐらいです。
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まあまあ (L)
2010-04-22 21:54:41
 NPJの記事リンクを見ていると、全国紙と比べれば、地方紙は、東京新聞など「政治」的な分野では割とマシな記事を書いていると思います。たとえば、「かなしん」でも、地元の「日の君」問題では、個人情報保護条例の規定に基づいて彼らが要求した審議会の答申に逆らって「センシティブ情報」を繰り返し収集する教育委員会や松沢知事を厳しく批判し続けています。
 しかし、経済方面では、新自由主義な金持ち万歳な主張をさも当然のような顔をして書きます。これは、広告を出す企業の、大企業たる自社の、小金を稼いでいる社員の利害の上のことですから、「慈善事業じゃない。私は、私の食べるパンをくれる人のために歌う。”金曜日”じゃあるまいし。」のはなかなかしょうがないところでしょう。全体を否定すること肯定することもないんで、良い記事を拾っていけばいいと思います。
 
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