新入社員の「質」、5年前より低下…企業の4割が回答(読売新聞)
新入社員の「質」に関して、企業の4割が5年前より低下したと感じていることが日本生命保険のアンケートで明らかになった。
企業全体では、新入社員の質が「低下している」(42・6%)と「向上している」(42・5%)はほぼ同じ割合だったが、中小企業(従業員300人以下)は「低下」(44・2%)が「向上」(37・7%)を上回り、規模が小さな企業ほど新人への不満が強い様子がうかがえる。
質が低下した理由(複数回答)では、「コミュニケーション能力・協調性の不足」が最も多く、「向上心・積極性の不足」「忍耐力の不足」の順だった。その原因として、小中学校時代の教育に問題があるという指摘が目立った。
お前は酒を飲みながら記事を書いているのか?と訝しみたくなるような記事が出てきました。日本生命の調査を流用したようですが、それにしてもこの論旨は無理だろう、と。
そもそも、給食費滞納の原因調査と同じで「どう思うか」を聞いてきただけのアンケートです。実態がどうであるかの調査ではなく、「どう思うか」を集計してきただけに過ぎません。要は感想文の寄せ集めですね。こうした調査に意味を持たせたいのであれば、一定期間をおいて断続的に同内容の調査を続けることが必要でしょう。継続して調査することで企業が新入社員を「どう思うか」の変遷を知ることは出来ますから。それをやらないのであれば、ただ「やってみた」だけでしかありません。私が上司だったら予算を許可しませんね。
だいたい「新入社員の「質」、5年前より低下」という見出しがおかしいわけです。公表された調査結果に拠れば「低下している」と思っている人が42.6%、「向上している」と思っている人が42.5%です。ほぼ同数、±0ではありませんか! これがどうして「5年前より低下」という見出しに結びつくのか、やはり酒を飲みながら記事を書いているのではと言わざるを得ません。
中小企業では、僅かながら「低下している」が上回っているわけですが、全体で見れば五分のスコアです。してみると非・中小企業の場合、「向上している」との回答が上回っていることになります。この辺の計算は誰でも出来ますよね?
(自分より)若い世代の質が低下している、そういう社会的合意があります。この記事を書いた記者も同様に、その社会的合意に基づいて初めから結論ありきで記事を準備したのでしょう。当然、借りてきた調査結果も社会的合意にそぐうもの、すなわち若い世代の質が低下していることを裏付けるものだと、そう確信していたはずです。ところが蓋を開けてみると、「低下している」と「向上している」がほぼ同数、大企業に至っては「向上している」が上回る始末です。どうしてこうなったのでしょうか?
望み通りの結論を得たいなら、設問への工夫が欠かせません。もし新入社員の質が「低下している」との社会的合意を反映した結果を得たいのであれば、「5年前」という留保を外すべきでした。これが「自分が入社した頃と比較して」という条件付けでの設問であったならば、新入社員の質が「低下している」との回答が圧倒的多数を占めたはずです。それが偏見であっても、そう信じられているわけですから。
入社5年目程度の社員であれば、新入社員を自分と比較して、質が低下していると感じるケースが多いでしょう。しかし、今回のアンケートの対象となったと推測されるのは、人を評価する立場の人間です。そうした管理職から見れば、5年目の若手社員も今年の新入社員も大差ありません。薄れゆく記憶の中で美化された自分達の新入社員時代と比べると、今の新入社員は質が低下したと、そう信じ込んでいるかも知れませんが、目の前の5年目社員と新入社員を比べて、そこに目立った変化があると感じている管理職など皆無のはずです。
もし回答項目にそれがあったならば「大した違いはない」との回答が大半だったでしょう。自分の新入社員時代に比べると質は低下している、しかし5年前に入った社員と今年の新入社員を比べるならどうか? 大した違いはない、低下しているとも向上しているとも言えない……それが最大公約数的な立場のはず、アンケートにもそれが反映されたわけです。
そんなわけで、今回のアンケートは設問の不備により「昔は良かった/今時の若い者は…」という結論を導き出すことに失敗しています。普通ならお蔵入りになるところですが、何を思ったか読売記者は、結果を気にせず堂々と「昔は良かった/今時の若い者は…」式の記事を載せてしまいました。締め切りに追われて焦っていたのでしょうか? まぁ、諸々の偏見をを信奉している人にとっては、煽り立てる口実さえあれば論拠など必要としないわけで、そういう人々を顧客として想定しているのかも知れませんが。
第一紀元前から「今時の若者ときたら」と言われて来たのですからいちいち気にしていたら身が持ちません。特に情報に曝される頻度が高い現代にあっては。(と言いつつ気になってしまいます)
この間も書きましたとおり、結局これも「読者が期待している記事」を書こうとして、支離滅裂な内容になった記事の典型です。今の若い奴(笑)はダメだ…との固定観念で読者にこびる…典型的な読者蔑視の記事ですかね。
それにしても、昨日の医者と警官の数の比較といい、この記事といい、デスクその他は、こんな記事を手直しできないんですかね。アンケート自体、たしかにとてもまともに信用できるようなものでもありませんが、この記事はそれ以前の代物ですものね。
日本では加齢と同時に読書量が激減し、新聞を読む時間ばかりが増大するそうですが、「お客様第一主義」の新聞社としては高年齢層のご機嫌取りが欠かせないのでしょうね。むしろ新入社員の「質」が低下したと思っている人の割合を継続的に調査すること、それによっていつの時代も考えることは変わっていないと証明できれば、調査としては意味が出てくるのですが、やれやれ……
>Bill McCrearyさん
この調査結果でしたら、「新入社員の「質」、5年前より向上…企業の4割が回答」としても成り立つわけで、いくら何でもこれはないだろう、と。読者だって本当は「馬鹿にするな!」と怒るべきところでしょう。こんな記事を平気で載せるようなら、もはや取材の必要性すらないように感じられるのですが、一体どういう編集体制なのか、その辺まで怪しく思えてきます。