駅コンセントで携帯充電の女子大生摘発、被害「3銭」(朝日新聞)
携帯電話充電のために駅構内のコンセントから3銭分の電気を盗んだとして、神奈川県警相模原署が女子大生(20)を窃盗容疑で摘発した。
調べでは、8月19日未明、JR相模原駅構内でコンセントに充電器を差し込み電気0.015ワット時を盗んだ疑いがある。通行人が110番。女子大生は友人と待ち合わせをしていたという。
警察官に事情を聴かれ、「悪いことだと分かりました」と反省。厳重注意し、通常の書類送検もしない「微罪処分」として処理した。署幹部は「3銭分でも盗みは盗みです」。
何とも由々しき事態です。伝え聞くところに拠りますと、携帯電話を充電している人がいる、たったそれだけのことで110番通報し、警察官を出動させた人がいるようです。全く恐ろしい世の中ですね。こんな調子では、赤信号を渡っただけでも通報されそうです。怖いですね。幸か不幸か「禁煙なのに煙草を吸っている」なんて通報はまだないようですが、油断は出来ませんよ!
携帯電話を充電しているだけで咎め立てする、その頭の中身にも疑問を感じるのですが、自分の不満を直接相手に伝えるのではなく、わざわざ警察を呼び出す、そのモンスターぶりにも末恐ろしいものを感じます。そもそも携帯電話の充電を「悪」と感じるのに、自分では注意せずポリを使って摘発させようとするその魂胆、単に他人に声をかける勇気がないからとかそういうものではなく、権力の意を借りて自分の思いを遂げようとする、権力=支配する側との一体感がそこにあるのでしょう。個人としては沈黙する代わりに、権力=支配者として断罪しようとする、そうした意識の在り方には名状しがたい気持ち悪さを覚えます。
参考、
感情と勘定
実質的に被害額¥0の、こうした微罪で警察が動くことのムダを語ったのが上のリンク先のエントリですが、今回は警察が自ら動いたのではなく、不心得者の通報によって動かざるを得なくなった結果のようです。いやはや、立場上とはいえ出動を強いられた警察官に同情します。でも、わたしがポリだったら、もうちょっと別の対応をしたいなぁ……
「モラルに欠ける110番通報が増えている!」とか、その手のネタが定期的にメディアを賑わしています。たとえば「ゴキブリが出た、何とかして!」等々。これも給食費の滞納や救急車のタクシー利用と同じで「どう思うか」と感想を尋ねただけの、実態とは限らない調査結果が一人歩きしている気配もあります。そもそも110番通報には「苦情・要望」に分類されるものが昔から多く、刑法に触れる行為の通報ばかりではなかったはずです。その警察業務とは無関係な「苦情・要望」が「モラル低下による~」へと新たに分類されるようになったことで、荒唐無稽なバッシングの材料が作られているのではないでしょうか。
安易に110番、119番通報しないようにと、色々と問題のある呼びかけが為される昨今ですが、それをやるなら今回の通報者「携帯を充電している人がいます」なんて通報した人にこそ自粛を訴えかけるべきではないでしょうか。このようなモラルに欠ける通報が重なった結果、重要な事件現場への警察官の到着が遅れるなど悪影響が出る可能性も有り得る、そもそも警察組織は国民の血税で運営されているのだ、警察組織を何ら意味のない無駄なことのために動かすとしたら、それこそ税金泥棒と非難されるべき、「110番にかけるべき通報かどうか良識を持って判断して」、そのような言葉を今回の通報者に投げかけてこそ、一貫性が保たれるというものです。
>今回の通報者「携帯を充電している人がいます」なんて通報した人にこそ自粛を訴えかけるべきではないでしょうか。
ほんとにそうですね。税金の無駄遣いなんて話をするのなら、こんな馬鹿げた通報をするのは即刻やめるべきです。
人を罰するためであれば(その人に僅かでも咎められる理由があれば)、人権を踏みにじっても構わない、そういう社会ですから。いかに些細な違法行為でも、それを摘発するコストは度外視されるようですね。
>Bill McCrearyさん
単に充電を止めさせることが目的なら、自分ではなくとも駅員から注意させれば済む話ですよね。敢えてそうしないのは、権力によって罰を与えること、こちらに目的があったからでしょうか。何とも倒錯した欲望です。
>nanamiさん
なんでも煙草の葉を一枚だけ盗んで逮捕された事件があったそうで、その際は被害金額が限りなく0日かいからと無罪になったそうです。今回も実質的に被害のなどないわけですが、周りが不寛容になったのでしょうかね。
救急車をタクシー代わりに使うなどの公共サービスの濫用に厳しい本邦の美風(笑)はどこへ行ったのでしょう?
先日の原爆ドーム萌えダンス事件(←即興で勝手に命名しました)にも相通ずる「バッシングのためなら建前を選ばない」ゲスな根性が潜んでいないか?と勘ぐりたくなります。
納税者である国民が自分のために公共サービスを利用すれば非難されるが、他人を咎めるために利用する分には、実に太っ腹ですよね。とにかく他人を罰することが第一のようです。
>そまんさん
その辺はまぁ、「我々の喫煙権を犯すなど許せない! 嫌煙ファシズムだ!」などと真顔で宣う、筒井康隆など「愛煙無罪」な人々への皮肉であります。わかりにくかったかも知れませんね。
ちなみに喫煙者の論理に対する私の考え方は、こんなところです。
http://blog.goo.ne.jp/rebellion_2006/e/28c23d586033f7e7104f8990ddaf1161
>naomiさん
それもあるかもしれませんが、同時に「権力を持たない人間が、自分の意思で発言すること」、これを好ましく思っていないからでもあるのではないでしょうか。「個」として発言するのは悪いことであり「公」の裁きに委ねなければならない、そうした信念が警察への通報に繋がったのではないかと。
そういう無用なリスクをとりたくない小市民としては、全く見ぬふりをするか、官憲に任せちゃいたくなる気持ちも分かるような気もしますが。
管理人さんは、そういうリスクは気になりませんか?
そうですね、「個」として発言やら意見をする事が奨励されない、それ故に”センセイ”と呼ばれる人たちや公に仕える人たちの声に従う。要するに「肩書き信仰」とでも言えばいいのでしょうかね?意見そのものの内容よりも、誰が言ったのかが重要視される。そういったメンタリティーが、この通報者だけではなく、多くの日本人に内在しているであろうと思うと、恐ろしいです。