非国民通信

ノーモア・コイズミ

つくばみらい市の一件から

2008-01-26 22:31:32 | ニュース

DV防止法:反対団体の抗議で講演会中止 つくばみらい市(毎日新聞)

 配偶者や恋人などによる暴力「ドメスティックバイオレンス(DV)」をテーマにした講演会を20日に予定していた茨城県つくばみらい市が、被害者保護などを定めたDV防止法に批判的な市民団体などの抗議を受け、開催を断念していたことが分かった。

 講演会は市内の公民館を会場に、内閣府の専門調査会委員でDV被害者支援に取り組む平川和子・東京フェミニストセラピィセンター所長を講師に招いて開く予定だった。

 市によると、07年12月下旬にPRを始めたところ1月に入り「偏向した講演会を市費で行わないで下さい」などと記した要請書やメールが届くようになり、約100通に達した。16日朝には、市役所前で数人が拡声器を使って抗議する騒ぎが起き、市は「開催しても混乱を招き、参加者に迷惑をかける」と判断して、中止を決めた。

 開催に反対した市民側は「被害者のシェルターへの保護は家族を破壊する」などとDV防止法を批判しているが、平川さんは「DVの実態を伝えたかったので残念だ」と語った。

 上手く考えがまとまらなかったので見送ろうとも思ったのですが、やはり見過ごせないので取り上げます。DVをテーマにした講演会が予定されていたはずが「市民団体」の抗議で中止になったというこの話、色々な面で「らしさ」が滲み出ています。家庭内暴力がなくなると破壊されてしまう「家庭」とは何なのでしょうね。

 先に引用元の毎日新聞の記事に突っ込んでおきますと「開催に反対した市民」という表現が気にかかりました。こう書かれるとあたかも地元の市民が反対していたかのような印象を与えてしまいますが、この開催に噛みついていた団体って、都内から出張してきたみたいなのですが? 自民党議員だったら党の政策に反対する人のことは「テロリスト」と呼びますし、極右団体だったら「反日」と呼ぶわけですが、毎日新聞は敢えて「市民」と呼ぶ辺り、何とも殊勝な心がけです。

 さて産経新聞によると、『市秘書広聴課は「市民に危険が及ぶ恐れがあったので中止を決めた」としている。』そうなのですが、このように恐怖を用いて自分達の政治的主張を押し通すことを海外ではテロリズムと言います。このようなやり口への対策が日本のテロ対策特別措置法に含まれていない辺り、日本で言うテロリズムには当て嵌まらないのかも知れませんが、それがどうして、こうしたテロ行為は日本において決して珍しいものではありません。

 主催側であるつくばみらい市はテロの脅威に容易く屈したようですが、いやはやなんともブッシュに罵倒されそうな弱腰ぶりですね。貴様はどっちの味方なのか、テロリストの仲間でないなら旗を見せろ!と。政府与党が言うところの「テロの脅威」や、「反日国家」だの「ジェンダーフリー」だの「プロ市民」だのと、こうした諸々の仮想敵を相手にしている限りは、何とも勇ましいことを口にする輩ばかりですが、それはあくまで現実の脅威でないからこそ、蛮勇を奮えるというものでしょうか。右翼団体が怒鳴り込んでくるなどの、実在の脅威には何とも弱腰です。


 そしてもう一つ、我々の社会があまりにも、人を傷つけることを自明のことと受け容れている様を指摘せざるを得ません。それが我々にとって必要なものであるならば、すなわち自由に生きる権利、正当な報酬を受け取る権利、社会保障を受ける権利に関しては驚くほど鈍感な我々の社会ですが、人を幸せにするためのものではなく、他人を傷つけるものであるならば驚くほど熱心になるのが我々の社会だと言うことです。

 つまり、捕鯨は我々にとって必須ではありませんが、それを嫌がる人がいるからこそ、熱心に支持する人がいる、死刑制度も治安維持のためには無意味ですが、それでも人を罰したいが故に熱心に支持されるわけです。守られる権利よりも我を通す権利、生きる権利よりも復讐する権利をこの社会が好むなら、殴られない権利よりも殴る権利の方が好まれるのでしょうか。道ばたで他人を殴れば暴行ですが、それが配偶者や子供を殴る分には暴行ではないとする、その考え方はそもそもおかしいはずです。暴力による支配が例外的に許された空間を家族と呼び、そんな家族を守るべきものと考えているのなら、それこそ失笑ものです。

 

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8 コメント

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さすがに某市民団体も (焚火派GALゲー戦線)
2008-01-26 22:50:16
こんな人間を守ろうとしているとは主張しないのでしょうが。http://www.nikkansports.com/general/f-gn-tp0-20080121-310197.html

この件は村野瀬玲奈さんのところでも所でも取り上げられています。http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-581.html

昔は母子生活支援施設(母子寮)の入所者は夫が戦死して母子世帯になった家庭が多かったのですが、今はDV関連の入所者がメインとか。
http://www.zenbokyou.jp/boshi/histry.html



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ナンでも暴力反対 (una)
2008-01-26 23:39:54
ウチは、子どもは女子ばかりでしたが、
未熟な父親は、時に力任せなところがありましたが、
私は、力任せを信じなかったので、
体を張って?子どもを守った記憶が^^;

力任せな育児は、今も信じていません!
当然、男の都合による、女支配もです。

暴力は、どのシーンでも、
信頼は生まれませんよね?
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Unknown (Bill McCreary)
2008-01-27 08:47:02
この件では、私も碧猫さんのブログですでにコメントさせていただきました。しかし、紹介されている団体のHPを今日初めて見たのですが(団体は知っていました)、なかなか気合の入ったところなのに驚きました。警察に警備を依頼するなり、もう少しエスカレートすれば被害届を出すなりするべきです。いや、この段階でも被害届は出すべきかな。

さて、私は外国の「右翼団体」とかにあんまり知識がないのですが、すくなくとも「先進国」で「右翼団体」が「DV問題」にこのような形の実力行使をするのって、あんまりないのではないでしょうか。けっきょく日本人の「草の根保守」の部分に、こういったことを嫌う心理があるから、「右翼団体」もこんなむちゃくちゃなことができるのでは。管理人さんが詳しいロシアなどはいかがでしょうか。

それにしても、こんな馬鹿なことがまかり通る社会が恥ずかしくてなりません。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-01-27 14:25:35
>焚火派GALゲー戦線さん

 あの手の団体の場合ですと、DVによる死者が出た後から、加害者に対する怒りを露わにするのではないかと思います。御紹介いただいた宇都宮の事件のようなケースでもたぶん、ことが殺人に発展するや突如として犯人を罰せよと叫び出すけれど、一方でその前の段階でのDV被害には目を向けない、そんな気がしますね。人を守ることには無関心だけれど、人を罰することには熱心、そんな人たちなのではないかな、と。

>unaさん

 もし暴力によって生まれる信頼があるとするならば、それは暴力によって人を抑えつける手口への信頼であって、暴力を振う人への信頼では決してないでしょうね。それでも尚、他人を殴って言うことを聞かせようと、そんな発想が幅を利かせているのは何なのでしょう。暴力を振う側にとっては居心地がよいのかも知れませんが……

>Bill McCrearyさん

 「市民に危険が及ぶ恐れがあった」のであれば、こう言うときこそ治安機関が動かねばならないはずですよね。それが肝心なときに役に立たないのかどうか…… それはさておき、日本の保守派、右派というのは、アメリカべったりだったり、政府与党との結びつきや、新自由主義への支持などの面で他国のそれと比べて少なからず際だったところがあるようですね、DVの場合もそうでしょうか。ロシアの場合は離婚と再婚が当たり前のせいか、DVがあったら離婚して次のパートナーを探せばいいと、そんな逃げ道はあるような気がしますが、日本ではその逃げ道を作りたくない、配偶者をイエに押し止めておきたいという思いがあるようにも見えます。
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人間離れした思考 (臨吉)
2008-01-27 16:10:25
>管理人殿
>あの手の団体の場合ですと、DVによる死者が出た後から、…

あの極右破落戸どもの思考タイプなら、彼等がそのときに云い出しそうなことは自民党議員の屡々なす「放言」から明らかです。

「仕方がなかった」、「殺される方にも落度があった」、「寧ろ元気があって良い」、、、

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Unknown (非国民通信管理人)
2008-01-27 23:05:43
>臨吉さん

 あ~、よくよく考えれば、そっちの方がずっと可能性が高そうですね。家長が振う暴力に対する反省なんて決して抱くことはないでしょうし。
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相互TBありがとうございます。 (みどり)
2008-02-01 21:18:54
非国民通信管理人さん
はじめまして。
冬の間は「社会経済ランキング」に移動して、いつも楽しみに上位の記事を読ませていただいています。
つくばみらいのDV防止講演中止事件の呼び掛け人のひとりなので、経過をお知らせしたくて、勝手にTVさせていただきました。
相互TVありがとうございます。


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Unknown (非国民通信管理人)
2008-02-01 23:50:56
>みどりさん

 こちらこそ、TBありがとうございました。つくばみらい市の一件に留まらず、似たような振る舞いが全国に飛び火もしているようで何とも忸怩たる思いです。

 ちなみに今回の抗議の呼びかけ人の中に、私の大学時代の恩師がいます(まぁ専門が違うので講義をいくつか履修した程度ですけれど)。私が大学生だった頃は、今のような活動はされていなかったような気がするのですが、ただ研究を重ねるだけではなく、社会的に抗議していかねばならない、そういう時代に変わったと言うことでしょうか。
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