非国民通信

ノーモア・コイズミ

体育会系はステータスだ

2009-11-15 11:28:26 | ニュース

新卒採用「体育会学生」欲しい 「精神力」「意欲」を評価(J-CAST)

 新卒の採用に明るい兆しが見えない。就職が決まっていない大学4年生は少なくない。こんなに厳しい中でも、体育会の部活動をしている学生は相変わらず有利なのだという。

  逆境に負けない「強い精神力」と、目標に向けてコツコツ努力する「高い目標達成意欲」を備え、厳しい状況下にも立ち向かえる、と企業は期待する。体育会は主将を頂点にしたピラミット型の組織で、大学時代にすでに企業を疑似体験している点も評価が高いようだ。

(中略)

「同じ大学でも体育会の学生とそうでない学生では印象が違ってくることもあり、ある意味で、体育会というのは資格に近いと思います。体育会の学生には強い精神力と高い目標達成意欲があります。組織に貢献することを考えて、縁の下の力持ちにも進んでなります。不景気で企業は厳しい状況にありますが、心身ともに強く、コツコツと続ける力が備わっている体育会学生は欲しい人材のようです」

(中略)

 また、体育会の学生は重要なポジションに就くことが多いそうだ。理由は「辞めないから」。離職率が非常に低いことに対しても企業の好感度が高い。ただ、体育会自体に入る学生の数は減っている。このため、全国の大学生のうち8%と少なく、半ば「希少価値」なのだ。

 前々から主張していることですが、日本は学歴社会ではなく「学校歴」社会であり、そして学校歴社会である以上に「体育会系」社会です。学歴で人を振り分けていると見えて実は「学校歴」で人を振り分けるのが日本型雇用であり、その学校歴よりも重視されがちなのが「体育会系」であるかどうかなのではないでしょうか。私も結構、採用面接では体育会系の部活動に参加していたことがあるかどうかを問われたものですが……

 さて、引用元では体育会系的なるものが肯定的に取り上げられています。まぁ、体育会系ならではの能力がある、そういう側面があることは否定しません。日本の体育会系出身者には特有の「打たれ強さ」みたいなものがあるのでしょう。上司(先輩)に理不尽なことを言われても笑顔で「ハイ」と言えること――結局、企業が求めているのはこうした「従順さ」なんですよね。

 もう2年前になりますが、新人研修と称して新入社員を自衛隊に体験入隊させる企業が増えているというニュースを取り上げました(参考、軍隊化する社会)。「ルール順守を最優先する自衛隊で、個を大切にする教育を受けてきた世代に、団体行動規範を学ばせたい企業が増えているのでは」とか、色々と理由付けがされてはいるのですが、要するに「上」の命令には絶対服従の兵隊を、企業が欲しがっているのでしょう。

 だけどそれってどうなのでしょうか、雇用側の「甘え」のような気もします。体育会系の部活動や軍隊で上下関係を叩き込まれた人なら、会社側としても扱いやすいに違いないでしょうけれど、そうやってイエスマンばっかり集めたところで、経営側が口にするような「強い」組織はできあがるのでしょうか。部下(後輩)は上司(先輩)に絶対服従、末端の兵士は上官の命令に疑問を持たない、雇用側が「楽をできる」のは確実ですが。

 小沢一郎に言わせれば、キリスト教の欧米社会が行き詰まっている云々とのことでしたが、体育会系の日本社会はどうなのでしょうか。何でもかんでも求職者側に責任が負わされがちな日本の労働環境ですが(例えば失業者は「選ばなければ仕事はいくらでもある」と詰られるものですが、人手不足を嘆く企業経営者に「(人を)選ばなければ求職者はいくらでもいる」なんて非難が投げかけられることはないわけです)、むしろ雇用側の怠惰が指摘されるべきではないかという気がします。会社側の無理難題にも(表向きは)不満を口にせず耐えてくれる、そんな都合の良い産業兵卒をそろえれば、さぞかし気分良く上司が働けることでしょう。しかしそういう環境に企業側が安住してしまった、経営側がぬるま湯になじんでしまった、その結果として日本ばかりが立ち後れる今に至るとしたら? 軍隊や体育会系の部活動と著しく似通った企業社会の在り方こそ、そろそろ否定されなければならないのではないかと。

 

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23 コメント

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雇用差別 (介護員)
2009-11-15 12:57:28
反対‥労働者モルモットちがうか‥ペット化反対!
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経営者の能力 (最下層公務員)
2009-11-15 17:46:06
ブルーカラーからホワイトカラーなんて言われてた頃、下の締め付けが中間管理職へと上にと移行していった流れもあることはあったと思います。
が、しかし、経営者のところまでは届かずに終わってしまって、むしろ上に行けば行く程優遇されていく。
仰る通り、この10年は更にぬるま湯そのものだったと思います。
唯一経営者にとって厳しかったのはホリエモンを初めとする裏社会のバックから担がれて出て来たルールを知らない勢力だったと思います。
ぬるま湯が長く続くと、会社そのものの利益より個人の利益に走りだす。
そんなトップの為の滅私奉公。上手く行く訳はありません。
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r離職率 (Bill McCreary)
2009-11-15 18:30:15
>また、体育会の学生は重要なポジションに就くことが多いそうだ。理由は「辞めないから」。離職率が非常に低いことに対しても企業の好感度が高い。

これは知りませんでした。しかし言われてみればそうだろうなと思います。体育会系の理不尽な仕打ちと比べれば会社での理不尽なんてかわいいものかも。

でも、それって根本的な錯誤ですよね。
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問題が問題とならない問題 (tmk)
2009-11-15 19:07:12
いつもひっそりと読ませてもらってます。

 >前々から主張していることですが、日本は学歴社会ではなく「学校歴」社会であり

 というよりも、すでに「大卒」は社会人として生きようとする者にとってあたりまえのことであり、自分のように経済的な理由であろうと、はたまた勉強嫌いだろうと、理由の如何を問わず大学に行けなかった者は、いまや日本では人間として扱われないので、まともな生活を営む権利などないという社会なのですよ(中卒ともなるとさらに・・・)。

で、人間ではない者のことなので、問題として取り上げられることもほとんどありません。
取り上げるべきマスコミの人なんて全員大卒ですから、高卒や中卒の人もこの世に存在するということ自体、意識の外なんですね。
「学歴社会ではなく学校歴社会」というのは、こういう土台(問題が問題とならない)の上に成り立っているということも、多くの人に理解してもらいたいですね。
ほんのすこしでも改善するには大学まで学費無料しかないと思うのですが、日本では永遠に無理でしょう。

エントリと関係なかったかもしれません。失礼しました。
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小沢氏と言えば・・・。 (ニュースコープ)
2009-11-15 20:08:10
 方々の新聞記事に出ているようですが、最近小沢氏が1年生議員に課している研修も、「窒息しそう」「我々は小沢親衛隊ではない」と不評のようです。
 2chのリベラル系スレでも、例の仕分けチームの一件以降、それまでの親小沢一辺倒から徐々に距離を置いたような空気になりつつあるスレがある一方で、「昔の民主党ときたら実にだらしがなかった。それを一からスパルタで鍛え直した小沢は実に素晴らしい。どんなに優れた政策を持っていても当選しなけりゃ意味がない!」とますます先鋭化しつつある所もあります。
 管理人さんには反論もあるでしょうが、結局、私があの人をどうしても評価できないのがこういうところなんですよねぇ。
 前にも書きましたが私は今回の記事のような日本の体育会系社会がとにかく嫌で、それを変えるために政権交代を望んできましたから、それを率先して打ち破るべきはずの政党が、こんなことをしていてどうするんだよ!という「こんなはずではなかった感」を禁じ得ません。
 それともこう考えること自体が「そんなので選挙に勝てるわけがない。軟弱者の甘えだ」と言われるのでしょうかねぇ・・・。
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新卒採用の傾向 (ヒイロ)
2009-11-15 20:32:20
「幹部候補生しか要らない」ということで採用人数に達しなくても採用を止める企業が多いとか。
それと体育会系の学生が持て囃されることとは無縁ではないのかもしれません。

そういうことであれば、「自壊の道」を企業が歩んでいることの裏返しだと思います。
身の回りの整理整頓だけで他の雑用は派遣任せになったり、「他人に頭を下げる」という回数が激減することも考えられるでしょう。
社会での苦楽をきちんと経験できないというのは、人間的に成長しないとさえ感じます。

非体育会人間はこの状況を静観していても、と思います。

私の場合は、大学での部活には憧憬を今でも感じています。一般入試の学生が殆どという部活はありましたので。「あれもダメ、これもダメ」という家庭環境を振り切れなくて断念したことが後悔の一つであります。
当時は就職が有利になることよりも、「何かをやりたい」ということが大きかったです。
そうしていたとしても、「あかんやろなあ」と思いますが。
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Unknown (凡人69号)
2009-11-15 22:38:32
>要するに「上」の命令には絶対服従の兵隊を、企業が欲しがっているのでしょう。

新入社員や管理職の企業研修なんかを見ていると、日本企業において求められているのは、「社会人」ではなく「会社人」なんだなぁと改めて思い知らされます。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-11-15 22:48:58
>介護員さん

 しかるに、その「ペット」のごとき従順さこそ、求められているような気がしますね。やれやれ。

>最下層公務員さん

 一昔前なら下の不満は中間管理職止まりで経営層までは届かない、しかるに今後は「正社員」辺りで止めてしまおうと、そういう思惑を持っている人が気もしますね。なおさら経営層は保護される、護送船団方式からより露骨な「階級」方式に後退しようとしているのかも?

>Bill McCrearyさん

 要するに理不尽なものを理不尽と感じない能力を評価しているようなものですから、これはもう錯誤としか言いようがないですよね。日本企業の「奇習」も、こうした体育会系精神によって維持され続けているのでしょう。

>tmkさん

 たしかに、今や大卒が「当たり前」になり、そこで「4年で卒業見込みか」「新卒か」など、企業側の考える「当たり前」を満たしているかどうかが問われますね。そこでイレギュラーな存在ははじかれてしまう…… 企業が取りざたされるにしても(労組が存在するくらいの)大きな企業の問題は俎上に上っても中小企業の問題はスルーされがちだったり、色々と見落とされているところは多いですね。

>ニュースコープさん

 こんなはずではなかった? 何を寝ぼけたことを。一元化と称して上意下達の体育会系組織を作り上げる、それは選挙前から鳩山だって普通に公言してきたことのはずです。それを今になって「こんなはずではなかった」とは、民主党に変な夢でも見ていたのか、それとも(官僚だけに責任を押しつけることで自民党を免罪しようとする鳩山のように)小沢にだけ責任を押しつけて民主党の評価を下げないようにしたいのでしょうか。民主党こそ小泉以降の自民党と並ぶ体育会系路線の体現者であることを受け入れるべきです。

>ヒイロさん

 一昨年までは人が足りないと嘆いて見せつつ採用を絞り込む企業が後を絶ちませんでしたよね。それが流行であり、今後も続く傾向なのでしょうけれど、そうした企業経営が成果を上げたかとなると???

>凡人69号さん

 自衛隊研修だったり、「穴掘り」「無人島でサバイバル」とか、とかく「仕事に関係ないこと」が多いのが日本の企業研修の特徴なんですよね。何よりもまず人格的な支配を目指す、会社人間(社畜、サムライ?)を作るのが日本式なのでしょう。
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Unknown (ポール)
2009-11-16 02:07:28
「無人島でサバイバル」と聞いて、かなり昔のテレビ番組で(確か「世界まる見え~」だったかな?)イギリスで行われたその手の新人研修がネタになっていたのをふと思い出しました。
結局、理不尽極まりない課題の数々に業を煮やした研修生の何人かが団結して隔離されていた無人島から脱出するというオチだったのですが、面白いのはその反旗を翻した彼らこそが最終的に合格と認定されたことです(笑)。
日本とはまるで正反対なその結末が印象的でした。番組のコメンテーターは誰一人としてそこには触れませんでしたが……。
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私事で恐縮ですが (ベースケ)
2009-11-16 10:43:40
人を"育てる"こともせず"選ぶ"だけの企業なんぞさっさと潰れてしまえ!と思っている私は普段から幹部にも嫌われていますw
選別する方式は「自己責任」論と根っこでつながっているわけで、それが普通だと思ってしまう"我々"の感覚こそが本来問題なのでしょうね。
ついでに言えば、文化的趣味をもつ人と、スポーツを趣味とする人の職場社会内での地位の違いといったらもう・・・(スポーツの中にも、野球とスノボなどまた序列があるんだけど)
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