非国民通信

ノーモア・コイズミ

社内行事は業務です

2008-06-25 23:09:10 | ニュース

「飲み会5時間、業務でない」=帰宅途中の転落死に労災認めず-東京高裁(時事通信)

 社内で開かれた飲み会に参加した後、帰宅途中に地下鉄の階段で転落死した男性会社員=当時(44)=の遺族が労災認定を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は25日、約5時間にわたる飲み会は業務といえないとして、労災を認めた一審東京地裁判決を取り消し、遺族側の請求を退けた。

 宮崎公男裁判長は、「飲み会が社員から意見を聞く『業務』と言えるのは開始から2時間前後まで」と指摘。その後も約3時間飲酒したために酔って転落した可能性が高く、事故は通常の通勤に伴うものとはいえないとした。 

 会社の人間関係次第ではありますが、むしろ飲み会が長期化しているからこそ業務として扱われるべき、そちらの方が実情に即しているような気がしますね。

 この手の社内行事をみると、会社の質が分かるような気もします。社内行事が盛んな会社は概ね、会社が個人に干渉したがるパワハラ体質の企業と見てよいのではないでしょうか。社内行事が頻繁で、かつ強制参加、途中退出が許されない会社も多いですよね? 万が一社内行事への参加を拒否しようものなら、単に個人が咎められるだけでは済まない、そんな会社だってあるくらいですし。

 何でも政党関係者にはしばしば党員獲得のノルマが課せられるようですが、それと同じ様なことが会社でも起こるわけです。中間管理職には社内行事出席者の獲得ノルマが課せられる、そういうケース(レアなケースであってくれるに越したことはありませんが)もあるでしょう? 要求される出席率を達成できない課ですと、課長が呼び出されて罵倒されたりするのです。で、その課長を怒鳴り散らす部長も実は常務から呼び出しを喰らっていたりする、そういうものです。社内行事の出席率が悪いと社長が激怒し、社長に怒られた常務が部長を叱責、部長が課長を事務所裏に呼び出して、オフィスにまで聞こえるような大声で喚き立てる、それで課長が「お前ら絶対に出席しろよ、業務命令だからな」と下っ端に厳命するわけです。

 そんなわけで、私に言わせれば飲み会に代表される社内行事は純然たる業務です。主な業務内容は「上司の接待」ですね。最大の目標は主催者である社長(この辺は会社の規模によりますが)を喜ばせることで、参加を強いられた下っ端社員は言わば場を盛り上げるために動員されたサクラの役割を果たしているのです。ですから当然、社内行事による拘束には残業代なり深夜勤務手当てを支給しなければいけません。

 社内で立場が強く、接待される側の立場だったり(次長というのは際どいポジションです)、自分が好きで酒を飲んでいる場合もあるでしょう。しかし、上司を接待するために飲み会から抜けるわけにはいかない、付き合いの関係上、意に反して飲まざるを得ない場合も多々あるはずです。そうしたリーマン事情を今回の判決がどの程度考慮しているのかどうか、私は異議を唱えたいところです。むしろ5時間も続けられたからこそ、会社側の意思による拘束であり、労災として認めるべき事例にも見えるのですが。

 

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5 コメント

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米兵なら... (L)
2008-06-25 23:31:53
 この裁判官、米兵なら、しれっとして”公務”認定するのでしょうね。
 植民地はつらいのであります。
困った判決 (Bill McCreary)
2008-06-25 23:40:44
こういった判決はほんと困っちゃいますよね。この手の飲み会や運動会の類が業務であるというのはほとんど常識だと思いますが、裁判官はこのようなものを一般人よりは断る自由があるから、認識が甘い・・・かどうかは知りませんが、この案件については、労災認定が妥当でしょう。

私の職場などは、さいきん運動会がほとんどなくなり、飲み会の出席もだいぶうるさくなくなりましたが、そして、特に企業の運動会はだいぶ減ったと思いますが、それにしても、このようなものは、かなり幅広く業務と認めてほしいですね。死亡とまで言わずとも、なにがしかの事故があった場合、「飲み会が社員から意見を聞く『業務』と言えるのは開始から2時間前後まで」とか言われたら、事故にあった人物は救われません。
うーむ (おさふね)
2008-06-26 00:41:40
確かに「強制的」要素はかなり高いと思われます。でも切り抜ける方法も確かに存在するわけで。健康的リスク高いですけどね。
私なんかだと胃と喉がやられちゃってるのか、いつでもどこでも「吐ける」体質なものですから、わざとトイレに駆け込んで「吐く」行為を敢えて周囲に見せる事で窮地を凌ぐ事も多々ありましたしね。
ただこの場合で一番問題なのは組織における「ソフトファシズム」が見事なまでに機能している点にあるかと思います。
日本という社会が「成熟した」社会でない以上、ソフトファシズムに抵抗するには並大抵の事ではありませんし、名目が「親睦を深める」為のものである以上、余計に抵抗するのが難しいわけです。
また、取引先とのカラミでどうしてもその店を使わなくてはならなかったりもする訳で、「息抜き」の皮を被った「営業活動」でもあるわけですから、一概に「労災ではない」と斬って捨てるのはどうかと
いまだにそんなことを。 (単純な者)
2008-06-26 06:25:26
こんにちは。

飲み会の連チャンでほろ酔いを通り越してぐでんぐでんになるまで飲んで、それで職場の仲間意識がはぐくまれてという筋書がいまだにそんなことをやってて通用するとは思えないのですが。その飲み会の資金がどうなっているのかもポイントかもですが、ともかくよっぽどな会社ですね。

二時間程度とするか五時間程度とするか、この判例が社会的に下敷きになれば会社も対応を迫られるようになりある意味良い方向に進むと考えられませんか。

ところで、夜もお仕事という関連では、天木直人さんのブログで、朝日テレビが「新たな汚染を報じた。独自の調査で、タクシー券が銀座のホステスにばら撒かれていたことを暴露したのだ」そうです。

ホントだったら厚生・国交省からの連続の不祥事発覚ですから内閣は倒れるし総選挙必至なんですがね。

では。
Unknown (非国民通信管理人)
2008-06-26 23:39:09
>Lさん

 米兵の行くところは全て米国の直轄地、米兵のやることは全て公務でありますからねぇ。

>Bill McCrearyさん

 体育会系企業のサラリーマンなら社内行事が会社からの実質的な強制と経験的に知っているでしょうけれど、法曹界はどうなんでしょうかね? それなりに上下関係とかもありそうですけれど、断る自由はいかほど? それはさておき今回の「2時間」という境界線、これもまた不可解であり、原告には納得いくものではなさそうです。

>おさふねさん

 南方熊楠も自在にゲロを吐く特技があったと聞きますが…… それはさておき、会社によっては上司が人質に取られていると言いますか、私が場を悪くするようなことをすると自分だけでなく主任まで呼び出しを喰らうなど、色々大変でした。でもそれが「親睦を深めるため」で正当化されてしまうのですな……

>単純な者さん

 どうなんでしょう、飲み会で労災の適用範囲は2時間までと決まったら? 2時間を超えて拘束すれば会社の責任が問われなくなるぞと、むしろ長期化が進む企業も出てくるような気がします。

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