大阪・難波の個室ビデオ店「試写室キャッツなんば店」で起きた火災は、同種の店がホテル代わりに利用されている実態を浮き彫りにした。現場となった店は、終夜過ごしても1500円程度という業界でも屈指の低価格が売り。犠牲になった15人のうち、介護ヘルパーの舞野学さん(49)は、この店に泊まることで家賃を切り詰めて資格取得に励んでいたという。3日午後には舞野さんの葬儀が営まれ、同僚らは「きちんとした家を借りていれば…」と、志半ばで人生を終わらざるを得なかった無念さを思いやった。
舞野さんが倒れていたのは店の最奥部にある32号室前の通路。ここがなぜ、舞野さんにとっての“最終地”になってしまったのか。
舞野さんは、かつて代表を務めていたアクセサリーの卸会社が倒産。多額の債務を背負いながら、新たな人生を歩むためにヘルパー2級の資格を取り、2年前、浪速区内の訪問介護会社に再就職が決まった。「ケアマネジャーになる」という目標もあった。
当時、舞野さんは市内の別の場所に住所地があったが、借金の取り立てに苦しめられた。舞野さんが家賃を切り詰めるために選んだのが、ネットカフェや個室店に寝泊まりする生活。その一つが職場に近いキャッツなんば店だった。
とりあえずミソをつけたいのだろうな、という意図だけは理解できるものの、それ以外は何を言わんとしているのか理解に苦しむコメントが何件かあった後ですと、ちゃんと意味の通じる日本語が書ける分だけでも産経新聞がまともに見えてしまう今日この頃です。ただ駄々をこねているだけで何も語っていないようなコメントでは反論も何もありませんからね。
それはさておき今回の個室ビデオ店の事件ですが、産経新聞が最も詳しいような気がします。関係者の私生活や内面に踏み込むような記述もちらほら、まぁ新聞が踏み込むべきでないところもあるとは思いますが、色々と考えるヒントにもなります。とりあえず見出しの「夢絶たれた」は違うんじゃね、とか。
ここで取り上げられている舞野氏の来歴を見るに、今回の事件で夢を断たれたのではなく、既に夢を断たれていた結果としてそこに辿り着いていたような気もします。生き延びていたとしてもそこから先に明るい未来が待っていたとはとても思えないのですが、まぁそこは人それぞれでしょうか。ただ諸々の事件で命を絶たれる人がいて、その都度犠牲者の「失われた明るい未来」が語られるわけですが、そこにいつも違和感を感じるのです。そりゃ、生きていれば成功できたはず、と思いたいのはわかるのですが、そう都合良くことが進むわけもない、なんとなく事件が美談化され、焦点が曖昧にされているような気もしませんか?
個室ビデオ店火災 「人のいい常連ばかり」 犠牲者らの事情さまざま(産経新聞)
心肺停止状態で救出され、意識不明になっている男性(47)は、朝7時から夕方まで定食屋、午後6時から11時過ぎまではキャバレーのホールスタッフとして働いていた。1日の労働時間は17時間前後。八尾市内に部屋を借りていたが、定食屋に近いキャッツなんば店を利用することが多かった。
病院に見舞いに来たキャバレーの上司は「うちで働き始めてから5年半。無断欠勤は一度もなかった。事件当日は店に来ないので、まさかと思って警察に問い合わせた。彼はこちらが心配するぐらい一生懸命働いていた。なぜそんなに働くのかと聞くと、『高齢の両親の面倒をみるためお金が必要だから』と答えていた」と振り返った。
しかし、実際には、男性は数年前に奈良県の実家を出たきり、音信不通だったという。
人生色々ですが、まともな勤務実態もないのに民間企業から給料をもらっていた青年時代を経て総理大臣の座に上り詰める人もいれば、毎日17時間働いては個室ビデオ店で寝泊まりする、どうみてもノーフューチャーな人もいます。少なからぬ事情もあったのでしょうけれど、真面目に働くだけじゃどうにもならないことってありますよね?
個室ビデオ店放火 「報知機すぐ止まった」 客ら証言 誤作動と勘違い切る?(産経新聞)
一方、現住建造物等放火と殺人などの疑いで逮捕された無職の小川和弘容疑者(46)が競馬やパチンコなどで多額の借金を抱え、数年前に離婚していたことが2日、分かった。
浪速署捜査本部は同日、小川容疑者を大阪地検に送検。事件の約2週間前、知人に土下座して「1万円貸してください」と金を無心していたとの証言もあり、家庭崩壊や借金などで自暴自棄になり、衝動的に犯行に及んだ可能性があるとみて詳しい動機を追及する。司法解剖の結果、15人の死因はいずれも一酸化炭素中毒と判明した。
調べや関係者によると、小川容疑者は約10年前まで大手電機メーカーに勤務し、妻と子供2人と暮らしていたが、離婚や体調悪化による退職などで生活が一変。退職金はギャンブルなどで使い果たし、借金を重ねていたらしい。
で、こちらが容疑者のケース。全二者と同様、夢も希望もなさそうです。だからこそ自棄を起こしたとしか言いようがない犯行に至るのでしょうけれど。明日を生きる動機があればともかく、守るものも何もないなら歯止めは利きません。労働分配率が引き下げられ、社会保障が切り捨てられ続けている昨今ですが、その反面、凶悪犯罪の減少と反比例させるかのように治安関係は予算増、人員増が行われてきたわけです。しかしいくら罰する側を強化したところで、それは失うものを持たない人にとっては何の脅しにもなりません。
………
しかしまぁ、ネットカフェ難民というと若者が多いイメージがありましたが、今回の事件は中高年の犠牲者が多いですね。偶々なんでしょうか、それとも全国で共通する傾向なのでしょうか。ホームレスや自殺者の統計を見れば、ノーフューチャーな中高年が多いことは頷けますが、ネットカフェと個室ビデオで年齢層が違ったりもするのでしょうか。中高年層を既得権益云々と呼んで、労使の問題を世代闘争にすり替えようとする輩も少なくない昨今ですが、どの世代にとっても生きづらい社会のようです。
それにしても、犯人ばかりでなく犠牲者もかなり社会的に追い詰められた人が多いようで、さまざまな意味で気の毒で仕方ありません。
余談ですがこんな記事あったよな、と思ってグーグル検索で「ネットカフェ難民」と入れたら、検索候補に「ネットカフェ難民に生活費」「ネットカフェ難民支援」「ネットカフェ難民 融資」といった語句がずらっと並びました。
ネットカフェ難民の実態を調べる前にその支援について興味を抱いている方が多いのだろうということは理解できました。
今時ノーカット動画やDVDが入手容易なのに何故ああいう業態がとも思ってましたが、もしかしてこういう層がそれなりの比率で利用してるんでしょうか。
追い詰められた人間は色んな方面を開拓するもんですね。
>何故ああいう業態がとも思ってましたが
それは自分も思いましたね。
ネットとクレカがあればもっと欲求満たせるのに(すいません)と感じていましたが、
ビデオ云々より寝床だったんですね。
労務者街に行けば簡易宿舎がちょっと前なら、新今宮とかに覚えている限りはたくさんあったはずなんですが、
今じゃ外国人の安旅旅行者がそういうところに泊まることが多くなって、
ガチの労務者は入り辛くなったとも聞いてはいましたが。
ネットに篭って逃避してるような人種なら上から目線で「自己責任」とか言いそうですがね。
そういえば産経抄という、
テロと重ね合わせたり「何故そういうところで泊まるのか」みたいなコラムがありましたが(失笑)
思想戦のテロと自暴自棄になった突発犯を同一視するギャグのような論調で。
まあ、「テロ」が起こりうる場所に「ノコノコ入っていった」から「自己責任」とでも言いたいんでしょうかね。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081003/crm0810030337001-n1.htm
少なくとも今回の事件、捕まって罰せられることを考慮に入れた上での決断ではないですよね、先のことを考えるようであれば、こういうことにはならないですから。
>ペトログラードさん
寝床を探すにしてもネットカフェとは縁遠そうな50代ですが、事態は深刻ですね。google検索の方は、ネットカフェ難民支援のための融資制度を厚生労働省が企画していたことも影響しているかも知れません。何と予算は1億円なのですが。
http://blog.goo.ne.jp/rebellion_2006/e/47ea7402610f1300a8e781626237a493
>Gl17さん
個室ビデオというと、AVでも見るための施設かと思いきや、宿泊施設として使われているようで、時代が変わったのかどうか…… あまりこういうビジネスが成り立って欲しくもないのですけれど。
>Elekt_raさん
相変わらず産経抄ともなりますと論点がずれていると言いますか、まぁテロと言いたい、テロという言葉を使いたいのだろうなぁ、と。あるいは、責任を何とか犯人一人に押しつけよう、社会の問題から切り離そうという意図が窺えますね。まぁこれぞ産経でしょうか。
亡くなった舞野さんについてですが、夢をかなえてもこうのようになってしまうこともあるのですね。かなえられなかったにしろ、途中で破れたにしてもその後の人生のやり直しができるように整備しなくてはならないのですが、まったく改められていないという事実が見られますね。
さらに、舞野さんの現在の職業「介護ヘルパー」ですが、これは社会的にものすごく大切で必要な仕事のはずですが、ネットカフェでしか寝泊りできないような給料しかもらえないとは・・・。話には聞いていましたが、重要性と報酬がつりあっていませんね。ヘルパーがどんどんやめていくという現状にもうなずけます。ネットカフェ難民だけでなく、この点も解決していかなくてはなりませんね。
何となく美談に仕立てられていますが、生きていたって良いことがあるとはとても思えないような境遇があるわけですよね。介護職にしても、志を持って職に就いた人は待遇の悪さに離職を余儀なくされ、そして今回の犠牲者の一人のように、夢破れて行き場を失った人が追い詰められた結果として介護職に、色々な意味でどん底です。
いつものこととは言え、事件によって明るみになる社会的問題をまともに取り上げることなく犠牲者を悲劇の主人公に持ち上げてスルーしてしまおうというこの手の報道にはうんざりです。
ところで、本筋からははずれますし管理人様の本意も理解しているつもりではありますが、GXさんへのご返信の中にちょっと気にかかる表現があり…些末なことと判断されましたら削除していただいて構いません。
>生きていたって良いことがあるとはとても思えないような境遇
…確かにそう思ってしまう瞬間というのは誰しもあるものでしょうけれど、トンデモな方に押し進めると「だから今死んだって構わないんじゃない」に行き着きかねない、危ういものがあるかト。ちょっと過敏でしょうか、お気に障られましたらご容赦を。
>だから今死んだって~
ごもっともです。実は書いているとき、そういうニュアンスになってしまわないか気にはなったのですが、他に適当な表現が思いつかなかったのです。主旨はもちろん悲劇の主人公を作って美談にしてしまうことへの反駁ですが、まぁ他人の未来をかってに否定してしまうのも褒められたものではなかったですね。