ネットカフェ難民に生活費、職業訓練条件に月15万円融資へ(読売新聞)
厚生労働省は23日、「ネットカフェ難民」の就労を支援するため、公共職業訓練の受講を条件に、訓練中の住居・生活費として月15万円を融資する制度を2009年度に創設する方針を固めた。
年収150万円以下の受講者は返済が免除されるため、実質的には給付となる。09年度予算の概算要求に関連予算1億円を盛り込む。
ネットカフェ難民は住居がなく、定職にも就けずにいることで、低収入で不安定な生活を余儀なくされ、これが、就労を一層難しくするという悪循環に陥りやすい。厚労省の昨年の調査では、全国に約5400人いると推計されている。
新制度では、雇用・能力開発機構の「技能者育成資金」を活用し、職業訓練受講者に月15万円を貸し付ける。訓練は座学と企業実習を組み合わせた「日本版デュアルシステム」と呼ばれるもので、期間は3〜6か月。収入が得にくい訓練期間中に住居・生活費を手当てすることで、受講を促し、訓練に専念してもらう狙いがあり、厚労省では「住居と就労機会の両方を確保できる」と期待している。訓練を修了し、かつ、年収が150万円以下であれば返済は全額免除される。対象は、ネットカフェなどで寝泊まりしながら日雇い派遣などで働く30歳代後半までの「住居喪失不安定就労者」を想定しており、厚労省では年間数百人が利用すると見込んでいる。
方向性自体は間違っていないと思いますがね、俄には信じがたいところでもあります。なんでも「関連予算1億円を盛り込む」だとか。
……え?
……1億円?
1ヶ月の支給額だけでも15万円、訓練期間が3〜6ヶ月、すると一人当りにかかるコストは45〜90万円です。そして、予算が1億円。これだと支給できる人数は150人くらいです。支援の対象となるべきネットカフェ難民は「厚労省の昨年の調査では、全国に約5400人いると推計されている」のですが、そのうち150人分の予算しか盛り込まれていません。40倍近い競争率なんですが?
まぁ、「再チャレンジ制度」で設けられた未経験者向けの中途採用枠など、競争率が165倍(去年)とか60倍(今年)とか、その辺に比べれば多少の見込はあるのでしょうが、それにしても狭き門です。この読売の伝える「1億円」という予算枠が誤報であって、本当は10億円であるとか、せめてその程度の予算が組まれていれば評価する余地はあります。しかるに僅か1億円の予算では焼け石に水、「対策に取り組んでいますよ」というアリバイ作りにしか見えません。
ただ、就労意思がない給付金目当ての受講者を防ぐため、厚労省はハローワークの面接などを活用する方針で、「不適当と判断すれば、希望しても訓練をあっせんしない」としている。
で、この1/40を絞る窓口としてはハローワークが活用されるそうです。生活保護の「水際作戦」と同じで、何かと理由を作って申請者を追い返すのでしょうか。申請者側を「不適当」と判断することで、予算や支援体制の不足から目を背けさせる、責任を転嫁するわけですね。
実際のところ、個人レベルで付け焼き刃の技能訓練を受けさせる、その程度の対策では限界があります。労働条件は労使の力関係によってこそ決まるのですから。勿論、労働者側に技能があれば多少は立場も強くなりますが、3ヶ月程度の付け焼き刃の訓練でそれが得られるのかどうか疑問ですし、誰かが個人的な技能によって有利な立場に立てば、代わりに他の誰かが追い落とされるだけです。特定の人だけではなく、労働者全体の立場を強くしなければいけません。
そのためには今回のような支援制度を、誰でも確実に受けられるものにしなければなならないでしょう。世の中には働いても働いても、せいぜいネットカフェで寝泊まりする程度の給与しか支払われない仕事があるわけですが、本来であればそんな仕事は誰からも敬遠されるはずです。ところが諸々の要因でワープア職でも受け容れざるを得ない人々が作られており、その結果としてワープア職に労働力が供給される、と。そこにもう一つの選択肢があれば、「そんな割に合わない仕事よりも、月15万で職業訓練の方がマシ」と誰でも言える環境であれば、それは防げます。まともな労働条件を提示できないと労働力を確保できない、そういう環境作りを進めることですね。本気で貧困対策に取り組む気があるなら、ですが。











ハローワークにパンフレットが置かれればそれで終わり?
1億円が全て支援対象者に渡ったと仮定してすら150人分ですが、実際はそこにかかる経費諸々もありますからね。それを全国レベルで展開するとなると、パンフレット代だけで本当に終わってしまいそうな……
>いるか缶さん
健康的で文化的な最低限度の生活を可能にするだけの収入を得る、その機会から阻害されているわけですから、元より生活保護の対象者として認められるべきなのでしょうね。それでも生活保護の対象から隔離するための方便として、ネットカフェ難民用の別の枠が作られたのかも知れません。
>うぺぽさん
数字に弱い人が多いですからね。1億「しか」出していないのに。1億「も」出したのに!と、真顔で憤る人が出てきそうです。
しかしそれ以上に貰って嬉しかったのは情報の面。「関連予算一億円」って、ひっくり返りますよ。話にならない。さらにこれを支給する独立行政法人は廃止が検討されているとなると、アイタタタ、やっぱり読売さんですね、というオチです。
村野瀬さん的な考え方に立つとすれば、これを言い出した以上、実効ある施策となるように、国民がしつこく声を上げることがなければ、選挙目当てのパフォーマンスのために、無駄なパンフ代に、税金を使わせるだけみたいですね。
さて、この読売のニュースと管理人様の分析から、対鳥にも記述しましたが、政府が誰を見て政治をしているかがよくわかる気がします。少なくともワーキングプアなどの社会的弱者の救済など本気で考えていないのでしょう。
このように考えると、この「関連予算1億円を盛り込む」のも太田農相が「消費者がやかましい」と発現する精神を感じずに入られません。
そう、この方針を固めたのも「国民がやかましい」からなのでしょう。
同じネタを扱ったエントリがありましたので、トラックバックさせていただきました。それはさておき予算は僅かに1億円、とうてい本気とは思えない金額です。これをパンフレット代で終わらせないためには国民が目を光らせておくしかないのでしょうけれど、しかるに社会保障に類するものはもっと削減せよと、そんな声が国民の間にも根強いところですし……
>アダモさん
ネットカフェ難民が話題になって、それを問題視する声が「やかましい」から、かたちだけでも対策を採っているフリをする、それが予算1億円なのでしょうね。ネットカフェ難民をどうにかするには全くもって不十分ですが、国民に向けたアリバイ作りとしてはこれで十分、そんな考え方なのかも知れません。
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/kaigo_news/20080827-OYT8T00449.htm
ハードルの高さを見ると、厚生労働省の本音は
「介護業界がうるさいから((c)太田誠一)やった」では。
ネットカフェ難民のための1億円に比べれば現実的な金額ですが、介護労働者の職場への定着率ってどんなものなのでしょうね。ましてや未経験、無資格となると輪をかけて待遇も悪そうですし。
原因はこれに尽きます。
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/kaigo_news/20080715-OYT8T00244.htm
場所によってはもっと高いところもあるようです。
結局、厚生労働省が制度を守ることに軸足を置き、
介護事業所への報酬を絞りこんでいるのも一因です。
足りない分はオーナーの『持ち出し』で補っても下げ止まりません。
最新の『世界』(9月号)のルポでは、
未経験者を派遣で、しかも経験者でも苦労する夜勤に就かせているケースが
載ってました。
フリーターを就かせるにしても、十分なサポートがないと、
事故が頻発するだけでしょう。
う〜む、なかなかの離職率でありますね。現場の職員を絞り上げないと利益の出そうにない業界ですから、良心的にやって破産するか、カツカツの状態で生きながらえるか、そういう選択になりそうで、雇う方だけじゃなくて雇われる側にももっと支援が必要そうですね。