非国民通信

ノーモア・コイズミ

一つだけいつもと違うところがあるね

2008-06-18 23:05:02 | ニュース

40代職員は自衛隊に体験入隊を 橋下知事が検討(産経新聞)

 大阪府の橋下徹知事は17日、同府和泉市の陸上自衛隊信太山駐屯地を視察。「自分を律することが公務員に必要」と感想を述べ、40歳代の職員を対象に自衛隊の体験入隊を検討することを明らかにした。

 橋下知事はこの日、戦闘訓練や銃剣道訓練、市街地戦闘訓練などを見学。記者会見で、「新人ではなく、40歳代くらいの職員を対象に自衛隊での研修を検討したい」とし、「府庁の事務職にどっぷり慣れ親しんだ職員に、あいさつ、姿勢から学んでほしい。僕も含めて」と述べた。実現できるかどうかは分からないとしながらも、同日午後に開かれる部長会議で提案したいという意向を示した。

 同駐屯地では企業などを対象に2泊3日の生活体験を実施。体験には食費のみで参加可能で、号令に従って気をつけや敬礼の動作をしたり、10キロ行進などを行う。今年4月以降、府内や和歌山県の4社から約80人の体験入隊を受け入れた。また、今月24日からは、和歌山県岩出市の職員7人も、生活体験を予定している。

 入隊しても橋下だけはヘンリー(ハリー)王子みたいな扱いなんでしょうけれど、それはさておき相変わらずお偉いさんは軍隊が好きです。いや、お偉いさんだけじゃありませんね、この手の意見に賛同する人は立場を問わず多いみたいですから。

 そもそも中東と中南米を自国の領土と勘違いしている時代錯誤の帝国は今なお他国に攻め込むこともありますが、21世紀における軍隊の役割は自国民から政府を守ることです。サダム・フセインの兵隊はクルド人と戦い、人民解放軍はチベット人と、ロシア軍はチェチェン人と戦ってきた、一部ではそれが続いているわけですが、要するに現代の軍隊の役割は、同じ国籍の相手と戦うことに大きく比重が移っているのです。もちろん戦わずして勝つのが最上の策、そこで軍隊にとって重要になってくるのは「戦力」ではなく「教育」です。

 改憲論者のお決まりの言い分の一つに「憲法9条を変えても徴兵などあり得ない、現代戦では徴兵された未熟練兵など戦力にならないから」なんてのがあります。実際のところ後段の前提は必ずしも正しくないようなのですが、仮にそれが正しくとも、この言い分が通用するのはあくまで「戦力として」徴兵を考えた場合に限ります。もっと別のものが要求されていたとしたらどうでしょうか?

 新人研修と称して新入社員を自衛隊に短期入隊させる企業は増加の一途ですし、かの宮崎県知事も「徴兵制があってしかるべきだ。若者は1年か2年くらい自衛隊などに入らなくてはいけない」と主張しました。どこでも我々は軍人であることを要求されるのであり、軍隊的な価値観を身につけることを奨励されるわけです。そうして軍隊的なるもの=上が定めたルールに疑問を抱かず、上の命令に異論を挟まず、半ば自動的に実行する、こうした精神を身につけた人間を育てること、これからの軍隊に期待されているのはそういうものです(本物の自衛隊は期待されているほどのものじゃないと思いますが)。

 で、物言う市民よりも忠実な兵卒を欲する橋下が自衛隊体験入隊を持ち出したところで、まぁ驚くことではないのかも知れません。この手の人にはよくあることです。迷惑な話ではありますが。ただし通常は若者叩きの一環として行われるそれが、つまり自衛隊に入れるべきとされるのは普通は若者なのですが、今回は40歳代と指定されているところに珍しさがあります。ここだけ新しい!

 40代と言えば与党支持が最も弱いラインでもあります。それより若い世代と高齢者層は自分を応援する人が多いのに、この世代には少なめであると、その辺が狙い撃ちの理由でしょうか? ちょうど中間管理職として、上と下の板挟みになる世代でもあります。これより上の世代となると若い世代と一緒に仕事をする機会も減ってくるだけに、ちょうどこの40代が若手の反感を買いやすい世代でもあるような気がします。で、この40代を叩いてみせることで若手の歓心を買おうと。

 しょっぱいメディアは若者叩きで「輪」を作っていると言いますか、「今どきの若者」への誤解と偏見を共有することで連帯感を醸成しています。そして橋下は公務員叩きですね、公務員への偏見や憎悪を煽ることで、その侮蔑心を共有する人々の強固な輪を作り、それで支持に繋げてきたわけです。ところがこれだけですと自らの職場たる庁内で足場を築けません、同じ手法で庁内の支持を取り付けるためには、庁内で「共通の敵」を新たに作り出す必要があります。その対象に選ばれたのが40代の中間管理職、この辺を「鍛え直す必要のあるダメな奴ら」として位置づけることで、より若い世代の共感を得ようとしているのかも知れません。

 結局のところ、「気に入らない奴を軍隊に入れろ」「軍隊で鍛えれば(命令する側にとって)有用な人間になるだろう」という発想はいつもと同じです。後者の期待に自衛隊が本当に応えられるのか、そこが甚だ疑問なのですが、それでも軍隊に期待する人は後を絶ちません。一方で前者はどうなんでしょう、軍隊に期待している、羨望の眼差しを注いでいる一方で、ある種の懲罰施設のような捉え方もしているわけです。軍隊がブタ箱みたいな扱いをされることに、この国の先軍主義者達がどんな思いを抱いているか興味深いところでもあります。

 

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19 コメント

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またかよ! (GX)
2008-06-18 23:47:13
 またこの手の話ですね・・・。もう聞き飽きたよといいたいところです。前回の話を引きずってしまいますが、もう橋下知事にかつての親近感は沸きませんね。確実によくいる頭の悪い指導者と化しています。

 知事は挨拶、姿勢を学べとおっしゃっていますが、それができない人はどれだけいるのでしょうね。そもそもそれらはお互いに気持ちよくできるようにとのひとつの手段であるはずなのに、最近ではこれをできない者を人として落第と見なすような風潮が見られます。私も無理に挨拶してますが、少々人と話すことが苦手なもので、恥ずかしいし、自分はだめなんじゃないかと肩身が狭い思いをしています。以前、実習に行った四年生はできるようになったという話を聞いただけに余計に。別にこんなものができなくったって、お互いに気持ちよく生活していく方法なんていくらでもあると思うんですがね。知事はそんな現状にすら、満足していないのでしょうか。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-06-18 23:57:39
>GXさん

 挨拶に妙な拘りのある人や会社は多いですねぇ。朝礼で挨拶の練習をしている、させられているところも多いのではないでしょうか。練習でどうこうというより、その人との人間関係次第のような気もしますが、ともあれ挨拶が一種の「篩い」として使われている気もします。まぁ知事としては、自分の望み通りに部下を支配したい、挨拶がその一歩なんでしょうかね。
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40代だと中間管理職ですから…… (第三十二軍参謀長)
2008-06-19 00:05:15
民間企業でも、お堅い業種だったら、重要書類には、管理職のサインorハンコが必要だったりする事を考えると、体験入隊してる間、大阪府庁の業務がストップなんて事になりそうな気がしてならないんですが……
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人間のクズ (Bill McCreary)
2008-06-19 00:24:20
橋下のこの記事にはおったまげました。いやあ、ここまで言いますか。馬鹿や人間のクズもここまでくれば大したものです。石原ですらここまで頭の悪いことは言いませんでした。大阪府庁の職員諸氏は、最大限の努力を持って、このような世迷言を撃破してほしいものです。それにしても、悪質な人間というものがどこまで悪質か、よく分ろうというものです。

>結局のところ、「気に入らない奴を軍隊に入れろ」「軍隊で鍛えれば(命令する側にとって)有用な人間になるだろう」という発想はいつもと同じです。後者の期待に自衛隊が本当に応えられるのか、そこが甚だ疑問なのですが、それでも軍隊に期待する人は後を絶ちません。

自衛隊の体験入隊程度で、そんなに効果(笑)があるとも思わんですけど、やはりある種の人間にとってはとても魅力的なものなのでしょうね。それにしても私たちは、少なくとも建て前としては、「軍隊のようなところで人間を鍛える、というような考えは間違っている」という哲学くらいは共有したいと思うんですけどねえ・・・・。
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この男は (おさふね)
2008-06-19 00:48:10
横山ノック知事より酷いですねえ。
同じ無能でもまだあっちは可愛げがありました。
いうなれば、動物牧場(横山ノック)と1984年(橋下)の違いでしょうか。
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暴君丸だし (うろこ)
2008-06-19 09:43:54
こんにちは、少し前に40代の男性が知事に対して批判的発言をしたので、それの報復かと思いました(僕ちゃんに批判するような愚かな行為をしないように教育しなくっちゃ!って感じかと)なる程、共通の敵づくりですか…橋↓の支持者は政治に疎いおばちゃん(女性)と若者だと聞いた事があります。
そうだとしたら、こんな幼稚な策にも、はまる人が多いと思うので、大阪の夜明けはますます遠のくばかりでしょうか?
ため息がまた一つ…って気分です。
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軍隊的組織の存在意義 (さら)
2008-06-19 10:57:32
役所内における共通の敵を生成するという考え方に賛同します。ただ役所内での明文的(年齢)線引きは、明日はわが身を意味するという事でもありますから、橋下知事の思惑通りに職員の意思形成が為されるかは疑問ですが。

まあ、仮に形成されたとしても、組織間階層の対立という基盤に基づく支持状況ですから、本来の軍隊的一体感が醸成されて橋下自身が将軍の体制に至るまでには空中分解に近い過程と相当の時間がかかることが予想され、そのころに橋下知事が大阪府にいるのか、その結果を全面的に引き受ける覚悟があるのが甚だ疑問に思っています。

その様な背景を別に研修そのものを考えると、組織の新人研修などに自衛隊を使用するというのは、社会人としての躾的な意味合いと組織に従順な思考を植えつけるという目的があると思うのですが、今回の研修はどういう意味があるのでしょうか。

これだけ一般職員の発言に敏感に世論が反応しバッシングする世論が形成されれば、面従腹背ではありませんが表立って意見を表明することは避けるでしょう。よく民間を良い例で引き合いに出されるわけですが、経済的に合理性があり、経営者に従順に従い続けた船場吉兆などは組織のあり方として絶賛されるべきなどでしょうがなぜかそのあたりはスルーされています。

軍隊的組織は自衛隊に限らず警察、消防など制服と階級を有する組織に様々に認められるわけですが、下命と服従を叩き込む教育については、行政上の目的を達成する為の一定の合理性があります。

それは、災害救助等緊急的で迅速な活動をすばやい意思決定で隊員に行き渡らせる必要があるからであり、そこに個人レベルで異論を挟んでいれば目的達成に支障をきたすだけでなく、隊員相互の安全確保などの危険な状況が発生することが予想される点にあります。

ただ、各組織の目的や活動内容が異なるので、部隊やユニットの構成規模に差異がある為、その規模やあり方に差がある事も事実といえます。

自衛隊組織は巨大組織ですから階級階層による区別が明確で、考える人と実施する人との距離感や実施する人に求められる命令に対する理解の期待度などは、より小さなユニットである警察や消防とは異なっていると考えられます。つまり、下命を受ける隊員が、反応的に執行する点は同じでも、隊員が下命の内容をどれくらい理解して実施するかで隊員の「犬」度合いが変わってくるわけです。

そこで改めて今回の中堅クラスに対する自衛隊の研修はどういう意味を持つのかですが、自衛隊におけるどの階層を考えているのかによって随分意味合いが変わってきます。本来ならば陸曹~幹部クラスの職員ですから、業務の意味を理解しより効率的な執行方法を施行する能力を求めるべきなのでしょうが、「府庁の事務職にどっぷり慣れ親しんだ職員に、あいさつ、姿勢から学んでほしい。僕も含めて」というコメントから窺えるのは、より「犬」的資質を求める教育であると思われます。(自らのポジションは将軍かも知れませんが)

緊急的で比較的単純な行政目的と執行手法を有する分野であるならば、この様な教育は理解しやすいでしょう。しかしメリットとデメリットが拮抗するケースや執行効果が間接的に現れるケースなど複雑なパターンが混在する現状では執行への効果自体に疑問を抱かざるを得ません。
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Unknown (siegmund)
2008-06-19 11:56:49
所謂ひとつの「体育会系信仰」なのかも知れませんね。これによって精神も鍛えられるという幻想。また上下関係を守ることによって礼儀正しくなるという幻想。
ま、「暴力団」の看板を堂々と街中に掲げることが法律で認められているという世界でも極めて珍しい日本らしいところでもあります。
橋下氏は「若手」弁護士として登場して来たわけですが、結局のところ旧態依然とした日本の思想に染められていた「古臭い」人物だったわけです。

今回の自衛隊への体験入隊をどう見るべきでしょう。
私が危惧するのは橋下氏の中で「表立って反対している府職員は組合員。彼らは左派・左翼だから自衛隊の存在に反対している」ことを知って言い出してるのではないか、ということです。つまりこの体験入隊を強行することによって彼らを自主退職に追い込めると考えているのではないか?と。
チンケな嫌がらせのレベルなのですが、「公務員が虐められている姿を喜ぶ府民」というのをよく理解している橋下氏のこと。これに成功すれば次は東京都と同じように「日の丸・君が代の強制」によって教職員攻撃へと向かうような気がしてなりません。
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体験入隊で敬礼をですか・・ (単純な者)
2008-06-19 12:08:49
こんにちは。

時代錯誤と笑ってばかりは居られませんね。規律を身につけろとか敬礼のとか、何を考えてるんでしょう、この府知事は。

先日からの岩手・宮城地震災害への自衛隊の出動なども軍事行動と国民が必要としている役に立ちようがずれているので投入した力が本当に発揮されているのかが今後問われるだろうに。

市民への猛々しい「おいこら!!お役人様だぞ!!」にしたいのかと。公務員としての姿勢を身につけさせたいならもう少しハイレベルの考えを持たないとだめなんじゃあないですか。

では。
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Unknown (kama)
2008-06-19 14:23:10
まぁ愚劣な方は何を考えても愚劣ですなぁ
今や犯罪とイジメと自殺の温床になりつつある自衛隊に入って何を学ぼうと思っているんでしょうか
軍隊的絶対服従が戦前戦後通じて日本をダメにしている諸悪の根源だとは思ってらっしゃらない方には何を言ってもムダなんでしょうけど
40代狙い撃ちってのはこないだの「気に入らないなら辞めろ」の相手が40代だったから私怨で言ってるんじゃないですかね
やりたい放題イシハラ閣下とか愛のムチ条例制定しようとしているヒガシコクバル氏と並んで現在ニッポンの病理の象徴の様な方ですな
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