非国民通信

ノーモア・コイズミ

麻生"さん”?

2008-08-17 22:04:43 | ニュース

「首相にふさわしい」トップは麻生さん25%…読売調査(読売新聞)

 読売新聞社が9、10日に行った全国世論調査(面接方式)で、首相に最もふさわしいと思う国会議員を1人だけあげてもらったところ、自民党の麻生幹事長が25%の支持を集めてトップとなり、現職の福田首相は3%で4位にとどまった。

(中略)

 2位は小泉元首相(13%)、3位は民主党の小沢代表(10%)で、舛添厚生労働相、民主党の菅代表代行も福田首相と同率の3%で4位だった。

(中略)

 一方、小沢氏は3月調査の5%(3位)から大きく数字を伸ばした。ただ、最近の政治課題への取り組みについて、福田首相と小沢氏のどちらを支持するかを聞いたところ、首相41%、小沢氏34%となった。小沢氏人気は、党首としての実績評価より、政治の変化に対する世論の期待感に頼ったものと言えそうだ。

 時事通信も数字だけ見れば似たような記事を掲載しているのですが、読売の方が色々と穴があるのでこっちを引用します。しかしまぁ相変わらずですねぇ、麻生と小泉がツートップですか、いったい何を期待しているのやら。

 それはさておき、まず見出しに読売らしさが現れています。時事通信の類似記事では「麻生氏」なのですが、読売の場合は「麻生さん」、この違いはどこから来るのでしょうか。そしてもう一つ、小沢氏の評価を巡る論評もダメですね。曰く「実績評価より、政治の変化に対する世論の期待感に頼ったもの」だとか。じゃぁ麻生氏はどうなのでしょうか? 世論の期待感以上のものが麻生氏にあるのか、「世論の期待感に頼ったもの」と批判するのであれば、より強く批判されるべきは麻生氏であり、ついでに言えば負の実績を期待感が今なお上回っている小泉でなければ筋が通りません。

中山氏の拉致担当相起用に78%評価 本社・FNN世論調査(産経新聞)

 17人の閣僚中13人を代えた改造で、拉致担当首相補佐官の中山恭子氏が拉致問題担当相で入閣したことを評価する意見が78・2%に達した。自民支持層の86・3%、民主支持層でも75・2%が入閣を評価しており、拉致問題の早期解決に向け、幅広い層に期待感があることを示した。

 これもまぁ、凄い支持率です。これだけ内閣全体の支持が低下、麻生氏にしたところで50%越えは難しいこの段階で8割に迫る支持を獲得しています。ここも「期待感」という言葉が使われていますが、いったい何を期待しているのか判然としません。とりあえずこの人も、とりわけ拉致問題に関しては実績0、何一つとして事態を進展させなかったわけですが、それでも期待感だけは失っていないようです。

 ただ、目的が拉致問題の解決であるならば中山氏及び自民党政府に期待など抱けるはずもない一方で、目的が圧力――経済制裁や相手をテロ指定国家と罵り続けることにあるのなら、話は違ってくるのでしょう。むしろ日本を飛び越えて周辺諸国が北朝鮮と交渉に入ること、日本側が少しは頭を使って搦め手で攻めること、こっちの方にこそ拉致問題の関係者は失望を露わにしてきたわけでもあります。憎き北朝鮮に圧力をかけることが目的なら期待を抱く余地はある、と。

 麻生氏や今なお人気の高い小泉の場合も同様で(ついでに言えば橋下も)、要は自分の嫌いな相手を一緒になって責め立てる、罵ってくれる人を世論は待ち望んでいるのです。とにかく誰かを叩きたい、咎め立てしたい、そんな欲望に応えてくれる期待が持てるのは、人一倍差別心の強い麻生氏であり他人を悪者に仕立て上げる名人である小泉であるわけですから。

 政治家としてやるべきことをやったか、そんなことは問われません。拉致問題を何一つとして進展させなかった中山氏や国民の生活を破壊した小泉が、その失政の責任を問われることなどないのです。なぜなら、国民が彼らに期待しているのは政治ではなく、国民の「敵」を一緒になって責め立てることですから。作り出した悪者を咎め立てしている限り、国民の期待は失われないのです。

 この世論を構成する大多数の国民にとって政治とは縁のないもの、別の世界の人間によって行われているものなのでしょう。その一方で国民の「敵」との戦いには深く共感する、悪者――抵抗勢力、既得権益、北朝鮮、公務員、外国人――を政治家が罵るとき、国民は政治家を自分達と思いを一にする同志と感じるようです。真面目な政治家は別世界の住人だが、ともにヘイトスピーチを繰り返す政治家は国民の目線に立った理解者であると、そう考えたときに自然と生まれ出るのが「麻生さん」という、この読売が見出しに掲げた、親しみを込めた呼びかけなのではないでしょうか。

 

 ←応援よろしくお願いします


コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 僕は歩兵でいい | トップ | 不徳の致すところ »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
タヌキ (Bill McCreary)
2008-08-18 05:29:06
以前違うブログでコメントさしていただきましたが、中山さんという女性は、かなりのタヌキですね。いざとなったら、日朝国交のために拉致被害者家族を完全に切り捨てるんじゃないですか。そういった冷酷さと性格の悪さ(必ずしもそれは悪ではありません)を持っていそうです。

ついでながら彼女の夫は、言語道断な歴史修正主義者(笑)です。
返信する
ブラボー! (地鶏と焼酎)
2008-08-18 05:50:02
はじめてコメントいたします。
いつも的確な論理展開と分析に膝を打っておりますが、「ヘイトスピーチを繰り返す政治家は国民の目線に立った理解者」と見る思考回路の指摘にはいつもにも増して感心いたしました。確かにそうですね。日常生活の至る所に見られる「伝統的な日本人の」陰湿な攻撃性の行き先が「古き良き時代」に比べると様々な理由から抑制されてきた結果、そのはけ口を探しているようにも見えます。
これからも鋭いコラムを期待しております。
返信する
Unknown (marrbor)
2008-08-18 08:41:55
はじめまして。
数ある筑豊の炭鉱の中でも格段に搾取が酷かったのが麻生炭鉱だったそうですがさておき、このまま「国民の目線」でことが進むと何だか本当に半世紀遅れで文化大革命を体験させられるのではないかと背筋が寒くなってしまいます。

ただ、こちらでも再三指摘されておられるように、文化大革命中の中国のような社会が大好きな方々ほど中国が大嫌いだったりするので、「君のやってることは半世紀前の中国人と同じだよ」と言ってあげれば慌ててやめる…だけの分別があれば始めから「特定アジア」だの「(反中国としての)@FreeTibet」だの言いませんね。どうしたものか…
返信する
Unknown (非国民通信管理人)
2008-08-18 23:25:50
>Bill McCrearyさん

 あの皇族みたいなしゃべり方とは裏腹に、拉致問題担当になる以前は結構な実績があるみたいですね。拉致問題が国内的には支持獲得の有効なカードであり続けているうちは家族会関係者の期待に応じるでしょうけれど、いずれ拉致問題が不要になる日が来るでしょうから……

>地鶏と焼酎さん

 コメントありがとうございます。社会の一員としての意識が薄く、政治との間に壁を作っている人にとって、政治家とどこで「通じ合えるか」となると、往々にして「嫌っているものが同じ」というところで結びついてしまうケースが多いと、そんな風に思うのです。

>marrborさん

 こちらこそ、はじめまして。人のフリ見て我がフリ直せとは言ったものですが、それが全く通用しない人が多いですね。中国の人権弾圧は声高に非難する一方で、日本国内では人権軽視で名高い政治家に喝采を送る、ダブルスタンダードを全く気にしない姿には、もはや清々しささえ感じてしまいそうです。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ニュース」カテゴリの最新記事