非国民通信

ノーモア・コイズミ

やっぱり鳩山は危険です

2009-07-30 23:03:56 | 編集雑記・小ネタ

 さて、昨日の続きです。今夜は民主党の公約を検証してみましょう。まず良い公約としては、最低賃金の引き上げや学費の(実質)無償化が挙げられますね。どこまで本気なのか俄には信じがたいところもありますが、この辺は是非とも実現してもらわねば困るものですらあります。

 次に「子ども手当」や農家への「戸別所得補償制度」辺りはどうでしょう。こちらは累進課税を財源とするわけでもないので富の再配分としてはちょっと微妙なところもありますし、何より「狙い」や実施後の「効果」についてずいぶんと不明確なところがあります。ただ漠然と「お金をつぎ込めば良くなるだろう」ぐらいの丼勘定ではないでしょうか。将来的な社会保障拡充への第一歩として見れば一概に無駄とはいえませんので、まぁ麻生内閣の定額給付金と同レベルの評価が妥当なところだと思います。

 逆に「危険な」公約もあります。まず第一に「比例代表定数の削減」ですね。比例区の議員定数を削減し、小選挙区で固めようというわけです。元より人口辺りの議員数が少ない日本で、さらに議員の数を減らそうという発想は現状に即したものではありませんし、小選挙区ではなく比例区を減らそうというのがまた問題です。言うまでもなく小選挙区制は大政党に有利な制度、少数政党にはチャンスのない制度です。結果として自民党か民主党かいずれかの党にだけ議席が集中することになります。左派政党の排除には最も有効な制度ですが、自民党以上に定数削減に熱心な民主党の意図はどこにあるのでしょうか?

 比例代表制の良いところは、議員の数と得票数が「ほぼ」比例するところです。一方で小選挙区制となると、最大多数を得た議員だけが当選し、次点以下の議員は落選、一人勝ちの世界です。小選挙区制の元では特定の党に議席が集中するため、与党の権力は強まります。だから、良くも悪くも政権は「安定する」わけです。得票数以上の議席を政権与党が持つことで、その基盤は堅固なものとなります。それだけ、好き放題できるようになる、歯止めが利きにくくなるということでもあります。比例代表制ならば少数政党にも得票数に応じた議席が回ってくる、与党からすれば「うるさい野党が増える」、これを民主党は嫌うようですが……

 そしてもう一つ危険なのが、鳩山兄の強調してやまない「官僚」への非難です。この辺は公務員や官僚を絶対悪と見なす昨今の風潮に添うものであり、有権者からのウケも悪くないところかもしれませんが、実は最も危険な兆候にも思われます。そもそも鳩山以前、つまり小沢の時代は「生活者重視」が看板だったはず、それがいつの間にか「政権交代」と「官僚主導からの脱却」に置き換えられています。鳩山の掲げる二枚看板を一概に否定するわけではありませんが、それによって「後ろに追いやられた」ものを思うと、あまりいい気はしません。

 鳩山の世界設定では、「官僚支配」こそが諸悪の根源です。鳩山は自民党ではダメだと語りますが、その理由は「自民党では官僚主導の政治から抜け出せないから」というものです。つまり、「官僚」こそが主犯であり、自民党は従犯に過ぎないということでしょうか。かつて抵抗勢力と呼ばれた穏健派の議員や官僚達の反対を押し切って進められた小泉改革、あるいは政界にがっちりと食い込んだ財界の無法によって今の惨状がもたらされたのではなく、あくまで「官僚が主導権を握っていること」が問題である、それが鳩山の世界観のようです。敵は何よりもまず「官僚」である――そう語ることで、他の問題が背景に追いやられている、おそらくは意図して背景に追いやろうとしているのでしょう。

 鳩山の語る「官僚支配」がどれだけ正しいのかも怪しいものです。たしかに、自民党議員の無能さ故に官僚に依存する部分はあるでしょうけれど、一方で強大な権限を持った議員の「思いつき」によって官僚が振り回されている印象も拭えません。しかし仮に、本当に官僚主導であるとした場合、その何が問題なのでしょうか? 単に官僚とは悪である、そういう世界観を持っている人ならいざ知らず、ちょっと立ち止まって考えてみる必要があると思います。

 その法案、政策を決定したのが誰なのか、そこは本当に重要なのでしょうか? この法案は官僚が立案したものだからダメである、この政策は民主党が決定したものだから賛成する、そういう判断をする人も少なからずいるでしょうけれど、自分たちの生活を考えるなら「誰が」という部分よりも先に問われるべきものがあるはずです。それを決めたのは「誰か」ではなく「何を」決めたかです。それが良い法案であれば、官僚の主導したことであっても良い法案には変わりないですし、それがダメな政策であれば、民主党の定めたことであってもお断りです。

 結果的に行政と官僚で意見の分かれることはあるでしょうけれど、それは結果であって目的ではありません。それなのに官僚に対する被害妄想を前面に押し立てて、官僚主導の政治からの脱却を看板に掲げる鳩山は、「何を」決めるかではなく「誰が」決めるかを優先しているのではないでしょうか。そこから感じ取れるのは「誰がボスなのか思い知らせてやろう」という強権意識だけです。

 政策の当否を論じる代わりに、それが有権者の支持を得ているかどうかを語るの政治家が昨今の流行です。小泉しかり、橋下しかり、そして鳩山しかりではないでしょうか。「有権者の支持を得ている」というのが彼らの印籠で、良識派の議員や職員/官僚が異議を唱えようものなら、その人々は「民意に背く」として逆賊扱いです。下手をすれば構造改革路線を修正しようとしている――自ら望んだのではなく、状況に追われて仕方なくそうしたに過ぎないにせよ――麻生内閣よりも、来るべき鳩山内閣の方がより小泉路線に近い、あの悪夢を再来させる可能性が高いかもしれません。もっとも、小泉ほどには狡猾でない鳩山のこと、途中でずっこける可能性もありますが。

 

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参考、やっぱり鳩山はダメだな


コメント (17)    この記事についてブログを書く
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17 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
何となく (いるか缶)
2009-07-30 23:40:01
> その法案、政策を決定したのが誰なのか、そこは本当に重要なのでしょうか?

押し付け改憲論思い出しました。

管理人様の鳩山民主党への危惧に同意します。私は「子ども手当」に関してはもう少し高く評価していますが、まあたいしたことではないでしょう。そもそもやってくれないor増税のダシにされる可能性も感じていますし。

ああ、投票が思い付かない…
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-07-30 23:50:37
>いるか缶さん

 あぁ、改憲論者はよく言いますね。「誰が」に焦点を合わせることで、中身の議論に立ち入らせない、そういう手口を好む人も少なくないようです。あまり民主党が力を持ちすぎないことを願いたいものですが、小選挙区では僅かな差が圧倒的大差に結びつきますから、どうなるでしょうかねぇ……
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政権交代真理教ウゼー (観潮楼)
2009-07-31 00:08:05
せっちー
「しかしまあ自治労に下支えしてもらってる党が官僚支配の打破ってマンガ…
なんか自民信者みたいな口ぶりになったなw
ただ、まだ小沢君の方が政策の方に深みがあったな。
鳩はムード先行で薄っぺら。『安物小泉』って言ってもいいな。
いくらご高説をぶっても信頼を感じない。
元々腹から声を出してないせいもあるがw代表だから余計目立つな。
それでも疑問持たずにマンセーする連中いるから頭痛いな」
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トラバした記事にも書きましたが (ベースケ)
2009-07-31 21:56:24
子ども手当は思想的に「お恵み」的な政策で(何しろ、配偶者/扶養控除の廃止とセットですから)、“恤救規則”に代表される明治憲法下での社会保障(とすら言えない)思想を引き継いでいるような気がします。
しかも、手当方式はその手続きに関わる事務費や人件費などを考慮すれば『無駄遣いを無くす!』というスローガンと真っ向から対立するものであることは、それこそ定額給付金の例を改めて出すまでもないでしょう。
どっかの学者も指摘していましたが、程度の違いこそあれ、聞こえの良いスローガンで専制的中央集権体制を確立しようとするという意味では小泉劇場ならぬ“鳩山劇場”になる可能性もあります。更に悪い方に考えれば、(程度の違いこそあれ)“ナチス前夜”的な臭いを感じざるを得ません。だからむしろ鳩山体制を無条件で肯定してしまわない議員勢力をいかに強くするかが問われるのではないでしょうか…って、結局のところ森ナントカあたりが一番期待してる政界再編に行き着かざるを得ない、ってのが苦々しい限り。
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公務員の身分保障が吹っ飛んでるし (こっぱなお役人(北のほう))
2009-07-31 23:36:35
政策というのは「誰が考えたか」より「何をするのか」のほうが絶対的に重要だと思います。
われらがぽっぽ(兄)先生の場合、候補者としてジャスコ岡田先生みたいな主張をすると2000年総選挙の悪夢(代表なのに当選一番最後)再びになること必至なんですけどねぇ…
まあ、今回は奥さんがどぶ板選挙実施中(+相手の駒が悪すぎる)なので秒殺でしょうが…

後、われらが阿久根市長ついにやってくれましたOTZ
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kagoshima/news/20090729-OYT8T01076.htm←市職組に訴えられた裁判ボイコットするわ
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090731-OYT1T00559.htm←失職中に張り紙はがした職員を「懲戒免職」にするわ
これで、免職(というよりは懲戒処分が)認められたら「身分保障って何」な世界に突入…胃が痛いです
返信する
Unknown (非国民通信管理人)
2009-07-31 23:59:46
>観潮楼さん

 「安物小泉」は言い得て妙ですね。そのうち、本文の方で使わせてもらうことになるかもしれません。そんな鳩山ではありますが一部の民主党支持層からは歓迎の声ばかり、こうやって甘やかされた鳩山はよりいっそう増長していき……

>ベースケさん

 必要不要を問わず、何か新しい制度を作り運用するためには、それだけの事務コストがかかりますかね。「無駄をなくす」と言いつつ新しい仕事を作るのは、行政の現場をいたずらに引っかき回すだけにも見えます。民主党内部の良識派が上手くブレーキをかけてくれればいいのですが、党内が割れれば政界再編で自民党と元自民党議員が手を組むことにもなりそうですし。

>こっぱなお役人さん

 阿久根市は日本の最先端ですね。明らかな市長側の違法行為、不当解雇ですが、市長には何のお咎めもなし、何でも市長のやりたい放題、民意があれば何でも許されるのでしょうか。こうなると市長と職員、市民の関係と言うより、王様と家来の関係にすら見えますが、これが民主主義体制の元で成立してしまうのですから驚きです。
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民主党は選択外 (ヒイロ)
2009-08-01 00:13:48
鳩山由紀夫が逮捕されるという話はもうなさそうですね。

定数削減なんて喜ぶ奴が多いことですが、「自分で自分の首を絞めて何が楽しいのか」という気持ちです。自分に都合の良い「世界」で生きていても意味がないです。
そういう人は、自分の本業に価値を見いだせないでいるから、都合良く振る舞える世界に浸かっているだけでしょうし。
違う意見を聞くことは正直しんどいです。それでも、聞かずにいたら、善し悪しは別としても、自分の考えを主張する資格は無くなって然るべきだと思っています。

改めて、「言論の自由」を大切にしていきたいです。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-08-01 14:27:32
>ヒイロさん

 鳩山にしたって疚しい部分は多々あるはずなんですが、「政権交代無罪」みたいなノリで押し切られそうなフシがありますね。名実ともに与党となったときに追求に耐えられるかどうかは微妙ですが。かくなる上は鳩山が選挙で落選することに期待したいぐらいですが、その可能性も限りなく0に近そうですし。
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Unknown (たんぽぽ)
2009-08-02 21:27:52
>さて、昨日の続きです。今夜は民主党の公約を検証してみましょう。

民主党の政権公約をていねいにご覧になったようなので、
すでにお気づきかと思いますが、民法改正、夫婦別姓は、
『政策INDEX2009』の「子ども・男女共同参画」の項目の下から2番目に、
「選択的夫婦別姓の早期実現」という見出しで入っています。
http://www.dpj.or.jp/policy/manifesto/seisaku2009/index.html#01

前に話題にされていた、民主党が民法改正を公約からはずすという、
朝日の記事は誤報と了解された、ということでよろしいのですね?
「野党時代の政策は撤回するとのことです」
http://blog.goo.ne.jp/rebellion_2006/e/cb87620de9c2d8f9b1250beba4d4f231
返信する
Unknown (非国民通信管理人)
2009-08-02 23:23:32
>たんぽぽさん

 朝日の記事ですが、誤報とは言いがかりも甚だしい、報道当時の民主党の方針を正しく伝えているだけでしょう。その後になって民主党が「ぶれた」だけのことです。橋下一派に論難されて地方分権に関する文面を修正したりと直前になっても右往左往していたように、直前での変更が繰り返された結果としてのマニフェストなのですから、報道当時と最終結果が食い違ってしまうのも当然です。それを「誤報」と呼ぶとは民主党贔屓にもほどがあるのではないでしょうか? 民主党が夫婦別姓容認を葬ろうとした事実を「なかったこと」にしようとするのは歴史修正主義者と同じ発想ですよ。
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