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おやおや、今日はもう1月10日だ。もう10日も経ったのかあ。
夜が明ける。外気温マイナス3・3℃。凍える。
鏡餅は包丁を使って切り餅にしたけれど、そろそろ水に漬けないと黴が生えてしまいそう。餅は大好物なので、つとめて食べているのだが。暮れにたくさんたくさん餅を搗いた。搗き過ぎたかもしれない。
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おやおや、今日はもう1月10日だ。もう10日も経ったのかあ。
夜が明ける。外気温マイナス3・3℃。凍える。
鏡餅は包丁を使って切り餅にしたけれど、そろそろ水に漬けないと黴が生えてしまいそう。餅は大好物なので、つとめて食べているのだが。暮れにたくさんたくさん餅を搗いた。搗き過ぎたかもしれない。
今夕方の始まる時刻、午後4時。雪は降り止まない。後から後から降って来る。外に一度だけ出て行った。靴の中に雪が入り込んで靴下が濡れてしまった。それから後はずっとだらしなく炬燵の守をしている。
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手帳開きまた確認す昨日今日相も変わらぬわれであること 岩田 正
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NHK短歌1月号に紹介されている秀歌の群れを追い掛けているが、羊一匹捕まらぬ。秀歌だから、わがこころよ幾たびも幾たびも反応してくれ。そう叫んでいるが、ことりとも音を立てない。反応しない。いろっぱいおんなの人の裸を見てもちっとも意欲を掻き起こさない性的不感症症状のよう。それが悲しい悲しい。もう読むのは止めようと思っていた矢先にこの作品に出遭う。まさしく今日の日の羊一匹に相当するべし。吊しておいて腹を断ち割ってみる。
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岩田正90歳の時の作品とか。「己は一生何をしてきたのか」という疑問の、刃を己に突きつけているのだろう。今日明日遠からずもう死ぬという身であるのに、手帳に書かれている文字群の、この愚鈍さだらしなさ。ていたらくぶり。ちっとも己は進歩をして来ていなかった。そういうことを再確認する。誰がどうしたこうした、己はこうしたああした、と、どうでもいいようなことばっかりが綴られているではないか、己のこの分厚い手帳には。
7時になった。障子戸の向こうはまだ暗い。明けていない。
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湯豆腐やいのちのはてのうすあかり 久保田万太郎
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薄明かりしている。もうまもなく夜が明ける。夜が明けると見えて来る。見えてくるものがあれば、動き出せる。
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湯豆腐を食べているのは夕食時だろう。あたたかい鍋にネギと春菊と昆布だしと湯豆腐が煮えている。箸でそれを掬い上げて口の中に放る。おいしい。
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作者は老齢になっている。それを「いのちのはて」と表現している。「果て」は「果てる」ところ。長い人生行路を生きて来たのだ。生きて此処へ来ている。今日のこの夕食時に辿り着いている。
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日頃、老病死をはかなんでいる。いよいよ老と病が深くなる。逃れられない。此処をどうするか。嘆いているばかりでいいのか。いいはずがない。
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解決策が作者にふっとちらついたのである。湯豆腐を一口、口に放り込んだときにふっと思いついたのである。発見があったのである。それを「うすあかり」としたのだろう。作者はそこでふっと救われた気分になったのである。
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裏を見せ表を見せて散る紅葉
良寛さまにこんな句があった。だったら、明るい表を見たらいいのだ。美しいと思ったらいいのだ。裏と表で一対をなしている。散っていく紅葉の葉。散るときにも美しい。死に行くときも美しくしていられるのである。
裏を見てもいいが表をもて居てもいいのである。そういう発見をすればこころは明るくなれるのである。
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作者久保田万太郎がそこでどんな解決策を得たのかは明らかにされていないから、良寛の句はわたしのただの重ね合わせに過ぎないのだが。
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もうすぐ6時になる。夜明けまであと1時間半。
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僕はYouTubeを聞いている。こんなに老齢になっても、音楽が癒やしてくれる。それを不思議なことに思っている。
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音楽に年齢なんかなかったことが嬉しい。
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もしかしたら、それは音楽だけに限ったことではないのかも知れない。
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耳が聞き入れさえすれば、わたしの魂を癒やしてくれる音楽。
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耳はあらゆるものを聞く。聞くことができる。
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耳の他にも鼻がある。口がある。目がある。舌がある。皮膚がある。手がある。足がある。
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そこが出口であって入口だ。
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いろいろなものが入って来る。そしてその分だけは出て行く。
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まだ未使用の機能がたくさんだ。
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Try to use all of them! だ。
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そしてよろこびたい。ちびりちびりでいいからよろこびたい。よろこびを広げたい。
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年齢には拘束されないものが、たくさんあるのだから。
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音楽を聴きながらそんなことを考えてみた。耳が聞くかぎりは聞きたい。美しい音楽を聴きたい。
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死者たちが行くところは、そこは死者たちで溢れている?
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これまでの地球の歴史の長さだけ、それだけ生死が繰り返されてきたのだから。
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うようよしているに違いない。その先に何処へも行けないのなら。
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でも、そこからまたその次へ通じているような気もする。
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生死の河は永遠へ流れて行っているような気がする。
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次へ次へ進化していくのだ。いのちが進化を遂げていくのだ。
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肉体に依拠しなくてすむようになっているのだ、そこは。
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去年今年(こぞことし)貫く棒のごときもの 高浜虚子
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時間は貫かれているのだ。直線状に。先へ先へ。未来へ未来へ。
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いのちにストップはなかったのだ、わたしはやがてそういうことを知ることになる。わたしは決して暗くない。どんどん明るくなっている。
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higher self。ハイアーセルフ。より高くなったいのちのわたし。いつもいつも昨日よりはより高くなっている。進化を遂げている。明るくやさしく賢くなっている。
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止まらない。そこにじっとしていない。いのちは活動をする。永遠の幸福に辿り着く使命を感じている。だからいつだって活動をしている。
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肉体の死なんかでもって終わりとはしていない。そこは最初のステップに過ぎなかったのだ。進化の階段は100の100乗段も続いているのだ。
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いただいたわたしのいのちは広大である。無限である。それを知る。わたしは感動を覚える。快哉を叫ぶ。嬉しくって嬉しくって走り回る。歌って踊り出す。
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たったそれくらいの反応ではすまなくなる。次を目指す。その次の次を目指す。進化の一段一段に満足と充実とを覚えながら。
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死者になったわたしが、これを見ているとしよう。わたしは、肉体を死んで魂のspirtだけになっている。でも見るだけなら見られる。としたら?
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彼は、そこに立ち止まって、生きている人間たちを観察する。ゆっくり観察できるようになっている。彼は、人間たちのこの賢明さを再確認して、それからそれを懐かしむ。あるいはもう一度発話をこころみるのかもしれない。
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テレビでBS番組を見ている。声を小さくして。家族の者はまだ寝ている。起こしてはいけない。医療番組が流れている。医者と患者さんが会話している。聞き取れないくらいの音量だから、憶測をする。
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人間が人間と話をしている。ことばが使われている。会話が成立して両者が頷き合っている。表情が豊かだ。人間とはひどく賢明な生き物のようだ。宇宙人がこれを見たら、きっとサプライズするだろう。
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もうすぐ5時になるところ。夜明けは7時20分頃。まだ2時間半もある。山里は静かだ。なんの物音もしない。柱時計の秒針の音がしている。
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このごろ、そういえば、スマホで写真を撮っていないな。南国九州の積雪の有様を撮影しておかなくちゃ。屋根の上にどんだけ高く降り積もったか。記録しおかなくちゃ。
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おお寒い。指がかじかんでしまう。しばらくお尻の下に両手を敷いておくと、あたたまれる。炬燵の中のお尻に触る。ふんわりしてあたたかい。
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お尻がほんわかして生きている。ということは、僕が生きているということだ。そういうことになる。もう一度触ってみる。
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今日は土曜日。新聞には読者文芸の作品が発表になる日だ。毎週毎週これを見るのを楽しみにしている。僕の作品が載ることもある。たまにある。そういう日には機嫌が良い。
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それにしても寒い。氷点下になったのは久しぶりだ。交通網が麻痺してしまうだろう。幸い今日明日は、土曜日曜で休日。家の中でゆっくり過ごすにはむしろ適しているのかも。
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買い物にも行けないだろう。我が家は畑に野菜がたっぷりと育っているので、お恵みがいただける。積もっている雪をどけたら食料とするものがそこにある。畑までは、杖をついて長靴を履いて行けばいい。
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小鳥たちは、こんなに一面の銀世界なら、食べ物が見つからないだろうなあ。ひもじがるだろうなあ。