田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

或る終焉(Chronic)

2016年07月10日 09時28分40秒 | 日記

 「父の秘密」で高い評価を得たメキシコの新鋭マイケル・フランコが「海の上のピアニスト」のティム・ロスを主演に迎え、終末期の患者をケアする看護師の葛藤をサスペンスフルに描いたヒューマンドラマ。死期が迫った患者の看護師として働くデビッド。息子の死をきっかけに元妻や娘と疎遠になった彼は、患者の在宅看護とエクササイズに励むだけの寂しい日々を送っており、患者たちとの親密な関係が心の拠りどころとなっていた。そんなある日、デビッドは末期がん患者のマーサから、安楽死を手伝ってほしいと頼まれる。共演にキーファー・サザーランドの娘サラ・サザーランド。第68回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した。(映画.comより)

 

 

 舞台はどこだったのかなぁ。言及してたかな。制作国はメキシコ・フランス。主演はイギリス人のティム・ロス。もちろん、全編English speaking.(基本は)。多分それはどこが舞台でも関係なかったのかも。終末期専門の看護士ティム・ロスの日常を描いたお話。死期が見えている患者にとって、日常の看護とは、家族とは。非常に奥の深いお話です。

日本とは、医療システムも人々の考え方も、根本的に違うのでしょうね。ティムはあまりに献身的で、あまりに真面目で、日本人の我々からすれば「そこまでやるのかな」って奇異に見えることも。基本的に住み込みで、あるいは専属で看護師を雇える人たちは、裕福であることが大前提なのですが、時には報酬にこだわらないことも。その熱心さゆえ、誤解されることも稀にはあるようです。

話は静かに、ゆっくりと進んでゆきますが、少しずつティム自身の過去や家族のこともわかってきます。彼自身もかなり辛い人生だったようで、今は家族とも離れて暮らしているようです。

思うに、これは「共依存」なのではないでしょうか。末期患者さんに尽くしているように見えて、実は自分も救われている・・・人は誰だってそうだと思うのですが、存在意義の確認みたいなものだとも思うのです。人って、難しいですね。誠実であろうとすればするほど、人として不誠実にもなってゆく・・・。言ってることわからないですよね(笑)、ともかく人はそれぞれなのです。

監督はメキシコの若手。彼が映画のウゥブサイトで、興味深いことを述べていたので、抜粋します。

 

 

 3年前、私の祖母が脳卒中を起こし二度と動けない半身不随の身体になった。 残りの人生すべてをベッドの上で過ごさなければならないと宣告され、日常的な動作に助けが必要となった。話すことさえ不可能となってしまった。

親戚達は彼女が孤独を感じないよう毎日そばにいたが、本当に祖母の世話をしていたのは看護師だった。全くの他人である彼女は、突然祖母の身体的にも精神的にも近しい部分にやって来て、入浴・食事・おしめや尿袋の交換といった日々の不快で、時には恥ずかしくなるような仕事をこなしていた。

祖母と看護師という二人の女性は、合図やジェスチャーや言葉によって家族の他の誰にも分からないような関係を築き上げていた。家族の何人かはそれに不満や無力さを感じるようになり、二人の間に生まれた親密な関係には嫉妬さえ生まれるようになった。時にはそれが、子供達や孫達のけんかや口論にまで発展することもあったほどだ。

ほどなくして、看護師は祖母を精神的にもサポートするようになり、私達とのコミュニケーションの橋渡し役となった。

彼女は、祖母が午前3時に激しい苦痛の中で亡くなる最後の瞬間に立ち会った人物であり、葬儀への祖母の身じまいをした人物でもあった。祖母の娘達の誰一人として、死後硬直した身体を動かす術を知らなかったのだから。

6ヶ月間祖母の世話をした後、彼女はすぐに新しい患者の世話を始めることも出来た。しかし私達の家族との仕事は終わっても、彼女はまるでその寂しさと愛情を示すかのように私達を訪ねて来た。彼女の瞳には大きな悲しみが見て取れ、私達と同じ様に喪に服しているのがわかった。 彼女の訪問は私の心を動かし、次第に彼女自身の人生に興味を持つ様になった。彼女は私に私の知らない祖母の遺品を見せてくれた。彼女が祖母に会ったのはほんの数ヶ月だというのに、彼女が私達と分かち合ってくれた祖母の濃密な部分はそれは深いもので、彼女は私達家族の特徴や葛藤や特異性を理解するに至っていたのだ。

彼女は私に、末期患者の世話をし始めて20年になると教えてくれた。死と喪失は彼女の人生の一部であり、その仕事は慢性的な鬱病(chronic depression)をももたらすこともあるという。

それでも彼女は、他の仕事に就くことはないという。これが彼女の人生であり、キャリアなのだと。そして彼女は、喪の気分を入れ替え再び他者の人生と繋がるために、また他の末期患者を探すのだという。

 

 

うぅん・・・思わず読み返してしまいました。話の主題とは関係なく、ラストはある衝撃が走ります。そこも含め、やっぱり深いお話でした。

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