「ザ・マスター」「ウォーク・ザ・ライン 君につづく道」などの実力派俳優ホアキン・フェニックスと「少年は残酷な弓を射る」のリン・ラムジー監督がタッグを組み、第70回カンヌ国際映画祭で男優賞と脚本賞をダブル受賞したクライムスリラー。トラウマを抱え、暴力を恐れない元軍人のジョー。年老いた母と暮らす彼は、行方不明の少女たちを捜し出す報酬で生計を立てていた。そんな彼のもとに、政治家の娘ニーナを捜してほしいとの依頼が舞い込む。しかし見つけ出したニーナは、怯える様子もなく人形のように感情を失っていた。やがてニーナはジョーの目の前で再びさらわれてしまい……。ラムジー監督の前作「少年は残酷な弓を射る」も担当した「レディオヘッド」のジョニー・グリーンウッドが、今作でも引き続き音楽を手がけた。(映画.comより)
見たいと思っていたのに見逃してしまった映画。よかった~田舎に降りてきてくれて。
これほどのハードボイルドな世界観、女性監督だったなんて!「少年は残酷な弓を射る」は、まだ女性監督かな、と思いました。しかし、これは・・・。ホアキンのトラウマに満ちた寡黙な演技とも相まって、なんともハードな作品でした。逆に、渋すぎて極力説明を排してあるため、話が理解しづらくもあります。見終えた後は「結局なんだったのか」と思い、ずいぶん考えました。
子供のころに、父親から壮絶な虐待を受けたホアキン。ひょっとすると義父だったのかもしれません。ともかく、その男は、まだ体が小さくて逆らえない子供に、一生のトラウマを背負わせたのです。そのため、屈強な男となり闇稼業に生きていても、悪夢から逃れることができません。その反動のように母親を大事にし(母親が特に父親からかばってくれたという描写はありません。子供のころの母親の描写が一切なく、これも少し妙な感じがしますね)、溺愛するホアキン。母はすでに認知が入っているようです。
そんな中、請け負った仕事をいつものように淡々とこなしたはずが、あり得ない展開につながり「なにが起きているのか、理解できない!」と叫ぶことになります。まったくその通りです。見ている私も混乱しました。で、元来は少女を救い出すだけだったはずが、あやしげな事件に首を突っ込むハメになるのです。救ったはずの少女の無表情さに、ただならぬものと、どこかしら自分と共通する感情を見出しながら。
それでなくてもわかりづらいお話、ネタバレせずに感想を書こうとすると本当に難しい。ただ、受け取り方はいろいろだと思います。私は虚無、つまりすべてなかったのではないか、夢か幻だったのではないか、とも思いました。しかし本当のところはわかりません。ただ、ホアキンの演技が素晴らしかったことは確かです。そうそう、少し前に見た「ファントム・スレッド」とどこか似た感じを受けるな、と思っていたら音楽が同じ人でした。