香港と中国・深センという隣接する2つの地域を行き来し、それぞれにアイデンティティを持つ少女を主人公に、香港と中国大陸の越境問題や経済、社会情勢、現地の青少年の裏事情など、さまざまな実情をリアルに重ねながら、青春のみずみずしさを描いた中国映画。香港人の父と中国人の母を持つ16歳の高校生ペイは、深センから香港へ越境通学している。母は家で友達と麻雀に興じてばかりで、父は香港で別の家族を持ち、国境付近でトラック運転手をしている。孤独なペイにとって一番楽しいのは、学校で親友ジョーと過ごす時間だった。2人は日本の北海道へ旅行に行くことを夢見て小遣い稼ぎしているが、ある日、船上パーティでハオという青年に出会う。クールなハオにジョーが好意を抱くなか、ペイはハオからスマートフォンを香港から深センへ持ち出す密輸の仕事を持ち掛けられる。ペイは旅費欲しさに、その裏仕事を引き受けてしまうが……。2019年・第14回大阪アジアン映画祭では「過ぎた春」のタイトルでコンペティション部門で上映され、監督のバイ・シュエが「来るべき才能賞」を受賞した。(映画.comより)
映画は少し前に作られただろうに、香港(と中国)が舞台なだけにタイムリーな公開となりましたね。主人公の少女ペイは、両親が離婚し母親と中国に住むも、母の出産が香港だった上、父親は香港に住んでいるため籍もあり、普段から越境するわけです。で、貧乏な彼女にはなぜか裕福な友人がいて、この友人もそれなりに問題は抱えているわけですが、ともかく彼女と行動を共にするためにはお金が必要なわけです。無理してバイトしてもなかなか追いつかない。そんな時、友人についていった船上パーティで、ある男の子たちと知り合います。若いのに一見裕福そうに見える彼らは、やはり道ならぬものに手を出しています。つい巻き込まれて、最新携帯の密輸に手を染めるペイ。(学生なので)普段から学生服ですいすい越境しているペイは、格好の運び屋。男の子たちも、彼女に倣って学生服で通ったり。最初は楽しく働いて大金を稼ぎます。
しかし、こんなことが長く続くことはありません。危ない目にも遭い、恋にも落ち、逆らってはいけない人を学ぶことにもなるのです。感情に流されてはいけないことも。
生活が苦しい両親の日常も、さりげなく描かれていてリアルでした。母親が、結局男に金を持って行かれるところは見ていて辛かったです。女一人だと、結局危ない橋を渡ったって(多分そう)、こういうことになる・・・。救いは、男が「子供は殴らない」と、最低限の常識を持っていてくれたこと。ちょうど帰ってきたペイが突っかかって来ても「君とは争えない」とさっと退場します。母親も「いいのよ、大した額ではないのだから。あなたはいいのよ」と娘をかばったところがせめてもの救い。ついでに言うと、父親もいい人な感じでした。
本当に、いろんなことがありますねぇ、人生って。ペイは機転の利く子。これからは前向きに人生が展開することを願います。何を持って「前向き」と言うかは難しいかもしれませんが。