巨匠リドリー・スコット監督が、ファッションブランド「GUCCI(グッチ)」の創業者一族の崩壊を描いたサスペンスドラマ。サラ・ゲイ・フォーデンのノンフィクション小説「ハウス・オブ・グッチ」を原作に、グッチ一族の確執と3代目社長マウリツィオ・グッチ暗殺事件を描き出す。1995年3月27日、GUCCI創業者グッチオ・グッチの孫にあたる3代目社長マウリツィオが、ミラノの街で銃弾に倒れた。犯人の特定が難航する中、犯行を指示した驚きの黒幕が明かされる。マウリツィオの妻で、グッチ家の崩壊を招くパトリツィア・レッジャーニを「アリー スター誕生」のレディー・ガガ、夫マウリツィオ・グッチを「マリッジ・ストーリー」のアダム・ドライバーが演じ、アル・パチーノ、ジェレミー・アイアンズ、ジャレッド・レトが共演。(映画.comより)
<2022年1月23日 劇場鑑賞>
おもしろかったです。幼い頃から貧乏育ちの私には、ブランド物そのものが縁遠いのですが、この映画は別にグッチのことをよく知らなくても「有名ブランドだから、一族もお金持ちよな」くらいの知識があれば充分。ブランド物を知らなくても、見分けられなくても、別に問題はありません。メインは夫婦の軌跡の物語だと思います。
主演はレディー・ガガ。彼女は、主演を張った「アリー スター誕生」以前でも、ちょい役で結構出てましたよね。その特異な容貌で、出て来ると必ず印象に残るわけですが、今回は本当にハマっていました。これは、ガガでなければ出せなかった存在感じゃないでしょうか。
冒頭、父親のトラック会社に出勤するガガが映ります。粗野な男たちがはやし立てるなか、体にピッタリ沿ったむっちりワンピースを着こなし、ハイヒールで歩くガガ。小さなトラック会社のシケた(?)事務所で働くのに、何もそんな恰好で来なくても、と思いました。しかも父親の会社だし(笑)。でも、たぶんこれは彼女の自己主張。自分の魅力をわかってアピール、「今になにかしでかすからね」ってことだったのかもしれません。
そしてその時は、やって来ました。友人と一緒に行ったパーティで、グッチ家の御曹司マウリツィオと出会うのです。彼は地味な青年で、普段は弁護士になるべく勉強しています。実はグッチ家を継ぐ意思もありません。でも、背も高く見栄えのするお坊ちゃまをガガは見逃さなかった。そして、積極的にアタック。二人は次第に恋に落ちます。マウリツィオの父ロドルフォは「お金目当てだ」と難色を示しますが、マウリツィオがグッチ家から出てゆくことで二人は結婚。当初はそれなりに幸せに暮らしていました。
しかし、実はグッチ家には跡取りがいません。ロドルフォの兄アルドにも息子(ジャレッド・レト!)はいますが、これがどうしようもないバカで、悪い人ではないのでしょうが、とても会社を任せられるような器ではありません。ロドルフォの一人息子マウリツィオしかいないのです。アルドは一族企業を任せたいと、積極的にマウリツィオに接触してきます。これに乗ったのがレディー・ガガ。どんどん夫を後押しします。
でもね、なかなかに難しい。企業をはじめ、今でもそうですが、社会全体がまだまだ男社会。ましてや教養もない階級の出。アグレッシブになればなるほど嫌がられ、煙たがられるだけです。確かに、彼女自身にも独善的なところはありました。富を手放したくないという欲も。そして、もちろん企業のほうもね。名門と言ったって、現実にはお金がモノをいう世界。常に裏で駆け引きが行われています。疲れますね。素人にはウンザリ、「大変だなぁ」と思います。
彼女は自分で主体的に何かを興すべきだったかもしれませんね。いつもアグレッシブだし、それだけの才能もあったんじゃないかと思います。しかし、いかんせんグッチの名声と富に溺れてしまった。途中からは占い師を信じ、最後は気持ちの離れた男(夫)に愛を乞うような女になってしまったのがとても残念でした。自分の足で立てたのに。
上映時間は宣伝も入れて実に2時間50分。長丁場でした。でも、そんなに長くは感じられないほど、魅せます。おもしろいです。水分を控えて、どうぞチャレンジを。