実写とストップモーションアニメを組み合わせ、小さな貝のマルセルが繰り広げる冒険を描いた作品。
アマチュア映画作家のディーンは、靴をはいた、体長およそ2.5センチのおしゃべりな貝のマルセルと出会う。ディーンは彼が語る人生に感銘を受け、マルセルを追ったドキュメンタリーをYouTubeにアップするのだが……。
新進の映像作家ディーン・フライシャー・キャンプが2010年から14年にかけてYouTubeで順次公開し、累計5000万回再生を記録した短編作品を長編映画化。「ミッドサマー」や「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」などの話題作を送り出してきた製作・配給会社A24によって北米配給され、小規模公開ながら評判と話題を集めた。アニメ界のアカデミー賞と言われる第50回アニー賞では長編インディペンデント作品賞・長編作品声優賞・長編作品脚本賞を受賞、第95回アカデミー賞でも長編アニメーション賞にノミネートされた。(映画.comより)
<2023年7月17日 劇場鑑賞>
こんなかわいくて珍しい映画が、都会に遅れることなく和歌山で上映されていたのです!よく知らなかったけれど、行くしかないと思いました。普通の人間と「ウォレスとグルミット」みたいなキャラ、マルセル(とおばあちゃん)が同じ画面で共演する、あり得ないファンタジーなのですが、とても現実的な感じに撮られてあって、「あるかもしれない」と思ってしまいました。
小さな貝のマルセルが、かわいいだけでなく賢いんです。脳みそなんかどこにあるのかと思うのですが、とても頭の切れる子。小さな体で、考え得る方法を駆使して、ありとあらゆることをやってのけています。たとえば、部屋の中を効率的に移動するためにボールに入って転がり、この辺だと思うところで出て来る、とか、あちこちに糸などを張り巡らせて、これでターザンのように高いところに飛ぶ、とか、とにかく私のような凡人には想像できないような発想で、豊かに暮らしていました。映画を撮る人の発想も大したものだと思いました。おばあちゃんは、小さな麦藁帽をきちんとかぶって農作業をしています。もちろん、人間用のプランターは大きいので、その一部を耕しているわけですが。
そもそも、なんでマルセルとおばあちゃんが一軒家で二人暮らしをしていたのかと言うと、元々たくさんの貝の仲間たちが、一緒に暮らしていました。彼らは小さいので見つからなかっただけです。だから、きっと他の地域でもいるのでしょうね。ところが、一緒に住んでいたカップルが別れてしまいました。喧嘩の物音が聞こえ始めると引き出しに避難していた彼らは、その引き出しに入ったまま、男の子が持ち出した荷物と共に出て行ってしまったのです。たまたま入ってなかったのはマルセルとおばあちゃんだけ。そうこうしているうちに、女性の方も出て行ってしまい、家は無人に。今回、映像を撮った青年ディーンが越して来るまで、二人で暮らしていたというわけです。
でも、皆に会いたい。最初はマルセルに驚いたディーンも、マルセルの切実な願いをかなえてあげたいと思うようになり、やがてyou tubeを経てテレビ出演へ。番組がカップルだった二人のうち、女性の所在を見つけ・・・という展開になってゆきます。もちろん、こんなかわいい映画ですから、ハッピーエンドです。ディーンが、マルセル人気から独立して巣立ってゆくのもリアルな感じ。「え~ずっと一緒にいるのかと思ってた!」とちょっと驚きましたけどね。
エンターテイナーなマルセルは、歌もお上手。ディーンのあまりな音痴ぶりに「一音も合ってない。家へ帰って出直して来い」と言ったところは爆笑しました。ディーンも爆笑してましたけどね。細かいところでは、おばあちゃん役がイザベラ・ロッセリーニでした。ここに彼女を持ってくる?発想豊かだなぁ。とにかく、楽しめました。