失業中の元宣伝マン、ロベルト(ホセ・モタ)はなかなか就職先が決まらず失意の日々を送っていた。かつて彼がコカコーラのキャッチコピーを生み出したことなど、もう誰も評価していないのだ。そんなある日、古代遺跡の発掘現場に立ち寄ったロベルトは、ひょんなことから工事現場の鉄柱が頭に刺さり動けなくなってしまう。テレビ局や広告代理店、市長らがエゴ剥き出しの狂騒を繰り広げるなか、一夜にして有名人となっていくロベルト。やがて現場に駆け付けた妻(サルマ・ハエック)に、ロベルトは自身の命を懸けた一発逆転の大勝負に出ると訴える……。(moviewalkerより)
随分前に見た録り置き映画。劇場では同じアレックス・デ・ラ・イグレシア監督の映画を順に公開したようです。「スガラムルディの魔女」と「刺さった男」です。なにやら発掘とかで、公開されなかった(あるいはされそうにない?)映画を夜に一回上映とか、そんな感じで公開されたんだと思います(大阪ではね)。チラシももらってたし、wowowで発見したときは思わず録画。94分と、長さも手頃。
主人公のロベルトは、ごく若い頃(10代?)コカコーラかなにかのキャッチコピーで大当たりし、才能あると言われた元宣伝マン。しかし、それ以降はヒットもなく、中年となった今では失業しています。いまだ過去の栄光にしがみつくロベルトもロベルトですが、かつて彼を褒めそやした連中もいまはそっぽを向き、就職活動をするも、みなにべない返事ばかり。ロベルトはいよいよ行き詰まるばかりです。家に帰ればサルマ・ハエック演じる妻が、気丈に励ましてはくれるのですが、実際に仕事もないのに、無責任な励ましは気が滅入るばかり。どうしていいかわからないロベルトは、ふと新婚旅行で訪れたホテルを見に行くことにします。しかし、そこにかつてのホテルはなく、市長の肝いりで博物館が建てられている模様。しかも遺跡が出たとかで、建設は遅々として進まず、業績をアセる市長は未完成のまま「見せれる部分」だけを公開してメディアにお披露目しているところでした。
とまどっているうち、賑わっている博物館に入り込んでしまったロベルト。報道陣にとまどい、人気(ひとけ)のなさそうなところに迷い込むと、そこは未完成の工事現場。立ち入り禁止区域に入ってしまい、警備員に呼びかけられた拍子に落下。あろうことか、突き出た鉄筋に後頭部が刺さってしまい、動けなくなってしまいます。一命は取り留め、意識ははっきりしているものの、どうしようもありません。さぁ、たいへん。医者が呼ばれるも、下手に抜いてしまうと出血多量で死亡するため動かせないし、ここで手術するにも・・・と、八方塞がりなようす。
さぁここから、いろんな人々の思惑が交差します。人命よりも「責任はどうなる」と、政治生命の方が心配な市長。遺跡を守りたい一心の館長。責任が取れないからと、右往左往するだけの医者たち。独占的にインタビューして視聴率を稼ごうとするメディア関係者。それに乗じて金を稼ごうと考えるロベルト本人。先ほどむげに就職を断ったかつての知人は、就職できなかったことで自殺したなどと言われて企業イメージに傷がつくことを恐れ、急に「君を重用する」と言い出す始末。挙げ句には「死んだ方が独占インタビューに価値が出る」と言い出すメディア幹部まで現れ、サルマ演じる妻にこっそり大金を示すヤツも。
やがて呼ばれたロベルトの子供たち。長男はごつい靴をはいたゴス系ロック野郎で、顔は美形なんでしょうが、なかなかパンチのある出で立ちで現れます。娘はおとなしくて、やや病んでそうな感じです。この娘を留学させたいという意向もあり、ロベルト本人はカネに執着しています。
そんなこんなで、いろんな人々と思惑が入り乱れ、どうなることか、オチはいったいどうつけるのかと、結構ハラハラします。そんななか、最初から最後まで毅然とした態度をとり続けるのが、サルマ演じる妻です。どこまでも夫の身を案じ、大金を払いのけ、子供たちと一緒に最後まで夫に寄り添います。えらいなぁ。
もう2年も失業しているロベルトが、お金に執着する気持ちはとっても理解できるし、メディアたちもいやらしいように描かれているけど、実際そんなものだろうし、それも彼らの仕事のうちなんだろうと思う。ソデにしておいて「重役として雇う」と急に言う旧友はどうかと思うし、人が死ぬかもしれないのに政治生命しか頭にない市長も「どうよ」と思うけど、現実はそんなものなんだろうなぁ。世知辛い。でも、私も大金がかかっていればよろめくかも(笑)。
<ここからネタバレ>
結論から言えば、ロベルトは助かりません。急場の手術室をこさえてもらって、現場で執刀してもらうのですが、やはり傷が大きすぎました。無理ないですよね。鉄筋の柱なんですから。
そして、大金の入ったジュラルミンケースを蹴り倒して、子供たちと一緒に現場を去るサルマは超クール!思わず「サルマ・ハエック、ええ役やってるやん!」と言ってしまいました。でもやっぱり、もったいないなぁ。一生楽できるのになぁ・・・(笑)。
気のせいかもしれませんが、サルマ・ハエックはスペイン語の映画の方が輝いているように見えました。