往年の名作『ハチ公物語』(87)や、リチャード・ギア主演のリメーク映画『HACHI 約束の犬』(09)で、今や世界中で忠犬の代名詞となった秋田犬のハチ。本作『ハチとパルマの物語』では、ハチをほうふつとさせるロシアの忠犬パルマのエピソードが描かれますが、これまたハンカチなしでは観られない感動のドラマに仕上がっています。
空港の滑走路で2年間待ち続けた忠犬
このパルマは、モスクワで最古とされるヴヌーコヴォ国際空港の滑走路で、2年間飼い主を待ち続けた忠犬です。実は4度目の映像化作品となりますが、過去3作はいずれもドキュメンタリーで、実話をベースにした初のフィクション映画となりました。
主人公は最愛の母を亡くし、一度も会ったことがないパイロットの父親に引き取られることになった少年コーリャ。自分を見捨てた父親に全く心を開かないコーリャは、空港から故郷に戻ろうとします。
一方、ジャーマンシェパードのアルマは、飼い主とプラハに行く予定が、搭乗に必要な許可証の不備により乗機の許可が下りず、飼い主によってこっそり滑走路に放たれます。アルマはその後「パルマ」と呼ばれて空港に住み着き、ひたすら飼い主の帰りを待ち続けることに。
孤独を抱えるコーリャは、ひょんなことからパルマと出会い、お互いに心を通わせていきます。自身の思いも投影し「飼い主のもとへ戻してあげたい」と思ったコーリャは、ある行動を起こします。(livedoor newsより)
<2021年5月30日劇場鑑賞>
こ~んな映画が田舎で上映されていたのです。私、犬派です。ハチもハラスも、ベンジーもハンボーン(古すぎ)も、ついでにマリリンも、み~んな大好き。今回はパルマ、あるいはアルマ。ロシアではそんな名前なのですね。
冒頭から日本の秋田県での「秋田犬の里 グランドオープン」記念式典が映ります。そこには秋田犬つながりでザギトワ選手からのメッセージ画像も流され、本当の大館市長や壇蜜が登場するなど日本語が飛び交い、情報を入れずに鑑賞した私はかなり面食らったのでした。秋田犬を贈られて喜ぶザギトワ選手の映像は、当時ニュースなどでよく見かけましたね。女の子なのに男子みたいなネーミングだったワンちゃんは、元気にしているのでしょうか。
さて、物語の舞台はロシア、モスクワの空港。昇進したばかりで、なんとしても大事な仕事をこなさなければならなかった男性はしかし、愛犬アルマの証明書を紛失していることに気付きます。動物はこれがないと搭乗できません。時間の限り、あらゆる手段に挑みましたが、ダメでした。「ごめんよ。行け」と、ボールを遠くに投げて紐をはずす男性。泣く泣く愛犬を置き去りにします。
驚いたのはアルマ。そんなはずはない。主人を追って、走る、走る。滑走路を犬が走っていると、離陸もままなりません。警備員も総出です。でも、結局は離陸、アルマは置き去りにされるのです。
片や母親を亡くし、ろくに会ったこともない父親と暮らすことになった傷心のコーリャ少年。パイロットの父親から逃げ続けているうちに、アルマに出会います。少年にパルマと名付けられたアルマは、どうやって聞き分けるのか、主人が乗っていった飛行機と同じ型の飛行機が着陸するたび、滑走路に駆け付けるのです。捕まったり、逃げたり、追いかけられたりを繰り返しながら、それでもやっぱり駆け付けるパルマ。でも、主人は一向に迎えに来てくれません。
そのうちニュースになり、パルマ目当ての観光客もやって来るようになっても、やっぱり主人は来てくれません。そんな”一人と一匹”は、ある日秋田犬を連れた日本人と出会い、日本にも”ハチ”という忠犬がいたことを知るのです。
犬は忠実な動物だから、どこの国にも美談はあるのでしょうね。今回はハチを登場させなくても話は成立したか、と思いましたが(大館市のみなさん、ごめんなさい)、ロシアのお話だから、ザギトワ選手と秋田犬をどうしても登場させたかったのでしょうね。迎えに来なかった主人の心情も理解できるし、見やすい映画にはなってます。DVDでいいかもしれませんが。