第74回ヴェネチア国際映画祭で脚本賞、続く2017年度トロント国際映画祭で最高賞の観客賞を受賞、さらに主演のフランシス・マクドーマンドに2度目のアカデミー賞主演女優賞をもたらし、その年、映画ファンを最も興奮、震撼させた傑作『スリー・ビルボード』から5年。いまなお演劇界・映画界の最前線に立つ鬼才マーティン・マクドナーの全世界待望の最新作。 本作の舞台は本土が内戦に揺れる1923年、アイルランドの孤島、イニシェリン島。島民全員が顔見知りのこの平和な小さい島で、気のいい男パードリックは長年友情を育んできたはずだった友人コルムに突然の絶縁を告げられる。急な出来事に動揺を隠せないパードリックだったが、理由はわからない。賢明な妹シボーンや風変わりな隣人ドミニクの力も借りて事態を好転させようとするが、ついにコルムから「これ以上自分に関わると自分の指を切り落とす」と恐ろしい宣言をされる。美しい海と空に囲まれた穏やかなこの島に、死を知らせると言い伝えられる“精霊”が降り立つ。その先には誰もが想像しえなかった衝撃的な結末が待っていた…。(SEARCHLIGHT PICTURES 公式ウェブサイトより)
<2022年1月29日 劇場鑑賞>
コリン・ファレルはわりと好きな俳優さんで、やんちゃだった若い頃から「デアデビル」「フォーン・ブース」など、見てました。「マイアミ・バイス」なんか、好きですねぇ。確かコン・リーが出ていたかと。コン・リーもとても好きな女優さんですが、「マイアミ・バイス」や「ハンニバル・ライジング」に出ていた、そんなに若くない頃の彼女が一番きれいで好きでした。コリンもギャスパー・ウリエルも、彼女に夢中になってましたものね!
さて、最近落ち着いた役が多いコリンですが、この映画では久しぶりに”悪い奴ではないが、軽薄で頭が悪い男”を好演していましたね。長年の友人コルム(ブレンダン・グリーソン)が突然「関わるな」と言い出し、その理由を「退屈な男だから」と言ってましたが、見ていて「その通りなんだろうな」と思いました。もちろん、突然そんなことを言い出し、一切の接触を避けようとするコルムも唐突過ぎると思うし、長年のつきあいがあるんだから、パードリック(コリン・ファレル)がそういうことを理解できないかもしれないことは予想するべきで、「今度話しかけたら指を切断する」って、極端すぎます。好きな音楽を極めたいとか言って、モーツァルトを例に出してたようだったけど、そんなに急に音楽で業績を残せるわけでもないだろうし。好きなだけやるのは構わないにしても。まぁ好きなだけやるのに、パードリックが邪魔だったということなんだろうけれど。個人的には、ここでの「人にやさしくしてもそこでしか記憶されないけれど、モーツァルトは100年後も記憶されてる」と言ったコルムに、パードリックが「俺、そんな奴知らないけど」とシレッと答えた場面が最高にウケました。
ともかく、自我を折らない男たちの争いはどんどん泥沼に。コトが展開してゆく途中で、小さな村の病巣も少しづつ明らかになってきます。唯一の警察官が、パードリックの独身の妹に「行き遅れが!」と怒鳴りつけたり、すぐに暴力を振るったりするとんでもない奴で。しかも息子(バリー・コーガン)に対する虐待があったり。ともかく、閉鎖的な離れ島って、怖いと思いました。まぁ離れ島でなくても、そんなことあるのかもしれませんが。
しかし、考えようによっては、争う相手がいるということは、それが存在価値の認識にもなり得るわけです。「あんなに犬猿の仲だったのに、片方がなくなってからしょんぼりしているね」なんてこと、あるように思います。ひょっとしたら、そういうことなのかもしれません。よくわからないですけどね。私は、絶対こんな風に争わないし、「おまえが嫌いだ」と言われたら「そうですか」と言って関わらないで生きてゆくと思うので。