「ムーンライト」でアカデミー助演女優賞にノミネートされ、「007」シリーズでも活躍するナオミ・ハリスの主演で、警察の汚職や麻薬密売が横行する現実に立ち向かう女性警官の姿を描いたポリスアクション。ルイジアナ州ニューオーリンズにある故郷の街で、警察官として第2の人生を歩み始めた退役軍人のアリシアだったが、黒人というだけで理不尽な扱いを受けたり、不当な差別を受けたりする日々が続いていた。そんなある日、先輩警察官とともに通報があった現場に急行したアリシアは、そこで警察官が麻薬の売人を殺害する場面を目撃する。見てはならない場面を目にしてしまったアリシアは、口封じのために同僚の警察官から追われる身となってしまう。(映画.comより)
根深いですね、本当に。今現在、アメリカでは事件が起きるたびにデモ、の繰り返しですが、根本的な解決策ってあるのでしょうか。いくらアファーマティブアクションみたいに、社会的弱者を優遇する措置を打っても、人々の意識を変えなければ、結局変わらないですよね?
冒頭から、退役軍人(強い!)で今は警官として働くナオミ・ハリスが、新しい赴任先(故郷の町)で朝のランニングをしているだけで、いきなり警官に呼び止められるシーンから始まります。相手が黒人の女性だと思ったら、なんとも乱暴な扱い。なんにもしてないじゃないですか。見ていて本気で腹が立ちました。もちろん、ナオミは大人ですから、世の中ってそういうものだとわかっているので(多分同じような経験もある)、大人しく言うことに従っています。すると警察バッジが。「彼女はブルーだ」と相方に言われて手を離す警官。自分の間違いを認めたくないので、捨て台詞を吐きながら立ち去ってゆきます。でも、話のポイントはそこじゃないんです。そういうことがあまりに当たり前なのか、ナオミもいちいち糾弾しません。その後も警官の横柄さは何度も描かれるのですが。
要するに、警官の不正(汚職)についての話なのですが、街全体がもう沈んだ街なのでしょうね。すさんだ住民、町ぐるみで抱え込んでる汚職、金。子供たちにしても、その親たちにしても、なんでそんなに物を言う都度つっかかるんですか。普通に会話できないのですか。最近、映画を見ていてとみにそう思います。そういう描写が多いなぁって。こちらが「こんにちは」とか、この映画の場合はナオミが同級生を見つけて「元気だった?」とか言っただけです。なんで喧嘩売るの?会話が成り立たないじゃないですか。私がそういう映画を選んで見てるのかしらん。「レ・ミゼラブル」(最近のね)とかね。それだけ世の中に歯向かって行かないと生きてゆけないのかもしれないけれど。
タイリーズ・ギブソンが出ています。彼を「fast&furious」シリーズ以外で見るのは初めてかもしれません。今回は、ナオミの幼なじみで、唯一の味方です。最初はビビってた彼が、味方してくれたのは、この街の警察等、権力に腹を立てていたからです。真面目に働いているのに、いつも偉そうに言われて不当な扱いばかり。それにナオミの正義感も知っていました。元軍人なんて、カッコいい!と実は思っていたりします(笑)。
ともかく、シビアな世界でした。でも、ここで汚職を一掃しても、また違う人たちがやるだけですよね、今度はもっときちんと組織立てて(笑)。ナオミが「プロメテウス」のノオミ・ラパス並みのサバイバルを繰り広げただけに、ここまでやったって現実はね・・・と、後味悲しい映画でした。もちろん、そんな余計なことを考えなければスカッとする映画なのかもしれません。