音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■2015.1.24 Berlinで私の Suite für Violoncello solo Nr.4が初演■

2014-12-01 19:56:30 | ■私の作品について■

■2015.1.24 Berlinで私の Suite für Violoncello solo Nr.4が初演■
~12月30日、無伴奏チェロ組曲全6曲を SACDで、disk Union が発売~
               2014.12.1    中村洋子

 

 

 

★今日から12月、師走です。

11月22日には、長野県白馬村を震源としたM6.7の大きな地震、

そして、阿蘇山の噴火、続いて桜島も噴火・・・

日常生活の慌ただしさに加え、足元の日本列島全体も、

ゆらゆら揺れている様子で、なかなか落ち着きません。


★今月のアナリーゼ講座は、

14日 ( 日 ): KAWAI 横浜「平均律第1巻 24番 h-Moll」

18日 ( 木 ): KAWAI 表参道「平均律第2巻 21番 B-Dur」

24日( 水 ): KAWAI 金沢「 Invention & Sinfonia 4番 d-Moll」
                                                          です。


★また、年末30日には、

私の「6 Suiten für Violoncello solo 無伴奏チェロ組曲 全6曲」

の CDが、新しく 「SACD」 として作り直され、

≪disk Union≫社から、発売されます。

http://ja.wikipedia.org/wiki/Super_Audio_CD

 

 

 


SACD(Super Audio CD)は、従来のCDと比べまして、

異次元といえるほどの、高音質のCDです。

日本が世界に誇る Recording Engineer レコーディング・エンジニア、

Kazuie Sugimoto 杉本一家さんが、

想像を絶する手間と時間をかけ、SACD用に新たに、

mastering マスタリングをして下さいました。


★第1巻は「3~1番」、第2巻は「4~6番」です。

(録音につきまして、2~6番は Sugimoto worksですが、
1番は not Sugimoto work という事情から、
第1巻は、3~1番の順番です。
mastering マスタリングは、1~6番まですべてSugimoto works)


約40年近い「CD」の歴史でも、このSACDは、

おそらく、記念碑的な音質の名盤として、残ることでしょう。

通常の CD player で聴きましても、

その素晴らしい音を、完璧に体験できます。

 

 


★忙しい毎日ですが、貴重な息抜きは、読書です。

図書12月号 (岩波書店)が届きましたが、

偶然、ハンナ・アーレント(Hannah Arendt, 1906 - 1975)について、

二人の方が、お書きになっていました。


★一人は、赤川次郎さんの、第30回「三毛猫ホームズの遠眼鏡」です。

このシリーズは、今回で終了するそうで、とても残念です。

その素晴らしいエッセイの一部を、ご紹介します。


★赤川さんは、ある文学賞の選考会に臨んだ際の、
感想を述べています。

≪この賞の選考委員を五年つとめたが、その候補作を読んで、
あまりに「人の悪意」ばかりを描いた作品の多いことに暗たんたる気持ち
になった。無差別大量殺人、理由のない殺意、殺りくの描写を目をそむけたく
なる残酷さ・・・・・・。
 読後に全く救いがなく、何のカタルシスも得られない作品を読み続けると、
選考委員の義務とはいえ、徒労感ばかりが深くなる。また、そういう作品が
人気を得ている現実に、愕然としてしまうのである。
 むろん、人の心の闇の部分を描くことは、小説の役割の一つだろう。しかし、
私が読んだ作品は、「悪事」を描いてはいても「悪」は描けていなかった。いや、
「悪い人間」の犯罪を刺激的に露悪的に描くことが「悪」を描くこと、と勘違い
していると思われるものが多過ぎるのである。

 前に書いたハンナ・アーレントの言葉「考えることをやめたとき、平凡な人間が悪をなす」という意味での、普遍的な「悪」は、そのどこにも見当たらない。
 現実にある、「誰でもよかった」という殺人や、ただ「人を殺してみたかった」
という動機での殺人は、いかにも当世風で、小節の題材にしたくなるのかもしれない。

 しかし、文学というものは、死体をバラバラにするような猟奇事件よりは、生活保護を申請に来た貧しい母親を「まだ働ける」と追い帰す行政の方にこそ、
さらに深い残酷さを見るものではないのか≫

 
文学賞候補作についての、この感想は、

現代のクラシック音楽界にも、通じる話であると、思います。

曲芸師のように、すきのない技巧で飾り立て、

拍手喝采を浴びても、

一体その音楽が、作曲家のどのような構想と意図から導き出されたか、

奏者として、それを解明し、どう音楽を構築したかーーー

それが、分からない演奏が、多過ぎると思います。

本当にいい音楽を聴いた!、心から楽しめた!

と思うような、
演奏が少ないのです。

 

 


★赤川さんは、さらに次のように続けます。

≪今もまた生活保護を減額しようという動きが報じられている。そういう現実に目をつぶって、オリンピックやリニア新幹線に熱狂する人は、無邪気という名の犯罪を犯しているのではなかろうか。
 
 ごく簡単な一つの問い。
「あなたは子供たちを愛していますか?」 たったそれだけの問いを、今の社会へ投げかけたい。
 愛する子供たちが、放射能によって何年か何十年か後に甲状腺のガンを発症しないか。子供が毎日の食事も満足にとれないような世の中にならないか。
 若者たちが、まともな仕事につけず、将来に希望も持てず、アメリカのための戦争に駆り出されていくのはないか。

 一つ一つ、数え上げればきりがない。「子供たちに、安心して生きられる日本を残したい」
 そう思うなら、自ずとなすことは見えてくるはずだ。
             略
 あの3・11の大震災、大津波、原発事故の後、日本がこんなにも、すべてを忘れて昔の夢を追い続ける国になろうとは、誰が考えただろうか。
 一人一人にできることは少なくても、明日のために、何かしなければ。
単純でも、そう言い続けることが、あの膨大な犠牲者への追悼だろう。
 まだ、たった三年余りしかたっていない≫

氏の危惧が、現実のものとなりそうな不安を、

私も、感じます。

 

 


★先日、Berlinの Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー先生

から、お便りが届きました。

先生は、ことし9月にミュンヘンで開かれた、

ドイツ公共放送連盟(ARD)主催 「ミュンヘン国際音楽コンクール

ARD Competition in Munich 」 の

「Cello チェロ」部門・審査委員長を、務めていらっしゃいました。

Cello部門は、前回が2010年で4年ぶりです。

http://www.br.de/radio/br-klassik-english/ard-music-competition/participants-and-results/index.html

The 63rd ARD International Music Competition 2014 is held in the categories violoncello, piano, percussion and wind quintet. By clicking on one of the following categories, you will get all information about competitors and results 

◾Jury(審査員) Members 2014 
  Violoncello

Wolfgang Boettcher (President)
Natalia Gutman
Ivan Monighetti
Daniel Müller-Schott
Raphael Pidoux
Christian Poltéra
Kristin von der Goltz


世界には、本当にたくさんの音楽コンクールが存在しますが、

国家的、政治的、経済的、商業的・・・さまざまの圧力、誘惑などが

飛び交い、絡み合い、純粋に音楽的要素だけで選考されるとは、

言い難いケースも、多々あるようです。


★しかし、この「ミュンヘン国際音楽コンクール

ARD Competition in Munich」は、一切の“外圧”を排し、

実力のみで選考される、世界一厳しいコンクールとして、

有名です。

 

 


Boettcher ベッチャー先生は、来年2015年1月24日、

私の 「Suite für Violoncello solo Nr.4 無伴奏チェロ組曲 第4番」

を、Berlinで、初演してくださいますが、

そのプログラムが、送られてきました。

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・J.S.Bach : Suite G-Dur BWV 1007
  無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007

・Hanning Schröder : Essay für Wofgang Boettcher
  
・Yoko Nakamura : 4. Solosuite, Uraufführung
  中村洋子: 無伴奏チェロ組曲 第4番(初演)

             PAUZE

・Ahmed Adnan Saygun : Allegretto

・Ernst Toch : Allegretto gracioso aus dem Impromptu op.90

・J.S. Bach : Suite C-Dur BWV 1009
  無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調 BWV1009


● Wolfgang Boettcher spielt für Sie ein fabriges Programm

         auf seinem Cello 
(Wolfgang Boettcher があなたの為に、色とりどりのプログラムを
       チェロで演奏します)

● (Jochen-Klepper-Saal ヨッヘン・クレッパー ホール)
     Berlin ・ Nikolassee ベルリン・ニコラスゼー

● am Samstag, 24. Januar  2015, 17.00 Uhr
              (2015年1月24日土曜日17時)

 


★この第4番は、技巧的に難曲ですが、

きっと、素晴らしい演奏を聴かせて下さることでしょう。

 

 


Natalia Gutman ナターリヤ・グートマンさんの名前が、

ARD Competition in Munich 審査員として、

Wolfgang Boettcher (President) の下に、記されています。


★Gutman(1942 - ) さんについて、 Boettcher ベッチャー先生が、

彼女を絶賛されるのを、何度も聴いております。

彼女が、 Sviatoslav  Richter スヴャトスラフ・リヒテル(1915-1997)、

Oleg  Kagan オレグ・カガン(1946 - 1990)と共演した、

Tchaikovsky チャイコフスキー (1840 - 1893) Piano Trio

Op.50 a-Moll  ピアノ三重奏 「A la mémoire d'un grand Artiste

偉大な芸術家の想い出」1986年録音 (LCL194) は、

音質があまり良くはありませんが、私の愛聴盤の一つです。

彼女の偉大さを、実感する名演です。

 

 


★このお二人が、厳格に審査をなさる

ARD Competition in Munich ミュンヘン国際コンクールは、

さぞかし、立派なことでしょう。

 

 

※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
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