徒然なか話

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黒澤明と「荒野の決闘」

2009-07-02 20:47:11 | 映画
 昨夜、NHK-BS2で放送されたジョン・フォードの名作「荒野の決闘」。この映画は僕にとって特別な映画だ。まず第一の理由は、作られたのが、僕が生まれた年、1946年であること。そしてもう一つは西部劇にとどまらず、映画というものの見方を開眼させてくれた一本であること、この二つだ。初めて観たのがたしか1961年、最初のリバイバル上映だった。ブループリントという妙な映像ではあったが、何回かリピートして観にいったことを憶えている。実はこの作品が、黒澤明監督が最も好きな西部劇であったことを数年前まで知らなかった。調べてみたら、たしかに「黒澤明が選ぶ世界の名画100本」などにロバート・D・ウェッブの「誇り高き男」とともに入っている。100本のうち、西部劇はこの2本だけだ。あれほどジョン・フォードをお手本にしたと公言して憚らなかった黒澤監督が選んだフォードの西部劇がなぜ、一本だけなのだろう。もっと言えば、なぜ「駅馬車」や「捜索者」じゃないのだろう。もちろん、100本を選んだ企画の趣旨もあったとは思うが、「七人の侍」のような大活劇を選んでいないことは僕にとってずっと謎だった。しかし、昨夜の放送でその謎を解く手がかりみたいなものがつかめた。それは放送後のシネマ・レビューで、山本監督がいみじくも言われたことだ。山本監督は「『シェーン』が成瀬巳喜男的な西部劇なら、『荒野の決闘』は溝口健二的西部劇である」と。つまり、黒澤監督の選んだ100本には、「自分には描けないもの」に対する憧憬の念が大きく影響していないだろうか。その象徴的な一本が「荒野の決闘」だったのではないかと。ちなみに100本の中に入った自らの作品は「赤ひげ」だけであることは興味深い。

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