仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

男はつらいよ フーテンの寅

2021年09月25日 | ムービー
シリーズ第3作『男はつらいよ フーテンの寅』(1970年/森崎東監督)を見た。
物語は、「久しぶりに故郷、葛飾柴又の実家・団子屋とらやに帰ってきた車寅次郎(寅/渥美清)を、梅太郎(タコ社長/太宰久雄)が口利きをした縁談が待っていた。見合い相手は料理屋の駒子(春川ますみ)という女中だったが、実は彼女は寅の知り合い。しかも駒子には夫がいたはずで、身ごもってもいるのだった。すっかり酒に酔って泣きまくる駒子と夫・為吉(晴乃ピーチク)のよりを戻させるために奮闘し、二人をとらやに連れて来た寅だったが・・・」という内容。
二人のために結婚祝賀会を開いた寅だったものの、宴会費用もハイヤー代もすべてとらや宛の請求。
縁も所縁もない二人のためにお金を使わされる羽目になった車竜造(おいちゃん/森川信)もつね(おばちゃん/三崎千恵子)も怒り心頭だが、それはもっともな話だ。
大騒ぎした挙げ句に、妹・さくら(倍賞千恵子)の夫・諏訪博(前田吟)と取っ組み合いの喧嘩をして家を後にした寅だったが、滞在先の三重県湯の山温泉で、おいちゃんとおばちゃんにバッタリ出くわしてしまうのだから笑える。
(^_^)
それにしても、さくらは優しい妹だ。
自分の見合い相手の結婚を祝う立場になってしまった寅の気持ちをおもんばかって慰めるなんてことは、さくらにしか出来ない芸当だ。
これにはいくらか寅も救われたことだろう。
(^_^)
冒頭の場面では、天涯孤独だという信州の旅館の仲居(悠木千帆 / 樹木希林)にさくらやおいちゃんの写真を見せ、女房だ親父だと嘘をつく寅が映し出されていたが、借金から芸者をしている娘・染奴(香山美子)を妾に出さざるを得なくなった同業・坂口清太郎(花沢徳衛)と同様、どうにも哀れに描かれていた。
シリーズ第5作『男はつらいよ 望郷篇』(1970年/山田洋次監督)もそうだが、男はつらいよシリーズの初期の作品は、恋愛云々と同じくらいにテキヤ稼業の儚さというものが描かれていたように思う。

男はつらいよ 寅次郎忘れな草

2021年07月31日 | ムービー
シリーズ第11作『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』(1973年/山田洋次監督)を見た。
物語は、「車寅次郎(寅さん/渥美清)が故郷柴又のとらやに帰ってきた。仏間で御前様(笠智衆)がお経をあげているのを、家の誰かが死んだものと勘違いしたり、妹さくら(倍賞千恵子)がピアノも買えないのはタコ社長(太宰久雄)が諏訪博(前田吟)に払っている給料が安いからだと毒づいたり、早々に騒動を起こしてしまう。居ずらくなって初夏の北海道へ向かった寅さんは、網走行きの夜汽車で、外の暗闇を見ながら一人涙を流す女性が気になった。翌日偶然にそのリリー(浅丘ルリ子)と出くわし、言葉を交わした二人だが・・・」という内容。
息子の満男にピアノを買ってやりたいと言うのを聞いた寅は、早速おもちゃのピアノを買ってきて得意満面の様子だが、これは誰でも分かる勘違い。
そこになかなか気がつかないのが寅さんなので、竜造(おいちゃん/松村達雄)、つね(おばちゃん/三崎千恵子)など周囲の人達が何かと気を使う。
さすがに寅さん本人もハッと気がついた時には、引っ込みがつかなくなってしまってどんどんとおかしな雰囲気になってしまうのは、お約束のようなものだ。
(^_^)
しかし、自分に照らし合わせて考えられることだとすんなりとよく分かるのか、寅さんがリリーの気持ちを察するのは早かった。
リリーも寅さんにはシンパシーを感じていたのか、二人はなかなか良い雰囲気になるのだが、うまく行かないのが寅さんシリーズ。
ハッピーエンドはシリーズの終了を意味することなので、そうはならないのだ。
(^_^;)
残念。

武士の一分

2019年01月18日 | ムービー
『武士の一分』(2006年/山田洋次監督)を見た。
物語は、「幕末、海坂藩。藩主の毒見役を務める三村新之丞(木村拓哉)は祿高三十石の貧乏侍ながら、妻・加世(檀れい)と慎ましく暮らしていた。早く隠居して道場を開きたいと考える新之丞は毒見役という役目に関心がなく、ため息ばかりついていると加世から言われるほど。ある日、いつも通り毒見を終えた新之丞は身体の異常を訴え・・・」という内容。
藩主の命を狙った一大事とも思われたが、赤つぶ貝の毒による食中毒というのが真相のようで、調理人たちは一切の咎めを受けることはなかった。しかし、この時期に選ぶ食材ではないとの老中の意見があり、広式番の樋口作之助(小林稔侍)が切腹して責任をとることで事件は終息をみる。
職務中に居眠りばかりしている隠居間近の樋口だったが、部下の失態により切腹する羽目になってしまうだなんて、武士の世界とは何て厳しく、不条理なものだったのだろう。
役目とはいえ、貝毒で失明してしまった新之丞も可哀想だ。
家祿の三十石はそのままなのか?
家を出ていかなければならないのか?
今後の処遇についての正式な沙汰があるまで、夫婦はもちろん、使用人の徳平(笹野高史)も不安だったことだろう。
そして、そこにつけこむ海坂藩番頭の島田藤弥(坂東三津五郎)。
こういう最低な人間はいつの時代にもいるのだろう。
さて、これは藤沢周平原作の小説『盲目剣谺返し』が原作で、『たそがれ清兵衛』(2002年)、『隠し剣 鬼の爪』(2004年)に続く山田洋次監督作品。
三作品の中では『たそがれ清兵衛』が一番評価が高いようだが、興行的には本作のほうが成功を納めたようだ。
やはり、海坂藩が舞台の物語は面白い。

隠し剣 鬼の爪

2018年11月20日 | ムービー
『隠し剣 鬼の爪』(2004年/山田洋次監督)を見た。
物語は、「東北の小藩・海坂藩の平侍・片桐宗蔵(永瀬正敏)は、母・吟(倍賞千恵子)、妹・志乃(田畑智子)と貧しくはあるが笑顔の絶えない日々を送っていた。しかし、母が亡くなり、志乃は親友・島田左門(吉岡秀隆)のところへ嫁いでいった。16歳の時から妹のように可愛がっていた女中のきえ(松たか子)も商家に嫁ぎ、家の中は火が消えたように静かになった。三年後、降りしきる雪の中、町で偶然見掛けたきえに声を掛けた片桐は、まるで病人のように痩せた様子が気になった。"きえは幸せだか?旦那さんは大事にしてくれているか?"と聞くと、きえは涙を流したのだ。母の三回忌の法事を執り行った日、きえが嫁ぎ先の伊勢屋で酷い扱いを受けて寝込んでいることを知った片桐は・・・」という内容。
島田と一緒にきえの嫁ぎ先・油問屋の伊勢屋を訪ねた片桐は、陽の当たらない階段下の板の間に寝かされているきえを見て愕然とし、亭主に離縁状を書いておけと言って、きえを連れて帰った。
「寝てばかりいて何の役にも立たない嫁だ」と言い捨てるこの伊勢屋の姑(光本幸子)がただ者じゃない。
ちゃんと出入りの医者にみせていると言ってはいたが、島田家の取引先の番頭の話では、二ヶ月寝込んでいるがお金惜しさから医者にはみせてなく、実家の父親が見舞いに行っても我が家の嫁だからと門前払いだったとのことらしい。
奉公人に対して厳しい言葉で話しているようにも聞こえていたが、外面は立派でもその人間性は最悪のようだった。
この時代は幕末で、海坂藩には江戸から砲術の教官(松田洋治)が赴任してきていたが、海坂藩が主力としている火縄銃はすでに時代遅れ。
最新式のアームストロング砲一門と火縄銃500丁が同等の値段らしいが、時代遅れなのは武器だけではなくて、考え方も時代に着いて行けてない様子だった。
文久元(1861)年、海坂藩江戸屋敷で謀反が発覚し、幕府に知られるのを恐れた藩は関係者を隠密裏に処分したのだが、この藩の指揮を取った家老・堀将監(緒形拳)が、これまた酷い奴。
大目付・甲田(小林稔侍)と一緒に、謀反人の一人、狭間弥市郎(小澤征悦)と親交が深かった藩士の氏名を明かすように迫り、「仲間を密告するなんてことは侍のすることではない」と断ると、「平侍のくせに生意気な口をきくな。わしを一体誰だと思ってるんだ」と、殴る蹴るだ。
ただ、片桐と狭間は藩の剣術指南役・戸田寛斎(田中泯)の門下生ではあったものの、それほど気が合う関係には見えなかったから、氏名を明かすなど無理だったのではないだろうと思えた。
藤沢周平作原作の"海坂藩もの"の映像作品は、切ない物語がほとんどだが、映し出される風景は綺麗だし、時代考証もしっかりしている気がして面白い。

たそがれ清兵衛

2018年11月15日 | ムービー
『たそがれ清兵衛』(2002年/山田洋次監督)を見た。
物語は、「幕末。東北の庄内地方にある七万石の小藩・海坂藩。御蔵役を務める井口清兵衛(真田広之)は、夕刻の終業の太鼓を聞くと同僚の酒の誘いも断り、真っ直ぐ自宅に帰ることから、影で"たそがれ清兵衛"と呼ばれていた。帰宅後は、認知症を抱える老母・きぬ(草村礼子)と幼い二人の娘・萱野(伊藤未希)、以登(橋口恵莉奈)の世話、そして労咳で死んだ妻の薬代や葬儀などで嵩んだ借金を返済するため、家事と内職にいそしんでいたからだった。日々の暮らしに追われる貧乏生活で身なりが薄汚れていく清兵衛だったが・・・」という内容。
着ている物は綻びや穴だらけで、風呂にも入らず臭いも酷い。
そんな様子を憂いた上司・久坂長兵衛(小林稔侍)に、清兵衛の同僚・矢崎(赤塚真人)が「清兵衛の祿高は五十石だが、お借り米を引かれて手取りは三十石。内職しに嫁に行くような所に後妻など来ない」と説明する。
それでも縁談を勧めようとする本家の井口藤左衛門(丹波哲郎)に、「この暮らしは、考えられているほど惨めだとは考えていない。二人の娘が日々育っていく様子を見るのは実に楽しい」と言う清兵衛。
夜、行灯の明かりと囲炉裏の火を頼りに鳥かごを作る内職をしながら娘達と本音で話す様子は、ほのぼのとして楽しそうに見えた。
いずれ天下が変わると言う飯沼倫之丞(吹越満)に、御所警護の人手が足りないから京都へ行こうと誘われても、天下が変わった時は侍をやめて百姓になると答えた清兵衛。
まるで欲がない男で、それが、飯沼の妹・朋江(宮沢りえ)とのせっかくの話を上手く進めることができなかった理由でもあったのだが、飯沼家は四百石、朋江が嫁いでいた甲田豊太郎(大杉漣)の家は千二百石。
その辺りの一連のエピソードも含め、どうにも切ない物語だった。

男はつらいよ 寅次郎物語

2018年03月30日 | ムービー
シリーズ第39作『男はつらいよ 寅次郎物語』(1987年/山田洋次監督)を見た。
物語は、「柴又駅前の自動販売機でジュースを買った満男(吉岡秀隆)は、野球帽をかぶった少年に、"にいちゃん、寅さんを知ってる?"と声を掛けられて驚いた。見ると、寅さんからの年賀状を持っている。とらやに連れて行き、母のさくら(倍賞千恵子)、おばちゃん(つね/三崎千恵子)、あけみ(美保純)が話を聞くと、父親が生前に"俺が死んだら寅さんの所へ行け"と言っていたので群馬から一人で来たのだと言うが、はっきりしたことは分からないのだった。そして翌日に帰ってきた車寅次郎(寅さん/渥美清)によると、その少年は秀吉といい、自分が名付け親なのだという。秀吉の父親・佐藤政吉は"般若の政"と呼ばれ、女房の髪を掴んで引きずり回すような酷い男。秀吉の母親・ふで(五月みどり)の蒸発したと聞かされてもさほど驚いてない様子だった。可哀想に一人きりになってしまった秀吉のため、ふでを探し出そうとする寅さんは・・・」という内容。
仲間のポン州(関敬六)等を訪ね、ふでの居所に見当がついた寅は、秀吉と2人で和歌山市へと行くのだが、ふでは既にそこにいなかったことから、奈良市の旅館・翠山荘に向かうものの、そこにももういない。
これには寅さんもガッカリで、秀吉も高熱を出して寝込んでしまうのだが、うんうんと唸る秀吉を前にして、なんと東京のさくらに"どうしたらいい?"と電話をかけるほどに(もうどうしていいか分からず)パニックだったのだろう。
フロントに声を掛けても医者を呼んでもらえず、タクシーで迎えに行って往診をしてもらったが、診た菊田医師(松村達雄)は「どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!!」と怒り出す。
この時に助けてくれたのが隣の部屋の客・高井貴子(秋吉久美子)だったが、これは本当に助かった。
このエピソードの際の、
貴子「おとうさん、帳場に寄ってタオルをあと何枚か届けるように言うて」
寅「うん。かあさん、あと頼んだぜ」
とか、
医者「おかあさん、お尻出しなさい」
貴子「えっ。お尻・・・」
医者「あんたのお尻じゃない。子供のお尻じゃ」
といったやり取りは笑いのセンスが感じられて面白いし、今回のシリーズ第39作は極端な物語だったけれども、博(前田吟)や、あけみ、満男の設定や台詞もこれまで以上に練られているような気がして、ドタバタ劇にとどまらない、いつにもまして良い作品だったように思う。
特に、「おじさん、人間てさ・・・。人間は何のために生きているのかな?」という満男の台詞は、見ているこっち側も考えさせられる。
『男はつらいよ』に3回登場したリリー(浅丘ルリ子)はシリーズを代表するキャラクターの一人だが、貴子はこの1回しか登場しないとはいえ、とても印象深いキャラクターになった。
これはナカナカに素晴らしい作品だった。
(^_^)

家族はつらいよ

2017年11月08日 | ムービー
『家族はつらいよ』(2016年/山田洋次監督)を見た。
物語は、「かつての新興住宅地で三世代同居をしている平田家。周造(橋爪功)は引退してゴルフ三昧、妻の富子(吉行和子)はカルチャースクール通い。家事は長男・幸之助(西村雅彦)の嫁・史枝(夏川結衣)がこなしていた。ある日のゴルフ帰り、お気に入りの美人女将・かよ(風吹ジュン)の小料理屋で一杯やって上機嫌で帰宅すると、自室の花瓶に綺麗なバラが飾られているのに気がついた。誕生日に花をプレゼントするのが仲間の決まりで、その日は富子の誕生日なのだという。すっかり忘れていた周造はたまにはプレゼントをしようと欲しいものを聞いてみると、この離婚届に押印してくださいと言われ・・・」という内容。
冒頭、史枝にオレオレ詐欺の電話と間違われ、憤慨している周造に対して、友人は「ざまあみろ。君はいつの電話だっていきなり俺!俺!だもの。感じ悪いんだ。いつかは意見をしてやろうと思ってたんだ」と言う。
長年、仕事一途のサラリーマン時代を過ごしてきたという周造は、結構言葉がキツイし、態度が横柄だったりもするのだろう。
富子が突然切り出した"熟年離婚"の危機は、家庭の中ででも積もり積もったそういうものが原因だったのか。
長女・成子(中嶋朋子)と夫の金井泰蔵(林家正蔵)の離婚騒動はこの騒ぎでうやむやになり、次男・庄太(妻夫木聡)が初めて家に連れてきた恋人・間宮憲子(蒼井優)との初顔合わせは気まずくなり、せっかく奮発した特上ウナギもすっかり無駄になってしまった。
実際、不思議なもので、平穏な中に起きる事件というのは、何故か次々重なって起きるものである。
(^_^;)
何だか淡々と展開するエピソードが多くて、少し物足りなく感じたし、物語中盤に泰蔵役の林家正蔵が、父・初代林家三平(1925年~1980年)の「どうもすいません」というギャグを使う演出があったのだが、あれはそういう場面ではなかったので、少し残念に思った。

男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花

2017年09月28日 | ムービー
シリーズ第25作『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』(1980年/山田洋次監督)を見た。
物語は、「久々に帰ってきた車寅次郎(寅さん/渥美清)だったが、ちょうど水元公園にあやめ見物に出かけようとしていた車竜造(下條正巳)、つね(三崎千恵子)、諏訪博(前田吟)、さくら(倍賞千恵子)ら、"とらや"の面々と早速ひと悶着。帰ってきたばかりだというのに、すっかりへそを曲げてしまった寅さん。店を飛び出していこうとしたのだが、そこへちょうど配達された寅さんあての速達に気がつく。その手紙は入院しているという松岡清子(リリー/浅丘ルリ子)からの手紙だった。"旅先の沖縄で血を吐いて倒れ、入院している。また寅さんに会いたかった。それだけが心残り"という随分と弱気なことが書かれていた。早速、沖縄に向かおうとする寅さんだったが・・・」という内容。
さくらが手紙を一行読むたびにいちいち反応して返事をする寅さん。
たこ社長(太宰久雄)が同じように口を挟むと「黙ってろ!!たこ!!」と怒鳴りつけるのが面白い。
(^_^)
身寄りのないリリーとあって誰も見舞いになど来るはずもなく、ずっと一人きりだったようだ。
寅さんが預かってきた御前様(笠智衆)やたこ社長からのお見舞いを手にして、「お見舞いなんて初めてもらった」と喜んでいたし、寅さんが見舞いに来るからと化粧もする。
それまで医者の言うことを聞かなかったけれど、寅さんが来てからはきちんと治療に前向きにもなったらしい。
長い一人きりの生活が続いた人生で、随分と心も病んでいたのだろう。
沖縄の暑さはとても耐えられる暑さではないようで、初めのうちは真面目にテキヤ稼業に励んでいた寅さんだったものの、やがて毎日ぶらぶらし始めるようになる。
リリーの退院後は、国頭フミ(間好子)の家に住まわせてもらうようになり、息子の高志(江藤潤)が連れて行ってくれた水族館が寅さんの大のお気に入りになったようだ。
涼しさを求めて電柱の細長い陰にさえ隠れようとするくらいだから、もう限界だったのだろう。
(^。^)
リリーはこのシリーズ全48作のうち、『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』(1973年/第11作)、『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』(1975年/第15作)、『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』(1980年/第25作)、『男はつらいよ 寅次郎紅の花』(1995年/最終作)の4作品に登場したマドンナだったが、二人の気持ちが通じ合っていたにも関わらず、「男に食わしてもらうだなんてまっぴら」というリリーと、結婚に消極的な寅さんの意地がぶつかり合うばかりで、どうにもならなかったのはとても残念だった。

男はつらいよ 寅次郎恋歌

2017年08月14日 | ムービー
シリーズ第8作『男はつらいよ 寅次郎恋歌』(1971年/山田洋次監督)を見た。
物語は、「母親が危篤との電報を受けた諏訪博(前田吟)は妻・さくら(倍賞千恵子)と共に故郷・岡山県高梁市へと向かったが、臨終には間に合わなかった。"母さんは幸せだった"と言う長男・毅(梅野泰靖)、次男・修(穂積隆信)に対し、"母さんは不幸な人生を送った。まるで家政婦だった"と反論する博。一人になった父・飈一郎(ひょういちろう/志村喬)は、たまたま近くにいたことから弔問に訪れた車寅次郎(寅さん/渥美清)と数日を過ごし、自身が幸せについて考えるきっかけになった話をする。"りんどうの花が咲き乱れ、夕げの明かりとともに笑い声が聞こえてくる・・・"と聞かされた寅次郎は故郷・柴又へと帰り・・・」という内容。
とらやの近所に新規開店した喫茶店の経営者・六波羅貴子(池内淳子)の存在を知ってしまえばまた一騒動が起きてしまうからと、何とか寅さんと出会わないように仕向ける車竜造(おいちゃん/森川信)と堤梅太郎(たこ社長/太宰久雄)だったが、それは無理な話。
出会ってしまうのは時間の問題だ。
(^_^;)
案の定すっかり貴子に惚れてしまい、何とか彼女の役に立ちたいと奮闘する寅さんなのだが、やはりどうにもうまくいかないのだった。
さて、本作撮影時のメイキング映像には「しっかりした自分が演じているおっちょこちょいで馬鹿な寅次郎に対しては、役者として優越感を持っていたんですが、最近は渥美清とフーテンの寅はあまり変わらないのではないかと思い始め、もっとしっかりしないと寅次郎に置いてきぼりにされてしまうのではないかという気がしてるんです」とか「寅と切っても切れない何か血の繋がりのようなものをだんだん感じてくるようになってしまった」という(確かそんな感じの)渥美清(1928年~1996年)のインタビューが収録されている。
観客側はいつしか、俳優・渥美清と映画の登場人物・車寅次郎を同一化するようになってしまったのかもしれないと思っていたが、永年演じ続けた役者さんの中にも作品のキャラクターがすっかり住み着いてしまっていったのかもしれない。
また、テレビ版からおいちゃんを演じていた森川信(1912年~1972年)の「ばかだねぇ・・・」という台詞は何とも味のある表現がされていたが、残念ながらこれがシリーズ最後の出演だったようだ。

男はつらいよ 奮闘篇

2017年07月11日 | ムービー
シリーズ第7作『男はつらいよ 奮闘篇』(1971年/山田洋次監督)を見た。
物語は、「車寅次郎(寅さん/渥美清)の母親・菊(ミヤコ蝶々)が京都からやってきた。1年前に"近々、嫁をもらう"というハガキを受け取っていたがどこにいるか分からないので、とらやの竜造(森川信)とつね(三崎千恵子)を訪ねてきたのだという。さくら(倍賞千恵子)を嫁と思い込み、満男を寅の子供だと勘違いする菊。そんな折にタイミングを計ったかのように帰省してきた寅は、さくらと2人で菊が滞在するホテルを訪ねはしたものの、そこで大きな親子喧嘩をしてしまう。部屋を飛び出して行った寅は、駅近くのラーメン屋で花子(榊原るみ)という女性と出会ったのだが・・・」という内容。
別れ際、あまりに心配だったので、何かあったら"とらや"を訪ねろと言ってメモを手渡したことから、あとで花子はとらやに寅を訪ねてくることになるのだが、寅はそこに帰ってくる。
フーテンのはずなのに、本当に都合が良すぎる展開だ。
(^。^)
働きたいという花子に、御前様(笠智衆)に頼んで柴又帝釈天のおみくじ販売の仕事を紹介してもらうものの、たこ社長(太宰久雄)の印刷会社の時と同様、寅のあまりに酷い"妄想"の末にどれもうまくいかないことになってしまう。
そして結局は、とらやで働くことになるのだが、当然の成り行きだと思いつつ、それでも寅の"過保護"(!?)ぶりに皆が振り回される。
(^_^)
シリーズの他作品と少し違う展開だったのが、「私、寅さんの嫁っコになるかなぁ」とマドンナから告白されるところ。
知的障害があるように描かれていたマドンナなので、これにはさくらや博(前田吟)、おいちゃん、おばちゃんも困惑気味。
菊との再会場面では、菊のあまりのけなしように、腹を立てながら寅をかばったさくらでさえ、花子と寅の結婚には拒否反応がありあり。
おそらくは、寅も花子も大差がないと思われていたのだろう。
(^_^;)
ラーメン屋のおやじ役で落語家・5代目柳家小さんが出演していたが、寅に出されたラーメンにはスープが全然入ってなくて笑ってしまった。
その辺りの演出は意外と適当だったのだろう。

男はつらいよ 望郷篇

2017年06月16日 | ムービー
シリーズ第5作『男はつらいよ 望郷篇』(1970年/山田洋次監督)を見た。
物語は、「おじの竜造(おいちゃん/森川信)が倒れる夢を見た車寅次郎(寅さん/渥美清)が心配になって"とらや"に電話をしたところ、つね(おばちゃん/三崎千恵子)の言った冗談、"もう息をしてるってだけなんだよ"との答えに驚き、慌てて柴又へ帰るのだが、途中で葬儀屋の手配まで済ませてしまい、"そんなに俺を殺したいのか!!"と怒り心頭の竜造と大喧嘩になってしまう。そんな折、舎弟の登(津坂匡章/現・秋野太作)が"札幌の竜岡政吉親分(木田三千雄)が重病で兄貴に会いたがっている"と知らせにきた。早速、札幌市内の病院に親分を見舞った寅さんは、身寄りのないはずの親分から、"かつて旅館の女中に産ませた息子・石田澄雄(松山省二)に一目会いたい"と懇願され、登と2人、小樽市へと向かうのだが・・・」という内容。
東京から札幌までの旅費が工面できない寅は、妹・さくら(倍賞千恵子)から5,000円を用立ててもらうのだが、それは第2作『続 男はつらいよ』(1969年/山田洋次監督)で、「これで満男に飴でも買いな」と渡した5,000円だった。
その際には夫・博(前田吟)も驚いたほどの随分と厳しい口調で説教をされたばかりだったし、すっかり情けない状況の寅さんだったのだが、その後の場面を見ると、それほどふさぎ込んだ様子も感じられなかったのは流石に"フーテンの寅"と呼ばれる所以だと思った。
しかし、草相撲で北海山という四股名で大関まで張ったという親分のすっかり小さくなってしまった身体と、哀れな末路を目の当りにした寅さんは、やくざ稼業のみじめさを思い知らされることになる。
紆余曲折の末、浦安の三七十屋(豆腐屋)で働くことになる寅さんだが、その一連のエピソードの際の登場人物、三浦節子(長山藍子)、木村剛(井川比佐志)、三浦富子(杉山とく子)は、かつてのテレビ版『男はつらいよ』(1968年~1969年)で、さくら、博、おばちゃんを演じた役者さん達とのことで、山田洋次監督はこの第5作をもってシリーズに区切りをつける考えだったようだ。
まぁ、そういう思惑通りにはならなかったわけだが。
(^_^;)

続 男はつらいよ

2017年05月12日 | ムービー
シリーズ第2作『続 男はつらいよ』(1969年/山田洋次監督)を見た。
物語は、「20年ぶりだった前回の帰省から1年も経たないうちに再び故郷・葛飾柴又に帰ってきた車寅次郎(寅さん/渥美清)。車竜造(おいちゃん/森川信)と車つね(おばちゃん/三崎千恵子)が切り盛りする"団子屋とらや"にはちょうど妹・諏訪さくら(倍賞千恵子)が夫・博(前田吟)との間に生まれたばかりの赤ん坊・満男と一緒にいた。引き止められながらも、お茶を飲む間もなく旅に出ようとした寅さんだったが、恩師・坪内散歩(東野英治郎)の家をふらりと訪ね、20数年ぶりに顔を合わせた先生の娘・夏子(佐藤オリエ)に見惚れてしまう。その夜、先生宅でごちそうになり、酒を飲んですっかりご機嫌になった寅さん。ところが、突然に胃痙攣を起こし、救急車で金町中央病院に運び込まれてしまった・・・」という内容。
翌日、夏子は医師の藤村薫(山崎努)から「食あたりの類いではなく、良いものを食べ過ぎて胃がびっくりしたんですよ」との説明を受け、当の寅さんもすっかり元気だと聞き、ホッとする。
そりゃあ、自分の料理のせいでの入院ともなれば大変だ。
家でゆっくりなんかはしていられなかったことだろう。
(^_^;)
病室で患者達に啖呵売の実演をしてみせる寅さんは、あまりの騒々しさに医師や看護婦からは怒られ、さらには、見舞いに来た舎弟の川又登(津坂匡章/現・秋野太作)と無断外出して焼肉を食べ、挙げ句の果てには無線飲食で一晩留置場に泊まることになる。
これは警察に呼び出された妹さくらが可哀想だし、逃げるように京都へと向かわなくてはならない寅さんも情けない。
名前は知っているものの顔が分からないという寅さんの母親が夢に出てきて、「また夢か…」とつぶやく場面から始まるのだが、一ヶ月後の京都では自分を捨てたという母親・お菊(ミヤコ蝶々)を探すことになる。
それには坪内先生が随分と大きく関わるのだけれど、この母親と坪内先生に関するエピソードが何とも切ないのだった。
元々テレビドラマだった『男はつらいよ』の映画化にあたっては、全5作品での完結を予定していたらしいので、第1作『男はつらいよ』(1969年/山田洋次監督)から第5作『男はつらいよ 望郷篇』(1970年/山田洋次監督)まで、かなり濃い内容になっているのだろう。
これも面白い物語だ。

男はつらいよ

2008年09月27日 | ムービー
シリーズ第1作目の『男はつらいよ』(1969年/山田洋次監督)を見た。
何でも今年は【男はつらいよ40周年】だそうである。
物語は、「20年前に家出をして以来所在不明だった車寅次郎(寅さん/渥美清)が、テキ屋になって突然故郷に帰って来た。家は、東京・柴又帝釈天の門前にある団子屋で、妹・櫻(倍賞千恵子)、叔父・竜造(おいちゃん/森川信)、叔母・つね(おばちゃん/三崎千恵子)らと感激の再会を果たす。翌日、二日酔いの竜造に代わり、御曹司・鎌倉道男(広川太一郎)と櫻の見合いに同席することになった寅次郎だったが・・・」という内容。
これは、半年間放送されたテレビドラマ『男はつらいよ』の主人公・寅次郎(渥美清)が不慮の死を遂げて番組が終了してしまったことから、映画の世界で再度活躍させたということだったらしいが、テレビ版とキャストが少し違っているとはいえ監督・脚本は同じなので、寅さんの世界はすでにほぼ完成されていたようだ。
櫻と諏訪博(前田吟)の結婚式後、幼馴染・冬子(光本幸子)の元に足しげく通う寅さんだが、釣竿を持ち麦わら帽姿でニコニコしながら訪ねると、冬子は庭で客と話をしている。
御前様(笠智衆)に「御親戚で?」と尋ねると、「あの男はこれから親戚になる男だ」との返事が返ってくるのだが、こういった切ない場面が、その後(平成7年まで)全48作も展開されることになるだなんて誰も予想しなかったことだろう。
(^_^)

男はつらいよ 寅次郎恋やつれ

2008年01月28日 | ムービー
シリーズ第13作『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』(1974年/山田洋次監督)を見た。
寅さんシリーズは、平成14年から2年間の『男はつらいよ/全48作大放送』(TVh)と平成17年から2年間の『男はつらいよ/48作放送』(NHK-BS)でこれでもかというくらいに見まくったが、この『男はつらいよ/寅次郎恋やつれ』には余り印象が無い。
まぁ何回かは見逃しているはずなので、偶然にも両方の特集で見逃していたのかもしれない。
(^^ゞ
さて、寅さんシリーズ第13作目のこの作品は吉永小百合(歌子役)がマドンナで、シリーズ第9作『男はつらいよ 柴又慕情』(1972年/山田洋次監督)での設定を引き継いでいる。
「前作で親の反対を押し切って結婚した歌子だったが、夫とは死別し、その後も夫の実家で生活していた。そんな所に偶然寅次郎(寅さん/渥美清)が現れたことをきっかけに新しい生活を始める決心をつけ、葛飾柴又の"とらや"を訪ねる」という物語。
そこからいつものドタバタ劇が始まるわけだが、本作は前12作品よりも深く「幸せとは何か」を掘り下げていたように思う。
寅さんと妹・さくら(倍賞千恵子)のやり取りの中で、「おにいちゃんは自分の幸せしか考えてないじゃない。歌子さんがずっとうちの2階で生活し続ければお兄ちゃんは幸せかもしれないけど、歌子さんは幸せにはなれないわ」(←たぶんこんな感じ)という台詞があったが、これには寅さんも返す言葉が無く、考えさせられたようだった。
また、歌子が少しきつめの表現で自分の父親を語る台詞があったのだが、このシーンは花越しに吉永小百合の顔が映されていた。
山田洋次監督はこういう映し方をあまりしないのだろうが、少しでも画面を穏やかにしようという(吉永小百合への)配慮なのだろうと思った。
さすが大女優だ。
(^_^)
物語の最後はいつも切ない終わり方になってしまう『男はつらいよ』だが、それでも寅さんのシリーズは楽しめる。

あゝ失恋48連発

2006年02月22日 | ムービー
NHK-BSで昨(2005)年から、渥美清主演の映画"男はつらいよシリーズ"が第1作から順に放送されているのだが、前半の24作が終わったところで放送は一時中断、"あなたが選ぶ寅さんアンコール"という企画が行われている。
これは、前半24作の中でもう一度見てみたい寅さん映画をリクエストし、リクエストが多かった上位5作品を4月に再び放送するというもの。
2月10日に中間発表があったようで、これによると上位5作品は、
『男はつらいよ』(第1作/1969年/山田洋次監督)
『男はつらいよ/望郷篇』(第5作/1970年/山田洋次監督)
『男はつらいよ/寅次郎相合傘』(第15作/1975年/山田洋次監督)
『男はつらいよ/寅次郎夕焼け小焼け』(第17作/1976年/山田洋次監督)
『男はつらいよ/噂の寅次郎』(第22作/1978年/山田洋次監督)
ということだった。
『男はつらいよ/寅次郎恋歌』(第8作/1971年/山田洋次監督)もいいよなぁと思うのだが、4,167人の(熱狂的な?)寅さんファンが投票しているだけあって、上位の5作品は大体イイ線をいっている。
(^_^)
仁左衛門的に好きな映画は、第5作の『男はつらいよ~望郷編』かな。
この作品中の、妹さくら(倍賞千恵子)が兄寅次郎(渥美清)に対して言う台詞は強烈だ。
「額に汗して油まみれになって働く人と、いい格好してぶらぶらしてる人とどっちが偉いと思うの?
お兄ちゃん、そんなことが分からないほど頭が悪いの?
地道に働くっていうことは尊いことなのよ。
お兄ちゃん、自分の歳のこと考えたことある?
あと5年か10年経って、きっと後悔するわ。
その時になってからではね、取り返しがつかないのよ。
あぁ馬鹿だったなぁと思っても、もう遅いのよ」
こうまで言われちゃうと、寅さんも「はい」と答えるしかない。
(^_^;)
【地道】かぁ。
半紙に筆字で【地道】って書いて、壁に貼っておこうか。
この映画を見たあとにそう思った仁左衛門だった。