仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

袈裟御前 / 林家たけ平

2021年10月24日 | エンタメ
落語『袈裟御前林家たけ平
噺は、「平安時代末期。北面の武士・遠藤盛遠は袈裟御前に一目惚れ。しかし、袈裟御前は同じ北面の武士・渡辺渡の妻だった。夫ある身の袈裟御前に横恋慕した盛遠は・・・」という内容。
「俺の言うことを聞かねば、お前の母を殺すぞ」と袈裟御前を脅す遠藤盛遠。
これはかなりイカれてる奴だ。
調べてみると、実在した遠藤盛遠(1139年~1203年)は十九歳で出家しているらしいのだが、『源平盛衰記』(作者不明)では「出家の原因は従兄弟で同僚の渡辺渡の妻・袈裟御前に横恋慕し、誤って殺してしまったことにある」というような記述があるらしい。
また、『袈裟の良人』(1923年/菊池寛)を原作とした映画『地獄門』(1953年/衣笠貞之助監督)は、第七回カンヌ国際映画祭(1954年)でパルムドールを受賞しているらしいので、この物語は世界的に周知されている物語なのかもしれない。
なかなかに衝撃的な物語だ。
さて、演者の林家たけ平師匠は落語協会所属で、平成28(2016)年に真打ちに昇進をしている。
平成13(2001)年に林家こぶ平(現・林家正蔵)師匠に弟子入りした時からの名前・たけ平をそのまま使い続けているが、袴をはいたり、ざっくばらんな語り口だったり、初代林家三平(1925年~1980年)師匠を相当に意識しているのだろうか。
(^_^)


金色夜叉 / 林家たけ平

2018年11月04日 | エンタメ
落語『金色夜叉林家たけ平
噺は、「カルタ会で頭取の息子・富山唯継と知り合った鴫沢宮(お宮)は、結婚を間近にしていた許嫁・間貫一との関係を解消するため、熱海に湯治に出掛け、貫一へは父親から破談を伝えた。合点がいかない貫一は熱海でお宮を探し出し、夜の海岸で問い詰めるのだが・・・」という内容。
これは、小説家・尾崎紅葉(1868年~1903年)が書いた明治時代(1868年~1912年)の代表的な小説の一つだが、執筆中に作者が死亡したため未完という作品。
随分と人気が高かったようで、大正時代(1912年~1926年)になると何度も映画化されたようだ。
宮の父親から許嫁の関係解消を通告された貫一は、その突然のことに、「頭が混乱してよく分からないんですけど。お宮さんとの許嫁を解消して、あたしとお父さんが許嫁になるんですか?」と言うのだが、これは混乱し過ぎ。
さすが落語版だ。
(^o^)
さて、演者の林家たけ平師匠は、平成13(2001)年に林家こぶ平(現九代目林家正蔵)師匠に弟子入りし、平成28(2016)年に真打昇進を果たしたという落語協会所属の落語家。
"懐メロ鑑賞と研究"が趣味なのだそうで、熱海市民大学講座では『落語家が語る昭和の歌謡史』と題した講演も行っているらしい。
そういった縁もあっての"金色夜叉"なのだろう。
(^_^)

三年目 / 三遊亭好楽

2018年08月22日 | エンタメ
落語『三年目三遊亭好楽
噺は、「惚れ合って一緒になった妻が二年も経たず病にかかり、床に臥せっていた。仕事が手につかず付き添う若旦那。六人目の医者にかかり、自分の寿命を悟った妻は、処方された薬を飲まずに捨てているという。それを知った若旦那は、心残りがあるという妻の話を聞き・・・」という内容。
きっと後添いをもらうんでしょうねと悔しがる妻に、若旦那は風変わりな約束ごとをすることになるが、それを聞いて安心したのか、妻はまもなく目を閉じてしまった。
若旦那はとても優しい人のようで、亡くなった妻との約束は単にその時だけ安心させるというようなものではなかったようだ。
若旦那を放っておかない叔父さんの勧めで、百箇日もしないうちに後添いをもらうことになった若旦那だが、亡くなった妻との約束をしっかりと守ることが前提なのは凄い。
さて、演者の三遊亭好楽師匠は、八代目林家正蔵(林家彦六/1895年~1982年)師匠の弟子だったが、師匠の逝去後の1983(昭和58)年に五代目三遊亭圓楽(1932年~2009年)師匠門下に移り、それまでの林家九蔵から三遊亭好楽に名跡を変更したのだという。
また、その際に"落語協会"から、"円楽一門会"に移籍となっている。
長男の三遊亭王楽師匠は自身の弟子ではなく、弟弟子だというのだから面白い。
(^_^)

お化け長屋 / 柳家小三治(十代目)

2018年05月14日 | エンタメ
落語『お化け長屋柳家小三治(十代目)。
噺は、「とある長屋。空いている店が物置代わりに使われていることに怒り心頭の家主だが、長屋の連中はそこが埋まってしまうと不便になるので、長屋の古狸と呼ばれる杢兵衛が源さんと協力し、店を借りにくる人間を追い払うことにした。そこへ早速気の弱そうな男が訪ねてきて・・・」という内容。
杢兵衛が古狸と呼ばれているのは長屋に十九年住み続けているからで、近所の連中からはそれなりに頼りに思われているようでもあるのだが、とはいえ、実際に頼りになるかどうかは別の話。
(^_^;)
店賃の払いが四ヶ月分滞っているものだから、やはり家主を前にしては何も言えない。
そこで、見えない所で画策しようというわけだ。
貸家は二畳、四畳半、六畳、小さな庭、縁側が付いていて、陽当たりも良いという。
なかなか良い物件なのか、それなりに問い合わせる人がやってくる。
それを次々に追い返そうというのだから、実は酷い話なのだった。
(^。^)
演者の柳家小三治師匠は、この噺の枕で先代林家正蔵(八代目/1895年~1982年)師匠の怪談話における舞台効果の演出について話されていた。
30~40年ほど前のことらしく、今はやっていないのだろうが、なかなかに面白そうなことをしていたようだ。
(^_^)

鼓ヶ滝 / 林家正蔵(九代目)

2018年04月22日 | エンタメ
落語『鼓ヶ滝(つづみがたき)』林家正蔵(九代目)。
噺は、「多くの歌人が訪れる鼓ヶ滝。諸国を巡り歌の修行をしている西行も、この滝を前にして、"伝え聞く鼓ヶ滝へ来てみれば 沢辺に咲きし たんぽぽの花"と渾身と思える一句を読み、悦に入っていた。山道を歩いて疲れてしまったのか、松の根に腰掛けてうとうととしてしまった西行は・・・」という内容。
目が覚めると辺りは真っ暗で、慌てて麓に降りようとするものの、山中ですっかり迷ってしまった。
そんな闇の中で見つけた一軒家。
不気味な山姥(やまんば)でも登場しそうな展開だが、これはそういう噺ではないのだった。
(^。^)
さて、演者の九代目林家正蔵師匠は、実の父でもある初代林家三平(1925年~1980年)師匠の弟子。
祖父が七代目林家正蔵(1894年~1949年)師匠で、弟が二代目林家三平師匠ということだから、代々落語を家業としているようであるが、1970年代から俳優としても多くのドラマに出演したり、『タッチ』(1985年~1987年)や『こちら葛飾区公園前派出所』(1996年~2004年)といったテレビアニメで声優としても活躍されていたようだ。
林家正蔵という大きな名前に負けないよう、精進していただきたく思うものである。

羽団扇 / 柳家小満ん(三代目)

2018年01月10日 | エンタメ
落語『羽団扇柳家小満ん(三代目)。
噺は、「正月二日の年始回り。行く先々で酒を飲み、いい気持ちで帰宅した男。外で飲むのと内で飲む酒は違うと、まだ飲むつもりでいたものの、"今夜見るのが初夢だから、お宝を二枚買って枕の下に敷いてあります。早く寝ないと長屋の人達に良い夢を見られちゃいますよ"と言う女房に、酒を飲ませてもらえない。すっかり酔っぱらっていた男は、あっという間に眠ってしまったのだが・・・」という内容。
二日の夜から三日の朝にかけて見る夢が、"初夢"なのだそうで、江戸時代は正月二日になると、"舟屋さん"が「えー、お宝、お宝。えー、お宝、お宝、お宝」と、宝船の絵を売って歩いたのだそうだ。
それを枕の下に置いて寝ると、良い初夢が見られるという縁起担ぎということだ。
「早く寝ないと、長屋の人達に良い夢を見られちゃいますよ」というのは、酔っ払いを寝かしつけようとする子供騙しみたいなものなのだろうが、それを素直に聞いて寝てしまうのだから、酒癖は悪くない男のようだ。
(^。^)
噺の中に随分と俳句が出てくるのだが、"去年今年(こぞことし)"という新年の季語があるのだそうで、過ぎ去っていく年と来たる新年を思い、感慨深く神妙な心持ちになる様子が思い浮かぶようなナカナカ面白い季語のように思う。
さて、演者の三代目柳家小満ん師匠は、"黒門町の師匠"と呼ばれた八代目桂文楽(1892年~1971年)師匠の弟子だったが、文楽師匠の死去に伴い、五代目柳家小さん(1915年~2002年)師匠の一門に移籍したとのこと。
その五代目柳家小さん師匠も、入門した四代目柳家小さん(1888年~1947年)師匠の死去により、八代目桂文楽師匠の預かり弟子になったということなので、この辺りはなかなかに強いつながりがあるのだろう。
九代目林家正蔵師匠によると、三代目柳家小満ん師匠はとてもお洒落な人なのだそうだ。
(^_^)

転失気 / 桂文治(十一代目)

2017年11月22日 | エンタメ
落語『転失気桂文治(十一代目)。
噺は、「あるお寺。2~3日身体の調子がすぐれないという和尚を往診した医師は、下腹部の張りが気になったことから、"和尚さん、転失気(てんしき)はございますかな"と訪ねた。何を聞かれているのか分からなかった和尚だが、知ったかぶりをして、"転失気はございません"と答えたものの、医師がそれを踏まえて薬を調合するというので、不安になる。そこで和尚は、物知り小僧の珍念を呼んで、それとなく尋ねるのだが、珍念も何のことか分からない。困った和尚は、薬を取りに行かせるついでに、門前の雑貨屋や花屋で"転失気"を借りてくるように命じるのだったが・・・」という内容。
これはとても短い噺で、10分ほどの長さしかなく、随分と分かりやすい展開。
エンターテインメントなので強調はされているのだが、この和尚のような、知ったかぶりをしてしまう人というのはどこにでもいることだろう。
(^_^;)
当代の桂文治師匠は、多少しゃがれ声なものの、活舌が良いので聞きやすい噺家さんだ。
そして、この"桂文治"という名跡は、"止め名"ということであり、江戸の落語では、古今亭志ん生三笑亭可楽三遊亭圓生春風亭柳枝林家正蔵柳家小さん等と並び、同じ亭号の中の最高位の名跡なのだという。
初代桂文治は200年ほども前の人のようで、随分と歴史を感じるのだった。

家族はつらいよ

2017年11月08日 | ムービー
『家族はつらいよ』(2016年/山田洋次監督)を見た。
物語は、「かつての新興住宅地で三世代同居をしている平田家。周造(橋爪功)は引退してゴルフ三昧、妻の富子(吉行和子)はカルチャースクール通い。家事は長男・幸之助(西村雅彦)の嫁・史枝(夏川結衣)がこなしていた。ある日のゴルフ帰り、お気に入りの美人女将・かよ(風吹ジュン)の小料理屋で一杯やって上機嫌で帰宅すると、自室の花瓶に綺麗なバラが飾られているのに気がついた。誕生日に花をプレゼントするのが仲間の決まりで、その日は富子の誕生日なのだという。すっかり忘れていた周造はたまにはプレゼントをしようと欲しいものを聞いてみると、この離婚届に押印してくださいと言われ・・・」という内容。
冒頭、史枝にオレオレ詐欺の電話と間違われ、憤慨している周造に対して、友人は「ざまあみろ。君はいつの電話だっていきなり俺!俺!だもの。感じ悪いんだ。いつかは意見をしてやろうと思ってたんだ」と言う。
長年、仕事一途のサラリーマン時代を過ごしてきたという周造は、結構言葉がキツイし、態度が横柄だったりもするのだろう。
富子が突然切り出した"熟年離婚"の危機は、家庭の中ででも積もり積もったそういうものが原因だったのか。
長女・成子(中嶋朋子)と夫の金井泰蔵(林家正蔵)の離婚騒動はこの騒ぎでうやむやになり、次男・庄太(妻夫木聡)が初めて家に連れてきた恋人・間宮憲子(蒼井優)との初顔合わせは気まずくなり、せっかく奮発した特上ウナギもすっかり無駄になってしまった。
実際、不思議なもので、平穏な中に起きる事件というのは、何故か次々重なって起きるものである。
(^_^;)
何だか淡々と展開するエピソードが多くて、少し物足りなく感じたし、物語中盤に泰蔵役の林家正蔵が、父・初代林家三平(1925年~1980年)の「どうもすいません」というギャグを使う演出があったのだが、あれはそういう場面ではなかったので、少し残念に思った。