仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

男はつらいよ フーテンの寅

2021年09月25日 | ムービー
シリーズ第3作『男はつらいよ フーテンの寅』(1970年/森崎東監督)を見た。
物語は、「久しぶりに故郷、葛飾柴又の実家・団子屋とらやに帰ってきた車寅次郎(寅/渥美清)を、梅太郎(タコ社長/太宰久雄)が口利きをした縁談が待っていた。見合い相手は料理屋の駒子(春川ますみ)という女中だったが、実は彼女は寅の知り合い。しかも駒子には夫がいたはずで、身ごもってもいるのだった。すっかり酒に酔って泣きまくる駒子と夫・為吉(晴乃ピーチク)のよりを戻させるために奮闘し、二人をとらやに連れて来た寅だったが・・・」という内容。
二人のために結婚祝賀会を開いた寅だったものの、宴会費用もハイヤー代もすべてとらや宛の請求。
縁も所縁もない二人のためにお金を使わされる羽目になった車竜造(おいちゃん/森川信)もつね(おばちゃん/三崎千恵子)も怒り心頭だが、それはもっともな話だ。
大騒ぎした挙げ句に、妹・さくら(倍賞千恵子)の夫・諏訪博(前田吟)と取っ組み合いの喧嘩をして家を後にした寅だったが、滞在先の三重県湯の山温泉で、おいちゃんとおばちゃんにバッタリ出くわしてしまうのだから笑える。
(^_^)
それにしても、さくらは優しい妹だ。
自分の見合い相手の結婚を祝う立場になってしまった寅の気持ちをおもんばかって慰めるなんてことは、さくらにしか出来ない芸当だ。
これにはいくらか寅も救われたことだろう。
(^_^)
冒頭の場面では、天涯孤独だという信州の旅館の仲居(悠木千帆 / 樹木希林)にさくらやおいちゃんの写真を見せ、女房だ親父だと嘘をつく寅が映し出されていたが、借金から芸者をしている娘・染奴(香山美子)を妾に出さざるを得なくなった同業・坂口清太郎(花沢徳衛)と同様、どうにも哀れに描かれていた。
シリーズ第5作『男はつらいよ 望郷篇』(1970年/山田洋次監督)もそうだが、男はつらいよシリーズの初期の作品は、恋愛云々と同じくらいにテキヤ稼業の儚さというものが描かれていたように思う。

男はつらいよ 寅次郎忘れな草

2021年07月31日 | ムービー
シリーズ第11作『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』(1973年/山田洋次監督)を見た。
物語は、「車寅次郎(寅さん/渥美清)が故郷柴又のとらやに帰ってきた。仏間で御前様(笠智衆)がお経をあげているのを、家の誰かが死んだものと勘違いしたり、妹さくら(倍賞千恵子)がピアノも買えないのはタコ社長(太宰久雄)が諏訪博(前田吟)に払っている給料が安いからだと毒づいたり、早々に騒動を起こしてしまう。居ずらくなって初夏の北海道へ向かった寅さんは、網走行きの夜汽車で、外の暗闇を見ながら一人涙を流す女性が気になった。翌日偶然にそのリリー(浅丘ルリ子)と出くわし、言葉を交わした二人だが・・・」という内容。
息子の満男にピアノを買ってやりたいと言うのを聞いた寅は、早速おもちゃのピアノを買ってきて得意満面の様子だが、これは誰でも分かる勘違い。
そこになかなか気がつかないのが寅さんなので、竜造(おいちゃん/松村達雄)、つね(おばちゃん/三崎千恵子)など周囲の人達が何かと気を使う。
さすがに寅さん本人もハッと気がついた時には、引っ込みがつかなくなってしまってどんどんとおかしな雰囲気になってしまうのは、お約束のようなものだ。
(^_^)
しかし、自分に照らし合わせて考えられることだとすんなりとよく分かるのか、寅さんがリリーの気持ちを察するのは早かった。
リリーも寅さんにはシンパシーを感じていたのか、二人はなかなか良い雰囲気になるのだが、うまく行かないのが寅さんシリーズ。
ハッピーエンドはシリーズの終了を意味することなので、そうはならないのだ。
(^_^;)
残念。

男はつらいよ 寅次郎物語

2018年03月30日 | ムービー
シリーズ第39作『男はつらいよ 寅次郎物語』(1987年/山田洋次監督)を見た。
物語は、「柴又駅前の自動販売機でジュースを買った満男(吉岡秀隆)は、野球帽をかぶった少年に、"にいちゃん、寅さんを知ってる?"と声を掛けられて驚いた。見ると、寅さんからの年賀状を持っている。とらやに連れて行き、母のさくら(倍賞千恵子)、おばちゃん(つね/三崎千恵子)、あけみ(美保純)が話を聞くと、父親が生前に"俺が死んだら寅さんの所へ行け"と言っていたので群馬から一人で来たのだと言うが、はっきりしたことは分からないのだった。そして翌日に帰ってきた車寅次郎(寅さん/渥美清)によると、その少年は秀吉といい、自分が名付け親なのだという。秀吉の父親・佐藤政吉は"般若の政"と呼ばれ、女房の髪を掴んで引きずり回すような酷い男。秀吉の母親・ふで(五月みどり)の蒸発したと聞かされてもさほど驚いてない様子だった。可哀想に一人きりになってしまった秀吉のため、ふでを探し出そうとする寅さんは・・・」という内容。
仲間のポン州(関敬六)等を訪ね、ふでの居所に見当がついた寅は、秀吉と2人で和歌山市へと行くのだが、ふでは既にそこにいなかったことから、奈良市の旅館・翠山荘に向かうものの、そこにももういない。
これには寅さんもガッカリで、秀吉も高熱を出して寝込んでしまうのだが、うんうんと唸る秀吉を前にして、なんと東京のさくらに"どうしたらいい?"と電話をかけるほどに(もうどうしていいか分からず)パニックだったのだろう。
フロントに声を掛けても医者を呼んでもらえず、タクシーで迎えに行って往診をしてもらったが、診た菊田医師(松村達雄)は「どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!!」と怒り出す。
この時に助けてくれたのが隣の部屋の客・高井貴子(秋吉久美子)だったが、これは本当に助かった。
このエピソードの際の、
貴子「おとうさん、帳場に寄ってタオルをあと何枚か届けるように言うて」
寅「うん。かあさん、あと頼んだぜ」
とか、
医者「おかあさん、お尻出しなさい」
貴子「えっ。お尻・・・」
医者「あんたのお尻じゃない。子供のお尻じゃ」
といったやり取りは笑いのセンスが感じられて面白いし、今回のシリーズ第39作は極端な物語だったけれども、博(前田吟)や、あけみ、満男の設定や台詞もこれまで以上に練られているような気がして、ドタバタ劇にとどまらない、いつにもまして良い作品だったように思う。
特に、「おじさん、人間てさ・・・。人間は何のために生きているのかな?」という満男の台詞は、見ているこっち側も考えさせられる。
『男はつらいよ』に3回登場したリリー(浅丘ルリ子)はシリーズを代表するキャラクターの一人だが、貴子はこの1回しか登場しないとはいえ、とても印象深いキャラクターになった。
これはナカナカに素晴らしい作品だった。
(^_^)

八つ墓村

2017年12月08日 | ムービー
『八つ墓村(1977年/野村芳太郎監督)を見た。
物語は、「新聞の尋ね人広告で自分が探されていることを知った寺田辰弥(萩原健一)は、早速、大阪の弁護士事務所に連絡を取った。その依頼主は岡山県三田村在住の資産家で、辰弥の異母兄だという多治見久弥(山崎努)だったが、療養中のため、辰弥の母・鶴子(中野良子)の父親である井川丑松(加藤嘉)が事務所に迎えに来ていた。ところが丑松は、諏訪啓弁護士(大滝秀治)に紹介された直後に、突然苦しみもがき死んでしまう。辰弥は、父方の親戚筋の未亡人である森美也子(小川眞由美)の案内で、生れ故郷に向かうことになったのだが、彼女の説明によると、ここは町村合併するまで、"八つ墓村"という何とも恐ろしい名称だったという。その八つ墓村と多治見家にまつわる話は戦国時代にまでさかのぼり・・・」という内容。
1566(永禄9)年、毛利との戦に敗れ落ち武者となった武将・尼子義孝(夏八木勲)が同胞(田中邦衛)らと計8人で村外れに住みついたが、毛利からの褒美に目がくらんだ村人達の策略で惨殺されたという。
その際の首謀者、庄左衛門(橋本功)は莫大な山林の権利を与えられ、今の多治見家の財の基礎を築いたのだが、義孝に「末代まで祟ってやる」と呪われ、庄左衛門はその後に発狂、村人7人を斬殺し、自らも首を斬り飛ばし突然の死を迎えたのだという。
思いがけず多治見家の財産を相続することになった辰弥を、その落ち武者の祟りが放っておくはずがない。
(^_^;)
丑松、久弥をはじめ、金遣いの荒い医師の久野(藤岡琢也)、辰弥の出生の秘密を知るただ一人の人物である工藤校長(下條正巳)など、辰弥にまつわる村人が次々と死んでいくことになるのだから、探偵・金田一耕助(渥美清)雇い、調査に派遣した諏訪弁護士の見立ては正しかったわけだ。
ただ、残念ながら金田一耕助は次々に起きる事件を未然に防ぐことはできないというのが、横溝正史原作の同シリーズにおける共通点なので、これは誰が監督をしようと、誰が金田一耕助を演じようと変わらない展開だ。
(^。^)
ただ、石坂浩二古谷一行などの主演シリーズ作品と違ったのは、時代設定。
第2次世界大戦終了直後の昭和20年代ではなく、昭和52(1977)年という設定になっていた。
辰弥は、「母親が生まれた所を見てみたかった」、「父親がどんな人か知りたかった」という理由から見ず知らずの土地に赴いただけだったのに、とんだ災難に巻き込まれてしまうのだが、一連の事件は、まさに"八つ墓村の祟り"。
そして、事件の謎ときというより、まるで"オカルト映画"を彷彿とさせる内容も、他の作品とは趣が違っていて面白かった。

男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花

2017年09月28日 | ムービー
シリーズ第25作『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』(1980年/山田洋次監督)を見た。
物語は、「久々に帰ってきた車寅次郎(寅さん/渥美清)だったが、ちょうど水元公園にあやめ見物に出かけようとしていた車竜造(下條正巳)、つね(三崎千恵子)、諏訪博(前田吟)、さくら(倍賞千恵子)ら、"とらや"の面々と早速ひと悶着。帰ってきたばかりだというのに、すっかりへそを曲げてしまった寅さん。店を飛び出していこうとしたのだが、そこへちょうど配達された寅さんあての速達に気がつく。その手紙は入院しているという松岡清子(リリー/浅丘ルリ子)からの手紙だった。"旅先の沖縄で血を吐いて倒れ、入院している。また寅さんに会いたかった。それだけが心残り"という随分と弱気なことが書かれていた。早速、沖縄に向かおうとする寅さんだったが・・・」という内容。
さくらが手紙を一行読むたびにいちいち反応して返事をする寅さん。
たこ社長(太宰久雄)が同じように口を挟むと「黙ってろ!!たこ!!」と怒鳴りつけるのが面白い。
(^_^)
身寄りのないリリーとあって誰も見舞いになど来るはずもなく、ずっと一人きりだったようだ。
寅さんが預かってきた御前様(笠智衆)やたこ社長からのお見舞いを手にして、「お見舞いなんて初めてもらった」と喜んでいたし、寅さんが見舞いに来るからと化粧もする。
それまで医者の言うことを聞かなかったけれど、寅さんが来てからはきちんと治療に前向きにもなったらしい。
長い一人きりの生活が続いた人生で、随分と心も病んでいたのだろう。
沖縄の暑さはとても耐えられる暑さではないようで、初めのうちは真面目にテキヤ稼業に励んでいた寅さんだったものの、やがて毎日ぶらぶらし始めるようになる。
リリーの退院後は、国頭フミ(間好子)の家に住まわせてもらうようになり、息子の高志(江藤潤)が連れて行ってくれた水族館が寅さんの大のお気に入りになったようだ。
涼しさを求めて電柱の細長い陰にさえ隠れようとするくらいだから、もう限界だったのだろう。
(^。^)
リリーはこのシリーズ全48作のうち、『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』(1973年/第11作)、『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』(1975年/第15作)、『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』(1980年/第25作)、『男はつらいよ 寅次郎紅の花』(1995年/最終作)の4作品に登場したマドンナだったが、二人の気持ちが通じ合っていたにも関わらず、「男に食わしてもらうだなんてまっぴら」というリリーと、結婚に消極的な寅さんの意地がぶつかり合うばかりで、どうにもならなかったのはとても残念だった。

男はつらいよ 寅次郎恋歌

2017年08月14日 | ムービー
シリーズ第8作『男はつらいよ 寅次郎恋歌』(1971年/山田洋次監督)を見た。
物語は、「母親が危篤との電報を受けた諏訪博(前田吟)は妻・さくら(倍賞千恵子)と共に故郷・岡山県高梁市へと向かったが、臨終には間に合わなかった。"母さんは幸せだった"と言う長男・毅(梅野泰靖)、次男・修(穂積隆信)に対し、"母さんは不幸な人生を送った。まるで家政婦だった"と反論する博。一人になった父・飈一郎(ひょういちろう/志村喬)は、たまたま近くにいたことから弔問に訪れた車寅次郎(寅さん/渥美清)と数日を過ごし、自身が幸せについて考えるきっかけになった話をする。"りんどうの花が咲き乱れ、夕げの明かりとともに笑い声が聞こえてくる・・・"と聞かされた寅次郎は故郷・柴又へと帰り・・・」という内容。
とらやの近所に新規開店した喫茶店の経営者・六波羅貴子(池内淳子)の存在を知ってしまえばまた一騒動が起きてしまうからと、何とか寅さんと出会わないように仕向ける車竜造(おいちゃん/森川信)と堤梅太郎(たこ社長/太宰久雄)だったが、それは無理な話。
出会ってしまうのは時間の問題だ。
(^_^;)
案の定すっかり貴子に惚れてしまい、何とか彼女の役に立ちたいと奮闘する寅さんなのだが、やはりどうにもうまくいかないのだった。
さて、本作撮影時のメイキング映像には「しっかりした自分が演じているおっちょこちょいで馬鹿な寅次郎に対しては、役者として優越感を持っていたんですが、最近は渥美清とフーテンの寅はあまり変わらないのではないかと思い始め、もっとしっかりしないと寅次郎に置いてきぼりにされてしまうのではないかという気がしてるんです」とか「寅と切っても切れない何か血の繋がりのようなものをだんだん感じてくるようになってしまった」という(確かそんな感じの)渥美清(1928年~1996年)のインタビューが収録されている。
観客側はいつしか、俳優・渥美清と映画の登場人物・車寅次郎を同一化するようになってしまったのかもしれないと思っていたが、永年演じ続けた役者さんの中にも作品のキャラクターがすっかり住み着いてしまっていったのかもしれない。
また、テレビ版からおいちゃんを演じていた森川信(1912年~1972年)の「ばかだねぇ・・・」という台詞は何とも味のある表現がされていたが、残念ながらこれがシリーズ最後の出演だったようだ。

男はつらいよ 奮闘篇

2017年07月11日 | ムービー
シリーズ第7作『男はつらいよ 奮闘篇』(1971年/山田洋次監督)を見た。
物語は、「車寅次郎(寅さん/渥美清)の母親・菊(ミヤコ蝶々)が京都からやってきた。1年前に"近々、嫁をもらう"というハガキを受け取っていたがどこにいるか分からないので、とらやの竜造(森川信)とつね(三崎千恵子)を訪ねてきたのだという。さくら(倍賞千恵子)を嫁と思い込み、満男を寅の子供だと勘違いする菊。そんな折にタイミングを計ったかのように帰省してきた寅は、さくらと2人で菊が滞在するホテルを訪ねはしたものの、そこで大きな親子喧嘩をしてしまう。部屋を飛び出して行った寅は、駅近くのラーメン屋で花子(榊原るみ)という女性と出会ったのだが・・・」という内容。
別れ際、あまりに心配だったので、何かあったら"とらや"を訪ねろと言ってメモを手渡したことから、あとで花子はとらやに寅を訪ねてくることになるのだが、寅はそこに帰ってくる。
フーテンのはずなのに、本当に都合が良すぎる展開だ。
(^。^)
働きたいという花子に、御前様(笠智衆)に頼んで柴又帝釈天のおみくじ販売の仕事を紹介してもらうものの、たこ社長(太宰久雄)の印刷会社の時と同様、寅のあまりに酷い"妄想"の末にどれもうまくいかないことになってしまう。
そして結局は、とらやで働くことになるのだが、当然の成り行きだと思いつつ、それでも寅の"過保護"(!?)ぶりに皆が振り回される。
(^_^)
シリーズの他作品と少し違う展開だったのが、「私、寅さんの嫁っコになるかなぁ」とマドンナから告白されるところ。
知的障害があるように描かれていたマドンナなので、これにはさくらや博(前田吟)、おいちゃん、おばちゃんも困惑気味。
菊との再会場面では、菊のあまりのけなしように、腹を立てながら寅をかばったさくらでさえ、花子と寅の結婚には拒否反応がありあり。
おそらくは、寅も花子も大差がないと思われていたのだろう。
(^_^;)
ラーメン屋のおやじ役で落語家・5代目柳家小さんが出演していたが、寅に出されたラーメンにはスープが全然入ってなくて笑ってしまった。
その辺りの演出は意外と適当だったのだろう。

男はつらいよ 望郷篇

2017年06月16日 | ムービー
シリーズ第5作『男はつらいよ 望郷篇』(1970年/山田洋次監督)を見た。
物語は、「おじの竜造(おいちゃん/森川信)が倒れる夢を見た車寅次郎(寅さん/渥美清)が心配になって"とらや"に電話をしたところ、つね(おばちゃん/三崎千恵子)の言った冗談、"もう息をしてるってだけなんだよ"との答えに驚き、慌てて柴又へ帰るのだが、途中で葬儀屋の手配まで済ませてしまい、"そんなに俺を殺したいのか!!"と怒り心頭の竜造と大喧嘩になってしまう。そんな折、舎弟の登(津坂匡章/現・秋野太作)が"札幌の竜岡政吉親分(木田三千雄)が重病で兄貴に会いたがっている"と知らせにきた。早速、札幌市内の病院に親分を見舞った寅さんは、身寄りのないはずの親分から、"かつて旅館の女中に産ませた息子・石田澄雄(松山省二)に一目会いたい"と懇願され、登と2人、小樽市へと向かうのだが・・・」という内容。
東京から札幌までの旅費が工面できない寅は、妹・さくら(倍賞千恵子)から5,000円を用立ててもらうのだが、それは第2作『続 男はつらいよ』(1969年/山田洋次監督)で、「これで満男に飴でも買いな」と渡した5,000円だった。
その際には夫・博(前田吟)も驚いたほどの随分と厳しい口調で説教をされたばかりだったし、すっかり情けない状況の寅さんだったのだが、その後の場面を見ると、それほどふさぎ込んだ様子も感じられなかったのは流石に"フーテンの寅"と呼ばれる所以だと思った。
しかし、草相撲で北海山という四股名で大関まで張ったという親分のすっかり小さくなってしまった身体と、哀れな末路を目の当りにした寅さんは、やくざ稼業のみじめさを思い知らされることになる。
紆余曲折の末、浦安の三七十屋(豆腐屋)で働くことになる寅さんだが、その一連のエピソードの際の登場人物、三浦節子(長山藍子)、木村剛(井川比佐志)、三浦富子(杉山とく子)は、かつてのテレビ版『男はつらいよ』(1968年~1969年)で、さくら、博、おばちゃんを演じた役者さん達とのことで、山田洋次監督はこの第5作をもってシリーズに区切りをつける考えだったようだ。
まぁ、そういう思惑通りにはならなかったわけだが。
(^_^;)

続 男はつらいよ

2017年05月12日 | ムービー
シリーズ第2作『続 男はつらいよ』(1969年/山田洋次監督)を見た。
物語は、「20年ぶりだった前回の帰省から1年も経たないうちに再び故郷・葛飾柴又に帰ってきた車寅次郎(寅さん/渥美清)。車竜造(おいちゃん/森川信)と車つね(おばちゃん/三崎千恵子)が切り盛りする"団子屋とらや"にはちょうど妹・諏訪さくら(倍賞千恵子)が夫・博(前田吟)との間に生まれたばかりの赤ん坊・満男と一緒にいた。引き止められながらも、お茶を飲む間もなく旅に出ようとした寅さんだったが、恩師・坪内散歩(東野英治郎)の家をふらりと訪ね、20数年ぶりに顔を合わせた先生の娘・夏子(佐藤オリエ)に見惚れてしまう。その夜、先生宅でごちそうになり、酒を飲んですっかりご機嫌になった寅さん。ところが、突然に胃痙攣を起こし、救急車で金町中央病院に運び込まれてしまった・・・」という内容。
翌日、夏子は医師の藤村薫(山崎努)から「食あたりの類いではなく、良いものを食べ過ぎて胃がびっくりしたんですよ」との説明を受け、当の寅さんもすっかり元気だと聞き、ホッとする。
そりゃあ、自分の料理のせいでの入院ともなれば大変だ。
家でゆっくりなんかはしていられなかったことだろう。
(^_^;)
病室で患者達に啖呵売の実演をしてみせる寅さんは、あまりの騒々しさに医師や看護婦からは怒られ、さらには、見舞いに来た舎弟の川又登(津坂匡章/現・秋野太作)と無断外出して焼肉を食べ、挙げ句の果てには無線飲食で一晩留置場に泊まることになる。
これは警察に呼び出された妹さくらが可哀想だし、逃げるように京都へと向かわなくてはならない寅さんも情けない。
名前は知っているものの顔が分からないという寅さんの母親が夢に出てきて、「また夢か…」とつぶやく場面から始まるのだが、一ヶ月後の京都では自分を捨てたという母親・お菊(ミヤコ蝶々)を探すことになる。
それには坪内先生が随分と大きく関わるのだけれど、この母親と坪内先生に関するエピソードが何とも切ないのだった。
元々テレビドラマだった『男はつらいよ』の映画化にあたっては、全5作品での完結を予定していたらしいので、第1作『男はつらいよ』(1969年/山田洋次監督)から第5作『男はつらいよ 望郷篇』(1970年/山田洋次監督)まで、かなり濃い内容になっているのだろう。
これも面白い物語だ。

ストリッパー

2016年10月05日 | ムービー
『ストリッパー』(2012年/片岡修二監督)を見た。
物語は、「母親が交通事故で不慮の死をとげた時、小百合(江口ナオ)はまだ15歳だった。生活のために様々な仕事をし、18歳の時に水商売の世界に入ったが、誘われてストリッパーとなり、それからは裸ひとつで弟妹を育ててきた。弟シュンスケ(大石貴之)は高校を中退してしまったが、妹・凛子(周防ゆきこ)は大学を卒業し、大企業と呼ばれるところに勤めることができた。母親代わりの小百合にとって自慢の妹・凛子は勤務先の常務の息子・高井清彦(古藤真彦)と結婚を前提に交際をしていたが、凛子の姉がストリッパーだということを父親(山内としお)に打ち明ける前に知られてしまい、結婚を反対されてしまう。それを聞いて頭に血が上った小百合は、凛子が勤めている会社に押しかけるのだったが・・・」という内容。
唯一の楽しみが凛子の成長だなんて本当の母親のような小百合なのだが、あまりに自慢話が過ぎるものだから、踊り子仲間からはうんざりされている。
シュンスケが凛子に「遊びもしないで仕事ばっかり。夜中に姉ちゃんが俺の高校の教科書を一生懸命に読んでるところを見ちゃったんだ。きっと高校に行きたかったんだと思うよ」(確かそんな台詞)と話すエピソードがあったが、小百合には自分の人生を半ば犠牲にしてまで弟妹を育ててきたという自負があるのだろうから、自慢の妹の話をちゃんと聞いてもらえないだなんて少し可哀想な気もした。
結婚を家同士のつながりと考えている清彦の父に反対されたものの、その理由は小百合がストリッパーだということだけではなく、"前科2犯"であるということが大きな理由のようだった。
確かに"前科"は厳しいかな・・・。
(-_-;)
しかし、ストリッパーには"公然わいせつ罪"というのがついて回るものなのだろうか。
そうなると、どんどん再犯の回数が増えていくことになってしまうのだが、「冗談じゃないよ。被害者連れて来いってんだ。なんで被害者もいないのに犯罪なんだよ!!」という小百合の台詞には、そういう見方もあるのかと思って少しばかり感心してしまった。
(^_^;)
たまたま、これとほぼ同時期に『田村淳の地上波ではダメ!絶対!/アトゥシナイトSP!』というテレビ番組(BSスカパー!)で、現存する日本最古のストリップ劇場だという"浅草ロック座"と、俳優・渥美清(1928~1996年)の没後20年特集番組の際の『アナザーストーリーズ運命の分岐点/映画"男はつらいよ"~寅さん誕生、知られざる秘話』(NHK総合)等での"浅草フランス座"といったストリップの話題に触れたりしたものだから、少しばかり気になってしまったのだった。
(^_^)

男はつらいよ

2008年09月27日 | ムービー
シリーズ第1作目の『男はつらいよ』(1969年/山田洋次監督)を見た。
何でも今年は【男はつらいよ40周年】だそうである。
物語は、「20年前に家出をして以来所在不明だった車寅次郎(寅さん/渥美清)が、テキ屋になって突然故郷に帰って来た。家は、東京・柴又帝釈天の門前にある団子屋で、妹・櫻(倍賞千恵子)、叔父・竜造(おいちゃん/森川信)、叔母・つね(おばちゃん/三崎千恵子)らと感激の再会を果たす。翌日、二日酔いの竜造に代わり、御曹司・鎌倉道男(広川太一郎)と櫻の見合いに同席することになった寅次郎だったが・・・」という内容。
これは、半年間放送されたテレビドラマ『男はつらいよ』の主人公・寅次郎(渥美清)が不慮の死を遂げて番組が終了してしまったことから、映画の世界で再度活躍させたということだったらしいが、テレビ版とキャストが少し違っているとはいえ監督・脚本は同じなので、寅さんの世界はすでにほぼ完成されていたようだ。
櫻と諏訪博(前田吟)の結婚式後、幼馴染・冬子(光本幸子)の元に足しげく通う寅さんだが、釣竿を持ち麦わら帽姿でニコニコしながら訪ねると、冬子は庭で客と話をしている。
御前様(笠智衆)に「御親戚で?」と尋ねると、「あの男はこれから親戚になる男だ」との返事が返ってくるのだが、こういった切ない場面が、その後(平成7年まで)全48作も展開されることになるだなんて誰も予想しなかったことだろう。
(^_^)

男はつらいよ 寅次郎恋やつれ

2008年01月28日 | ムービー
シリーズ第13作『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』(1974年/山田洋次監督)を見た。
寅さんシリーズは、平成14年から2年間の『男はつらいよ/全48作大放送』(TVh)と平成17年から2年間の『男はつらいよ/48作放送』(NHK-BS)でこれでもかというくらいに見まくったが、この『男はつらいよ/寅次郎恋やつれ』には余り印象が無い。
まぁ何回かは見逃しているはずなので、偶然にも両方の特集で見逃していたのかもしれない。
(^^ゞ
さて、寅さんシリーズ第13作目のこの作品は吉永小百合(歌子役)がマドンナで、シリーズ第9作『男はつらいよ 柴又慕情』(1972年/山田洋次監督)での設定を引き継いでいる。
「前作で親の反対を押し切って結婚した歌子だったが、夫とは死別し、その後も夫の実家で生活していた。そんな所に偶然寅次郎(寅さん/渥美清)が現れたことをきっかけに新しい生活を始める決心をつけ、葛飾柴又の"とらや"を訪ねる」という物語。
そこからいつものドタバタ劇が始まるわけだが、本作は前12作品よりも深く「幸せとは何か」を掘り下げていたように思う。
寅さんと妹・さくら(倍賞千恵子)のやり取りの中で、「おにいちゃんは自分の幸せしか考えてないじゃない。歌子さんがずっとうちの2階で生活し続ければお兄ちゃんは幸せかもしれないけど、歌子さんは幸せにはなれないわ」(←たぶんこんな感じ)という台詞があったが、これには寅さんも返す言葉が無く、考えさせられたようだった。
また、歌子が少しきつめの表現で自分の父親を語る台詞があったのだが、このシーンは花越しに吉永小百合の顔が映されていた。
山田洋次監督はこういう映し方をあまりしないのだろうが、少しでも画面を穏やかにしようという(吉永小百合への)配慮なのだろうと思った。
さすが大女優だ。
(^_^)
物語の最後はいつも切ない終わり方になってしまう『男はつらいよ』だが、それでも寅さんのシリーズは楽しめる。

続・拝啓天皇陛下様

2006年07月26日 | ムービー
『続・拝啓天皇陛下様』(1964年/野村芳太郎監督)を見た。
続編が第一作を超えるのは難しいというが、それはこの映画も例外ではなく、残念ながら前作『拝啓天皇陛下様』を超えることは出来なかったように思える。
本作の主人公は前作と同じ山田ショウスケではなく、山口善助(渥美清)という男。
名前も似ているが、寝る場所の心配が無く、3食賄い付きで10日おきに給料も貰える軍隊生活が大好きで、昭和天皇を崇拝しているという設定もほぼ同じ。
キャラクター設定はおろか全体の物語の流れもほぼ前作のとおりに進行する。
面白かったのは、戦地の中国で対峙している敵兵たちが、深夜に「さくら~♪さくら~♪」と日本兵の故郷の歌を合唱する場面。
本場で四面楚歌、いや、四面倭歌というわけである。
(^_^)

あゝ失恋48連発

2006年02月22日 | ムービー
NHK-BSで昨(2005)年から、渥美清主演の映画"男はつらいよシリーズ"が第1作から順に放送されているのだが、前半の24作が終わったところで放送は一時中断、"あなたが選ぶ寅さんアンコール"という企画が行われている。
これは、前半24作の中でもう一度見てみたい寅さん映画をリクエストし、リクエストが多かった上位5作品を4月に再び放送するというもの。
2月10日に中間発表があったようで、これによると上位5作品は、
『男はつらいよ』(第1作/1969年/山田洋次監督)
『男はつらいよ/望郷篇』(第5作/1970年/山田洋次監督)
『男はつらいよ/寅次郎相合傘』(第15作/1975年/山田洋次監督)
『男はつらいよ/寅次郎夕焼け小焼け』(第17作/1976年/山田洋次監督)
『男はつらいよ/噂の寅次郎』(第22作/1978年/山田洋次監督)
ということだった。
『男はつらいよ/寅次郎恋歌』(第8作/1971年/山田洋次監督)もいいよなぁと思うのだが、4,167人の(熱狂的な?)寅さんファンが投票しているだけあって、上位の5作品は大体イイ線をいっている。
(^_^)
仁左衛門的に好きな映画は、第5作の『男はつらいよ~望郷編』かな。
この作品中の、妹さくら(倍賞千恵子)が兄寅次郎(渥美清)に対して言う台詞は強烈だ。
「額に汗して油まみれになって働く人と、いい格好してぶらぶらしてる人とどっちが偉いと思うの?
お兄ちゃん、そんなことが分からないほど頭が悪いの?
地道に働くっていうことは尊いことなのよ。
お兄ちゃん、自分の歳のこと考えたことある?
あと5年か10年経って、きっと後悔するわ。
その時になってからではね、取り返しがつかないのよ。
あぁ馬鹿だったなぁと思っても、もう遅いのよ」
こうまで言われちゃうと、寅さんも「はい」と答えるしかない。
(^_^;)
【地道】かぁ。
半紙に筆字で【地道】って書いて、壁に貼っておこうか。
この映画を見たあとにそう思った仁左衛門だった。

拝啓天皇陛下様

2005年08月06日 | ムービー
『拝啓天皇陛下様』(1963年/野村芳太郎監督)を見た。
3歳の時に母親と死に別れて以来天涯孤独の山田ショウスケ(渥美清)が、岡山の歩兵連隊に入隊した昭和6(1931)年からの物語なのだが、想像とは違って思いっきりコメディー映画なのだった。
(^。^)
誰かが「恐れ多くも天皇陛下の〜」と言った時は必ず直立不同の姿勢をとらなければならないなど、今はギャグとしてしか使われないだろうという場面があったが、これは昭和20年8月15日までは現実に行われていたことなのだろう。
しかも、自分の銃をきちんと片付けなかった時には、その銃を持って「38式歩兵銃どの、あなたをお休め申さずして煙草などを吸い、のうのう休憩などしておりました。何卒勘弁して下さい」と言いながら延々と反省させられたりする場面も形は違いこそすれ、こういったことも実際に行われていたことだろうと想像する。
「歯をくいしばれー!」とビンタされた時に手の平で耳を叩かれ、鼓膜が破れたという人の話を聞いたことがあるが、「新兵さんは可哀相だね。また寝て泣くのかよー」という消灯ラッパにつけた詞が表すごとくに古参兵士のシゴキは強烈だったのだろう。
それでも山田は、「ここは天国じゃ。雨が降っても三食喰える。田舎は地獄じゃ」と言う。
山田は満期になって除隊するのが嫌でずっと軍隊にいたいとのことだった。
確かに本作品で描かれている時代の日本は、先が見えない不況の真っ只中で、田舎の生活はドン底だったらしい。
「あなた、お元気ですか。隣のチヨちゃん、あんた好きだったのと違いますか。ちょっと見えないと思ったら50円で大阪のほうに売られて行ったんだそうです。その他にも何人も村から売られた娘がいます。私はあんたの所に嫁に来て助かったのです。また兄さんが借金の催促に来ました。今は畑に何もないので売る物がありません。お願いだからお金は使わないでうちへ送って下さい」という手紙を紹介する場面がこの時代をわかりやすく表しているのではないかと思った。
さて、表題のごとく天皇に「自分を除隊させないでほしい」という内容の手紙を出そうとした山田は、「不敬罪になるぞ」と仲間に止められた。
仁左衛門は学生時代にスーパーマーケットのダイエーでアルバイトをしていたことがあるのだが、中内会長(当時)が店の視察に来たことがあって、ある社員が「あの行列の前に飛び出して社長に直訴したらすぐにクビだな」等と言っていたことを思い出す。
それも"不敬罪"ということだったのだろう。
今はどちらの帝国も滅びてしまったわけだがね。