亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

米利上げサイクルの終えんで金ETF資金流入復活か

2023年11月20日 20時38分17秒 | 金市場

先週は14日発表の10月消費者物価指数(CPI)、15日発表の生産者物価指数(PPI)といずれも、もともと減速傾向を読んだ市場予想をも下回ることになった。金利先物の値動きからFRBの金融政策を予想する「Fed Watch(フェドウオッチ)」では、17日夕刻時点で年内最終となる12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)にて現行の金利水準(5.25~5.50%)を維持する(変更なし)確率が100%となった。

年明け以降の利上げ再開も予想できないことから、10年債利回りは低下。先週末は一時4.380%まで見た。

この動きに主要通貨に対し先週は、ドルも売られた。

ユーロは対ドルで続伸し、1.0917ドルの高値引けで週間ベースで2.16%の大幅上昇に。8月30日以来2カ月半ぶりの高値で終了。ドイツ連邦銀行(中央銀行)のナーゲル総裁が17日の講演で、「早すぎるタイミングで利下げを始めるのは賢明ではない」との見方を示したと伝わった。市場で浮上している欧州中央銀行(ECB)の早期利下げ観測をけん制する内容だとして、ユーロ買いにつながったとされる。

ユーロドルの上昇は、そのままドル指数(DXY)の下げに反映され、9月1日以来の安値まで下落し103.917で終了。週間では今年7月以降で最大の下げ率で終了ということに。ドル円の揺り戻しも17日は大きく、前日比1.14円安の149.59円で終了した。 週明け11月20日の市場では、ドル円は下げが続き、ここまで(日本時間20時)のところ148.19円まで安値を見ている。ドル指数は103.463まで売られている。

 

弱いものが目立った先週発表の米国指標の中で市場の反応が大きかったのは16日に発表された前週11月11日終了週の新規失業保険申請件数だった。23万1000件と1万3000件増加し、市場予想(ロイター調べ)の22万件増を上回り8月以来の高水準となった。前回分も小幅に上方修正された。労働市場を巡る状況が引き続き緩和していることを示唆した。

労働指標は遅行指標として知られるが、その中でも堅調が続いていた週次の新規失業保険申請件数も悪化が目立って来ている。

 

NY金については先週末17日はロンドンの時間帯だったが冒頭で触れたように米長期金利が低下した際に1996.40ドルと節目の2000ドルに迫った。その後1990ドル台前半で売り買い交錯状態となり1980ドル台前半で引けたのは、今週はサンクスギビングの連休を控えている関係で、先週末に一足先に売りが出たものと思われる。10月下旬にかけて先物市場でファンドの買い残が急増し、一種の荷もたれ感を感じさせる展開と言える。

 

ところで、先週末17日の動きで目に留まったのは金ETF(上場投信)の残高増。最大銘柄SPDR(スパイダー)ゴールド・シェアの残高が12.98トンと大幅に増加したことだった。

11月に入って以降、残高増の傾向が見られていたが、やはり米利上げ終了観測が欧米投資マネーの再流入を促しているとみられる。ちなみに国際的な金の広報調査機関ワールド・ゴールド・カウンシルの四半期統計では、年始から9月末までで金ETF全体の残高は278トン減少し3282トンとなっている。

この間に中央銀行の買いがネットで800トンとなっているので、計算上は金ETFがらみの現物売りは、中央銀行の買いにすべて吸い上げられたことになる。今年の金価格の底堅さの背景でもある。

ともあれ金ETFへの資金流入がどの程度の継続性と規模になるのか、注目される。

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