今年のフランス映画祭は、どうだったのかな?大物来日は、結局JBさんだけ?今年も参加できなかったので、前から観たかった日本未公開のフランス映画のDVDを入手して、独り映画祭をシャレこむことにしました♪
お松の第3回独りフランス映画祭①
「Violette Nozière」
イザベル・ユペールが1978年のカンヌ映画祭で女優賞を受賞した、後にゴールデンコンビとなるクロード・シャブロル監督の作品。
1930年代のパリ。両親と暮らす18歳のヴィオレット・ノジエールは、真面目な良い子を装いながら、ひそかに売春まがいな放埓を重ねるという二重生活を送っていた。愛する恋人ができた彼女は、男と一緒になるために邪魔な両親を...
いや~これ、なかなかの傑作ですよ。私が観たシャブロル監督の犯罪系作品の中では、「沈黙の女 ロウフィールド館の惨劇」と並ぶ面白さでした。日本未公開なのが惜しい。
この映画、実話だとか。ヴィオレット、とんでもない小娘です。両親の前では純真な乙女、街に出ると淫奔アバズレ。見た目といいキャラといい、ヤヌスの鏡も真っ青な変身ぶりもスゴい。梅毒になるわ、両親や引っ掛けた男の金をくすねるわ、しょーもない男に入れあげてアホな貢ぐちゃんと化すわ。挙句の果てが、貯金強奪のために両親殺しだもんね。最低最悪なバカ娘っぷりに唖然となります。こんな娘もった両親に、心から同情!殺されるために育てたようなもんだよ。子どもを産んで育てることが、ほんと怖くなった。
まさに外道な娘ヴィオレット、まったく悲壮感とか切迫感がないところが、返って怖くて不気味。常にシレっとしてて、かったるげな倦怠感に包まれていて、すごく得体が知れないキャラ。両親が憎い!とか、男への愛でやむにやまれず追い詰められて!とか、そんな凡庸なドラマティックさなど背負ってない。その謎に満ちた灰色さゆえに、よくある“悲劇の女事件簿”的なヒロインになってないヴィオレットです。殺人の動機だけでなく、ヴィオレットとパパの関係(幼い頃に性的虐待を受けた?)も、はっきりしないまま。真相は誰にも、いや、ヴィオレット自身でさえ分からない、みたいな不可解さが面白い。
シャブロル監督の犯罪ドラマの、劇的サスペンスな展開やシーンはないのに、ミシミシ静かにひび割れていく~じわじわ破局がきてる~な、淡々と漫然としたスリリングさが、私は大好きなんですよね。あと、異常で怖い話なのに、何かヘン、何か笑える、なキャラばかりなのがいつも楽しい。ヴィオレットの両親も、よく考えたらこの娘にしてこの親ありかも?な夫婦だし。特にママ。彼女とヴィオレットのやりとりからは、そこはかとなく女の性悪さや醜さが臭ってきて、滑稽でさえあります。しぶとく命拾いしたママと、被告人ヴィオレットとの法廷対決も、悲惨なはずなのに可笑しくもあって。拘置所前で歌われるシャンソンの歌詞に爆笑。ドロドロ陰惨な重さではなく、冷徹で皮肉な愉快さが、シャルブロル監督の犯罪ものの魅力でしょうか。
当時24、5歳?イザベル・ユペール、若き日の怪演に喝采!ユペりんってホント、静かに狂ってる、クールに病んでるって演技させたら天下一品、ていうか、そうでない彼女はつまんない。期待通りのヤバい毒娘っぷり、ブラボーでした。暑苦しい大熱演!じゃないところも好き。怖い!非道い!でもニヤッ&クスっとさせてくれる冷たい珍妙さは、もはや彼女の専売特許となってます。
それと。当たり前ですが、ユペりん若い!しかも、可愛い!童顔で今より顔が丸いので、すごく幼く見えてキュートでした。しかしまあ、20代半ばで、あの役あの演技。長澤まちゃみとか宮崎あおいでは、死んでもできないだろうな。当時の彼女みたいな女優、今はどこにもいないのが残念です。あばずれモードに入ってる時の、真っ黒な帽子&ファーコート姿が、まがまがしく妖しくも、どこか可憐なユペりんでした。
ヴィオレットについては、こちらを参照に...
ユペりんは、今年のカンヌ映画祭で審査員長を務めます。新作もいっぱいあるので、日本でも公開されてほしい!
お松の第3回独りフランス映画祭①
「Violette Nozière」
イザベル・ユペールが1978年のカンヌ映画祭で女優賞を受賞した、後にゴールデンコンビとなるクロード・シャブロル監督の作品。
1930年代のパリ。両親と暮らす18歳のヴィオレット・ノジエールは、真面目な良い子を装いながら、ひそかに売春まがいな放埓を重ねるという二重生活を送っていた。愛する恋人ができた彼女は、男と一緒になるために邪魔な両親を...
いや~これ、なかなかの傑作ですよ。私が観たシャブロル監督の犯罪系作品の中では、「沈黙の女 ロウフィールド館の惨劇」と並ぶ面白さでした。日本未公開なのが惜しい。
この映画、実話だとか。ヴィオレット、とんでもない小娘です。両親の前では純真な乙女、街に出ると淫奔アバズレ。見た目といいキャラといい、ヤヌスの鏡も真っ青な変身ぶりもスゴい。梅毒になるわ、両親や引っ掛けた男の金をくすねるわ、しょーもない男に入れあげてアホな貢ぐちゃんと化すわ。挙句の果てが、貯金強奪のために両親殺しだもんね。最低最悪なバカ娘っぷりに唖然となります。こんな娘もった両親に、心から同情!殺されるために育てたようなもんだよ。子どもを産んで育てることが、ほんと怖くなった。
まさに外道な娘ヴィオレット、まったく悲壮感とか切迫感がないところが、返って怖くて不気味。常にシレっとしてて、かったるげな倦怠感に包まれていて、すごく得体が知れないキャラ。両親が憎い!とか、男への愛でやむにやまれず追い詰められて!とか、そんな凡庸なドラマティックさなど背負ってない。その謎に満ちた灰色さゆえに、よくある“悲劇の女事件簿”的なヒロインになってないヴィオレットです。殺人の動機だけでなく、ヴィオレットとパパの関係(幼い頃に性的虐待を受けた?)も、はっきりしないまま。真相は誰にも、いや、ヴィオレット自身でさえ分からない、みたいな不可解さが面白い。
シャブロル監督の犯罪ドラマの、劇的サスペンスな展開やシーンはないのに、ミシミシ静かにひび割れていく~じわじわ破局がきてる~な、淡々と漫然としたスリリングさが、私は大好きなんですよね。あと、異常で怖い話なのに、何かヘン、何か笑える、なキャラばかりなのがいつも楽しい。ヴィオレットの両親も、よく考えたらこの娘にしてこの親ありかも?な夫婦だし。特にママ。彼女とヴィオレットのやりとりからは、そこはかとなく女の性悪さや醜さが臭ってきて、滑稽でさえあります。しぶとく命拾いしたママと、被告人ヴィオレットとの法廷対決も、悲惨なはずなのに可笑しくもあって。拘置所前で歌われるシャンソンの歌詞に爆笑。ドロドロ陰惨な重さではなく、冷徹で皮肉な愉快さが、シャルブロル監督の犯罪ものの魅力でしょうか。
当時24、5歳?イザベル・ユペール、若き日の怪演に喝采!ユペりんってホント、静かに狂ってる、クールに病んでるって演技させたら天下一品、ていうか、そうでない彼女はつまんない。期待通りのヤバい毒娘っぷり、ブラボーでした。暑苦しい大熱演!じゃないところも好き。怖い!非道い!でもニヤッ&クスっとさせてくれる冷たい珍妙さは、もはや彼女の専売特許となってます。
それと。当たり前ですが、ユペりん若い!しかも、可愛い!童顔で今より顔が丸いので、すごく幼く見えてキュートでした。しかしまあ、20代半ばで、あの役あの演技。長澤まちゃみとか宮崎あおいでは、死んでもできないだろうな。当時の彼女みたいな女優、今はどこにもいないのが残念です。あばずれモードに入ってる時の、真っ黒な帽子&ファーコート姿が、まがまがしく妖しくも、どこか可憐なユペりんでした。
ヴィオレットについては、こちらを参照に...
ユペりんは、今年のカンヌ映画祭で審査員長を務めます。新作もいっぱいあるので、日本でも公開されてほしい!
いかがお過ごしでしょうか?
昔の記事へのコメント、失礼いたします。
先般教えていただいた「フランス映画と女たち」3作ともコンプリートできました。
情報、ありがとうございました♪
これ、想像以上に面白かったです。
ユペール演じるヴィオレットのだめんずぶり、母親のイカレっぷり、父親の気持ち悪さ、、、どれもこれも強烈でした。
「レースを編む女」は対照的な役柄で(どっちも男に翻弄されるのは共通ですが(^^;)、こちらも良かったです。
ホント、見て良かった。たけ子さんに感謝感謝です。
また楽しいレビュー待ってます~!
すっかり秋になりましたね!秋を満喫されていることでしょうか。私はアル中で脳内に空っ風が吹いてます💦
Ooh,la la!フランス映画と女たち、楽しまれたのですね!重畳重畳!ヴィオレット・ノジエール、イサベル・ユペールの出演作の中ではいちばん好きかも。ヒドい話だけどなんか笑えるところがツボです。ヴィオレットやレースを編む女みたいな役を、日本の若手女優に演じてほしいものです。
映画またいっぱい観て、いっぱい語り合いたいです!すねこすりさんも体調に気を付けて!これからもレビュウたくさん拝読したいです(^^♪