麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第820回)

2023-08-06 08:35:43 | Weblog
8月6日

メフィストフェレスといえば、ゲーテ「ファウスト」。初めて読んだのは、高校一年のとき。旺文社文庫の佐藤通次訳でした(いまでも持っています)。なにか、とてつもなく古い、たとえば水木しげるの「悪魔くん」で、悪魔くんとカエル男の会話に登場する古文書のような、「魔法の本」を開くような気持ちで読み始めたら、「何十年勉強しても宇宙の真理はわからない」と絶望したファウスト博士がメフィストによって若返り、女を妊娠させて捨てる、というただそれだけの話(第一部)。「ゲーテってこんなこと書く人なのか」と驚き、古典といっても文学というのはつねにこういうことをテーマとして扱うんだな、と知り、ゲーテと太宰治が同じ人のように感じられておもしろいと思いました。当時、太宰治の文庫はほとんど読み終わっていたと思いますが、まだ文学全般を勉強したいという気持ちはまったくなく、理系の門外漢がのぞき見している、というような気分でいたので「おもしろい」などと感じられたのです。

しかし、第二部はまったく歯が立たず、なにが書いてあるのかわからないので読むのをやめました(なにしろホメロスも「イリアス」も知らないので、ヘレナがどんな存在なのかわかるわけがないし)。そのあとの「ファウスト」とのつき合いはここでも書いていると思います。

いちおう、このとき、「ウェルテル」にも挑戦しましたが、まったく読み進められないでやめました。50歳を過ぎて、秋山英夫訳に出会い、ようやく読めたことも、ここで書きました。

ゲーテはバランスの取れた変人だといまでは思いますが、やはり、私にはバランスの悪い人のほうが魅力的だったようで、「ファウスト」はどの訳書もおおかたきれいなままですが、「ツァラトゥストラ」、とくに最初に買った本は、ボロボロのよれよれになっています。持ち主と同じように。

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