麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第737回)

2021-05-30 22:48:18 | Weblog
5月30日

今って、考えると、私の世代の言葉でいえば、白けきった時ですよね。コロナは怖いし景気は悪いし空気はよどんでいる。でも、自分を顧みると子供の頃からほとんどつねに白けた気分だったので、べつにどうということもない、とも感じます。はたらくおじさんを見て働きたくないなあと思い、成功しようとする人を見て、「成功したら死ぬのがつらくなるだろうに」と思ったりしました。自分のものにする? 自分がやがていなくなるのに? 別にブッダの言葉を読んだからではなく、人生の最初からそんな人間でした。酒も飲めないし、多くの人と飯を食うのも苦手。下手なギターを弾いていれば一日中退屈しない。これで本当はひとりでできる仕事ならありがたいのですが。
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生活と意見 (第736回)

2021-05-23 19:19:15 | Weblog
5月23日

「風景をまきとる人」に間違いを見つけました。第十二章の4の三分の一あたり。「何カ月か前にも、彼女がそう言うのを聞いたことがある。」となるべき文の「こと」が重複していて「~聞いたことことがある。」になっています。すみません。「こと」をひとつ飛ばして読んでください(無理ですよね)。Kindle本にしたときに間違えたかな、と思って文庫本を見たら、文庫もそうなっていました。一応編集者もついてくれたし私もできるかぎり見たのになさけない。近いうちにKindle本の版をあらためます。これが最後の間違いだと信じます。

間違いはあったけど、数時間を費やして読んでもらうだけの内容はあると思います。どうか読んでみてください。お願いします。
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生活と意見 (第735回)

2021-05-16 21:07:47 | Weblog
5月16日

新訳文庫「聊斎志異」、読了。字も大きくて、文も読みやすい。内容はいままで何度か書いてきたように最高です。おすすめします。読んでみてください。

キンドル版「風景をまきとる人」を読まれた方がいらっしゃるようです。うれしい。そこで私もまた途中まで読み返しました。今回思ったのは、自分が好きだった部屋や店や風景を自分なりにていねいに書けたな、ということ(少なくとも前半は)。たとえば新宿の「M」とは中村屋地階にあった「マ・シェーズ」のことですが、そのシーンを読んでいると、いまでも店の中にいるような感覚がよみがえってきてうれしくなります。その店がいまはもうなくなっていても、心の中に、私は言葉で(画像のように一部ではなく)その全体のコピーを建築し終わっている。しかもこちらは永遠になくならない。テーマやプロットとは別に物語を書く楽しみのひとつはこれです。「風景をまきとる人」では新宿や四ツ谷、麹町などの好きな場所を残せました。もし可能なら、早稲田や恵比寿についても自分だけの建築を終えてからくたばりたいものです。
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生活と意見 (第734回)

2021-05-08 08:51:53 | Weblog
5月8日

めしを食うための仕事はしているのですが、右目がまだうまくなじまないので難儀です。

相変わらず、自分を取り巻く環境は最悪。でも、普通に眠れるようになりました。自衛本能か、ボケか。

「完成度」という言葉が、前に書いた療養中の同級生とメールのやりとりをしているとき彼から出て(それはある文豪の作品について出た言葉ですが)、ひさしぶりにそのこと(完成度)について考えました。

私は、あまり完成度にはこだわらない人間です。それよりも、新鮮な発想の勢いを好む。たとえばキャロルの「アリス」でも、完成版「不思議の国のアリス」より初稿の「地下の国のアリス」のほうが好きです。読んでいて作者の脳の中の思考のうねりのようなものが直に伝わってきて心地よく、全編の長さも、そのうねりが収まるのにあわせて終息を迎え、とても自然だと感じられる。「ハムレット」も初期版のQ1がいいと思います。まあもっと言えば、大好きなヘンリー・ミラーなど、いったいどの作品が「完成品」と呼べるのかわかりませんが、どれも傑作だと思います。「暗夜行路」も完成度という点から言えば「セクサス」と大差ないと思いますが傑作です。ドストエフスキーも、口述筆記になった「白痴」以降の長編は「完成度が高い」とは言えないと思います。

そういうわけで、拙作「風景をまきとる人」も「地球の思い出」も職業作家の方たちの完成度には遠く及ばないかもしれませんが、それよりも大事なものを物語の中に封じ込めたつもりです。
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