麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第564回)

2017-05-21 20:18:05 | Weblog
5月21日

アマゾン キンドル ダイレクト・パブリッシングを利用して電子書籍「風景をまきとる人」(キンドル版)を発売しました。2005年に文庫として出版したものに大小約200カ所の訂正、改稿を加えました。これが最終決定版です。といっても、長くも短くもなっていませんし、文庫で読んでくださった方が今度の版で読み直してくれたとしても、たぶん印象はなにも変わらないと思います。

文庫を出してから12年。いまさらという感じもしますが、どうしても「これでいい」という完成形で、しかもひとつの公的な出版物として出してみたかったのです。キンドルの無料ソフトを入れればパソコンやスマホでも読んでもらえます。もちろん、キンドルの端末で読んでもらえたらとてもうれしいです。

リンクは貼り付けないことにします。アマゾンで、麻里布栄で検索してもらったら出てきます。自分では完全なエンタメ小説を書いたつもりはありませんが「楽しめる」という面だけでも損はさせないつもりです。多くの方に読んでもらえたらありがたいです。

この出版の形で、これからも原稿がまとまったところで電子書籍にしていこうと思っています。つぎの本が出せたら、また報告させていただきます。

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生活と意見 (第563回)

2017-05-14 20:31:56 | Weblog
5月14日


かあさん。

それしかしゃべれなくなっていい。

かあさん。


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生活と意見 (第562回)

2017-05-07 21:21:36 | Weblog
5月7日

先週「吸血鬼」を読み終わりました。「魔術師」同様、長編の傑作だと感じました。疑問点は何か所も残っているのですが、最後に明智と文代さんの結婚の報告があったりして、「もう疑問点なんかどうでもいいや」という気にさせられました。それでも、ひとつだけ疑問を書くと、この小説はなぜ「吸血鬼」というタイトルなのでしょうね? 伊豆の踊子の踊子がなんなのかわからなかったような根本的な疑問ですね。むしろ、この犯人のほうが魔術師と呼ぶにふさわしいような気もしますが……。いや、「まるで吸血鬼みたいに怖いやつ」ということでいいんでしょうね。ボンクラがどうこういうことではないですね。さてお次は「人間豹」。タイトルからしてやばい感じですが、45年ぶりにその世界に入り込んでみましょう。
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生活と意見 (第561回)

2017-04-30 13:51:52 | Weblog
4月30日

人はなぜもの忘れをするのか。

忘れていけないことなどなにもないから。

人にはなぜ寿命があるのか。

いなくなっても宇宙はなにも困らないから。

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生活と意見 (第560回)

2017-04-23 22:46:49 | Weblog
4月23日

「黄金仮面」読了。しかし、意味不明。この作物がなぜできたのか、よくわからないですね。自分の心のどの部分を鼓舞して読み進めればいいのか、途中でわからなくなって何度も読書を中断しました。これはちょっとダメでした、私は。なんとなく思い出すのは、「ガメラ」にイーデス・ハンソンさんがお母さん役で出ていたころのこと。「日本も国際的になってきたなあ」感を出すことがおしゃれとされていた、ああいう感じが昭和の初めにもあったのかな、と思いました。それにしても、なぜ黄金仮面をつけて活動しないといけないのか、謎は深まるばかりですね。――次の「吸血鬼」は、でも、最初のシーンを読んだだけで、小学生のころ読んだときの印象をすぐに思い出しました。文代さんも活躍するみたいだし、これは楽しみですね。――以前からこのシリーズがなぜ12巻で終わりなのか気になっていましたが、最近出た第12巻を立ち読みしてみたら、「戦前発表分」ということで区切りがついているようです。

今日は秋のような一日でしたね。
「これからまた寒くなるんだな」と、季節と真逆のベクトルを感じました。
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生活と意見 (第559回)

2017-04-16 21:51:26 | Weblog
4月16日

「魔術師」読了。いままでのところ、私のようなボンクラがいうのもあれですが、この作品が、一番バランスがいいように感じられます。これまでの長編(短編はどれも傑作だと思います)は、乱歩がなりたかったという、無声映画の弁士然とした語り口調が強く、ときにはこちらが物語の世界に入り込むのを邪魔することもありましたが、魔術師はそれが抑えられていて小説らしい感じ。ただ、いま読んでいる「黄金仮面」では、また弁士調がぶりかえしている気がします。文代は魅力的ですね。賊の娘でもなかったし。書いてあることを何も疑わずに、文代さんは賊の娘だと鵜呑みにするなんて、まるで波越刑事と同じ間抜けですね。そのぶん、いい読者ともいえますが。ちょっと思ったのは、ミステリーって、人間の心がつねに不安であることを利用したおやつのようなものなのではないか、ということ。すごく単純に考えれば、不安なのは当然で、生き物として警戒心があるからでしょう。自分が壊れものだという自覚。それがあるから壊れないように気を配る。ショーペンハウアーがいうように、幸福というようなプラスの感情はまったく長続きしない。幸せになりたい、と言っても、なにかひとつ満たされればすぐに別の多くの問題を見つけ出し(思い出し)、また漠然とした不安にとらわれるのが人間のさが。そういう、人間としての自然状態ともいえる漠然とした不安に、架空のお話でひとつの形を与えて、事件が解決されることで不安が少し解消されたような錯覚を感じさせる。それがミステリーの役目なのでしょう。それは本来、私には不要な操作です。それなのにホームズと乱歩を私がまだ読んでしまうのは、ほかでもない、子供のころによく知っていた世界に戻っていく通路がここにあるからです。ホームズは、何も事件を解決しなくていい。ただ、ワトスンと二人で「チャリングクロス」という鈴の音のような音感の駅から「ダートムア」という紫色の煙を感じさせる駅に向かって汽車に乗ってくれるだけで、私の、ただ私の頭の中にあるだけのロンドンとその郊外は無限に広がり、私はそこの住人となることができるわけです。乱歩にしても、明智や犯人が、本郷、上野、浅草、麹町、西麻布を駆け抜けるだけで、子供のころ私の心がそこに住んでいた私だけの東京がまたよみがえってくるからです。もちろん、私と同年代の人たちはみんな同じ理由で読んでいるに違いありません。あらためて書く必要もないようなことですが。



「口訳万葉集 中」出ました。
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生活と意見 (第558回)

2017-04-09 22:02:41 | Weblog
4月9日

「蜘蛛男」「猟奇の果」を読みました。「蜘蛛男」は少年探偵シリーズで読んで以来約45年ぶり。少年探偵には、蜘蛛男が被害者を「手籠めにする」シーンはもちろんなかったので、今回原作を読んで、「なんだ、手籠めにするのか」と思いました。子供のころの、蜘蛛男に対する理解は、「殺したり、バラバラにしたりということはまったく理解できないが、世の中にはそういう行為を愛する犯罪芸術家とでも呼ぶ人種がいて、蜘蛛男もそうなのだ」というものでした。それは、悪の中の悪ではあるが、どこか高貴なところもある……というふうに感じていたのです。ところが、「手籠めにする」わけです。「なーんだ」という感じですかね。ただの性欲過多でグロテスク趣味の下衆。ぜんぜん高貴ではなかったのですね。また、死体の腐乱臭が部屋に漂っているという描写だけで、魚を煮る臭いすらダメな自分には吐き気がしてきました。「猟奇の果」は、前半はとてもおもしろかったです。前半だけ読むと、これは、猟奇的な趣味に没頭して自分を顧みない夫に不満を感じた奥さんが、夫の親友に協力してもらい、日常が崩壊するかもしれないという危機感を抱かせ、夫の目をさまさせる……という人情喜劇なのかと思いました。もしかしたら、乱歩はそのつもりで書いたが、編集者に後半のようなエキセントリックな展開を要求されて、いわれるままに書いた……そういう事情でもあったのではないか、と邪推しました。続けて、いま「魔術師」を半分ぐらい読みました。あいかわらず派手なシーンが多いけど、すごく読みやすくなってきました。明智の奥さん、文代さんって、この事件の賊の首領の娘なんですね。どうやってくっつくのか、事件よりそこが楽しみです。また、毎回巻末に時代背景の説明があるのですがすごくていねいでおもしろいです。



ちくま学芸文庫から「枕草子 上・下」が出ました。以前ここにも書いた、同文庫「徒然草」と同じ方による校訂・訳つき。大好きな第六段の訳をまず読みましたが、とてもいいです。おそらく枕草子全訳の決定版になるのではと思います。ぜひ見てみてください。
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生活と意見 (第557回)

2017-03-26 23:38:20 | Weblog
3月26日

去年から月に一冊ずつ出ている、集英社文庫「明智小五郎事件簿 全12巻」。明智が登場する長・短編を(大人ものも少年探偵ものもあわせて)事件発生順にならべたという新編集で、出るたび強い誘惑を感じ、同時に「いや、だめだ。そんな小遣いの余裕はない」と自分をいさめてきましたが、とうとう誘惑に負けました。D坂の殺人事件→幽霊→黒手組→心理試験→屋根裏の散歩者を2時間で読み、一寸法師→何者を3時間ぐらいで読みました。ああ……いいですね。ご存知のようにD坂のときは、金田一耕助と区別できないような雰囲気の明智が徐々におしゃれな紳士になっていく。いまはまだその過渡期ですが、やがて10巻の「少年探偵団」では、「明智先生、ばんざーい」の国民的ヒーローになるわけです。ああ、それにしても……完全に集英社文庫の編集者にやられましたね。こんなやり方があるなんて。カバーの感じも、乱歩本に多いおどろおどろしい感じとは違っていて、私はとてもいいと思います。ますます万葉集に戻るのが遅くなりそうです。
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生活と意見 (第556回)

2017-03-20 20:53:32 | Weblog
3月20日

なんと、折口訳「口訳 万葉集」、岩波現代文庫から出はじめました。これもぜんぜん情報を持っていなかったのでおどろきました。「上」には七巻までしか入っていないので「上中下」の三巻本になるのだろうと思います。やはり本当に価値あるものは不滅ですね。すごくそう感じました。老人なので感動しました。ぜひ、読んでみてください。絶対のおすすめです。「詩経」(海音寺訳)の国風よりあとをゆっくり読んでいます。漢字辞典と大辞林とネットで調べつつ。平凡社の中国古典文学大系を参考にしつつ。また、並行して学術文庫の「神曲」をあらためて読んでいます。3年前これを買ったあと、いろいろなことがあってなかなか読み進められなかったのですが、いまようやく帰ってきたという感じです。私にとってダンテは、なにより比喩がすばらしい作家(詩人)だというのが一番の印象です。「~のように」の「~」が、必ず多くの人が目にしたり感じたりしたことのある場面になっていて、そうすることで、ありえない世界のリアリティを背後で支えていると思います。浪人時代、広島そごうの紀伊国屋で山川訳を初めて買い(それしか当時はなかったので)、まず印象に残ったのは、「かろうじて岸に泳ぎ着いた難破の人が、自分を飲み込もうとした波を振り返ってじっとみつめるように」(言葉は今適当に私が作ったものですが)というフレーズがあり、鳥肌が立ちました。それまでそんなことを書いたものを読んだことがなかったからです。なぜ危険から逃れた後人間はそうするのか。わからないけど、そうしますよね。こんな人間観察の記録が神曲には随所に織り込まれています。物語より私はそれを楽しんでいるような気がします。――使い方は違うけど、「~のように」を同じぐらい多用する作家はあと一人しか知りません。プルーストです。「失われた~」全体が「~のように」のかたまりといってもいいかもしれません。まるで小説のように、まるでエッセイのように、まるで人生そのもののように語られた一冊の本。「ある一つの映像の回想とはある一つの瞬間への哀惜でしかない。そして、家々も、道路も、大通も、逃げさってゆくのだ、ああ! 年月と同じように。」(「スワン家のほうへ」井上究一郎訳)。
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生活と意見 (第555回)

2017-03-12 23:47:34 | Weblog
3月12日

先週、岩波文庫のボルヘスは9冊目と書きましたが、8冊目の間違いです。なんにしてもボルヘスの諸作がこんなに手近になるとは高校時代には思ってもみなかったですね。高2の夏から秋にかけて、よく、1時間目だけ授業に出て自主下校し、市立図書館で一日過ごしていたころ、「ボルヘス怪奇譚集」は繰り返し読んでいましたが、当時は謎の作家で(田舎の高校生にとってはよけいそうですが)、「なんでこんなに世界中の物語を知っているんだう」と、敬意と不気味さを感じていました。荘子の胡蝶のエピソードも、「荘子」で読むより先に、私はこの本で読んだのです(ずっとあとになって知ったのですが、訳者は柳瀬尚紀さんです)。大学時代、ラテンアメリカ作家のブームがあり、ボルヘスもその中の一人でした。ガルシア・マルケス(いまだに一冊も読んだことがない)などと比べると地味な感じで、でもそこがまた私には魅力的でした。国書刊行会の幻想文学大系の「夢の本」、シリーズ名はわかりませんがラテンアメリカ作家の作品集のひとつとして「伝奇集」、集英社文庫で「砂の本」など、徐々にその作品は身近になり、「伝奇集」が岩波文庫に入ってからはもはや大メジャー作家のひとりということになりました。

あのころ、「ボルヘス怪奇譚集」とともにいつも読んでいた本のひとつに「老子」があります。自分では当時、それを完全に理解できた、と感じていました。思い上がりもいいところかもしれませんが、いまになると、ある種の本は、人生経験や教養とは関係なく、脳の状態が人生の中でもっともいい時期に直観的に把握するのが正しい、という気がします。「老子」はそういう本だと思います。その「老子」、講談社学術文庫から、最新訳つきの新刊が出ました。お金がなくて買えませんが、そのうち手に入れたいと思っています。
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