1月30日
近所の古本屋で「チェーホフの手帖」(新潮文庫、平成5年復刻版)を買いました。とてもおもしろいです。いくつか書き写します。
嘘をつく人は穢ならしい。
教育。—―「よく嚼(か)むんだよ」とお父さんが言う。そこでよく嚼んで、毎日二時間ずつ散歩をして、冷水浴をした。だがやっぱり不仕合せな無能な人間が出来あがった。
45歳の女と関係して、やがて怪談を書きだした。
女への恋が冷める。恋から解放された感情。やすらかな気分。のびのびとやすらかな想念。
この、最後の「やすらかな気分」は、男なら誰でも知っている自由そのものの気分ですよね。もうこれでいい、俺はこのままいく。そう思う。だけどしばらくするとまた女に縛り付けられたくてフラフラと近づいていく。その繰り返し。
「なぜお前さんの歌はそんなに短いの?」と或るとき小鳥にたずねてみた。「もしや息が続かないのじゃないの?」
「私には歌が沢山あるのです。それをみんな歌ってしまいたいので。
これは短編ばかり書くことについての、チェーホフの言い訳ですね。なるほど、と思いました。
2008年11月の書評。「俳句脳」(茂木健一郎/黛まどか著、角川書店)。
近所の古本屋で「チェーホフの手帖」(新潮文庫、平成5年復刻版)を買いました。とてもおもしろいです。いくつか書き写します。
嘘をつく人は穢ならしい。
教育。—―「よく嚼(か)むんだよ」とお父さんが言う。そこでよく嚼んで、毎日二時間ずつ散歩をして、冷水浴をした。だがやっぱり不仕合せな無能な人間が出来あがった。
45歳の女と関係して、やがて怪談を書きだした。
女への恋が冷める。恋から解放された感情。やすらかな気分。のびのびとやすらかな想念。
この、最後の「やすらかな気分」は、男なら誰でも知っている自由そのものの気分ですよね。もうこれでいい、俺はこのままいく。そう思う。だけどしばらくするとまた女に縛り付けられたくてフラフラと近づいていく。その繰り返し。
「なぜお前さんの歌はそんなに短いの?」と或るとき小鳥にたずねてみた。「もしや息が続かないのじゃないの?」
「私には歌が沢山あるのです。それをみんな歌ってしまいたいので。
これは短編ばかり書くことについての、チェーホフの言い訳ですね。なるほど、と思いました。
2008年11月の書評。「俳句脳」(茂木健一郎/黛まどか著、角川書店)。