警醒社

 「著者ははじめ本書をアメリカで出版しようとし、……。日本における出版者も容易に得られず、最後に、著者の著作の出版社であった警醒社にこの出版を託した。」
(「余は如何にして基督教徒となりし乎」、岩波文庫、内村鑑三著・鈴木俊郎訳、その解説(鈴木氏記す)より)

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 某ブログ上にて「互いに愛し合う」兄弟との世間話のやりとりを見入った後、スーパーに行った。
 行きすがら、たまたま思いついたことなのだが……。
 この小記事のタイトルを「警醒社」とした。
 明治時代に「実在」した本屋さんなのだろう。
 さすがに今回は少しは実証的にやるか、そう奮起して、たまたま手元にあった「余は如何にして……」の、本文、は今はいい、「解説」、そこに「実証的な情報」はあるだろうかと思いつつ斜め読みしていたら、やはりあった。
 それが、冒頭に抜き出させていただいた「余は如何にして……」の日本語版出版過程、その「記録」。
 「警醒社」という本屋さんの実在、それを実証的に説明するには、この程度で十分だろう。意外なことで「仕事の手習い」が花開いた恰好だ。

 時は明治時代。
 「警醒社」。
 このころ「警醒」という語句をのれんに挙げているというのは、想像にすぎないのだが、しっかりした大志を有した出版社であり、でもメシは食うわけだから「商いもさせていただきます」、そういうスタンスの本屋さんだったことと思う。
 いや、「著者(内村鑑三)の著作の出版社であった警醒社」なのだから、「想像」ではなく実際にそうだったろう。
 ただ、パトロン的なところもあったかも知れない。それでもよしとする。
 そう、「しっかりした大志」、その上に立った「商い」。
 実際、ほんじつ引用させていただいた「岩波文庫」の岩波さんは、内村鑑三の弟子であり、今もって内村鑑三の本を絶やさず出してくださっているのは、「恩義」の類を想起する。
(でも、「全集」が段ボール1個分18万円也は、やはり敷居が高すぎます。せめてばら売りしてください。)

 時を経まして平成18年の現代日本。
 民放、新聞、総合出版社。あまたあるマスコミ。
 彼らの繰り出す数々主張の中には、「警醒」をイメージするものが少なからず見受けられる。
 だが、思う、「金を稼ぐために『警醒』という手段で煽っているだけ、カネが動いて儲かれば、あとはどうでも、知ったことか」、と。
 「村上ファンド」の村上さんは「賞味期限」が過ぎた模様。ほんの一例ですね。

 ところで、「情報は鮮度が命」ということばを、相当昔に聞いたことがある。
 「情報でメシを食う人々」(株式の人、為替取引の人くらいなら容易に想像つくのだが…)にとっては、確かに、情報は少しでも速く、そして、鮮度は命そのものだろう。そのことについて、特に思うことはない。現在経済システム、以上でも以下でもない。
 が、巷にあふれる「警醒」という類の「情報」にとって、果たして「情報は鮮度が命」だろうか?
 一時期、村上ファンドの村上さんは、悪の権化みたいな大々的な報道ぶりだったが、今は音沙汰一つないように感ずる。
(ちなみに、「株式の人」にとっては、まさにそれでいいんだと、率直に思う。)

 「警醒」ということばを例にとって……。
 100年前と現在との違い、その仮説の提示にすぎない。

[おことわり]
 上に、「マスコミ」という語句を、ここは選んで用いました(ほんとは「マスメディア」の方を用いたい)。
 ところで「ブログ」というのは、「一億総マスコミ」にしてくれたな、そういう思いは、やはりありますね。
 で、ですね、本ブログなんですが、いちおうは、丹精込めて作り上げた「庭園」なのです。
 敬意を評しつつ「あのー、見せていただいてよろしいでしょうか?」というご来客には、もちろん喜んで応対し、喜びを分かち合いたく思います。
 ですけども、土足で入り込んできて、「折角のチューリップ」も踏んづけちゃう…。 「ああ、やはり一億総マスコミ、これは『受け入れる必要』があるのかな……?」、しばらく思いあぐねていました。
 幸いにして、このブログには、「コメントを消す自由」が与えられています。
 なにしろ、丹精込めているつもりなのです。
 いかに善意であろうとも、「福音書について」のコメントとして、「それ(また内容の一部分)」とは全く無関係のコメントが付いたのは、率直に申し上げて不快感を覚えたのです。
 そして私は、……「一億を相手にしている」わけでは、全くない…。
(聖書の人相手の「薄商い」という割り切りです。)
 そう思い至りまして、今後は、たとえ善意が認められるものでも、「庭園荒らし」と「私が判断」したコメントは、申し訳ないのですが今後は削除することと致します。
 「一億総マスコミ、これを『受け入れる必要』は、私にはなかろう」、そう結論づけました。
 ここにお断り申し上げます。

 蛇足ながら、名ブログ「生協の白石さん」は、「管理人」さんが主人公の「白石さん」に礼儀正しく了解を取って、その上で運営しているということを付記したく思います(本にしっかり書いてあります)。
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