※木下裕也先生の「教会・国家・平和・人権―とくに若い人々のために」記事を連載しています。
木下裕也(プロテスタント 日本キリスト改革派教会牧師、神戸改革派神学校教師)
日本国憲法(2)
日本国憲法の三大原理の第二は、基本的人権の保障です。基本的人権とは、すべての人が生まれながらに持っている生命、自由、財産についての権利です。これはどのような権力も侵すことをゆるされない、とうとい権利です。基本的人権を守ることのために政治はあるのです。また政治がそのようなものであるように、主権者である国民はたえず努力すべきことを求められています。
基本的人権は以下の五つに分けられます。
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自由権:人々の生活を政治権力の介入や干渉から守り、さまざまな活動が自由にできるように求める権利です。思想・信条の自由、信教の自由、集会・結社・表現の自由、学問の自由、職業を選ぶ自由、財産を持つことの自由、居住の自由等です。
社会権:「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」【注1】と明記されています。人間らしい生活をいとなむことは健康な人や経済的に豊かな人だけでなく、すべての人が持つべき権利です。病気や経済的苦しさの中にある人々にも日々の生活を安心していとなむこと、教育を受けること、働くこと等の権利が保障されるべきです。そのための配慮や援助をなす義務が国にはあります。国民はそれを国にもとめることができます。
受益権:国民がおのおのの権利を守ることのために、国に積極的な働きかけをもとめる権利です。権利や利益を侵害された場合に裁判をもとめる権利、損害賠償をもとめる権利、誓願【注2】を行う権利等があります。
参政権:政治に参加する権利です。国民主権の憲法のもとでは、当然もとめられるべき権利です。20歳以上のすべての人に選挙権があります。
平等権:「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地(もんち)【注3】により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」【注4】と定められています。人の命と存在はみな平等であり、尊厳をもち、それゆえ差別されてはならないのです。現実には、この社会には人種、性別、身分、心身の障碍(しょうがい)といった事柄にともなう差別があります。この悲しい現実とたたかい、すべての人がとうとばれ、守られ、平等に生かされる社会を築いていかなければなりません。
【注1】25条1項。
【注2】政治のありかたについて国民が希望を申し出ること。
【注3】生まれつき持っている地位。貴族、平民といったもの。家柄。
【注4】14条1項。
<関連>
教会・国家・平和・人権―とくに若い人々のために⑮ 日本国憲法(1)