100V通電して出力段周りを測定してみます。このアンプは固定バイアスになってるのでこの部位に不具合があると6973がお陀仏になる。
バイアス電圧は回路図ではちょっと分かりづらいが基盤には「-28V」とある。回路図ではこうなっているが通電してしばらくすると急速にマイナス電圧が下がってしまいます。。これはどうしたことか?
だいたいこの回路ですが、、恥ずかしながら初めて見ました。原理も不明。ラインに入っているコンデンサーの容量を増すと電圧が増加する。最初はこのコンデンサー、整流ダイオード、ツェナーダイオードが不良になったかと疑ったり、平滑コンデンサーにパラに増量したりしたが電圧降下は解消せず。。あるプロの方に聞いたら電解コンデンサーの不良!と即座の回答。不良パターンとして容量が抜ける以外でもショート状態になることもあるのだ!確かに。。なぜ気づかなかったのだろう。連休ボケか? 生まれて初めてのGW9連休で。
このJENSENのコンデンサーはデンマーク製。国産部品使用。日本でも流通しています。出力管の近くでかなり厳しい環境で致し方ない。交換してとりあえず終段は安全になりました。信号を入れてみると前段の6BL8が機能していない。。電圧が来ていない。
前後のパネルも簡単に外れてメンテし易い。大きなプリント基板を金属フレームで囲っているので安心してひっくり返すことができます。「メンテし易い」とは書いたがプリント基板の箔の剥がれには常に気を使う。剥がれを補修しつつの作業で。
やっぱり箔が切れてました。信号を入れて確認。ドライバー段(ドライバーとは言わないかもしれない)まで稼働するようになりました
おっと煙が上がっています。この赤いコンデンサーから
またJENSENです。この電解コンデンサーはスクリーングリッドにつながっている。スクリーングリッドはツェナーダイオードで定電圧化されてるのですが、ツェナーダイオード。
立っている2枚の基板に大量に(17個)。適当な電圧のが無かったのだと思います。気合を感じる。美しさは別として。
、、やっぱりバイアス電圧がおかしい。1本の6973のバイアス電圧が低い。これには正直参りました。回路にあるパーツを全て取り去って
もちろんカップリングコンデンサーの漏洩も疑ったが全て取り去ってもアースに高抵抗だがわずかな導通がある!こうなったらパターンそのものを疑うしかない。
パターンを切って導通の有無を穴1個づつ確認するとカップリングコンデンサーの穴にわずかだが導通がありこれが原因だった。ここに到るまでパーツを外した後のパターンや穴は掃除したつもりだったのだが、、。
原因が分かるまで数時間かかってしまった。
プリント基板で回路の流れを追うのは(慣れてないので)とても時間がかかるし、また我が身のアタマも悪さを呪う。ライトですかして結線を確認するのだがすぐに忘れてしまって前回確認したとこの復習から始まるので非効率この上ない。いろいろ考えてやっぱり回路をパターンに書く事にした。直接はかけないのでパターンをコピーして
紙にプリントして回路を書き込んでいく。結線は色分けして回路図にも記入する。とりあえずトーンコントロール以降を記入してみた。
オーディオジェネレータ出力を順に遡って入れていくとこの段までは問題なさそう。ところがトーンコントロールから上流で反応が無い。。ふと気付いたのは基盤上にパイロットランプがあるのだが消えている。このランプは前段のヒーターと共通らしい。。やっと分かったのは前段のヒーターが点灯していなかったというオソマツ。(原因はわかってしまえばこんなもんです。)
基盤上にハムバランサーがあるのだがここまでの配線(パターンとリード線のハイブリッド)にトラブルがあったようす。箔が途切れていた。新たにリード線で配線
これでパイロットランプは光って音も出力されるようになりました。しかし一見して破損しているコンデンサー
高音質で評判の「マスタード」だと思いますが。手持ちのテキトーなのと交換して
ようやく完成。
考えてみればパターン面から回路を追うよりパーツ面で追って行ったほうが楽だったかと思う。パーツ情報も書いてあるし。。
やはりプリント基板は苦手です。手を入れても入れただけ汚くなる。基板の寿命もあるかと思う。
それとあまりエラそーに言いたくは無いがパターンの設計に問題があると思う。ステレオだがシンメトリーさは薄いし部品配置にも一貫性がない。延々と伸びるパターン。
出力管とドライバー管のヒーターは共通で(左右に別れてはいるがかなりの電力)パターンで供給される。ジャンパー線も多いし驚いたのはブロックコンデンサーの固定金具までジャンパー線としている。ワンボードでトランス以外のほとんど全ての部品を搭載したのは大変だったとは思う。大きな部品を配置して細かな部品をその間に詰め込んで。パターンは細く経年変化と真空管の発熱で劣化して導通不良となっているのも多いと思います。この集積度を見るとステレオ管球プリメインアンプがいかに大変だったかと思う。プリント基板そのものを採用したこと自体が先進の技術だったのかもしれない。。
子供の頃に故障した真空管テレビの修理の様子を覗き込んでいた。複雑極まりないシャーシの裏側を修理するテレビ屋さんには心底感心、尊敬して「将来は電気屋さんになる!」と誓ったことを思い出します。
これで完了かと思ったらどうも入力がおかしい。左右の信号がうまくコントロールされていない、、と思ってロータリースイッチを点検するが
頭がこんがらがる。。接点がよく見えないし、、と思っていたがこのスイッチをブラックボックスと考えて入出力を確認すると特に問題はない。。原因は自作のDIN→RCAアダプターの配線が違っていた。同じOrtofonのアンプと共通だと思っていたら現物はとにかく違っている。またアダプターを作らなくてはならなくなった。
結構手こずりましたが完了しました。
結構男前なアンプだと思います。このデザインセンスは1960年代ということを考慮してもかなり先進的。現在の感覚からしても斬新だと思わせるのは上面が湾曲しているのと側面が斜面だという事に加え、フロントパネルが前後に段差があってパネル周囲の額縁が上下湾曲で前後差があって側方のラインが逆テーパーしていることなど。やはり凝りまくり。デザインの国の面目躍如か。入出力はDINコネクターのみで面倒なことはしないというヨーロッパの気質?
肝心な音味はS/Nは良好(交換コンデンサーの容量は増加している)、トーンコントロールはとてもよく効くし家庭用としてなんの不満もない。当時の価格は不明だが多分贅沢品。現代では手頃な価格で入手できそうなのでしっかり整備して肩肘張らない普段使いのアンプとして使いこなしたい。センスの良い部屋によく似合いそうです。
お読みいただきありがとうございました。
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昔の機器は中途半端な容量のコンデンサーが付いてるので、近い値で対応してました。
工業機器は殆ど回路図面出しません、〇秘なのか『故障の時は弊社に送ってください』です、IC等はタイプを消してます。
ですから探りながら修理、どうしても治らない時はメーカー行です。
いろいろ経験させてもらっていて「日々お勉強だ!」と思う事にしてます。
ところでいい季節になってバイク乗りには「今天国!」ですよね。明日はご当地の古いバイクの集まりがあるみたいなので今から楽しみです。これから整備してとりあえず生還できるよう頑張ります。