Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

UHER CR124 stereo について

2018-11-07 15:37:50 | UHER
 西ドイツUHER社は1972年に初めてポータブルカセットデッキを発表した。当時世界最小、その後のCR(compact report)シリーズの始祖だが日本では当時は代理店はなかった(と思う)。46年前の製品、テープデッキというデリケートさ故生き残っている個体は少ないと思われる。CR210やCR240に関わってきて気になってはいた。
 海外オークションでは見かけることはあるが大抵は不動品。今回入手したのはそんな1台でまたフランスから。



 

 

 後継のCR134,CR210に似ている(CR134は実物は見たことないが)。CR210とコネクター接続は一緒だと考えてZ131ACアダプターをコネクターで接続するも全く動く気配がない。。また一見するとカセットテープを装填するメカニズムが歪んでいてなかなか手強そう。。というか修復はできるのだろうか?


 全体の構成は後発の製品に似ているがメイン基板に垂直に立っている3枚の基板のうち1枚はコネクターではなく直接取り付けられていてこの基板に問題がある場合はかなり大変な作業になりそう。また各基板を結ぶ配線もコネクターはごく一部でこの点でもメンテナンスを阻んでいる。全体の集積度は非常に高くほとんど隙間がない位に詰め込まれているし基板の様子を伺うとかなり手作業が入っていて少数の熟練者が1台1台組み上げた感が強い。これでは大量生産はムリでプロトタイプ的な位置付けだったのかもしれない。
  一方で使用パーツは筐体も含めて品格を感じるもので写真で見るとデザインもさほど魅力を感じないように見えるが実際の質感は高く当時の価格は不明だがさぞ高価だっただろうと思わせる。

 オートリバースに必要な検出メカニズムは初めて見るタイプで電極接触式。問題が発生したのかその後光学式、磁力式へと改良されていく。
 
 メカニズムはテープのローディングの形状が異なっていてまた送り出し、巻き上げ軸の駆動方法がモーター軸の反対側からのベルトで行なっている。後発製品はキャプスタン軸のフライホイールから各々にベルト駆動していたので当然この辺りの形状も異なっている。
  


 古い機種でなかなか参考資料が見当たらなかったがようやくマニュアルを入手することができた。



 ただ画質は悪く特に基板図は判別しづらい。このマニュアルも記述内容は後発機器とほとんど変わらず(構成、3ヶ国語の記述など)。


 まず電源が入らない原因を調べてみる。
 
 ACアダプター出力は無負荷でDC19V程度なのだが本体内蔵の安定化電源回路でDC9Vが出力される。コネクターと電池ボックス(Ni-Cad電池の充電も兼ねる)の配線が複雑でまた電池の端子がボロボロだったので混乱したが配線をたどっていくと写真のTrが機能していない。ダーリントン接続が空中配線だったりでとても狭い部分に押し込まれているが取り出して不良を確認。適当な代品を探すが部品どりのCR210の電源部のTrを放熱版ごと移植することにした。
 
 放熱版は加工して取付け、後発製品のTrなので接続は一緒だと思い込んで苦労して配線すると、、??出力しない。。改めて規格を検索するとなんとEBが反対ではないか!(くそ〜!)しょぼしょぼ修正してようやく電源は確保することができた。コネクターなしの基板には多くの配線が直にハンダ付けされていて線材の劣化のためかポロポロ外れる。その度修正が必要で時間がかかった。

 安定化されたDCは再び電源コネクターに戻りワイヤーハーネスでローディングSW、前面の操作レバーを経由して基板に戻る(どこに戻ったかは発見できず)
 ローディングSWは破損していて要交換だがこれでモーターは回転するようになった。また巻き上げ軸にあるセンサーもワイヤーを修正してみると機能していることが確認できた。2枚の基板はコネクターから外している。メイン基板に固定されて直立している基板(双安定マルチバイブレーターというらしい)は正常動作しているようで面倒なことは一つ避けられそうでホッとした。

 2本の駆動ベルトを交換して組んでみるとラッキーにも音が出る。

 再生、録音、早送り、巻き戻しは機能する。しかし順方向の再生がレバーを戻すと一瞬で停止する。巻き戻し、早送りは各々の回転を止めるとモーターの回転は停止するのでセンサーは機能している。
 再録時の(録音は多分順方向しかできないと思うが)一方向のソレノイドへの通電が持続せずに切れてしまう。喜んだのもつかの間どこをチェックしたらいいのか?垂直の固定基板なので厄介な場所に問題がありそう。CR210とも少し異なっているようで回路の学習からしなければ。


 数日格闘(?)してみて問題点と備忘録
 ・外部コネクターへのワイヤーが2ヶ所外れていてどこだったかはっきりしない
 ・録音ボタン以外がロックしない。基板を取り出して分解確認が必要
 ・双安定マルチバイブレーターは機能している。トリガーの反応も問題ない。ソレノイドが稼働すると接点が閉じてB電圧が供給される(トリガーと混じるので測定しづらい)
 ・ソレノイドの接点は1と2がパラレル接続と思われるが1の接続線が外れている様子。これが1方向がロックしない原因だが現在は両側ともロックしない状況に悪化している。B電圧は解放では9Vあるが接続すると電圧降下が大きい(1V台)。仮に3V程度供給すると両側機能する。
 ・Trは外して良否を確認して交換もしたが症状は変わらず。ソレノイド接点からの回路は確認できていない。
 ・ローディングメカのポールの破折は折れたビスを取り外してCR210から移植予定。

 残念ながら現時点では復活できていない。不鮮明のマニュアル(基板図)も作業を困難にしているが判読できる部分についても現物と異なっている部分もある様子で復活まではまだまだ道のりは長そう。
 
 かなり時間を費やしたこともありCR124の修復はちょっとお休みします。今回この売り手から故障品3台(CR210、CR240、CR124)を入手したがCR124以外の2台の修復は完了した。