小出力の定義はないがせいぜい2Wくらいまでかと思います。真空管アンプの場合5Wでも0.5Wでもほとんどかかる費用は変わらないしメーカー製は皆無なのですべて自作の世界。この場合大切なのは駆動されるスピーカーの能率で、小出力アンプの場合は高能率スピーカーでないとまともに鳴らすことは難しい。現代は低能率スピーカーに合わせて1kW出力のアンプが普通に存在するがWestern Electric製品が活躍した時代(第2次世界大戦以前)は大劇場でも数ワットのアンプで賄うことができるほどスピーカーシステムの能率が良かった。能率を犠牲にしながらスピーカーは進歩してきた訳だがこれはホントに進歩と言えるのだろうか、、、と言われ続けて久しい。。
個人的には昔から小さいものが好きだった。バイク、車、、。また親によれば小さい頃はよく箱に入って遊んでいたらしい。竹野内豊が出演している住宅会社のCMみたいな話だが年取ってからさてこれから何をしようか、、と考えるときに小さい頃の習癖(何を好んで遊んでたかなど)が参考になるらしい、、というのを聞いたことがある。元来小心者で小さい人間なのでぴったりかもしれない。
小出力真空管アンプもWE-101同様「新氏」から大きな影響を受けて幾つか追試した。
これは1925年発表のRCAの出力管UX-120を用いたシングルアンプ。
1925年は真空管の長い歴史でもかなり初期の頃。
(出典 http://www.nmr.mgh.harvard.edu/~reese/RC10/)
この年RCAはUX-120,UX-112,UX-210の3種類を発表した。UX-112は日本では安物真空管の代名詞だった12Aの始祖でよく知られているが最小出力管のUX-120は知る人は少ないし入手も難しい。ポータブルラジオに用いられた電池管で「FOR USE IN LAST STAGE ONLY」と書かれたシールが貼ってある。組み合わせた電圧増幅管はUX-199でUV-199のベースをUXに変更したもの。UX-120、UX-199は「T管」またUX-112やUX-210は「S管」と呼ばれていた。TはTubeの「T」、SはStraightの「S」で管壁がボール球に比べて真っすぐだったから。ちなみにST管はS管とT管の形態を組み合わせた形態から来た名前らしい。
20年位経過しているのでまともに鳴るだろうか?と不安だったが問題なく音が出てしばらく聴いてみた。
出力は多分0.1W位だと思うが16畳の部屋でも音量にはさほど不満はない。音味はかなり個性的で音が潰れない、混濁しない。耳をすませばどこまでも聴こえる、、という風情。極小出力の超小型アンプだが浮ついたところがないのはトランスが多くて重たいせいか?とにかく気に入ってしまった。
これはWestern ElectricのMT管WE-417Aシングルアンプで前段は同じくWE-396A
ケースは持っていたCDケース。トランス類はパネルの裏に沈めてあって古いWEのアンプをイメージした。緑色の綺麗なパネルはレントゲンで使うグリッドで捨ててあったのを切って使った。ACコードは保存時にはいつも邪魔になるので共通のコネクターで使いまわしている。
久しぶりに音出し
ちょっと平面的な気がするが特に問題なく鳴ります。
WE-417Aは電圧増幅管だがWE-101Dと同様な発想で(かどうかはわからないが)出力管として使ったもの。大量生産されたWEの400番台のMT管は黄色の「Western Electric」の文字が美しい。WE-412Aは高音質両波整流管としてWE-396Aは電圧増幅管としてそのほかにもWE-407A,WE-408Aなど製作者には頻繁に使われた。WE管としてはとても廉価に入手できたが昨今の評判であっという間に高額で取引されるようになってしまった。
これはWE-417Aの単段プッシュプルアンプ
入力トランスUTC A-11で位相反転、出力トランスは最初はKENYONユニバーサルトランスだったのだが途中でソーダーソンに変更した。整流管はWE-412Aで固定バイアス。
「小出力アンプは小型でなくてはならぬ」というジジイの思い込みがあってタカチの小さいケースに組んだ。しかし組み上がって期待した音はさっぱりで即お蔵入りとなってしまった。そのうちKENYONトランスは他のアンプにもぎ取られていった次第。載せ替えたソーダーソンも未だ結線しておらず観賞用ミニチュアアンプになってしまった。
小出力アンプかは微妙かと思ったが
UX-210の子孫と言われるVT62アンプで製作は30年以上前。VT62は1970年代に名古屋の大須で入手した。栄の隣の大須は電気街があって学生時代に結構通った。Taylor製のVT62(801A)は2000円で購入したが帰る途中の東海道線の電車の中で床に落として1本フィラメントが切れてしまいがっかりしながら翌週もう1本買ってきたことを思い出す。前段は12AU7 1/2とタンゴトランスで543V 24.4mA 自己バイアスで動作させている。出力トランスは同じくタンゴFW-20-14Sで14kΩ。ちょっと特性を測ると最大出力1.9W -3dBは22Hz〜30kHz 入力を上げると8.4Wくらいまで増加する。
A2ドライブにすれば数倍の出力が取り出せると思うが知識もシャーシの余裕もない。(自分の腕を棚に上げて)2W以下なので小出力アンプの範疇かと思う。このカッコよろしいシャーシは今は無き鈴蘭堂のユニバーサルシャーシでそれを利用した。
明るいトリタンフィラメントから「送信管特有のカラッとした乾いた音」というイメージがよく言われるが確かにその傾向はあるが総じてとても好ましくこの音を好む方も多いと思う。もっと出力増できそうだし達人には面白い素材かと思いますし投稿記事も多数ある。いずれ勉強してもっと大型の送信管にチャレンジしてみたい希望はあります。
お読みいただきありがとうございました。
後日談1
真空管の箱を漁ってたら出てきたのは 1925年発表のRCA UX-210
1本はSylvaniaシールが貼ってありますがトップにはしっかりRCAとあり同一の構造
(出典 http://www.nmr.mgh.harvard.edu/~reese/RC10/)
KSの真空管試験機ではmin.750μGのところ900以上はあるので使えそう。
そのままでは耐圧オーバーするので電源トランスのタップの位置を変更して聴いてみる。電圧下げた状態でVT62を聴いてそのあとでUX-210に差し替えると
やっぱりかなり異なる。良く言えばちょっと優しく控えめに、悪く言えば曇った覇気がない音。どちらかといったら明らかにVT62だがしばらく聴いてみないと確定はできない。UX-210はTaylor VT62の約10倍の値段だった(時代が四半世紀ほど異なるけど)ので残念です。