Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

Western Electric WE756A について

2023-12-07 12:41:07 | Western Electric

 WE755A,WE756A,WE728Bは第二次世界大戦前後に発売されたWestern Electric社(以下WE社)の最後期のスピーカー群。時代は既に励磁型からパーマネント型に移行していてまたWE社は1930年台半ばには劇場用音響システムから撤退しておりこれらのスピーカーは放送局、列車、病院や公共施設の設置を主な目的にしていた。3機種は兄弟機で口径が8inch,10inch,12inch、耐入力が8W,20W,30W、周波数帯域は70〜13,000Hz,65〜10,000Hz,60〜10,000Hzと非常にわかりやすいラインアップだった。

   

 ただし生産数はかなり差があったらしくWE755Aは夥しい数が生産されたと思われよく目にするがWE756Aは見ることは少ない。WE728Bは2wayシステムのウーファーとして採用されたこともある。上記は1948年7月、8月のGraybaRカタログだが必要とするパワーに応じて選択すべしみたいな内容かと思う。近似の型番でWE754A/Bという12inchのユニットがある。WE728Bと同口径だがAは耐入力15W、Bはフェノール樹脂コーンで50Wとなっている。Aは戦後WEが映画産業に再進出した際に(知らなかった)使われたウーファーユニットでBは軍用らしい。こちらも写真ではたまに見る事がある。WE755A,756A,728Bはその後ALTECに引き継がれてALTEC755シリーズは改良されながら生産が続けられたがALTEC756A,728Bは後継機は無かったように思います。

 WE756Aは口径が10inch(約25cm)のユニットだがボイスコイルの直径が4inch(約10cm)と728B,754A/Bらと同じで口径に対して非常に大きい(口径8inchのWE755Aのボイスコイルは2inch)。WE756Aのエンクロージャーの容量は2 1/2 cubic feet 必要で指定箱の寸法も記載がある。上記のパンフレットでは壁面設置時の推奨図も載っている。やはりパーマネントマグネットの薄いボディを生かして設置の自由度が高い。もっともALTEC 755Cからはフェライトマグネットになってさらにぺっちゃんこで「パンケーキ」という愛称がぴったりする。「ダイレクトラジエータ」という表現があるがこれはユニットの前面にホーンなどがなく直接空間に音を放出するユニットという意味らしい。またこの中には出てこないがエンクロージャーの板厚は18mm以上で密閉箱に限るなど指定箱の縦横比は厳密でなくてよいといいながら結構細かい。

 幸運にもWE756Aを1本だけ入手できたのでとりあえず裸の状態で聴いてみると、、

、、やはり只者では無い気がする。。当たり前に低域は出ないし高域も足りない。でも床に水平に置いてカーペンターズを聴くとカレンが立ち上がって歌っている。。

 収めるエンクロージャーをどうするか。指定箱の寸法があるので作っても良いが縦575mm 幅435mm  上奥行223mm 下奥行300mm(mmに換算)とかなり大きく邪魔になりそう(!)。そこでALTECの斜めバッフル銀箱(ALTEC 618)に何とか取り付けることにします。ALTEC 618は同寸のBとCがありCが口径8inch Bが12inch用で10inch用はない(と思うが)。10inch用のバッフルを作って618Bに取り付けます。あらためて銀箱の寸法測ってみたらWE指定箱と(多分)同寸だった。

 早速ホームセンターで300X450X12mmの合板買ってきて穴あけ

   

スピーカーの固定は爪付きナットを使ったがこの位置では618Bのバッフルと干渉しない。ただし2枚のバッフルの間には金属製のネットが挟まれるので密着はできない。それでもなるべくしっかり固定した。

 

 今回使用したALTEC 618Bは海外から入手した時はバラバラでは無かったがかなり傷んでいたものを修復したもの。国内でもよくレプリカを見るが適度な大きさで使い勝手がいいんだと思う。板厚はバッフルが18mm、その他が10mmととても薄くて軽く移動が楽。補強も最低限にしか入っていない。

      

サランネットは細かい金属メッシュに毛羽だった綿が吹き付けられている(?)ものでこの箱をコピーする上で一番の悩みどころだと思う。組み立てには小釘も使われている。持ち手(多分そうだと思うが)の穴が空いていてアコースティックサスペンションを期待する密閉箱では無い。612,614銀箱は604スピーカーを収めたスタジオモニターだったと思うが618はどういった用途に使われたのだろうか。

 吸音材も入れていないがこれで聴いてみると

 

 低域の量感が勝るので畳から少し持ち上げたりして様子を見るがやはり吸音材は入れた方が良いと思う。攻守交代してWE755Aと聴き比べてみる。

 ◯球王国の最新号を見ていたらALTEC の古い8inchスピーカーの聴き比べの記事が目に入った。ユニットをALTEC 618Cレプリカ箱に取り付けて試聴しその場で関東の某有名WE専門店のD氏がチューニングをするというものでチューニングの内容も紹介されていた。内部に入れる吸音材の種類や固定する位置で調節するというもので長年にわたる匠のチューニング術が披露されていた。吸音材を全ての面に貼り付けるわけではなく全く使用しないという選択もあるとのことで参考にさせていただきます。

 WE756A+ALTEC 618Bの周波数特性

 700Hzあたりが大幅に凹んでいて何故だろう?ピストンモーションから分割振動への移行がうまくいっていないのだろうか。高域は25cmフルレンジユニットにしては思ったよりも出ていた。やっぱり定格通り65〜10,000Hzといったところか。