Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

EMT133 について

2024-03-22 23:14:41 | EMT

 1950年代はじめにEMT(Elektro-Mess-Technik)は最初期の業務用レコードプレーヤーR35(1950年)と組み合わせるイコライザーアンプEMT133を発表した。

 EMTは規格化された筐体に収められた一連のイコライザーアンプを供給したがEMT133はそれ以前のものでEMTイコライザーアンプの始祖とされる。これらがどの程度の台数が生産されたかは不明で(この個体はNo,1057だが1000台以上製造されていたのだろうか?)数年前に国内オークションでR35及び専用カートリッジが出品されていたのを目にしたことがある。EMT133は数十年前に偶然海外より入手したが情報はほとんどなくそれ以来拙宅で眠っていた。今回整備してみようと思い立ったのはあるEMT製品のコレクターの方がwebサイトでEMT133の資料を公開されているのを目にしたことによる。

 EMT133はTELEFUNKENブランドからも発売されていたらしく名称はV83

 

(引用:https://www.jpvanvliet.nl/hall-of-fame/emt-133-462-from-1952/)

 EQカーブはNAB,CCIR.DINの3種類。下はその後継期EMT139だがイコライザー素子が異なっていることや電源が内蔵されていないことを除くと回路構成は大きくは変わらないがEMT133は複合3極管が3本なのに対し5極管および複合3極管の合計4本になっている。1/2球を使ってモニターを組み込んでいることも同様。

 

  

 

 ハンマートーン塗装のフロントパネルに「V83」と「EMT」ロゴ両方が打刻されてリアパネルにはEMT133のプレートが取り付けられている。構成は前後に分かれていて前部は信号増幅系、後部は電源、デカップリング部で非常にわかりやすい。全ての部品周辺に回路図に記入してある部品番号のシールが貼られてあり非常に整備性がよくメンテナンスや修理に特別なスキルは必要ない。

使用真空管はECC40 3本 ECC40は欧州の双3極管で8pinリムロック管。

  

大型、ソケットも独特で(そういえば間違って買って即不良在庫になった大量の8pinソケットがあるがこれだったのか!)初段のシールドケースはほとんどブロック型の電解コンデンサーのよう。(その横は入力トランス)

この個体は入出力と電源が3Pと2Pのメタルコネクターになっている。後加工で各部の精度は高いが少々無骨か、、。

 まず電源トランスの結線を変更して入力電圧を220Vから110Vにした。

 220Vの場合の電源トランスの出力はAC220V(1次:2次は1:1 らしい)ブリッジ型セレンで整流後抵抗器で降圧され平滑出力が回路図では240Vなのだが20Vほど低い値だった。セレンの劣化を疑い中身を交換する事にした。

  

 筒状のセレンを取り外して切断分解すると中には夥しい数の素子が積層されていた。シリコンダイオードでブリッジを組んで交換して組み立てる。

   

 これでAC110V入力でDC230V出力となったがまだ10Vほど低い。B電流は15mAほど。回路図に記入してある各電圧と比較しても結構差がある。真空管を外しても電圧降下があるのでコンデンサーの漏洩を疑う。特にBOSCHのMPコンデンサーが怪しい。外して絶縁抵抗を測定すると

 

1μFはほぼ全滅でASCに交換した。これでイコライザー段を除いてほぼ定格通りの電圧になった。カップリングコンは無事なようだしイコライザー段はなぜか?

 

 この際だから外装も整えよう。裏面のコネクターを取り付けている後付けプレートは小加工して塗装した。

 

 ハンマートーン塗装は難しく今までなかなかうまくいかなかったのだが今回はようやくまともにできた。信号のコネクターはキャノンに電源コードは3kwでも大丈夫!みたいに太かったのだが通常(?)のものに交換した。

 

 筐体の寸法はラックマウント規格のようだが通常の取り付け穴がなくフロントパネル(もしくはコンソール)へのワンタッチ着脱のためと思われる穴が開いていてどういう仕組みなのか興味深い。剥き出しなのでウッドケースを作ります。

 

ホームセンターでMDFカットしてもらって組み立て。

  

 ウォールナットツキ板でオイル仕上げ。接着剤がツキ板に着くと濡れ布巾で拭き取ってもオイルをはじいてムラになってしまうのでできるだけ気をつけて作業する。オイルはステイン入りはイメージより濃くなってしまうことが多いので今回もナチュラル。

      

 パネルのお化粧直し、リアパネルのレタリングも未だ、第一音出ししていない!でも気になっていた宿題が一つ片付いたような気持ちになった。存在そのものが貴重なものは手を加えるにしても程々にしておきたい。限界までチューンする気にならないし必要もないと思います。今年の目標は再生環境を整えて音楽に浸ること。並行して中途半端になっている機器の整備を進めようと考えています。

 

 

 

お読みいただきありがとうございました。

 

 後日談1

 もう少しツヤを出したくてワトコオイルの上から着色Waxを擦り込みました。カートリッジからの入力端子をキャノンのオスからメスに変更しました。


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