Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

Thorens TD184 について

2023-10-07 23:12:18 | Thorens

 5年ほど前にこのブログでThorens TD134とTD184のメンテナンスの記事を書いた。それからも何台か修理、メンテナンスをする機会があったが最近は手軽に入手できる状態の良いものが少なくなっていると感じる。今回久しぶりに縁あってTD184の修理をすることになった。今まで見た中でも外観は非常に良好なのだが不動なので部品採りにとの説明。

 確かに通電しても動作しない。早速開けてみるとモーターが配線されておらず取り外してみると

   

 やはり巻線が断線している。以前描いた巻線のメモ書きを見ながら確認すると2個あるうちの一方のコイルは無事だがもう一方は黄-黒-赤の導通がない。僅かに黄-緑(200Ω 350mH)だけが導通している。ネジも替わっていたり(元々のネジ溝が破損していて非常に残念)引き出し線も繋がれているなどかなり苦労した跡が認められる。コイルを交換するか解いて巻き直す選択もあると思うがコイルを取り出すにはコアを分解する必要がある。モーターを海外オークションで検索すると出品はあるのだが少し前ならプレーヤー本体が手に入るような値つけに驚いた。Thorens製品全体が高騰しているようでこれは世界的にアナログ回帰している影響なのだろうか?

 このモーターはコイル1とコイル2の同色の引き出し線どうしを接続することで3種類の電圧に対応している。黒-黒(100V-120V)、黄-黄(125V-150V)、緑-緑(200V-250V)ACは2ヶ所の赤に接続される。現在生きている巻線は黄-緑だけなのでこの部分の巻線でモーターを動かしてみましょう。緑どうしを接続して黄にACを加えてみる。スライダックで電圧を上げていくと

 

 回転を確認した。この接続(もともと設定されていない)は電圧による区分では丁度100Vくらいではないかと思うがこのまま軸受を整備して電圧を調整して使用することはできるだろうか。軸受を非分解で洗浄して古いオイルを洗い流して新たなオイルを注入した。これでラフに組み立てて電圧を変化させながら回転数を測定してみるとやはり電圧を上げるにつれて回転数が上がる。60Hzのインダクションモーターの回転数は1800rpmだが実際には少し低くなる。この差を「すべり」といい以前数台のThorensのE50モーターを整備した時に採ったデータでは1700rpmを切るほど低い値だとターンテーブルの回転が定速に達しないことがあったのでこの辺りを参考にどの程度の電圧にするか決める。100V時では写真のように1735rpmだった。発熱はあるが常識的な範囲(?)ではないかと思う。供給する電圧は100Vが具合が良いのでつい甘い判断になってしまいそう。

 しかし60分ほど無負荷で回転させて表面温度を測定すると最高で51°Cでちょっと高い。以前のデータ収集でも50°Cは越えなかったので100V駆動は無理があるかもしれない。モーターが冷えてからこんどは電圧を86Vに落として測定すると回転数は1720rpmでほとんど変わらず温度も60分で49°Cだったのでこの辺りが一応の目明日になりそう。ただし負荷を加えると状況は変わるので実際に搭載してみましょう。

 本体に搭載してベルトを掛けようとしたが伸びていて60Hzの小さなプーリーは空回りする。ゴムベルトも寿命が尽きていてもちろん交換だがテスト用にとりあえず再生する。まず10mmほど切り詰めて

   

オープンテープをつなぐみたいに重ねて斜めにカットして瞬間接着剤で繋いで回転させる。ストロボで様子を見ると86Vでは定速に達しない。100Vでもストロボが遅い方向に少し流れたが5分ほどで若干だが余裕ができた。各部未整備だがこの状況だと100Vはかけないと稼働は難しいようだ。心配していた温度上昇は通気が良かったのか60分経過でも40°C前半と少なかった。

 モーター以外だがセミオート機能に問題がありそうだ。アームのリフトのボタンを押す部分に変形があり無理な力が加わったらしく不動。

  TD184はTD134やTD224と比べるとより繊細な機構でTD224のように駆動モーターの動力は使わず人力とアームだけでメカニズムをコントロールする。アームの横方向の動きでロックを外したりするのだがこれはレコードの溝に対しては側圧がかかるため針圧の軽いハイコンプライアンスのカートリッジでは再生に支障が出る。このアームにクリスタルカートリッジが組み込まれた電蓄もありこれが本来の姿かもしれない。TD135MKⅡは軽針圧にも使えるアームをして搭載しているが過去使用してみてオート機能には支障が出た。この製品は10inchと12inchのターンテーブル2種類があり10inch版はなぜTD134MKⅡとしなかったのだろうと思う。EL104ショートアームは単品としても販売されていてTD124と組み合わせた場合もあった。トーンアームとしての性能には特筆する点は何もないと思われるがデザインが優れているということで人気があったのかもしれない。しかしTD184やTD134のような10inchのターンテーブルとの組み合わせが一番バランスが取れていて美しいと思っています。

 変形していたパーツの形態を修正しセミオート時にアームの降りる位置を調整し(アームの根元にある調節ネジで行う)、適当な重りをシェルに固定して欠品だったターンテーブルの軸に固定されているピアノ線を他から移植して一応動作するようになった。各部を清掃しグリスとオイルで潤滑、整備する。モーターの固定ネジは残念ながらISOネジに替わっていたので改めてタップでネジ穴を切って、またネジの長さを切って揃えて適合させた。ネジ頭はプラスだが美しくないのでドリルに咥えて回転させてヤスリで形態を修正しネジ頭に錆止めのクリア塗料を塗布した。このモーターはいずれ本体もしくはコイルの交換になるかと思うがそれまでは使えるだけ使っていきたい。モーターは100V専用とし電圧変更のパネルをパスして配線した。

 

これで消費電力をテーブルタップで見ると

100V 60Hzで11W。TD134で同様に測定すると8Wなので若干大きい。同じ負荷をかけて同じ動作なら3Wロスしているということになるかもしれない。これをどう評価するかだがやはり発熱の様子を測定比較することが一番現実的かと思う。

 ケース(台)を仕立てます。なぜか合板をくり抜いた残骸があったのでこれを生かす。ホームセンターで15mm厚の南洋材と桧の三角材を買ってきました。残骸のボードをカットしてそれに合わせてカットする。なるべく大きくしたくないのでギリギリに。

 

三角材を接着して組み立てる。

 

角はこんな感じ。丸く加工します。

 

カットはカッターで、軍手は必需。その後#60のサンドペーパーでザクザク削る。

 

    

これで本体を載せてみる

 

 

 角のRは本体に合わせて削り込んで同心円状にするか楔のような角木を生かした方がいいか迷っています。もう少し縦横サイズを小さくするには上板はこれ以上小さくできないのでサスペンション受けはケースの内部に材を渡して穴を開けることになる。仕上げはつき板+オイル塗布をよく行うが白木がきれいなのでこのままクリア塗装でも良いかもしれない。また考えましょう。

 Thorensの象徴みたいなマッシュルーム型インシュレータですが最近では10000円以下では入手できなくなりました。純正ではなくレプリカでも同様で困ったものです。製品ごとの優劣はあるようだがとにかく高すぎる。細かな違いを気にする人は純正品を探せばいいと思いますが何とか工夫して代用できないかと以前からいろいろ試してきました。金属スプリングも試したが金属同士が擦れたりする感覚があまり好きではありません。またThorens電蓄でも廉価にするためかマッシュルームを使っていないものもある。

 今回も使ったのはホームセンターで随分前に買ってあったウレタンスポンジ(正式名称はわからない)

  

正方形に切って2つ重ねて接着剤か両面テープで固定して真ん中にハンダゴテで穴あけてハサミで角落として丸くして完成。実際に装着してみると

 

 いい感じの動き。水平の調節は4ヶ所にあるディスクを回す。この個体は足を短くカットされていたのだが特に問題ない。隣の純正マッシュルームのTD184と挙動を比較しても区別がつかないくらいだが(こちらのマッシュルームの素性はわからない)どうしても気になればその時に交換しましょう。またゴムベルトを新品に交換したら回転が少し速くなって余裕が生まれた。やはりベルトも古くなると硬化が進み抵抗となって回転に影響する。

 結局クリアラッカー塗りました。底には小さいゴム足をねじ止めしています。

  

 まだ音出しはしていないが一区切りにしたいと思います。TD184はセミオートの特徴としてレコード演奏終了時(ピックアップが最内周に到達もしくはSTOPレバーを押した時)にアームが持ち上がり、モーターの回転が止まり、アイドラーがターンテーブルから離れて変形を防ぐという非常に優れた機構を持っています。外国の古い公衆電話のダイヤルのような操作もなかなか面白い。アームの側方にかかるストレスはTD134と同等でとても合理的でまたBL104トーンアームと10inchターンテーブルとの組み合わせも美しく使っていても非常に楽しく満足度の高いレコードプレーヤーだと思います。

 

 

 

お読みいただきありがとうございました。

後日談1

 接続して音出ししてみました。

 

 カートリッジはShure M3D  プリアンプはmarantz #7c  メインアンプは浅野勇氏製作PX4s  スピーカーはランドセル箱に入ったWE755A  ソースはunivercity street/竹内まりや(1979) 

 #7cは久々の登場だったので最初はガタピシ言ってましたがしばらくすると落ち着いた。100Vでターンテーブルは最初から定速運転で時間と共にさらに安定してワウ・フラッターとも十分実用になりそう。普段はCDやnetで聴くことが多いが久々のアナログ再生は、、思っていた以上にそれも鳥肌が立つくらいに感動した。こんなに再生音楽に引き込まれたのはいつ以来だろうかと思ったほど。日々音楽は垂れ流し状態で聞こえてくるのだがいったい何が違うのだろう。デジタルがダメでアナログが良いというわけではないのはわかっている。古いレコードなのでところどころで傷みがあってちょっと心もとなく聞こえる時がありそれゆえ少し緊張、集中しながら聴いている。うまく奏でてくれている時は安堵し幸せな気持ちになる。アナログ再生は不完全さゆえに惹きつけられるのかもしれない。モーターのON,OFF時に大きなノイズが発生するので見るとノイズキャンセラーが入っていない。早速注文して取り付けたらノイズは消えてくれた。実は他ではこのノイズがなかなか消えなくて困ったことがあったのであまり期待していなかったので良かったです。カートリッジはShure M3Dを新たに入手した。1959年に発売されたShure初のステレオカートリッジですがとても気に入っています。針圧が5gくらいはかけられるのでオート動作するプレーヤーにはよく適合する。近年は交換針と共に高騰して手を出しづらくなりました。

 

 TD184は針圧はもとよりオートスタート時に針の降りる位置、レコードに降りていく時のスピード、演奏終了時のリフトアップの高さなどが細かく調整できるし調整方法も分かりやすい。直径の小さな軽量ターンテーブルなので厳密な音楽再生(なんだそれ)には不利には違いない。ターンテーブルからはみ出したペラペラな(場合によっては波打っている)部分、LPレコードの最も音質に有利な場所にゆっくりと降りていく針。音の細かい部分にこだわりたい人はこんな変わり種を使わなくても良いと思う。でも楽しく気楽にたまにはちょっと格調高く音楽を聴きたい人には是非勧めたいプレーヤーだ。それでもサイモンとガーファンクル「明日にかける橋」のエンディングで伸ばされた弦楽器の音がワウワウしないくらいの基本性能は欲しいしそのために必要な手入れは行っておきたい。


Thorens モーターのメンテナンスについて

2019-12-25 18:49:16 | Thorens

 Thorens TD124 TD224 TD134 TD135 TD184のモーターを見ると細部では異なっている所もあるが基本的には同じではないかと思っています。(違いをご存知の方はぜひ教えてください)。以前入手したTD134

 通電してもモーターが(ターンテーブルではなくモーターが)回らない(!)。しばらく見てると100Vでゆっくり動きだしたが今まで触ってきた中でもいちばん酷い状態。。早速分解してみましょう。

    

 ネジは綺麗で多分一度も開けられた事はなさそうです。軸受けはカバーに覆われていてハトメで固定されています。ドリルで揉んではずす。

 

 底(ボトム)の部分の構造と溜まったどろどろのオイル。

  

 モーターが回転しづらいのはこの古いオイルが硬化してしまって抵抗が増すためで古いオイルを除去してフェルトを含めて全体を洗浄します。

メタルの軸受けは大きな傷はなさそうですが無理をすると欠けます。

  

 内部は当然汚れているので綿棒で拭き取って洗浄して金属磨きで少し磨いてまた洗浄して、フェルトに新たなオイルを染み込ませてハトメではなく2.6mmX6mmのステンレスネジ(ぴったり)で組み立て。

 ボトムのテフロン(?)板はモーター軸にあるボールベアリングで凹んでいるので裏返して使用。このボールベアリングは

 直径2mmで汎用品が入手できるが再使用します。問題は2枚のフェルトで軸受けを分解する前に軸受けメタルをゆすってみるとかなり硬くて動きにくい。メタルは2枚のフェルトによって押さえられていてある程度の動きは必要かと思われますが2本のネジで強く締め付けるとフェルトが劣化しているためか動きが渋くなってしまう。フェルトの厚みを調整するなど加工が必要かもしれないがその前にカバーをワッシャーで浮かせて取り付けてみました。

 

 フェルトには大量のオイルが染み込ませてあってパッキンはないがこのケースで一定漏れ出ないように保たれています。注油についてTD135のマニュアルを抜粋すると

このモーターの底のプレートには横穴はないので「first series」ということになります。注油するときは底に空いている穴から。さらにオイルについては

 ワッシャーで軸受けメタルは少し動きやすくなった反面どれくらいオイルが維持されるかわからないがこの状態で測定してみましょう。使用したオイルはホームセンターで一番安いミシンオイル。またフェルトはピアノのハンマーの調整みたいに針(画鋲だが)で刺して柔らかくして(実効かどうかは不明)

  

 プーリーを装着して回転数、電源OFF後に回転停止するまでの秒数、最低回転電圧を測定。配慮せずに組み立てた状態では

回転数:1697rpm   電源OFF後に回転停止するまでの秒数:6.5s  最低回転電圧:22V

 という冴えない値です。その後いろいろと条件を変えてネジを締めてみると

回転数:1718rpm   電源OFF後に回転停止するまでの秒数:15.4s  最低回転電圧:21V

 で少し改善しました。上下のプレートの位置関係は少し遊びがあって組み立てる時によって数値も変化する。何か治具に繋がる要素がないか考えるがまだ思いつかない。回転させながらネジを締め込むと回転音が変化するのでなるべく無音になるようにすこしづつ動かす事でようやくこの数字に到達した。他のthorensのモーターと比較してもさほど優れた値ではないのでワッシャーによるメタルの可動の向上はあまり意味がないように思われます。さてどうしよう?次の一手は??

 

 調整したいところは2点で1上下の可動メタルの垂直性 2回転子が磁場の中心にあること。

1について ワッシャーをはずすとメタルの動きは硬い。あらかじめ軸が垂直になる状態で組立てたい。四隅からの距離で調整した。

 ネジ穴に物差しの角を落とし込んで4ヶ所から軸先までの距離が同一になるように軸の角度を調整しそっと軸を抜いた。これを上下おこなった。

2について コイルからの距離が同一になるように回転子を厚紙で仮固定して

 

 その状態で一方のプレートをそっと戻して4面をマーキングする。その後一旦はずして反対側も同様にマーキングする。

 

 マーキングを合わせて組み立てる。

 これで軸に負荷がかからず磁場の中心に位置したことになる。早速測定すると

回転数:1691rpm   電源OFF後に回転停止するまでの秒数:13.0s

 と残念ながらあまり変わらない。。考え方は間違ってないように思うが実際に行うと精密な作業は難しい。違う方法を考えたいがこの状態で実装するとなぜか快調。横方向にはベルトによるテンションがかかるので状況は当然変化する。季節による気温、湿度の変化、長時間稼働による発熱など日常の使用にあたっては多くの要素があり神経質な装置では日常の使用には耐えられない。これは音味以前の問題で定格性能に達しない時点で機械としての体をなさない事になり困った事です。ベンチテストで最高性能が瞬間的に現れても長期間維持できなければ使えない。定速に達しない(!)というのはあまりにわかりやすいトラブルでEMTのように余裕を持った設計でなければ業務の現場では使えない。

 「100V使用でもしっかりとエディカレントブレーキを効かせた状態で定速回転する」にはどうすればいいのか?そのためにもモーターの基本性能をしっかり引き出す重要さ。ここを改善しなくてはその先はない。 

 再度取り外してACコードを仮配線しスライダックをつないでついでにAC電圧を計れるようにした(スライダックのメーターは不正確なため)。一応メンテナンスは済ませていたが改めて測定すると劣悪なデータ。そこで組み立てた状態で測定しながら上下プレート(軸受け)の位置とネジの締め込みの調整を行ってみた。方法は

1ネジを緩めて上下プレートが横に動く状態にして電圧を徐々に下げながらで回転する限界点を探っていく。この時発する回転音も参考にする。軸の抵抗が大きいと雑音が混じる。

2最良点で仮にネジを締めて固定するがこの時点で回転が止まるようなら位置を変えてやり直す。これをくりかえす。

3その都度回転数と電源OFF後に停止するまでの時間を測定する。

早速行うと最低電圧は16.8V 回転数1688rpm 7.8S という値。そのまましばらく運転させると回転数1705rpm 9.8S まで上昇した。しかしそれ以上なかなか改善しない。やはりピーナッツ軸受けを交換しないとダメかも知れない。。ところでふと横倒しにしてみると

 最低電圧がさらに2Vほど下がったがその他の項目はほとんど変化は無かった。やはりボトムのスラスト軸受けの抵抗は当たり前にありそう。現在はテフロン板(だと思うが)をひっくり返して直径2mmのボールベアリングはそのまま継続で使っている。テフロン板にはベアリングが食い込んだ跡が付いていてこの深さで使用された時間がわかるかも知れない。なんの疑問もなくひっくり返して使っている。しばらく100Vで運転を続けると1730rpmになったが他の値はさほど変化しなかった。

 

 これは別の個体。

 

 モーター不動、ネオンも光らなず原因をさぐるがなかなか判らない。配電基板をはずしてスイッチのDCRを見ると150Ω位ある、、?端子のネジなどをチェックしていたら回復した。心配していたモーターコイルの断線もなく軸受け部は非分解で注油して組んでみた。

 前述の方法で行なったが1745/1800rpmと良い値になった。やはり軸受けの劣化度で差が出るように感じる。どうやっても改善しなかったらやはり軸受け交換が必要かもしれないが入手したことはない。このくらいの値だと100VでもTD124の速度調節は十分に余裕を持って行うことができる。ネオン球には直列に33kΩが入っているが200Vだと十分に明るいが100Vでは判読はきびしい。この抵抗値を少なくすればちょっとへたった球でもいけるのかもしれないということでこの個体でも33kΩにパラに抵抗がつながっていたがちょっと理解不能な接続になっていた。なかなか入手は難しそうなので代替品やLEDを使って発光させても面白いかもしれない。

 

 

 

 

 

 


Thorens TD224 について(2)

2019-09-20 19:28:17 | Thorens

 新たに入手したThorens TD224はターンテーブルの下にあるはずのメカニズムが欠損していておまけにカム軸が破折していた。

 この軸には大ギアが取り付けられていてチェンジ動作に関わる全ての力の源になっている。力が集中する場所でもありカム軸の形状もあって破損しやすいと思われた。破折部分を修理できないかと業者さんに相談したがやはりむつかしく一から製作する方がまだ見込みがあるとのこと。オークションで探索していたが2年くらいの間に内外で2本入手する事ができた。

 向かって右の軸が折れている。左の軸は反対側の形態がちょっと異なっていて後加工されている様子。中央は新品でキーが圧入されてなかったので移植が必要。今回は左のを使うことにした。現物があれば図面が描けなくても発注できるかと思うし苦労して探すより特注すればもっと安価に入手できるかもしれない。

 もう一品、大ギアが欠品していてこちらも数年間探しているが未だに発見できず。そこで国内の専門業者に現物を添付してコピーの可否を問い合わせてみたのだが幸いにも大丈夫とのこと。先日送られてきた。

 

 向かって右が送られてきたギア。軸に固定するネジを探さなくてはならないがとても良い出来で高品質、価格も思ったより安価で助かった。ところで分解してから数ヶ月経過しているので構造はほとんど忘れている。写真と他のを参考に組み立ててみる。

    

 このカムで全ての動きをコントロールする。カムが回りだすきっかけはまずレバースイッチを操作するとターンテーブルが回転を始めて、ターンテーブル裏のピアノ線が操作によって近づいていたノブを引っ掛けてスタートする。

 結構なパーツ数だしヒンジ部分がありとても複雑な動きをする。アームがセンサーとなりレコードの有無、レコード終端を検知しレコードの搬入を停止し演奏か、レコードが無くなった時の終了への動作をする。貼り着いていたりすると誤動作するのでしっかり掃除しておいた。

 早速組み立てて動作させてみるが予想通り(?)スムーズには動かない。

 途中で止まってしまう。考えられるのはモーターの劣化とメカニズムの不備。特にモーターはTD124などと同じE50でこのモーター1個ですべてを賄う。TD124でさえしっかりメンテナンスしないと定速回転させることすらむつかしいくらいで余裕が少ない。いままでの経験からTD224を動作させるには200〜250Vレンジでしっかり250Vかけないとなかなか実用にはならないと感じている。今回も昇圧トランスで200V台としたがそれでもうまくいかない。まずモーターのメンテナンスからやり直す事にした。

 

 モーターのメンテナンスは別項に譲るとしてその後また組み立てたがやはり途中で止まる。特にレコードを釣り上げる動作(まだ空動作だが)事が多い。大きな力がかかる所なので内部には長いアームがありカムで押されて動作するのだが1軸のカムは多段になっていてどれか1ヶ所に無理な力がかかっても軸の回転は止まってしまう。全体の清掃と給油を繰り返しながらどの部分に無理な力がかかっているかを一ヶ所づつ点検していく。

 一例を挙げるとこれはレコードを運ぶアームを左右に振るメカニズムだが左右の終端はターンテーブルの中心とストックヤードの軸で各々別々に微調整できる構造となっている。そこに達するまでの動きが無理なく力が分散されるように接合部の調整が必要。

 次第に止まらずに動作するようになったがどうしてもクリアーできない問題が残った。レコードを運ぶアームの高さ調整でストックヤードとターンテーブル軸、そしてストックヤードのアームの下を通る時に干渉しないように調整するのだがどうしてもこの部分の干渉がとれない。わざと振動させてアームからレコードを離すというカムのポジションがあるのだがその際にアームが持ち上がって当たってしまう。TD224のサービスマニュアル

 

 まだ読み込んでないがこのあたりの調整項目が記載されていればいいのだが、、。

 丸一日費やしてようやくメカニズム部分は稼働するようになった。まだアームのウェイトの垂れ下がり修理やカートリッジの取り付けなどが残っている。当たり前だがすべて機械的な動きなので辛抱強く解析すれば基本的な部分を外さなければ誰でも修復は可能かと思う。モーターの調整は最重要なのは他のThorens製品と変わらない。今までに手が入った(修理調整された)個体の場合、正確に組み上がっているかのチェックも必要になる。サービスマニュアルはちょっと難解だが各クリアランスや正常なポジションの確認には役に立つ。しかし多数のロッドにネジ止めしてあるストッパーの位置などはやはり試行錯誤が中心になる。また調整ポイントが設けられているのに気づかないこともあるし金属疲労や劣化などでクリアランスが大きくなって遊びが増えるとどうしても解決できないと思われる部分もある。今回の「レコードを運ぶアーム」をコントロールする部分はかなりの荷重がかかる上に非常にデリケートな動きが要求される部分。また「レコードが無い」とトーンアームが感知した場合は終了モードになるがこの部分の分岐が非常に巧みな動きになっている。

 

 もう一台故障したTD224がある。この個体もカム軸の大ギア部分が折れていた。多段のギアによって減速され高められたトルクは不具合によって重くなったメカニズムの軸まで折ってしまう。この部分の破損で稼働できないTD224は多いのかも知れない。形状はそれほど特殊ではないので金属加工業者さんに相談すればコピーを作ることは可能かと思われるし価格も常識的なものになるはず。しかし今回は海外オークションでたまたま出品されていて入手した残りの1本を使います。

 

 まず折れたカム軸からキーを取り出して新たな軸に移植します。なかなか抜けなかったのでバーナーで炙って取り出す。意外な盲点としてモータープーリーの2本のマイナスネジが緩まない事がたまにある。シャーシに装着したままだとできないのだが3個のEワッシャーを外してモーターを手に持って 細いマイナスドライバーをこんな風に咥えて回すと何とかなります。

 

 激しくネジ頭を傷めると面倒なことになる。何とか緩んで早速100Vで回すがやはり回転は出ない。分解するとモーターは使用頻度も少なかったらしく(早々にカム軸が折れたか?)コイルもとても綺麗。そこで軸受けは非分解で洗浄して給油した。これでどうしても回転が出なかったら分解することにした。

 回転開始する最低電圧や滑り率はあまり優秀ではなくどうかと思ったが再度組み立ててカム軸の交換と全体の調整を行った。

 調整時の備忘録

 ・レコードを運ぶアームの動きについて

   ・クリアーしなくてはならない部分が複数ある。(1)レコードをストックしておく軸に干渉しない程度の高さ、(2)ターンテーブルのスピンドルに十分沈み込んでレコードを把持するための低さ、(3)レコードを放出(パッと放す)するときにアームが上に跳ね上がってレコードをストックする構造物に当たらないくらいの低さ。一方をクリアーすると他方が不十分になることがあり別々の調整方法がないか検討したが結局妥協点を見つけのが精一杯だった。ただ(3)については他のTD224ではさほど跳ね上がらない。この動きはレコードを振り落とすためにわざと振動させていると考えられるが(間違っているかもしれない)ずいぶん迷ったが意を決してカムの加工(!)を行うことにした。

 カムのとんがっている所を少々(0.5mm程度)削除した。これではげしい垂直方向の動きは治り構造物にアームが当たることは無くなった。(1)と(2)はなんとか調整したが余裕がなくギリギリの距離でレコードを傷つけないかハラハラする。最終的には妥協点を見つけることはできたがこの症状は前回も感じていたので他に調整方法があるのかもしれない。レコードを運搬するアームには大きな力がかかるので極力スムースに動くように1ヶ所づつの調整が必要。またリンケージが甘くなって遊びが大きくなったり特に大きな力がかかるアームを上下するベアリング部分に不具合がある場合には悩ましい事になる。

 やはり100Vでは正常動作は望めず電圧は200V〜250Vレンジで250V近くをかけている。日常的に使うためにはやはり余力は必要。カム軸交換し整備しながら調整したがやはり結構な時間がかかる。もう少し理詰めで調整を行いたいものだとおもう。

 

 


Thorens TD135 について

2019-02-19 13:29:26 | Thorens

 Thorens社はオーディオ以外でもハーモニカやオルゴール、ライターや髭剃りまで製造していたスイスの老舗メーカーで(途中で生産拠点を西ドイツに移している)特に有名な製品は1957年発表の「Thorens TD124」で10年という長きにわたって製造されていた。長期間なので途中の細かな仕様変更がありシリアルNo,50000台にはMKⅡとなった。
 TD124 MKⅡへの移行はそれまでのモノラルLPや78SPレコード主体からステレオ再生に対応するためとされる。 またターンテーブルの材質が非磁性体になって強力な磁石のDECCAカートリッジも問題なく使用できるようになった。
「Thorens TD135」は「Thorens TD124」の廉価版という位置付けで1961年に発表された。それ以前にも1959年発表のTD134やTD184といった廉価バージョンがあるがこれらは主にThorens社が発売していたいわゆる「電蓄」として使われたようでオークションなどでもよく見かける。TD134やTD184は廉価版といってもTD124の2/3くらいの価格だったので結構高価な電蓄だったと思う。余談だがこの電蓄はebayで見ることがあるがなぜかほとんどがフランスから出品されていて当時のフランスは小型高級オーディオがトレンドだったのかもしれない。
 TD135はコンパクトなデッキ上にターンテーブルやアームなどを配したものでデッキ部のサイズはTD134らと同じでアームリフターのコントロールレバーが加わっている。ターンテーブルの直径は30cmだが重量はTD124のほぼ半分の2.8kg(TD134らは1kg)。しかしここでまた不明な点があり30cmのターンテーブル以外でもTD134らと共通の25cmのターンテーブルも見ることがある。2つのバージョンがあったのか単に入れ替えただけなのかはわからないが両者ともに装着することは可能。デッキは鉄のプレスでダイキャストのTD124とはかなり異なる。金型は多分TD134とTD135は共通だと思われる。TD124とTD134の中間に後発として加わったわけで共通部品を多用することで開発コストを抑えた巧みな戦略かと思う。
 「Thorens TD124 MKⅡ」の登場は1962年で「TD135 MKⅡ」もその頃と思われる。もともと非磁性体のターンテーブルを搭載していたので主な変更点は「TD124MKⅡ」を彷彿させる意匠と組み合わせたトーンアームだがその他細かい改良点があるのかもしれない。
 1962年はTD224とTD121も発表されThorens社のまさに最盛期。TD121はTD124のデッキにTD135のターンテーブルを組み合わせた331/3専用機で回転数切り替えのほかストロボも水準器もついていなかった廉価版で先日初めて知人宅で拝見した。傑作オートチェンジャーTD224のデッキは別設計されたキャスト製でとてもお金がかかっていて当時の同社の高い技術力と隆盛を物語る。

  
 「Thorens TD124

  
 
 25cmのターンテーブルのデチューン版「Thorens TD135 MKⅡ」も存在したが当時の映像を見ると25cmターンテーブル搭載のTD135はポータブル電蓄のプレーヤー部だったようだ。単品版との違いは気づいたところでは、ネームプレートが無いものがある、内蔵アンプ用の放熱穴が開けられているのもある(ただしネームプレートで塞がれているので紆余曲折があったらしい)、電圧切り替えプレートが異なる(100V〜120V  200V〜250Vの2種類対応版、モーターの外観は共通だが巻線が異なっているのか単に配線されていないだけなのかは不明)。パーツの組み合わせでいかようにもなるにもかかわらずTD134とTD184にはMKⅡはなかったと思います。時代はローコンプライアンスカートリッジに向かっていて電蓄のショートアーム「BL-104」ではカバーしきれないと判断したか。

              


 Thorens TD135 MKⅡ
 
 なぜかTP-14アームがガタガタしている。。

 早速分解してみると
 
 表面にはボールが入っておらず(!)裏面も足りない、、さすがに驚いた。わずかに残っていたボールを測定して

 インチ換算すると1/8、早速注文した。(これは間違いで実際は7/64inchで注文しなおした。40個が無駄になってしまった。)ヘッドシェルも欠品なので別入手した。モーターを含めて分解整備すると特に変わった所はないが各パーツがキラキラしていて軽い気がするし打ち抜いたままのような断面の荒さも感じる。軸受ははめ込みで簡素化されている。

 このタイプのアームの経年変化として100%現れるお尻下がり。ウエイト軸とアーム軸との接合部にはゴムが使われているため劣化とともにくの字型に曲がってしまう。

 交換用のゴムが入手できればいいが(ご存知の方がおられたら是非教えてください)。適当な代替部品がないかと探すがホームセンターでは発見できず。仕方ないので0.5mmのゴムシートを両面テープを使って巻きつける。
 
 押し込んで完成。耐久性はわからないが具合が悪くなったらまた作り直しましょう。アームを外さなくても問題なく作業できそう。

 

 このところよく利用する海外オークションが不調。立て続けに未着、確信犯と思われる破損品といい所がない。未着については到着予定日から1週間〜2週間は様子を見ていたがオークションサイドにトラブル発生の申し立てを行った。すぐに反応があり3日間売り手から解決のための連絡を待ってほしいと。しかし応答がないため(オークションサイドから親切にも「連絡はありましたか?」と尋ねてくる)その旨伝えると審議、即日全額補償(送料も含めて日本円で同額)するとのことで返金はPAYPALによって即日手続きされた。2ヶ月続けてなので以前は期間の縛りがあったような気がしていたが問題なく実行された。商品が未着なのは残念だが利用者の保護はしっかりしているようだ。商品説明に「トラッキングナンバー付きで送る」とあったのにナンバーの提示がない。これが無条件に払い戻された要因かと思います。

 もう一件については説明文と写真の一部しか送ってこなかったのと、送ってきたものの重要部品が大きく変形していたこと。輸送時の変形ではなく明らかに以前からその状態の確信犯。ただしこちらは検討して受け取ることにして破損パーツについては別手配した。この3件はいずれもフランスから。以前からあまり取り引きがスムースでないことが多い一因は輸送事情が悪いのかもしれない。昨年も説明と異なるものを送ってきたので写真付きでその旨説明したのだがあくまでシラを切るヤカラもいて、、こちらも補償されたが、、世の中いろんなことがあります。語学力は甚だ心許ないが翻訳ソフトなどを使えばそれほど不安は感じない。でも怪しそうなものには手を出さないのも重要。自戒とします。

 ところが次の週には同じ売り手がまったく同じ内容でオークションに出している。。これはどういうことなのだろうか?すでに送り手の元に輸送トラブルが解決して送り返されてきたのか、はたまた最初から送るつもりがなかったのか、、?未着だった事についても買い手側に説明があっても良いと思うが。。今後はこの売り手には近づかないようにしよう。

 

 ボールベアリング(ボール)が届きました。7/64はマイナーなサイズなのかちょっと時間がかかった。8/64インチと並べて写真。モノ◯ロウで10個単位で販売しています。1個あたり15円ほど。

 

 早速表と裏に9個ずつ入る。給油は迷ったが一応粘度の低いオイルを入れた。

 やはりプラッターの違いは大きくてTD134と比べても低域の出方がまるで異なる。TD124と聴き比べしてみたい。高感度アームのオート機能は調整が厄介だ。終端の検出時にはどうしても横方向の負荷がかかるのだが軽針圧だと再生音に影響が出るし針跳びしやすくなる。TD135MKⅡの軸はTD134,TD184,TD224と同じだが軸受は数種類あるようでTD135のそれは簡易型。3kg台のプラッターの重みを受け止める軸受の構造としてはちょっと役不足かもしれないし色々と大人の事情があったのかも知れない。長期間安定して使うには耐久性はどうだろうか。また全体のパーツの質感がそれまでのものとは異なり時間が経過してもピカピカしていて更にカチカチ、ペラペラ、な気がする。これは改良なのか単にコストカットなのかは不明だがなんとなくありがたみが薄いのも事実。大切に使い続けて軸受部に寿命がきたら新たに交換できるような軸受がアフターマーケットから供給されるかも知れない。

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございました。

 


Thorens TD124 TD224の

2019-02-13 13:56:08 | Thorens
 4本あるプレーヤーキャビネットにはまり込む軸はストレスがかかりやすい位置にあるため根元から曲がっている場合がありついには折れてしまったものを目にすることがある。今回入手したものも2ヶ所が折れていた。

 中に残っているネジ部分を取り出せばなんとかなりそうだがギリで折れているので摘むことができない。折れたボルトを取り出すのにエキストラクターを使うがこんなに細いネジに使ったことはない。でも他に良い方法が思い浮かばないのでチャレンジしてみます。


 まず中央にポンチして買ってきた1.0mm金工ドリルをパイロットに穴あけしようと思ったら、、なんと細すぎてチャックにかからない、、失敗した。そういえばかつてプリント基板に1mmで穴あけした時はモーターとジョイントを入手して自作したことを思い出す。。しょうがないので手持ちの1.5mm後にエキストラクター指示の2mmの穴

 パッケージの指示にもかかわらずなかなかエキストラクターが入らない。あまり叩くと周囲が破れる恐れがあるので2.5mmまで広げてから慎重に打ち込む。

 あとはハンドタッパーを逆ネジ方向に回して

 めでたく抜けました。ネジ部が歪んでいたのか結構力が必要でした。ボルトであればポンチ、タガネをハンマーで叩いて回す事もありですが細いネジではやはりこれしかなさそう。2ヶ所目はエキストラクターとタッパーを繋いだ状態で叩いた。折れた軸を逆にしてねじ込んで完成


 ここが修復できないとマズイことになるので良かったです。付属のインシュレーターは純正っぽいがマッシュルームではありません。

 この記事を見てもし実行される方へ:最初のポンチとガイドドリルが重要です。ぜひ新しいものを使用してください。細いドリルが折れるとほぼ絶望ですので慎重にお願いします。TD-224の場合は2本のアームと本体にストレスがかからないように養生して行ってください。
 何があっても当局は一切関知しないのそのつもりで。成功を祈る(煙)!







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