Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

SONY 5-202 について

2020-06-24 10:25:07 | テレビ

 SONY 5-202は1963年のグッドデザイン賞('63年から公募制になって応募は100品を超えた)受賞の5-303に続くマイクロテレビ第2弾で価格は48,800円で当時の大卒初任給の2.5ヶ月分。5-303は52,000円で5-202の上級機の位置づけ。両者は外観の違いがあるが内容はほとんど同じ。5-303は外部バッテリーの充電機能がありそのための専用のコードが用意されていた。電源部は一緒なのだがDC電源を外部に引き出す機能があって専用電源コネクターを差し込むこと切り替わった。5-202はこの機能が廃止されて専用充電器「VBC-1」(価格2,000円)が用意された。

その1

 かなり外観が荒れていていかにも状態がよろしくなさそうに見える。恐る恐る通電してRF入力すると一応受信していてわずかに出画するし音声も出る。

 

 

   

 早速分解すると

 

 中身もかなりくたびれている。。特にこのサビはいったい、、どういう環境だったのだろう。真っ赤にさびているこのケースは

 

 中には真空管3本とフライバックトランスなどが詰まっている。このスペースにスマートに収まっているのだがケースの上の面が一番錆びている。またブラウン管は

 「課税済」とありブラウン管税があったのだろうか?('89年に廃止された贅沢品に課税される「物品税」と思われるが部品に課税とは。)ここ以外でもサビは結構あるので旧車のレストアでもないのにまずサビ落としから始めます。

 

 今までサビ落としはサンドペーパー、サンドブラスト、化学薬品などいろいろ試したが今回使ったのは「ネジザウルスリキッド」でネジのサビ落としに特化したもの。普段あまり行かないホームセンターで珍しいものを発見して思わず買ってしまった。今回は(ネジでないからか)そんなに落ちなかった気がするが中性なのはすばらしい。塗料は「染めQ」から出ている「サビたまんまで塗れるカラー」。耐候性も良好とのことで塗った感じも手についた感じも「POR15」みたいな感じがある。なによりハンマートーン的な塗料はなかなかいいものがなかったように思うがこれはそれらしく仕上がる。乾燥までの時間は結構かかるし塗膜は厚いのでちょっとぼてっとした感じになるのだが逆に肉盛りには都合が良くてハンマートーンの補修には筆でタッチアップして便利に使っている。

 

 不足のネジを調達、樹脂部品をレジン修復、前回修理時と思われる気になった所を補修、掃除してもう一度組み立てて動作が悪化してないかを確認する。

 手持ちの電解コンデンサー、フィルムコンデンサーと交換していった。不足分は改めて注文して到着待ち

 

 チャンネル表示の照明がついていないことに気がついた。このネオンランプに直列に接続されている高抵抗が断線していて交換した。抵抗器の断線もありうるトラブル。ここまで行ってみての画面

やはりシールド線のホットとアースが逆だったりしたが画面の幅は改善は認めるが狭いまま。部品の到着を待って残りの交換を進めます。

届きました。早速残りの電解コンデンサーをすべて交換してみるがやはり垂直の振幅が不安定で不足している。5−202の基板は5-303の基板と共通のようで交換してみることにした。

入れ替えてみると正常動作して「もしかしたらブラウン管自体の故障かもしれない」という疑いが晴れてホッとした。電源の電圧が1V程度異なるが2つの基板の電圧の比較をしてみよう。パターンを写真撮影、プリントして各々の電圧を記入する。

青が5-303,赤が5-202で回路図に記入すればいいのだがパターンとの照らし合わせができていないのでまずパターンに記入してから改めて書き写すことにした。この辺りは技術と知識をもたない私のようなアマチュアにはとりあえず正常に動く個体があると非常にありがたい。ステレオの場合にはch毎の比較が可能なこともある。

 まず偏向基板のNPN型ゲルマニュウムTrの2SD65が不良になっていた。

 

 真っ黒なのはなぜか分からないがゲルマニウムTrで熱に弱い関係か足を長く残している。調べてみるとCE間が導通していてご臨終。代替えはちょっとhfeが大きいのだが手持ちの2SC458を取り付けた。次に偏向基板にあるfocus半固定VRが導通なく不良。一応はずして復活しないか試みたがこちらもダメ。手持ちはないので高抵抗2本で仮接続した。この半固定抵抗には300V近くがかかっていてネオン管抵抗が切れていたのも関係あるかもしれない。

 ここまで行っても垂直の振幅は改善しない。2台並べての無手勝流の素人修理、次の一手は?

 話は逸れるが5-303の外部アンテナジャックに専用のプラグを差し込んだ時になぜかうまく受信できていなかった。5-202では問題なく5−303もロッドアンテナに直接繋ぐとちゃんと受信する。本流が行き詰まったので今回この部分を外して観察するとどうもジャックの個体差で信号がアースに接続されていることが判明した。プラグがもう少し深く挿入されれば解決しそうなので不本意ではあったがプラグの方を1mmほど削って金属部分を伸ばす改造をした。

 

これでうまくいってちょっとスッキリした。また5-303と5-202を行ったり来たりの作業で気づいた両者の違いだが

これは5-303で電源コードの接続部にマイクロスイッチがある。DC12V専用の電源コードの場合は横方向に突起があってこのスイッチが押されて切り替わる。この機能は5-202では変更となりコードが変更されスイッチもない。スイッチ部分に低圧用のヒューズが追加された。専用電源コードは「SONY」のロゴ入り

手間のかかった高額商品という事と自社製品への愛情を感じる。

SONY 5-303の基板と比べながら原因を探る。電圧だけではなくアンテナから信号を入れながらオシロスコープで波形を観察する。

 垂直方向の振幅が足りないのだから原因はその辺りと思われた。確かに電圧、波形共に異なる。基板図がないのでパターンを模写して記入していったが5-303と5-202のパターンと回路は微妙に異なっていた。発振部の巻線が3ヶ所あるトランスの結線を頼りに進めたが怪しいと睨んだ初段のTrも外してチェックすると問題はない。そのうち垂直振幅が全く出なくなって症状はより悪化してしまった。

 

 このパターンは見覚えあるぞ!昔のテレビの故障はこうなることが多かったが気をつけないとブラウン管が焼ける。チェックするとパーツの根元で断線していた。5μF 10Vで電解コンデンサーではなさそうだが手持ちの電解コンと交換した。波形も出ていたので期待したが復帰はしたが振幅は狭いまま。

 垂直偏向回路は5-303の回路図では

X16(2SB51) - X17(2SB51) - X18(2SC140) の構成になっている。発振回路から順に波形を見ると

X16(2SB51)のBとC

 

X17(2SB51)のBとC

 

どうもこの段の動作がおかしい。「その2」の5-202の同部位の波形を見ると

  

そこで2SB51を外してチェックすると2SB51ではなく2SB381になっていてCE間が導通ありでご臨終。

 実は5-202の回路図は入手できていない。5-303の回路図は2種類手元にあるが細部が少し異なっていて改良のためのマイナーな回路変更があったと思われる。5-303と5-202もその程度の違いではないかと思っている。

2SB51と2SB381は両者ともGe PNP Trだが2SB381の方が少し耐圧が高く2SB51の上位代替品と思われる。しかし両者とも入手できずたまたま2SB326を入手、交換した。

2SB326 Vcb:30V  Veb:15V  Ic:0.5A  Pc:0,225w  hFE mini:70

 

 IF基板を含めて交換したのはTrは3個、電解コンデンサーはすべて、破損していて半固定VRは同形状がなく形が異なるものに。これで通電すると

 これはアンテナからのRF入力だが良好。外ケースは結構傷んでいるので部品どりの5-303のケース(色違い)にエンブレムを移植して入れ替えるか迷っている。

「その1」は学習しながら修理したので非常に長期間(3ヶ月以上)かかってしまい完了は「その2」「その3」の後になってしまった。作成した基板図が役に立った。

 

その2

 

 入手した時はすでにVIDEO入力が設置されていた。小型なのが重宝されたのか改造されているのを見る事がある。なぜか音声入力端子はなく無音で調べてみるとスピーカーが断線していた。インピーダンス70Ωのこのスピーカーの断線は度々遭遇するがボイスコイルが細いことに加えて出力コンデンサーの劣化でDCが漏れていたのかもしれない。音量調整用VRもガリオームとなり抵抗体とスピーカーが損傷する事がある。通電してみると一応ラスターは出るが受信せず当然ザー音も出ない。幸いにVIDEO入力からは不鮮明だが出画される。後付けされた入力端子は固定金具が設置されていてスナップスイッチでRF入力との切り替えができるようになっていてプロの作業かもしれない。整備はAUDIO入力を新設して切り替えスイッチは省略することにした。かなり強烈な喫煙環境にあったらしく掃除が大変で配線材も影響が現れている。

 さぞ喫煙家の肺は凄い事になっているのだろうと改めて思う。私も20歳のころ短期間だが吸っていた事があるがここ数十年はちょっと極端な嫌煙家になっている(影の薄い自分のアイデンティを誇示したいだけかもしれない。巷で自然発生している「マスク警察」も似たような人たちだろうと思っている)。

 

 回路はコンデンサーなどの値が5-303と若干異なるがコネクターは共通で互換性がある。プリントパターン、ジャンパー線は若干異なっていて一応5-202のパターン図を作って調整、コンデンサー交換した。ブラウン管の固定方法が異なるものがありこれは途中で仕様変更されたものと思われシャーシの固定穴の位置にも違いがある。アクリル製のブラウン管の保護カバーがひび割れているので部品どりの5-303と交換したのだが形状が異なり偏向コイルはそのままにブラウン管ごと交換することにした。スピーカーもストックと交換し脚部の割れはレジン修復した。ちょっと迷うが色の違いはあまり目立たないので塗装は無しにしよう。

   

 IF段を除いてコンデンサーを交換、音量VRはかなりのガリだったので分解清掃して接点グリスで組み立て、スイッチの穴をリーマーで広げてアースに接地しないAudio端子を取り付けた。

 

    

 

その3

 ラスターは出るしチャンネルを回すと少し反応がありザー音はするが出画しない。

 IF段に26MHzあたりを入力すると音声の反応はあるがやはり画面は殆ど反応がなく映像ドライブ段にコンポジット信号を接続しても同様。AF段に低周波信号を入れると特に問題なく出音する。とにかく汚れ落としからだがこれだけで数時間はかかる。しかし自分にとっては無心で手を動かすことで心が落ち着く至福の時間。その後改めてRFから信号を入れると一応画面に反応が現れるようになった。

 その後IF段以外のコンデンサーの交換を行った。IF段を除いたのはビデオ入力だけにしようと判断したため。

  

 映像と音声信号の入力は背面からのRCA端子で。

  

 音声は赤白でステレオ左右なのだが当然直結モノラルになる。しかし問題が発生、第一に僅かだがハムが出る。アースを浮かせると消失するので何とか押さえ込みたい。第2に画面が不鮮明で階調が荒い。これは映像信号が強すぎて飽和しているのかとも思ったがコントラスト調整VR(500Ω)に抵抗をいれて調整した。

 これで随分見易くなった。

 

その4

 外観はまあまあに見えたが開けてみると今までで1、2位争うかという埃の量だが「またか、、」であまり驚かなくなった。引退してからは高額商品だったためか捨てるに捨てられず屋根裏あたりに置かれていたのだと思う。

 

 ケースと基板を外して庭で手ホウキ埃を払い隙間にある綿ぼこりは綿棒で搦めとる。ふと「この作業は本当にやりたい事か?」などと考えるが埃にまみれていたものが輝きを取り戻すのを見るのはそんなに悪い気はしない、いやなかなか楽しい。自分の性(しょう)にあっているのだと思う。

 スピーカーのエッジがかなり傷んでいて全周に渡って断裂している。スペアはあるがこのスピーカーは70Ωの特殊なタイプなので修理することにします。ガスケットをはずして残っている残骸を取り除いてみるとフレームに段がある。初めはエッジを作ろうと思ったがストロークは短くなるがこの段部分に周囲を貼り付けることにした。

 ガスケットを2重に貼り付けて低周波信号を増幅部に入れると出音した。当たり前に低域は弱いようだがボイスコイルの擦れも無いみたいなのでスピーカーはこれで完了とした。

 通電するとガリ音は出るが画面は光らない。水平偏向出力の波形は出ているのでこれはFBT周りのトラブルらしい。早速取り外して開けてみると

中はかなりの惨状で緑青が湧いている。3本の1DK1の1本は空気管になっている。リード線はボロボロでなんとか他の2本を救えないかと外しにかかったが途中で折れてしまって残念。

 

FBTは非常にコンパクト。驚いたのは1DK1のヒーター巻線でなんとトランスに1回巻き付けてあるだけ(!)これでヒーター電圧を発生する。実測5Vだったが1DK1の規格は不明。とにかくこのユニットは使えないのでジャンクから移植することにします。

 ドナーは一度開いて中を確認したかったが硬くなった高圧コードが引っかかって分解しずらくそのまま取り付けた。ただしコードは緑青が出ている所があったので端子のハンダ付けは丁寧に行った。これで再度通電してアンテナからRF信号を入れると

不明瞭ながら出画するようになった。音声は出ないがとにかく一歩進んだ。出画を確認してから2枚の基板の電解、ペーパーコンデンサーを交換したが画像はやはり不安定で映像信号を直接入力しても変わらず。細かく診ていく必要がある。しばらく動作させてみると電源スイッチを入れた直後に問題が発生し、しばらくすると改善することがわかった。不具合の内容は画面が小さくなる、横のノイズが入るというもの各部の波形は一応出ている。電源電圧を測定すると問題発生の時は9V台、改善すると11V台となる。過電流が流れて電圧が低下するかと思われたがチョークコイル両端の電圧を測定すると電圧が低下した時は電流も下がることがわかり問題は電源にありそう。大容量電解コンデンサーに外部から大容量コンデンサーをパラ接続しても状況は変わらず。セレン整流器にダイオードをパラ接続してみる。

少し電圧は上昇したが変わらず。平滑の大きな電解コンデンサーも交換してみたが変わらずで電源ではなさそう。偏向基板を交換するとやはり変わらずでどうも交換したFBT周りの可能性が高くなった。ユニットを外して分解するも外観では特に問題はない。電源を入れて1分ほど経過すると問題なくなるのでしばらくこのままで稼働させながら様子を見ることにして入力の配線を行った。

   

 画像は結構鮮明だが安定性に欠ける気がする。同期が外れるというより画面が揺れる感じ。また修理したスピーカーの音色がやはり不満。エッジが無くなってリジッドになったのだからこれは当然でこちらもどうするか?

 

 

その5

 入手したのは喫煙、猛塵環境下と思われるもの。

   

これはすごい埃で今まで見てきた中でも1、2を争う。これでも通電すると一応出画していて発火しなくて良かった。掃除とヤニとりをせっせと行って

 ツマミ類もまっ茶色でマジックリンにつけるとすごい威力で感心した。数時間かけて掃除して通電すると水平同期が取れず掃除前と比べて悪化してしまった。埃でうまくバランスがとれていたのだろうか、、。ガックリだ。

 外観問題点はロッドアンテナが純正ではなく直径9mmの太いものが取り付けられていて「アンテナの受け」に入らないこと。最初は受けを改造しようかと思ったがアンテナを加工することにした。

 

一段細い部分が受けにはまり込むように切り詰めた。掃除が終わって再度動作確認すると

写真では色がついてるように見えるがもちろんカラーテレビではないが良好に動作している。アンテナからのビデオのRF信号入力で映像信号入力と遜色ない画質で同期の安定度は少し弱いようだが諧調などは良好。部品の交換なしで電源電圧も12.5Vと十分な値。今までSONY 5-303と5-202合計で10台近くのメンテをしてきたがほとんどが何らかの手入れが必要だったのでこれは稀有なケースといえる。長期使用では問題が出現するかもしれないがその時に対処しようと思います。意外だったのはきちんと調整が取れていればチューナーからの入力でもそんなに差が出ないこと。映像IFを含めた調整は電気屋さんの腕の見せ所だったのかもしれない。今回この辺りはすべてオミットしてしまった。

 

 

 

 SONY 5-202の良いところはプラスチッキーでない所だと思っている。外観は金属がほとんどを占めていてなんとなく高級感がある。前面パネルに対してブラウン管が大きく額縁の幅が狭い。これはテレビに限らずダサいかイケてるか(死語)の重要な要素だと思っている(「単に個人の好みだ」という声が聞こえる。)頻繁な調整が必要だったであろう数多いツマミも控えめに並んでいる。 SONY 5-202は5-303より少し廉価な後発製品だったが両者同時に販売されている時期もありデザインも殆ど同じでちょっと不思議な気がする。中古市場では5-303より見る事が少ないので製造数もそうだったのかもしれない。両者の異なるところは外観ではケースの色がグレィからアイボリーに、フロントパネルが黒のプラスチックからメタルプレートに、電源コードは5-303の時は12V専用品があり(突起がある)マイクロスイッチで切り替わっていたのが廃止された事、基板のパターンが若干異なり回路定数も少々変更されている事くらいかと思う。5-202より後のマイクロテレビはケースがプラスチック製となり基板がワンボードで内部構造が大きく変化した。トランジスタテレビ初代の8-301から5-303,5-202のメタルの質感にはソリッドフィギア的な魅力を感じています。

 

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございました。

 

 

 

その後いつの間にか

 懲りずに誰にも見向きもされないしょぼくれたマイクロテレビが出品されるとつい拾ってしまうが送料の方が高いことが多い。外観は不良だがうっすらラスターは出る。

これは楽勝かと甘く見てまず外観から整える。ブラウン管枠は錆を落としてツマミと共に塗装、あとは一生懸命磨く。

 

  

ブラウン管には1976年の記載があるが交換したのか製品がこの時期まで製造されていたのかは不明。割れていたAC入力端子板やエンブレムはドナーから移植した。画面が暗かったので電圧測定すると整流後10V程度でセレンにブリッジダイオードを付け足した。

これで12V台まで回復ししばらく様子を見るが大きな平滑コンデンサーには発熱など問題はなさそう。いままでこのコンデンサーの短絡は1回経験している。画面が明るくなったが不安定は相変わらずでこの状態で基板上の電解コンデンサーを交換した。

 しかし残念ながらコンデンサーを交換しても安定しない。最初は水平同期が取れずあれこれ調整しているといきなり画面が途切れて真っ暗になって煙が!ドライブ段のコレクタ抵抗が焼けていた。水平偏向出力が無くバッファ段の2SD65が問題ではないかと見当をつける。しかし取り外してチェッカーにかけるが故障の判定はない。外す前は発振すらしていなかったので最悪以前経験あるトランスの断線も疑ったのだが2SD65を外した状態では発振は回復し波形は出ていていて一安心。ドライブ段、出力段のTrも無事の様子。以前2SD65の代わりに2SC458を接続していたことがあるが定格には余裕があるはずなのだが短期間で不良になったことがある。いままで経験した5-202,5-303でもこの段の不良はとても多くTr自体も黒く変色しているなどかなり負担がかかっている様子。Trの取付けもここだけリード線が長くしてあり発熱対策のようで電源電圧が上がって耐えきれずに破損したと思われた。対策は発振部とドライブ部はパワーTrの2SC140なのでその中間にあるバッファ部も同じ(互換)Trにして様子を伺ったが発熱も少なく今の所は安定している。

 これで解決かと思ったが

 

 今度は垂直同期が安定しない。出力Trは同じく2SC140だがオシロ波形は乱れている。これには原因がなかなかつかめず困ってしまった(修理中は大抵困ってます)。他の正常動作の5-202の基板と交換すると同様の症状が現れるので原因は基板ではなく本体が原因らしい。なにかをゆすったりすると改善することもあるので改めてコネクターを掃除したがだめ。「ジー」という発振音がありFBTユニットをドナーから移植するも変化なく2日ほど考え込んでしまった。

このフィルムコンデンサーは垂直偏向コイルにパラに接続されているのだが以前ショートしていた事があり期待して交換したが変化なし。

 ようやく判明したのはFBTを交換した時の自分の作業ミスで高圧コードとブラウン管の接触不具合というなんともお粗末な原因だった。

不具合と対策の時系列があやふやになってしまったがノイズが発生して同期回路に飛び込んだのが原因で症状をよく観察すればもう少し早く解決できたかもしれない。安定し力強い水平、垂直偏向波形を見ているとホッとして嬉しくなる。費やした時間が報われた気がした。

アンテナ修理は汎用ロッドアンテナを改造して取り付けた。

 

地デジ出力をRF変換しての画質、音質はメンテナンス目標と言って良いくらい良好で結果オーライ、苦労した甲斐があった。解像度の良い白黒映像にはなにか惹きつけるものがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


SONY 5-303 について

2020-06-24 09:50:59 | テレビ

 SONYのトランジスタを多用したテレビの歴史は1960年の8-301から始まるが5-303はSONYの社内で名付けられた「マイクロテレビ」第1弾で1962年に発表された。製品の完成度を上げると共により小型、省電力、安定度、車載対応などが求められた。ブラウン管サイズは5.5インチだが全体のサイズは他社に比べて少し大きめだったのは電源内蔵に拘ったためらしい。

(引用:https://www.jstage.jst.go.jp/article/itej1954/17/7/17_7_387/_pdf/-char/ja)

 

 その1

 入手したのは不動。でも画面の一部は光りザー音は出てどうやら受信はしている様子。外観の問題点はロッドアンテナが折れている事で早速ここから。

 

 適当なジャンクと組み合わせて今回はうまくいきました。サイズがあってラッキーです。外部を掃除してから内部にかかる。

   

 電源部が結構スペースを占める。電解コンデンサーはとても大きいのだが一方で電源は非常に簡素で安定化はされていないがチョークコイルが入っている。ところが掃除が終わって再度組み立てたら音が出なくなってしまい調べるとスピーカーのボイスコイルが断裂していた。このスピーカーは70Ωという特殊なもので細いワイヤーのボイスコイルと思われ一般には入手が難しい。一応フレームに8Ωの小型の薄型スピーカーを移植したが実際に運用すると音が小さくて不満足。

隣は別入手した40Ωのスピーカーだが残念ながらフレームが大きくて搭載はできない。仕方ないので現在のスピーカーのフレームから磁石部分を切り離して穴を開けて今までの代替えスピーカーよりもう少し大きなスピーカーをスペーサーを介して載せてみた。これはバッフル効果を狙ったもので少しでも能率と音質の向上をめざした。

  

70Ωから8Ω負荷になったことについての回路への負担はよくわからないが能率の差以外でも多分低域がカットされるように思うので現在の出力コンデンサー50μF12Vを10倍値のものに交換した。これで以前より少しマシになって大きな音が出るようになった。肝心の画面は

 

 ちょっと改善したか?いやあまり変わらない。とりあえず全部の電解コンデンサーを回路図から拾いだして注文しました。到着するまでできることを進めておく。

 整流回路はセレンが使われていてさすがに時代を感じる。セレンの出力電圧は9.92Vでちょっと低い。セレンにブリッジダイオードをパラに接続して測定すると12.75Vで3V近く上昇した。平滑コンデンサーに大容量コンデンサーをパラに繋ぐとさらに13.1Vとなった。電圧が上がると画面がちょっとしっかりした(垂直同期は相変わらず安定しない)のだが嬉しかったのは改造スピーカーが十分な音量になったこと。ブリッジダイオードはこのまま組み込む事にした。セレンはチョークコイルの上に取り付けられている。平滑コンデンサーを外してみる

 

 チョークコイルに並列に100μFの電解コンデンサーが入っている。これは初めて見る回路でLとCの共振周波数に関係したフィルター機能があるのかもしれない。4000μFの大容量コンデンサーははずしてチェックしたが予想に反して大丈夫そう。しかしチョークとパラのコンデンサーは漏洩が大きくて交換した。この辺りは過去に修理の手が入っているようでその時に平滑コンデンサーを交換したかもしれない。

 

 これで電圧を測ると13Vを超えていて画面も水平方向の安定は高まったが垂直方向はまだ不安定。電源電圧はあまり上がりすぎるのもブラウン管については少し心配になる。続いて回路図のDEF部の「同期偏向基板」のコンデンサを交換します。

  

 電源部もそうだったが一部すでに交換されていた。オイルペーパーコンも外して漏洩試験を行ったがちょっと怪しいので容量は足りないが現代のビタQと交換した。これで画面を見ると若干鮮明になったのと画面いっぱいに画像が出るのだがやはり安定しない。水平同期と垂直同期のツマミは中央付近を中心に左右、上下に流れるのでこの辺りは余裕を持って(?)正常動作している気がする。次にBC部の「映像、音声信号基板」にかかります。

  

 部品交換でも再度スイッチを入れるときは緊張する。幸い絵と音は出たが以前と同様で改善はされておらず画面が安定しない。やっぱり電源の改善と電解コンデンサーを交換しただけでは治癒しないようです。素人のブラウン管テレビ修理大作戦、次の一手は?何より安全に気をつけて行きましょう。

 

 しばらく地デジチューナーやVHSビデオを再生しながら様子を伺っていた。画面が安定しないのはAGCがうまく働いていないのではないかと見当をつけてダイオードの生死を確認するも問題はない。そのうちフライバックトランスへのシールド線を抜き差しすると様子が変わることに気づいた。そしてふとシールド線のアースと基板を比べるとホットと入れ替わっていることに気づいて問題はあっけなく解決した。

 以前修理の手が入っていてコネクター部もハンダ付けされているのだがあまり感心しない状態だったのでコンデンサーの交換の時にコード類の端末の処理も行っていた。この部分は写真によると最初から入れ替わっていて修理時の配線ミスそのままに諦めてお蔵入りになったと思われる。やはり不具合を解決しようとする時は以前の修理に問題がなかったかを最初にチェックする必要がある。根本的な学習にはならなかったがとにかく部品交換と修理が成功してよかった。2枚の基板は取り外しができるのでメンテナンスが非常にし易い。大きなコネクター部分の接触は不良になりやすいようで接点の清掃は欠かせない。またプラスチック製のコネクターの破損も報告されているので乱暴な着脱は避けなくてはならない。トランジスターは現在の数倍大きく製造方法が全く異なるのだろうと思う。破損させないように慎重に。。

 今回のように不具合の解決を追求しないままに闇雲に部品を交換するのはダメなパターンだと反省する。元々の故障に部品交換によって生じた新たな問題が重なる場合が多くますます解決困難な状況となる。今回は幸運だったが予防修理的な作業は最後にすべきとあらためて感じた。。しかし症状から問題部分を判断する知識と経験をもたない素人としてはできることは限られ一か八かみたいな心境なのも確か。せめてブロック毎に作業しその都度稼働させて状態を観察するくらいの慎重さを持とうと思います。

 SONYの初期の製品ではトランジスタ化初号機の「8-301」が圧倒的な存在感で世界的にもコレクターズアイテム化しているが第2号機の5−303や5-202もマイクロテレビの名にふさわしい形でとても好ましい。実は個人的にはSONYデザインにはPanasonicやJVCなどと比べても惹かれるものは少ないと感じている。しかしこれらは例外的に満足度が高い製品だと思います。

  

隣は三菱電機の「6P-125 Micro 6」

 

その1の追加 1

 SONY 5-202との比較で基板を取り出してみるとトランスの上に写っている100μFの電解コンデンサーの頭が少し膨らんでいる!

 これは正負の間違いで爆発寸前の状態。慎重に交換したつもりだったがミスがあった。早速交換した。

 

その1の追加 2

 スイッチ入れたら垂直方向が短い。あれれ、、と見ていたらそのうち横一線となってしまった。これは垂直偏向のトラブルだと考えて早速チェックする。垂直偏向コイルの波形を調べると発振はしているようだが波形が異なるし電圧が低すぎる。出力段のTrは2SC140で水平偏向出力のドライブ段にも使われている。ベースとコレクタの波形を比較してやはり異常ありなので不良を疑い交換することにした。すでに絶版なので互換を調べて同じSONYの2SC756を発注して交換した。TO-5形状で専用金具で放熱器に取り付ける。

ところが改善しない。実は取り外した2SC140をチェックすると問題ないように思えたのでその予感はあった。あらためて発振段からチェックしたいが回路図はあるが基板図がない。そこで決心してまず基板図から作ることにした。

 

作り方は超アナログでiMacのモニターにトレーシングペーパーを貼り付けてトレースした。バックライトのおかげで快適にできる。全ての部品を記入するのはしんどいのでTrのみにして測定ポイントとした。正常動作している5-303と比較しながら直流電圧、波形を観察したが出力段以外は問題ないように思える。

 垂直偏向コイルには60Hzのノコギリ波が流れるのだが回路図をよくみるとチョーク(VCH)負荷のパラレルフィードになっていて500μFで接続されていた。このVCHの故障を疑って配線を切り離して測定するもDCR50Ωで問題なくコンデンサーも新品交換していて問題ない。それでは偏向コイルは、、正常値と比べてかなり低い値(!)で喜び勇んで調べるとコイル両端を繋ぐフィルムコンデンサーが短絡していてようやく原因が判明した。

 

早速交換、改善しこれは嬉しかった。当たり前に劣化しているのは電解コンデンサーだけではなかった。

 

 

 その2

 その1と比べるとシリアルNo,が少し若い。外観の違いはないように見える。

 

 プラスチックパーツの破損はあるが電源コードが付属しているのがありがたい。なんとか受信しているが安定せずに入力電圧を上げると画面が白っぽくなってしまった。コンデンサーがパンクしたか?早速分解すると

 

 やっぱり強烈なホコリ。特に下の基板にはフェルトのように積もっている。フライバックトランスなどを収めているケースのメッキが剥がれていてこのまま推移すると真っ赤に錆びる。

 

 内部はほとんど修理の手が入っていない。これで組み立ててみると

 結構良好になって部品交換はちょっと様子見となった。オリジナルの見本として保存したい。

 プラスチックパーツが破損しているところは「型取りくん」で型取ってレジン修復した。幸いに材との相性は良好でこのあとタッチアップします。

   

 

 

 その3

 

 入手したのは一見欠品もないようだが全体に薄汚れが目立つ。前面を囲むメッキ枠がくすんでいると冴えない外観となる。通電すると一応画面は光るがRF入力しても反応がない。映像のドライブ段にビデオ信号をコンデンサーを介して接続すると出画された。

 チューナーに信号を入れるとIF出力されるので故障箇所は映像IF段ということがわかった。電源電圧は12V以上確保されているので(安心はできないが)そのままとして偏向回路のみコンデンサーの交換を行った。

 さて映像IF段の故障箇所の特定方法だがSG(シグナルジェネレーター)で信号を入れてオシロスコープで段ごとにモニターするのが一般的かと思うがIF基板図もないのでまずここから作ることにした。

前回のようにトレース画にトランスとTrを記入して測定ポイントとした。4段目の2SA70があやしいので外してチェックするが問題ない。。2SA70はすでに製廃なので互換品としては2SA161,2SA341,2SA263などが考えられるがこちらも入手できるのは限られる。それにしても、、と再度装着すると反応があるではないか!

26MHz付近を入力するとこのようなシマシマが出力されるようになった。基板の箔に問題があって再ハンダで復活したかもしれない。そのほか激しいガリオームがあって接点グリスでボリュームの分解整備、

 パチパチと弾ける音がするのだがフライバックトランスを納めている小箱

 

 なぜか一部が切り取られている。コードが焼けているので養生してみたがまだ完全には治らない。ブラウン管のクリップが通常と異なるのでこのコードを使うしかない。またブラウン管最上部が輝度が高いのも気になる。そうこうしているうちにまた受信しなくなった。先ほどのIF段がまた故障したようなので部品交換は避けられそうもなくとりあえず注文してみます。どうせアナログ地上波を受信できないのだから地デジチューナーやビデオデッキのコンポジット出力を接続できるように改造した方が実用的だと思うし画質の改善も期待できる。部品が到着するまでこの方法を検討してみます。

 実は白黒テレビでAV入力端子がある機種はとても少なく特にマイクロテレビ関係ではほとんど見当たりません。コンポジット入力は家庭用ビデオデッキが普及してきた時期に定着したがそれ以前の製品がほとんどと思われるため。珍しくSONY TV-301Vはこの端子を持っている。

 

 この機種はTV-301の後継機で初号機には無い機能。入手して構造を見ると(回路図は入手できていない)映像入力はTrを使用したバッファアンプ基板、入力端子にはTV-VIDEO切り替えがありやはり結構スペースを必要としていた。スペースといえばこのTV-301は画面は小さい(3inch?)が前面パネルは大きくちょっと違和感を感じる。その他AV入力のあるカラーテレビの回路図を入手してみたがよく理解できなかった。新たにAV入力を増設するには信号の増幅が必要なのかもしれないと思ったがSONY 5-303のVD DRIVE段にVIF信号を遮断した状態で信号入力してみた。音声は検波後のVRにこちらも回路を切って音声信号入力とした。これで地デジチューナーに接続してみると

 

 縦横比をどうするかは検討だが特に問題なく画音が出力された。現在はこの入力以外の場面はほとんど無いと思えるのでこの仕様で問題ないと思う。チューナーとIF検波回路の整備も省くことができるし画質の向上も期待できる。ただあまり無粋な改造は慎みたいし元の仕様に戻せること、外観も変更したくないと思っています。VIDEOとAUDIO入力端子は検討して裏パネルに取り付けた。ただしステッカーに穴を開けるのに抵抗があったのでオリジナルを参考に新たに製作した。

 ところが音声にハムが混じる。内部配線はシールド線を使ったがアースのループができてしまった?コード引き出しにするか端子を接地しないものと交換するか。。結局コード引き出しになりました。

 

 これでハムは消えて映像もRF入力に比べてかなり鮮明になりました。外部入力の切替スイッチは省こうと思います。

 

 その4

 外観はまあまあだが通電しないという説明だった。当然画音共出ない。ネジも揃っていないので嫌な予感がするが早速開帳すると

 偏向基板にTrが載ってない所がある。。その他にもコンデンサーが足1本でぶら下がっていたり放熱取付金具が欠損していたりチャンネルダイヤルがくるくる状態とかなり荒れている(実は以前入手した5-303は基板が2枚共欠損で説明すらなかった事がありいくらジャンクといってもこれにはびっくりした)。電源電圧を測定すると15Vもありほとんど電流が流れずラスターも出ていないので水平偏向が動いていないと思われたが欠損のTrはVD OUTの2SC15でラスターとは関係なさそう。試しにこの偏向基板を他の5-303と置き換えてVIFから26MHz付近を入力すると

幸いにもシマシマが現れるのでVIF段などは動いている様子。また垂直偏向の出力もオシロスコープで波形が確認されるのでこちらも大丈夫そうだが音声は出ない。偏向基板は部品の交換がされていてハンダ付けも荒れている。この個体は以前修理途中で断念し放置と思われたが前回修理の部品交換、結線がまちがっている場合もある。測定部分を特定する必要もあるので例のごとく基板図を作成した。

 パターンにはTrとトランスのみの記入だが一応回路は追っている。欠品は2SC15だけかと思ったら1T22というゲルマニウムダイオードも無いことがわかった。1T22について調べるとSONYの古典ダイオードでもちろん製廃、現在では代替品としてIN34Aが使えることがわかって早速注文した。ダイオードについて調べていくと世の中にはコレクターも居られてゲルマラジオでの音質や感度の変化を楽しんでいるらしい。珍しい物は結構高値で取引されているらしくここにもビンテージ市場があった。水平偏向の2SC140は無印のよくわからないTrに置き換わっているのでハンダのやりかえを兼ねて2SC756に置き換えた。他にもパーツを注文しているのでしばらく到着を待つ事にします。

 その間にチューナーを開けてみる。

 

チューナーはVHFのみでネジ2本で取り付けられている。シールドケースはハンダで留められているのだが既にハンダが取り除かれていて過去に修理で開けられた事があるらしい。内部はTr3石で構成されている簡素な回路だがロータリーダイヤルのメカニズムにコイルが装着されてch毎に調整されているのだと思う。不具合はダイヤルのクリックが無くどうもパーツが脱落している様子。ジャンク(前述の)5-303から移植しようかと外してみるが

なぜかこちらも同じ部分が欠損していて共通の弱点だったのかもしれない。クリックのメカニズムは小型のベアリングで製作できなくもなさそうで今後の課題とします。もっともAV入力に改造するのなら不必要になるが。

 コンデンサー類が到着して主だったところを交換した。電解コンデンサーの容量は昔と系列が異なりぴったりの値は最初の数字が”1”の物しかないが支障はない。耐圧も圧倒的に現代のものが高いので気にすることはなく大きさも数分の一、おまけに価格も1個あたりほとんどが10〜20円で手に入る。耐圧に余裕があるので容量の違いだけで(大した数ではない)揃えればよくほとんどがストックできて便利。

 欠品の2SC15だが Si  NPN  80MHz  Pc=0.05W Vcb=30V  Vce=20V  Vce=5V  Icmax=0.05A  hFE=60 と形状がTO5なのだが思ったより小さな値でとりあえず手持ちの2SC458を取り付けた。ダイオードが届いて早速取り付けたがやはり稼働しない。波形を見ると水平発振していない。改めて回路を点検すると交換されたと思われる2SD65の誤配線が見つかった。

 真っ黒でネイムも不明だがまだ生きている様子。他の5-303でも破損している事があり結構負担がかかる部位なのかもしれない。近似の2SC458と交換したがそれでも発振しない。なお調べていくと初段の2SC140のHBT(トランス)が断線しているようで外して確認した。

 ここは「ブロッキング発振回路」 AFC電圧と同期信号を受けながら(だと思うが)15.75kHzを発振するという全体の心臓部で困ったことになった。

 その後ジャンクの基板からトランスを移植した。このほかにも次々と問題が噴出して対応に追われた。水平偏向回路のバッファ段の2SD65を2SC458に交換していたがなぜか発熱がひどい。改めてパターンを調べるとトランスとの関係で回路図と異なるところがありパターンを変更した。これで偏向出力が出るようになったがしばらくするとまた途切れる。原因は2SC458で元々の2SD65のトラブルも多く見られるのでこの段はもっとよゆうが必要と判断して2SC140と交換した。垂直偏向の出力もなく調べると2段目の2SB51が不良で交換、その後また故障して再度交換した。パチッという火花が頻繁に飛ぶ。高圧回路からのリークが原因かと見当をつけて分解確認するが変化なく部品どりと交換する。しかし変わらずでこの原因はまだ解決していない。音声回路への信号が出ない、画面の輝度が平均化していないなどまだまだ不調が続く。

 

 

 その5

 ケース付きで外観は最良、内部もあまり(全くではないようだが)触られていないらしい。

  

 オリジナルはグレーの外装を止めるネジ3本は同色に塗装されていた。IF基板を固定する2本のネジは左右で長さが異なる。電源が入らないということで調べると0.4Aのヒューズが飛んでいる。

  

早速交換してスライダックで徐々にAC電圧を上げていくと早々にまた切れる。調べると電源の平滑回路の4000μFが短絡していて外して確認した。内部のかなりの部分を占める大きな電解コンデンサーだが今までは交換してこなかった。他も調べたが絶縁は新品時に比べてかなり低下していると思われる。いずれすべて交換になると思うが専用のバンドでしっかりと固定されているのでできれば同寸法のものを探したい。今回は安易にジャンクの部品どりから移植することにした。電源供給はチョークコイルからされていることを忘れていてちょっと手こずったがラスターが出るようになった。

しかしまだ映像は現れない。

 禁じ手の正常動作する5-303の偏向基板と交換するとチューナーのロータリーが接触不良だが幸い出画する。不良基板と比べると映像出力Trに電力が来ていない。

 

この部分は水平偏向出力とFBTを結ぶところから半波整流して中電圧を得ている。ラスターは出ているので整流ダイオード以降のトラブルになるが部品数は少ない。。頭をひねりながら1個ずつチェックすると0.05μFが短絡していることがわかった。

 

ところが交換しても変わらず。またチェックすると整流ダイオードも不良。出力が短絡したのだからこれは当然だ。すったもんだして適当なダイオードに交換したらようやく出画した。

さてチェンネルが接触不良だがオリジナルをよく保っていてそれ以外は安定して動作しているようなのでチューナーの整備を初めて行ってみることにした。

 

チューナー部は(BT-12と書いてある)ハンダ1ヶ所で蓋が固定してあるが大きなハンダコテでないと外しにくい。これは150W。内部をクリーニングして接点グリスを塗ってメンテナンスすると接触は改善して安定して受信するようになった。

   

アンテナ入力だがAV入力と比べても遜色ない画質でIF段の調整をしっかりすることで(してないが)このレベルまで持ってこれる事がわかった。現実にはコンバーターを用意しなくてはならず面倒だが将来マイクロテレビが神格化されて「オリジナルぢゃなきゃだめだ!」みたいな事を言い出す人が出た時のために改造したものも元に戻せるようにしておきたい(多分そんな日は来ないと思います)。

 

 

その6

 やって来た5-303はかなりくたびれてしょぼくれていた。通電するも画面は光らない。ガリは出るので電圧を測ると徐々に上がっていき11V位になった。

  

まず外観から。お気に入りのマジックリンで洗って一生懸命磨いてとりあえず見れるようになりました。

 

これで開けてみると外観から想像していたよりも綺麗な状態。埃も少なく一度は掃除されている。

   

ラスターが出ないので波形を見ると水平偏向出力がない。遡るとドライブ段の2SC140が働いていない。

 

外してご臨終を確認し手持ちの中古と交換するとラスターが出るようになった。

 

なぜか斜めで光る面積も狭い。アンテナ入力からも反応はない。まあラスターが出てちょっと安心した。ブラウン管の周囲に偏向コイルが設置されているが垂直、水平一体で着脱できる。ここが緩んで動くと画面が斜めになる。原理通りの動きで目に見えない電子の流れが理解できて嬉しい。実際の状況は接着固定が剥がれてしまったようで美しくないがホットガンで固定した。

アンテナ入力で反応がなかったのでIFにSGから直接入力すると反応がある。改めて2chに100MHz付近のビデオ信号を入れると(VFは97.25MHz AFは101.75MHz)

同期が不安定だがわずかに出画した。これで電解コンデンサー交換してみましょう。

まず偏向基板を行なって動作させてみると出画しなくなってしまった。IF基板の映像ドライブ段にビデオ信号を入れてもダメ。しかしアンテナから信号が入ると画面と音声の反応がありまた同期は水平、垂直ともに反応がある。にもかかわらず映像が全く現れない。同期と音声の信号はドライブ段の出口からなので少なくともこの段は動いていると考えたが映像信号を増幅している様子がなくこれには悩んでしまった。試しに映像の増幅終段に直接ビデオ信号を入力するとコントラストは薄いが映像出力するし同期もしている(これは初めての経験でチェックには手っ取り早い)。映像出力段のオシロ波形は問題なさそうだったのでこの段は問題なさそうでやはりドライブ段が怪しい。電源スイッチも不調になってしまったのでこちらも要対応。

 スイッチを分解してみたがパーツの破折があり断念、部品どりから移植した。ところがこちらも接点の抵抗値が数百Ωあって分解整備した。この作業は結構手間取りついでにブラウン管の周囲の劣化ゴムを取り換えるなどした関係で数時間かかってしまった。ようやく復帰したのは午前1時を回っていた。

 なかなか画像を出すことができずに四苦八苦する。映像ドライブ段の2SB60をhitachiの2SA354と交換したが期待に反して変わらず。外した2SB60もテスターでは問題ないよう。仕方ないので正常動作している5-303の基板と交換すると偏向基板に問題ありということが分かった。映像出力がないのでやっぱり終段の2SC15が怪しい(問題なさそうなのだが)と踏んで注文した。ちゃんと波形は出ているのになぜ?、、納得いかないが基板を変えるとRFからの信号入力でも動作しているので到着するまでしばらく待つことにします。

 LEADERのPATTERN GENERATOR を購入した。

 8種類のパターンを2と3chに表示できる。正常動作する5-202と並べてみるが

 

基板は互換があるので電圧を比べると映像増幅終段の電圧が低く「その5」と同じダイオードが死んでいることが判明し交換した。周辺のコンデンサーもチェックし短絡は認められなかったが一応交換した。

これで幸い出画するようになったが鮮明度は低いし画面は小さい。改めて電圧を比べると終段の電圧が2倍程度になっておりやはりおかしい。そのうち低くなり画像が途切れた。やはり2SC15の不具合が疑われ到着を待つことにします。RF入力時に音声も出ておらず結構重症か。

 到着しました。

 

 早速外してチェックしてお亡くなりを確認。ところが入手した2SC15だがリード線が根元でポロリと外れてしまった。さすがに年月を経たTrは未使用でもこんなことがある。ケース接続なので磨いてハンダ付けした。パターンをRF入力すると一応出画するが期待に反して画面が小さく不鮮明。基板を交換すると解消するので電源の問題ではなさそう。2SC15のコレクタ電圧は50V程度あり平滑直後の110Vから合計20KΩの抵抗で60V下降しているので現在の電流は3mAほど。交換前は70Vそして20Vだったのでこの部分に問題があったのは違いないがそのほかにも問題を抱えているらしい。また地デジをつなぐとかすかに出音する。さてどうするか。

 画面が小さいということは水平偏向出力に問題があるかもしれない。

 水平偏向回路の出力トランジスターのコレクタはFBTに接続されかつ中電圧の供給源となっている。波形を見ると正常波形はpk-pkが100Vに対し150Vとかなり高い。これをダイオード整流しているので電圧も高くなり映像増幅Trの破壊に繋がったことも考えられ取り替えてもまた繰り返す恐れがある。異常な波形はピークが2ヶ所あって一方が高い関係で整流電圧が高くなっているらしい。ドライブ段は交換してあって2SC41のベースの波形は問題なさそうなのでこのTr周辺の問題と思われた。殆ど部品はなく出力からアースに落ちている0.05μFのフィルムコンデンサーくらい。

やっぱり原因はここでした。漏洩かと思ったら断線している。2SC41の発熱が大きいのではないかと思っていたが基板にジャンパー接続されているこのコンデンサーは黒くなっていて熱でやられたのかもしれない。電解コンデンサーばかり目がいくがフィルムコンも結構な頻度でダメになっている。

これで画面は問題なくなった。次の問題は音声が出ないこと。VIF検波後の映像ドライブ回路の出力から映像、同期信号、音声信号とすべての要素が出ているので映像、同期が正常ならここから先の音声回路そのものの問題ということになる。SIF2段増幅し音声検波される。その後はAF増幅だが無信号のノイズは出ているのでこの段は大丈夫そう。SIFのトラブル対処は初めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


SONY 5-206 について

2020-06-10 17:04:04 | テレビ

 1960年代前半のSONY マイクロテレビの国内のラインアップは 5−303、5-202、5-205、5-206かと思うが次第に廉価となって5-206は価格は39,000円。5-303は値下げして52,000円になったが5-206はそれよりも13,000円ほど安い。内部の構造はかなり変更されそれまでは金属フレームに立体的に取り付けられていた基板などがプラスチックボディの上半分に重層的に固定され下蓋を開けてアクセスするようになった。基板は1枚でまだICは使用されずチューナー以外のほとんどの電子部品が並ぶ。基板コネクターが廃止されたのはコストダウンと動作が安定して故障が少なくなった関係かと思う。

 

その1

 プラスチックはボディとブラウン管枠。操作ツマミのパネルは薄い金属板だがレタリングを固定しているクリアラッカーが変色していてレタリングを痛めないように時間をかけて慎重に落とした。ボディの目立たないところにひび割れがあって補修した。電源以外の端子はイヤホンとアンテナジャックのみで突起がなく車載時には都合がよかったかもしれない。外観の掃除後に通電すると一応ラスターらしき反応がある。早速分解してみると

  

 裏蓋をはずすと大きな基板が現れる。ブラウン管枠をはずしボリューム類の固定パネルのネジ2本をはずす。基板はネジ4本で固定されているのではずしてボリュームの金具と一緒に後方にめくると

この状態になるので通電しながらの調整が可能。ここから先の分解は

 

 2本のブロックコンデンサーの固定金具を外すとチューナー、FBT、スピーカーの固定ネジまでアクセスできる。最初はかなり無理な状況でバラした関係で

この状態で途方にくれた。。おまけに貴重な40Ωのスピーカーの引き出し線を切って壊してしまい

 

修理してなんとか事なきを得たが今度は音声がでなくなってしまった。AF回路と思われる電解コンデンサーを数個交換しても変わらずで困ったが突然復帰した。原因はよくわからないので再発するかもしれない。

 5-206の回路図や資料はほとんど入手できない。雑誌などにも掲載されなかったらしく後発の廉価版は興味の対象外だったのか。。

 

 この状態で再度RFから入力すると音声は正常、画面は写真のように細い2画面が現れて一応チューナー、IF、検波までは機能している様子でそのほかも決定的に壊れているわけではなさそう。5-303の作業を参考にしてまず電源部から確認します。

 

 電源回路は5-303と同様で安定化回路は無くチョークコイルが入っている。整流器はセレンで出力電圧は11.55Vでそれほど低下しているわけではないと思ったがコンデンサーのチェック、交換をしてもあまり変わらなかったのでセレンとパラにブリッジダイオードを接続した。これで13V程度の出力となった。4000μFの平滑コンデンサー2個は一応漏れは少ないと判断して継続使用とし、それ以外の基板上のコンデンサーはほぼ全て交換した。

 

 コンデンサーはすべて手持ちで足りた。これでスライダックで徐々に電圧を上げて様子を見る。

 

 幸い状況は改善した。最初輝度が上がらなかったがブリッジダイオードの挿入で良好になった。音声も大きな音が出て問題ない。今回も信号の遮断など決定的な問題が無かったので周辺の劣化したコンデンサーの交換だけで解決できたのはラッキーだった。普通は信号の流れをオシロスコープで追っていき問題の部分を診断できなければ修理はおぼつかない。また製品の資料が出てこないと本当にお手上げとなる。図書館にはブラウン管テレビの資料はなかった。自分で古書を探さなくてはならずハードルが高い。

 

その2

 「その1」から半年くらい経ってもう一台入手した。5−206はマイクロテレビでも後発で若者をターゲットにしていたのか比較的廉価、ボディカラーも黒、赤、白と3色あり当時としてはかなりハイカラな製品だった。しかし中古市場ではほとんど黒でやはり実際は安全な色を選択する事が多かったらしい。ごく稀に赤を見かけるが白は今まで見た事がない。

 入手したのはやはり黒で不動、アンテナが折れていた。修理に使うためバラバラになったロッドアンテナをなかなか捨てる事ができない。まずここから。

闇雲に分解するとこうなって収拾がつかなくなる。前回懲りたはずだが同じことの繰り返しに我ながら呆れる。

 

夥しいほこりを掃除して通電するとアンテナ入力で少し反応がある。映像は上下2段でほとんど判別できないほど不鮮明。電源電圧は12V台なのでとにかく基板上の電解コンデンサーを交換することにした。まずケースにスピーカー、チューナーユニット、ブラウン管、電源を四苦八苦しながら戻して

 

 

この状態にすると無理なく作業が行える。回路図はいまだ入手できていない。作業後スライダックで徐々に電圧を上げていくと

なんとか出画するようになった。しかし同期が弱くツマミの調整で安定する範囲が狭い。コントラストが薄い感じなのでVIFからの信号が弱いのではないかと思っている。ビデオ入力を設けようかと思ったが今後のIF調整の課題を残して一旦終了とした。VHSデッキ出力からRFコンバーターで地デジ信号を入れると十分に安定する。やはり信号の強さによって影響を受けているようだ。

 5-206は5−202や5-303と比べると不人気なのはボディがプラスチックで見た目がちょっと安っぽいからだと思う。5.5inchシリーズはもう少し続いて木目パネルにした5-205や5−206の意匠を変えたと思われる5-24、輸出向けにVHF,UHFのチューナーを搭載した5-307などが作られた。ダブルチューナー製品は少し幅が拡張されている。いずれの製品も似た構成だと思われるが実際に作業する場合にはやはり最低でも回路図がないととても困難となる。修理に慣れてくるにつれて症状から大体の問題箇所が想像できるようになってきたが基板から回路を追っていくのは非常に難しい。

 5−206の資料をお持ちの方がおられましたらご一報をおねがいします。

 

 

 

お読みいただきありがとうございました。

 

その後1

 もう一台5-206が来た。この機種はプラスチックボディの利点を生かして黒、白、赤3色のいかにも若者受けしそうなカラフルなラインアップだったが実際に見かけるのはほとんどが黒で今回は珍しく赤色だったので思わず入手してしまった。アンテナが折れてAC入力端子も破損していたりと薄汚れてかなり荒れた外観だった。まず分解してマイペットで丸洗いする。マイペット原液は塗装を侵すが今回は大丈夫なのでブラシで擦ったり気のすむまで行う。相変わらず不用意にバラバラにしてしまって

 

こうなってしまったのは以前と同じで学習能力がない。アンテナの基台は金具2個をハンダで組み合わせた。ロッドアンテナは切って長さを調節する。

 

 破損しているACコネクターは取り外してコード直出しに、ヒューズはホルダーを新設した。

これでようやく外装が整ったが肝心の動作が不良。受信はしている様子で一応音声は出るのだが画面は全く安定しない。回路図もないしどうするか?

 結局今回はここまでとなった。一応動作する5-206があるので比較することでなんとかなるかもしれないがちょっと非効率すぎる。外観を整えて(まだJISネジが一部不足だが)先送りします。動作品から基板を移植するのが一番簡単だがジャンクが移動するだけなので最後の手段にして回路図が手に入るまで待つことにします。