Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

オークションでバイオリン(2)

2023-07-05 07:06:08 | バイオリン

 性懲りも無くまたオークションで古そうなバイオリンを手に入れた。製作年代は不明でラベルは手書き(フランス語?全く読めない)、駒や顎当てなどは何にも装着されておらずで中を覗くと魂柱もない。。オークションでは写真で判断するしかないわけだが撮影の技術はとても大切だと感じる。「とんでもない掘り出し物じゃね?」的なオーラを感じさせるハイテクニックに引き寄せられた。同じように感じた人も多かったらしくこの手のオークションでは珍しく100件以上の入札があったがなんとか落札することができた。さて実物は、、わくわくドキドキしながら到着を待った。

   

 実際に見ると思ったよりハイアーチ(大きな豊隆)ではない。やはり写り方で印象はかなり異なる。使われた材はそんなに高級なものでは無さそうで表板の正目に少し乱れがあるし裏板の杢もはっきりしない。形状特に豊隆も厳密には左右対称ではない。工房製品ではなく個人の製作かもしれないと感じた。とりあえず音を出したいが本体以外は不揃いのペグだけなのでパーツを集めなくてはならない。このパーツもセットで1000円台から数十万円まであって価格の幅が広すぎる。またポン付けはできず削ったりして適合させるフィッティングという作業が必要になる。そこでまず魂柱だけ入手して自分でセットしそのほかは前回オークションで入手したバイオリン(結構弾いています)から剥ぎ取って、、いや借りてくることにした。とにかく音を出してみたい。

 ところが不慮のケガで1ヶ月ほど入院してしまった。入院中は退院したらアレをしよう、これもやりたい、、と中間テスト勉強で追い詰められた中学生みたいな心境だった。昨日退院して真っ先に作業にかかる。

 入手した魂柱

 

 何の材かはわからないがただの木片に見える。価格も1本100円ほどでこれを削ってセットする。長さは一応測る器具(右写真)があるのだが持ってないので目分量で切断しそれを基準にしてまた切断、、 を繰り返す。セットするところも決まっていて駒の右脚部分の少し後ろ。反対側にはバスバーが走っている。取り付けにはこんな器具を用いる。

 器具の尖っている方で魂柱にブッ刺して保持しf字孔から内に入れて狙った位置に立てる。ちゃんとセットされたかはf字孔とエンドピンを外した穴から覗き込んで確認する。微調整は器具の反対側を使い押したり引いたりたたいたりする。内部は平面ではないので魂柱の切断面も調整して隙間ができないようにする必要があり素人にはなかなかハードルが高い。気をつけないと出し入れでf字孔の周囲を傷めるので器具や穴のまわりには養生が必要。魂柱によって表板の振動は裏板に伝わり内部で反響して外に放出される。名前の通りとても重要なパーツなのだが英語ではただのsound post。

 新しい駒が無かったので古い駒の脚を削って適合させてとにかく組んでみたが色々と問題がある。駒の新製、調整はノウハウの塊なので潔くプロフェッショナルにおまかせすべきだと思う。あくまで仮の状態。

 

 このバイオリンはバロックバイオリンほどではないが指板が短い。またネックの取り付け角度も小さいので駒の高さが標準よりかなり(3〜4mm)低くなる。また駒からテールピースまでの弦が長すぎる。

 ペグは不揃いだったので手持ちの新品と交換した。渦巻きやペグボックスはとても小さく華奢にみえる。ペグ穴も小さく新品ペグに合わせて広げることはなるべくしたくない。ペグリーマーで少しさらってあとは軸をサンドペーパーで包んでぐりぐり回して調節する。ペグ穴とペグのテーパーは一致しているのでペグリーマーに合わせたペグを削る鉛筆削りみたいな器具があるのだが持っていない。

もう少し削って軸を短くしないと格好が悪い。そして困ったことにペグボックス内でA線がE線のペグに当たっていてこれはまずい。ペグ穴を一旦塞いで位置を変えて開け直しになるか上ナットを交換すればいいのか。いずれプロに診断してもらいましょう。

 弦はドミナントを用意した。古い楽器には張力の強いエヴァ・ピラッツィは合わないように思う。これで音出ししてみると予想した通り(嘘)なかなかよろしい!ではないでしょうか。しっかりと調整すればもっともっとよくなる予感がする。これは本腰入れて仕上げるべき楽器だと感じた。

注文していたフィッティングパーツが届いた。

 

このセットはローエンド品でやっぱり値段相応の部分もある。気に入らなければ必要に応じてもう少し高級品に交換します。今までのパーツで気になっていたところ

 

駒からテールピースまでの弦の間隔がそろっておらず音への影響はわからないが見た目は悪い。これはテールピースの穴や弦を誘導する溝の位置の問題で新しい方(写真右)は配慮されているように見える。

 

早速交換すると前よりも揃った。テールピースに合わせて顎当ても交換した。ガルネリタイプの顎当てのベース部分は少し形態を修正してバイオリンに無理がかかりにくいようにした。顎当ての外形がバイオリンからはみ出すのもNGだが幸いちょうど一致した。バイオリンの表面にニスの固まったようなところが点状にあったのでカッターの刃で慎重に削ぎ落とした。カッター刃を斜めにして一層塗料を剥ぎ取る作業は古いバイオリンに後世の人がニスを塗ってしまった場合オリジナルの塗装を露出するためにカバーニスを削ぎ落とす時にもこの方法がよく使われる。全体の拭き上げで今まで使っていたイダオイル(写真左)が製造中止なので今回初めてFeed-N-Wax(蜜蝋入り 写真右)を使ってみたがなかなか良さそう。

   

 音色の特徴はとにかく大きくはっきりした音で普段使っているGabrielliと対照的。A線、D線はもう少し深みが欲しい感じ。魂柱と駒の入れ替えでどの程度変化するか。

 外装のリペアー、タッチアップについて。古いバイオリンをみると表板の割れ、エッジの欠けなどの修復跡があることが多い。これらは材で行われるが全塗装されているわけではないのに境目がわからないほど自然にリペアーされているものもある。溝を掘ってインレイを嵌め込むのはなかなか勇気がいるし適当な古材も持っていないのであまり思い切ったことは難しい。手持ちの古い魂柱はスプルースで表板材と同じかと思うのでネックの付け根の小さな欠損部分に削って嵌め込んで整形、着色した。そのほかも色が不揃いな部分は適当なオイルステインで着色し油性のニスで部分的にカバーした。すでに修復してあって境目が溝になっているところは少し迷ったがニスの盛り上げを数回繰り返して埋めた。メイプルのスクロールの一部が欠けているところがあり材を接着して整形しようとしたが残念ながらここはうまくいかなかった。現在ニスの乾燥待ちだが十分に時間をかけないと研ぎ出しはうまくいかないと思う。ニスも大別してオイルニス、アルコールニスがあるらしい。

 

 

 ペグシェーパー、駒を注文した。そのほかにも上ナット材、膠も入手できる。いずれも非常に安価でやはり調整料金は職人さんの手間賃がほとんどを占める。

 先に駒が届いた。「加工済み」とあるがベースを合わせないといけないし弦高も異なる。とりあえずベースだけ合わせて弦を張ってみると

 

 弦が当たる部分の厚みが3mmある。資料ではここは1.0mm〜1.2mmとなっているが他のバイオリンの駒を実測すると2mm程度から切端に向かって絞ってある。そしてメーカー名の印字は残っているのでネック側の面を削除して合わせた。また垂直面も面取りした。ネックが短いが弦高は他のバイオリンを参考にした。そのほかにも細かな修正が必要らしいがノウハウもないので手が出せない。

 

 弦高は指板の端と弦の距離を各弦ごとに測って判断するのだがこのバイオリンの指板は短いためこの位置で基準としたバイオリンの弦高を測定した。すると基準バイオリンのG線が6.5mm E線が4mmに対して意外にもこのバイオリンは5.5mmと4.5mmで決して高くない。結構弾きにくい感じがしていたのだが今まで低い弦高に慣れてしまっていたのかもしれない。

 

 それでも駒の調整をもう少し詰めてみることにします。まず表板との適合だが板にスタンプのインクを塗って所定の位置に駒を押し付けてどの程度フィットしているかをチェックして色のついている所をナイフで削除する。

 

この方法はなかなか有効なようだ。「表板にサンドペーパーを乗せて擦って適合させる」というのは理にかなっているように思われるが実際におこなってみると薄い足の端の部分が浮き上がってきて適合させるのが難しかった。そして主にE線、A線の部分を少し削除して1mmほど弦高を下げた。また違う資料では駒の根本部分の厚みは4mm 、弦との接触部分は2mmとあったのでそのように削除した。これで弾いてみるとやはり違いがある。A線の音が剥き出しになったように感じて一概に良い方向とは言えない部分もあってやはり調整は難しい。

 ペグシェーパーが届いた。

 

 2連の鉛筆削りにしかみえない。刃の位置はネジで調整できるが結構難しい。ペグリーマーとテーパーは合わせてあるのだが(このテーパーも異なるものがある)自動的に削れるわけではなく調節が必要。シェーパーで最大削ってもまだペグ穴に入り足りない時は穴を大きくするわけだが大きく開けすぎるとブッシング(一度穴を埋めてまた開け直す作業)が必要になるので遠慮がちになる。バイオリンから外側に出ているペグの軸の部分の長さは12mmなのだがそんなわけで少し長めになっている。

ペグリーマーを順方向に回すと削れていくわけだが大体のところに到達したら逆回しにして切削面を滑らかにするという説明があったので実施した。

 ペグにはあらかじめ弦を通す穴が開けられているのだが調整をすると穴の位置が合わなくなるためまた開け直しとなる。余分な穴が増えるわけでなぜ穴が空いているのか不思議だ。反対方向に飛び出した軸は切断して断面を磨く。材は黒檀なのでとても硬い。私はダイヤモンドディスクでカットしたが快適に作業できる。ペグにはコンポジションというクレヨンのようなものを塗って食い込みを防止してスムーズに動くようにする。

 

やはり弦とペグの干渉がある。上ナットもスペーサーで0.3mmほど持ち上げている。これは禁じ手で軸を削れば解決すると思うが、、。さてどうするか。

 

 駒のE線の当たる部分は弦が細い関係でそのままでは次第に沈み込んでしまう。弦に入っているチューブをかますか駒側に沈み込み防止の加工をするか。見たことはないがE線のあたる薄い部分に象牙片を埋めたり多いのは硬いシート(皮?)を貼り付ける。専用のシートは入手できそうもなかったので今回は丈夫そうなお菓子の包み紙を(!)貼り付けて代用とした。

 ローエンドセットのペグを加工してもう1セット作ってみた。素朴な形状のペグ。

 

 削除した軸はオイルステインで着色した。今回はE線ペグの軸のペグボックス内の部分を削除して細くすることでA線とD線の干渉を無くしてナットのスペーサーも除去した。この変更でA線の響きが包み込まれるようになりD線が軽い響きとなった。上ナットを弄ったのが主な要因ではないだろうか。肩当てもMACH ONEよりHOMAREの方が合うようになって以前と逆の印象。ドミナント弦としては発音は大きいと思うが全体にもう少し胴鳴りが欲しい気がする。

 

   

   

外出できなかった夏なので1ヶ月ほど弾いていました。まだ工房のM氏には相談していない。後日改善のためのアドバイスがあったら書き込みたいと思います。

 

 

お読みいただきありがとうございました。

その後 1

 Gabrielliの表板にヒビが入りました。外力が加わった覚えはないので気候の関係かと思います。ほとんど常時エアコンをかけている(バイオリンのために)部屋だったのですが残念です。遠方からの購入で修理に出すのもなかなか大変で気が滅入ります。最近はこちらの古いバイオリンに執心だったのでGabrielliさんが拗ねてしまいました(真顔)。

その後2

 ようやく車の運転ができるくらいケガが回復した。猛暑の中3ヶ月ぶりに運転してバイオリン工房に出かけM氏に初めて見てもらった。すると「かなり歪んでますね!」『そうですよね。どうやって作ったか不思議です』「これはバイオリンが完成した後で歪んだんです。多分200年くらい経ってます。」『!!』、、左右対称でないのはわかっていたがまさか完成後に変形してこの形になったとは。裏板は一枚板のメイプル(楓)なのだが収縮する力が強く表板のスプルース(松)まで歪めることがありこのようなケースはたまに見ることがあるそうだがここまで大きく歪んだのは珍しい、、らしい。材の乾燥が十分でない場合に起こるらしくよくニカワが剥がれないものだ。非対称なので修理する時に基準をどこに求めるのか、もし表板をはぐる場合は応力が解放されて元に戻らない可能性すらあり作業は急がなくてはならない、、などなかなか大変なバイオリンらしい。そのほかの診断として、バスバーが大きくて外側に位置しているので形をかえて(小さく作りなおして)位置を中心寄りに移動したい、ネック下がりがあるので付け直し、指板は減っているので交換、それに伴って上ナット、魂柱、駒の交換、ペグ穴はブッシングしてペグやりかえ、、など沢山の問題点を指摘された。まあそうなるかな、、というところもあったが作業の一覧と見積もりを作成していただくことにして帰路に着いた。やはりプロの視点は素人とは全然異なる。見積もりを見て今後の身の振り方を検討しましょう。。翌日メールで見積もりが送られてきた。バイオリン修理の一覧がホームページに掲載されていたのだが実際にはかなり高額でバイオリン本体とバランスが取れない。しばらく保留することになりました。

その後3

 普段使っている楽器のトラブルもあってここ1ヶ月以上弾いているが安定しています。再開したレッスンにも持っていったが音が軽々と出てとても弾きやすくしばらくは大きな修理はしなくても良さそうです。ペグ穴のブッシングについては否定的な記事がありどうしても必要になったら行う事にします。

 ところがペグボックス内でA線が切れました。E線のペグに巻いてある弦に干渉する事が原因かと思います。ドミナント弦を購入しに工房へ出かけた時に再度ブッシングの部位について質問したのですが、、やはり保留となりました。その代わりA線を張る前にE線のペグの軸中央部をもう少し削って細くしました。それでもまだ少し干渉するが多分当分このままになりそう。E線の発音がひっくり返ることが少なく重音がよく鳴ってくれます。弾いていてストレスを感じない。

その後4

 時々弾いていますが深い音が楽々と出て来てやはりすばらしい楽器だと思います。形状からmilanoで作られたか?修理歴があまりないのも発音に幸いしているのかもしれない。素人が行った魂柱だが工房の方にやりかえてもらおうかと思っています。

 後日工房のM氏にお願いして魂柱を交換しました。交換前後の発声の違いは正直よくわからないがしばらく弾きながら経過を見たいと思います。

  


オークションでバイオリン

2023-04-30 02:23:47 | バイオリン

 たまたまネットオークションに出品されているバイオリンを眺めていると新品から200年以上古い(とされている)ものまで色々出品されていてオークション価格も数千円から数百万円と千倍の差がある。バイオリン内部にラベルが貼ってあって製作者や地域、製造年が書かれているが偽ラベルも多いので全面的に信用はできずバイオリンの形状や状態と照らし合わせて判断される。ラベルにストラディバリ!などと書かれているのは冗談としては可愛いが美術品の鑑定と一緒で過去にも某有名音大で詐欺事件があって世間を騒がせた事がありそれだけ真贋の判断はむつかしいらしくそのほかにも逸話に事欠かない。もっともネットオークションに出品される楽器はそんなにややこしいものは少ないようだ。

 バイオリンの形状は製作者によって細かなところが異なっている。実際には過去の巨匠の作品を模したものが多く必然的に「ストラド(ストラディバリ)」形状が多く流通している。「シュタイナー」はバイオリンの歴史における初期のドイツのマエストロなのだがとても不幸な人生だった事が知られている。過酷な環境下にもかかわらず製作された楽器は素晴らしく当時はストラドやガルネリ以上の評価だったらしいが現在はコピー製品はそれほど見かけない。たまたま「ヤコブ・シュタイナーのコピー」とだけ書いてあるラベルが貼ってあるバイオリンがオークションに出品されていて思わず入札してしまった。。

 楽器に入札したのは初めての経験。掲載されていた写真では魂柱は立っているようだが弦が3本しかなく駒も倒れているなど非常に荒れているが妙に惹かれるものがある。運良く落札され翌日には送られてきた。

 

ケースは中のスポンジが劣化していてぼろぼろこぼれている。バイオリンはオークションの写真の通りの状態だった。

  

ラベルにはヤコブ シュタイナーのコピー ドイツ製 とだけ英語で書かれている。エンドピンを外して魂柱を確認すると大きなホコリが見えた。

 

E線のアジャスターはボールタイプがついていたがループタイプも付属していたので取り替えた。駒は倒れていたものを含めて3個あった。長い間使われていたらしくそれ以外でも小物や元オーナーらしい名前(アジア系)のシールまで入っていた。顎当ての様子からは結構長期間演奏されていたようだ。

  

 

 致命的な損傷はなく象嵌の浮き、板の剥がれも見られなかった。早速適当な弦を張ってみるとA線がビリビリに歪んで慌てる。やっぱりどこか割れてるのだろうか、、と暗い気持ちになったが原因は弦が指板に当たっていたため。

 

 指板はかなり荒れている。前オーナーは練習熱心だったようで表面が凸凹しているしローポジションあたりが全体に凹んでいる(もしくは指板が反っている)。ナット(ペグボックスの境目の弦が収まる溝)がすり減りすぎていればナット交換になってしまうが指板の調整だけでなんとかならないだろうか?もちろん行ったことはないがカッターナイフの刃で鉋掛けしてからサンドペーパーを板に貼り付けて修正作業をした。弦高も少し低め(指板の端で各弦1mm程度低い)だったので反りの修正をかねて金属スケールを基準にして水平に近づけた。サンドペーパーは1500番まで番手を上げていった。これで弦のビリ付きは改善したが1ヶ所どうして取りきれない深い傷がある。

   

 これを削りとるのは無理だと判断し次回の指板交換まで目を瞑ることにした。指板の削除は失敗したら交換すればいいので緊張感は薄いが(ウソ)それに比べてペグの調整は難易度が高い。ペグの不具合は本当に困ったものだが素人が下手にペグリーマー(幸い持ってない)で削るとのペグの交換にとどまらず取り返しがつかなくなる恐れがある。ペグにサンドペーパーをかけたりチョークを塗ったりペグ穴から飛び出したところを削って弦穴を開け直して、、なんとか調整を済ませたが長期の安定が得られたかはわからない。

 あとは全体の掃除だが目立たないところを2000番のサンドペーパーをかけてみたがあまり芳しくない(ニスも減るし)ので中止して熱いお湯を絞った布で汚れを拭き取ってから大昔に買ったこのオイルで磨いた。

 

 

弦張って(E線以外は使い古し、D線は他の製品)試奏してみると

 

 E線が穏やかで優しく響く。A線とは音的に繋がる。D線は少しおとなしいがこれはここだけ弦の種類が異なるためかもしれない。G線は量感は少ないがそんなにこもった音ではない。弾き方によって音質が変化するので均一な響きにするのに気を遣う。しばらくすると落ち着いたのか耳が慣れたのかもう少し聴きやすくなった。

 付属していたケースは有名メーカーの市販品だったが中のスポンジが砕けていて粉がいっぱい出てきてこのままでは使えない。中から引っ張り出して掃除してあらたなクッションを入れた。これが今回の作業で一番時間がかかった。

 

 

 バイオリンは本当に不思議な楽器で由来もモンゴルの馬頭琴が先祖などと言われるがはっきりしていない。ある時突然完成品が現れた!などと言われるがその当時の楽器が400年を経て現代でも演奏する事ができるのも 驚異的で植物材料の堅牢さには驚く。毎年かなりの新作が製作されるがきちんと作られた楽器が長い期間弾き込まれることによってより良い発音の楽器へと成長していくとされる。その期間は数十年から百年単位なので人間の寿命より長くなってしまう。したがって演奏家はすでに成熟した楽器を入手してメンテナンスしながら弾く事が多い。良い音のバイオリンは高額ということもあり自分の体の一部になったような楽器を長期間弾き続けていく事が多いと思う。そして演奏家が引退してもその楽器は次の演奏家に引き継がれていく。資産的な扱いの超高額の楽器が話題になるがそれらは有名製作者による骨董的価値を併せ持つもので存在そのものが貴重なもの。企業や財団が保有していて有名演奏家に貸与される場合が多い。

 弦楽器はたとえバラバラになっても修復でき捨てられる事がない。表裏の板は膠で貼り付けられているので水分と熱で溶かして分解組み立てが可能で生き延びるのに必要な徹底した修理、メンテナンスができる。過去作られた数百年分の楽器の数は膨大だと思われるが玉石混交なのも事実で名器として受け継がれていくのはごく限られたもの。オークションに出品される古い楽器はそれ以外の歴史に埋もれた楽器を掘り起こしたものが多いのではないかと思う。そしてたとえ名演奏家でなくても弾き続けられた楽器には魂が宿っているよう気がしてならない。今回入手したバイオリンは気の毒な姿を晒してオークションにかけられていたがそんな楽器ではないかと思い思わず入手してしまった。素人メンテナンスで申し訳なく思いつつ失礼にならないように心を込めて作業した。幸い素人ではどうにもならない致命的な問題がなかったので非常に楽しい時間だった。楽器は予想以上に応えてくれたようで嬉しく思っています。

 

 

 

お読みいただきありがとうございました。

後日談1

 翌日にずうずうしくも弦楽器工房の専門家に診てもらいアドバイスをいただいた。ほかの弦と合わせるためにD線の購入を口実にして。

 しばらく眺めて「ネックの角度がつきすぎているな」。何のことか最初はわからなかったがボディに対してのネックの取り付け角度がという事らしい。

シュタイナーコピーらしく表板の隆起が大きいのでヘッドから高い位置に向かって伸びている弦は角度がキツく「ちょっと苦しそう(楽器の負担が大きい)」ということらしい。対策は「一旦ネックを外して位置を変えて再装着する」「その際にナット、指板、駒、魂柱も交換」『!!』これは大変なことになった。そこまでやるのならペグの交換もしてもらおうじゃないか!費用はざっくり「15万円くらい」でまあそうなるよなぁ。やっぱり素人には思いもつかないところを指摘される。素人がちょっといじったのとは次元の違う作業の必要性を指摘されてしまった。しばらく考えることにします。

 

後日談2

 バイオリンの扱いについて文献を調べてみると随分間違っていた事が判明した。

 まずペグだが調子の悪い時に塗ると思っていた口紅みたいなのはチョークではなく「コンポジション」という名前だった。そして使いすぎは悪影響が出る事、基本的にはペグが硬い時には石鹸、緩い時にはチョークを使う。問題解決にはまず塗りすぎたコンポジションの拭き取りが必要とのこと。ペグそのものの調整が基本だが微調整にチョークとコンポジションを混ぜて使うこともあるらしい。ペグのテーパーの確認は軸に不透明なスケールをあてて裏側から光を当てて光の漏れ具合で判断する。テーパーはサンドペーパーではなく鉛筆削りのようなカッターに突っ込んで回しながらおこなう。ペグリーマーと共にもちろん持っていないのでごまかしが効かなくなったらやはり十分な調整は専門家に任せるべき、、はかわらず。

 次は指板だが平坦ではなく中央は両端に比べて1mmほどさがって(窪んで)いる事がわかった。これは弦の振動で当たらないようにしながら駒の高さを抑えるため。平らに修正しきれずに偶然に現在はそのようになっているのが幸いした。

 顎当ての取り付けが間違っているのが多いのだそう。自分で交換するときは特に注意で最悪本体を傷めることもある。多いのが取り付け金具に対して反対側が持ち上がっている事例。早速金具の調整を行った。

 

後日談3

 D線のペグは相変わらず不調で何回か調整を行っていた。なぜかE線の発音が悪くなってきてちょっとカサカサいうようになってきた。と調弦していたらバチッと音がして何か飛んできた。見ると、、

なんと駒が砕けている。少しペーパーをかけたりしたのが悪かったのかもしれないがこんな事は初めてだがどうしてこんな折れ方をしたのだろう。倒れた時の衝撃が原因で破折したのかもしれないがひょっとするとヒビが入っていてE線の不調もここが原因だったのかもしれない。駒の調整はかなり重要で魂柱と共に音質調整の要とされる。弦の振動は駒で本体に伝達されるが弦楽器の弱音器は駒にクリップすることで振動がある程度遮断され弱音となる原理からも駒の重要性がわかる。駒は既製品が売られているが技術者が切削調整してバイオリンに適合させる。破折した駒の他に2個あったのでそのうちの1個を取り付けたらG線の弦高がすこし高い。弦高は本体への負荷に影響するので今までの駒の形に合わせて削除した。弦高は文献を参考にしたがもともと1mm程度低くなっている。ネックの角度を指摘されたが元のオーナーも配慮して弦高を下げていたのかもしれない。振動した弦がネックに触れない事を確認した。しかし残念ながらE線の状況はあまり変わらず。

 

後日談4

 やっぱり一度は修復したケースのあんこが気に入らない。いれたスポンジが柔らかすぎて気持ち悪い。またホームセンターに行って物色してハードタイプを買ってきた。

 

結構高いのに驚く。荷物の緩衝材はすぐにゴミとして捨てるのにお金出して買おうとするとこの大きさで1000円近くする。前作のスポンジあんこをコピーした。

 新たなペグを入手したらペグ穴に比べて細くて適合しなかった。測ってみると穴の大きな方は直径9mmほどで1mmは大きい。穴が大きくなりすぎたらブッシングといって穴を一度埋めてからまた開けるという作業をするがこれは素人にはできない。市販のペグでもっと太いものはないのかとまた図々しくも工房の方に尋ねたら一応はあるらしい。しかし弦を巻く直径が大きくなるなどチューニングはしずらくなる。穴とペグを調整する道具も必要でやっぱりハードルが高い。結局写真みて太そうなペグをもう一組注文した。写真の向かって左が後注文のペグ。確かに太くてこのままでは入らない。専用工具を使ってペグと本体の両方を削ることになるがこの先ほとんど使わないだろう工具を新たに購入するのも躊躇する(ケチなので)。

 結局ペグリーマだけ購入して少しだけ調整して(穴を広げて)終了とした。残念ながら普段使いの楽器には仕上がらなかったと思う。今後はもし多数の専用クランプが入手できたら表板を外してみたいと思っています。

 

後日談5

 結構弾いています。日頃は壁にかけてすぐに手に取れるようにしている。弓は毛が古くなって使っていなかった「杉藤」というメーカーの製品(YAMAHA サイレントバイオリンの付属品)の毛替えをして使えるようにした。開放弦の影響が強く出て特に高音域のバランスにムラがあるが気軽に使えます。


バイオリン日記(2)

2022-03-03 01:58:01 | バイオリン

(文字数がオーバーしたのでこちらに移ります)

2023/8/21(mon)

 つい最近からGabrielliのA線が少し金属音がすると思っていた。全体的に音も冴えない気がしたのでolive弦を交換したのだがその後明らかにD線にノイズが入る。調べるとf字孔の外側の部分がパフリング部分で割れていた。以前よりひび割れの修理は施されていた表板だがこの暑さで新たなトラブルが発生してしまったらしい。今日は販売店がお休みなので近くの工房の方に電話で相談したらよくあることなので表板は外さずに対応できるかもしれないとのこと。まず販売店に連絡と取って指示を仰ごうかと思うが遠方なので気が重い。販売店負担で1年間の保険に入っているが免責額も大きく保険を使うにしても出費は大きい。部屋は殆ど常時エアコンをかけているし湿度もケース内の湿度計をチェックはしていた。外力が加わった覚えはない。やはり古い楽器の管理は大変だ。

 Gabrielli用に購入した中古のバイオリンケースの予備弦入れチューブと湿度調整用チューブのホルダー4個が割れた。以前も補修したのだが繰り返すのでこのホルダーは諦めてマジックテープに交換した。チューブが外れてケースの中で動かないようにするための配慮でやはりトラブルがあるといろいろと慎重になる。

2023/8/22(tue)

 定休日明けを待って販売店に電話するとやはり持ち込む必要があるという。近所にも工房があるのだが直接持ち込んで欲しいとのこと。新幹線で数時間かかる距離なので困ってしまうが来月に帰省する予定があるのでその行き帰りに対処してもらうことにした。表板を外すような大掛かりな修理にならないことを祈っている。

2023/9/2(sat)

 先日「手書きラベル」のメンテナンスの見積もりをもらったのだがやはりとても高額(それだけ大掛かりな修理)で今回は断念した。かなり歪んでいるのでどこを基準にしたらいいかわかりずらいらしい。ただし箱は脆弱な感じではなくしっかりしている(と思う)。基準に合わせて各部の数値を整えた場合に音の変化は(どの程度)あるのだろうか?ただ表板を開けてバスバーを作り直す項目もメニューにはあったがこれは気になる。バスバー、駒、魂柱を整えた場合の変化はどうだろう?このバイオリンのポテンシャルはどの程度あるのだろうか?

 お店では新しい楽器が入荷していてこれからセットアップにかかるとの事だった。それから1週間ほど経過したので電話すると仕上がっているというのでお願いして試奏に出かけた。(最近はほとんど外出していないので理由をつけて出かけないと本当に引きこもってしまいそうだ。)楽器はストラドモデルとガルネリモデル。ストラドモデルは以前しばらく借りて弾いた事がある。価格は両者とも30万円台後半、とても軽い楽器で鳴りも良く練習するのには不自由はなさそう。比較のために普段弾いている「手書きラベル」も持っていったのだがやはり新しい楽器という感じがする。新作楽器は時間が経過するとどんな変化が起こるのかは正直わからない。どんなバイオリンでも古くなればいい音がするわけではない。大切なのは「長い年月色々な環境下で弾き続けられるのに耐えられる正しく作られた楽器であるのかどうか」だと思っている。死蔵されずメンテナンスを受けつつ継続して弾かれてきた楽器はその試練に耐えてきたということになる。造りに無理のある脆弱な楽器では生き残れない。

2023/9/4(mon)

 ケガで3ヶ月レッスンを休んでいたが車の運転や松葉杖なしで歩けるようになったので思い切って再開する事にした。Gabrielliは故障したままなのでそれ以外のバイオリンでのレッスンになる。「手書きラベル」は快調で先日もアンサンブルの練習に使った。すでに2ヶ月ほど弾いているがこのまま定着するかもしれない。クライスラーのプレリュードとアレグロからの再開になる。それ以外でもレッスンを受けたい曲が溜まってきた。

 

2023/9/5

 懲りもせずにまたオークションでバイオリンを入手した。イタリアのミラノの製作者ジョバンニ・バチスタ・グランチーノのラベルがある古い楽器でラベルが正しければ300年以上前のもの。ダブルボックス、その間には緩衝材と合板まで入れてある丁寧な梱包を解いてトラブルがないか見渡す。今回ははじめてセットアップされてある楽器だったので早速弾いてみるが、、??どうも冴えない。高域の倍音が不自然で耳障りな音でしだいに残念な思いが広がって行く。
  
 継ぎネック、ペグ穴はブッシングがされている。低弦の弦高が若干高く少し弾きにくいので測定してみるとやはり指板で1mm程度は高い。とりあえず駒の調整をしてみようと弦を緩めて駒を外すと魂柱が倒れた。エンドピンを外して中を覗き込むと表板のひび割れの修理の様子が見える。古い楽器にはこういった修理痕が残っているのが普通でしっかり修理されていれば問題はない。何ヶ所かの修理を確認していたら外から光が差し込んでいるところがあったので目を凝らすと、、表板が側板と剥がれている!ネックの付け根から少し離れたE線方向で外部からも確認した。
 以前から問題があったのか輸送時のトラブルかはわからないが猛暑の中遠方から運ばれてきたのだから何が起こっても不思議はない。バイオリンは各パーツが動物性の接着剤の膠で組み立てられている。膠は高温で溶解する性質を利用してバイオリンなどの弦楽器は分解して完全なメンテナンスを行うことができる。膠の入手は可能だがこのトラブルは素人の手には負えないと判断して早速明日にでも弦楽器工房に持ち込んで駒の調整などと共に相談することにした。
   
 売主には「クレームではないが」とことわって事の顛末を報告し謝罪の返事を受け取った。最高に丁寧な梱包で扱ってくれた誠意を感じたので問題があっても受け取った側で対応しようと心に決めた。私もオークションで古い工業製品を売却することがあるので少しは売り手の気持ちがわかるが楽器はよほど気を遣うと思う。過去に理不尽なクレームで返却されたことが頭をよぎる。今回のようにセットアップされて送られてきた楽器を最初に弾く時の期待は非常に大きいが思ったような発音ではないと目の前が暗くなってあっという間に気分が落ち込む。調整によってある程度のリカバリーはできる場合もあるが絶対的な楽器の素性は変えることができないのではないかと思っている。だが今回のように明らかに故障している場合は話は別でトラブルを発見した時は変な話だが「これで希望はつながった」と少し安堵した。
 
 翌日工房に持ち込んで状況を説明して診ていただいた。見解としては「ハイアーチのボディに対してネックの位置はもう少し上方にあるべき」「ひび割れ修理がとても多いがなおひび割れがある」「エンドピン周りはかなり大規模に修理されていて大きな事故があったことが伺える」「以前のひび割れ修理のパッチの処理が甘いのでできればもう一度修復したいところ」「この状態だと魂柱を立てるのはとても難易度が高い」「総じて手を出さない方が良い楽器だが修理したらよい音になるかもしれない」という内容だった。
 今回は表板の剥がれと小さいひび割れの修復(これは外から行うと思われる)と駒の修正をお願いした。まず弾ける状態にして現状で音出しをしてみたい。受け取りは4日後。
 指折り数えて受け取りの日が来た。ところがお願いしていた駒の修正はなぜか無く自分で修正線を引いて形態を修正した。弦が収まる溝は極細の専用のやすりが必要なのだが以前入手していた。
 指板の端の弦までの高さはG線で5.5mm、D線5.0mm、A線4.5mm、E線4.0mmとなりこれで随分弾きやすくなった。修正前後の音質は変化がありE線の音が少し丸くなった。駒の形態の変化もしくは駒の位置が微妙に移動したのが原因と思う。自分としては良い方向の変化だった。
 しばらく弾いてみたが可能性を感じる音だと感じた。パワーもあり音も多彩で引き出すには演奏者の力量が必要で易しい楽器ではなさそうだがこれは本望で長年生きながらえてきた楽器にふさわしい。
 
 数ヶ月前に久しぶりに弦楽器の展示会に出かけて色々と試奏する機会があった。どの楽器も楽器店で調整しての展示なので持っている能力は発揮されているはず。弾き比べてみると誇張ではなく全ての楽器が異なる音を持っていた。これは他人の演奏を聴いただけではダメで下手でも自分で音を出してみないと分からないと思う。音質と価格にはある程度の相関があるのは事実だったが逆転しているものも多々あった。そして自分が満足する音を発する楽器は非常に少ない事がわかった。多くの楽器が並ぶ展示会でもそうなのだから一発勝負のオークションで自分が気に入る楽器を入手できる可能性は著しく低いと感じる。オークションは基本的に返品はできない。中には気に入らなかったら返品可という説明書きもあるが利用手数料やそれなりの違約金を支払う事になり高額商品の場合は非常に大きな出費となる。また権威のある鑑定書がなければリセールバリューも保証されず特に高額の楽器を入手するときのギャンブル性は高い。楽器店で高額で売られているような楽器という説明で非常に安価で出ている場合もあって一攫千金の誘惑に満ちている。しかしオークションでビンテージ楽器を入手しても楽器店に転売する場合の引き取り価格はかなり低額の提示になるのが現実だと思う。なんでも鑑定団と同じで鑑定額で引き取ってもらえるわけではない。昔からとんでもない掘り出し物があったというストーリーは多いが現実にはどうなのだろう?夢物語としてはとても魅力的な話ではある。
 
 ビンテージギターの市場はバイオリンなどの弦楽器と比べて桁違いに大きいのだろうと思う。昔はビンテージギターはあまり見る機会が無かったし市場も小さく弦楽器に比べると価格はずいぶん低かったように思う。しかし近年はとても高額で取引されていて1950年代のものは数百万から一千万円越えまで見られるようになった。特にエレクトリックギターの場合は工業製品が普通で工房の一点ものは少ない。かつてのギターヒーローが使っていた楽器は種類、製造年が特定されて相場が跳ね上がる。もちろん音の違いもあるだろうがわかりやすく製造年が最重要視されるのはバイオリン以上に楽器としての価値よりも所有欲を満たす意味合いが大きいことを感じさせる。Fenderなどセットネックでない場合には各パーツを寄せ集めることによって贋作が作られやすいのでは、、などと余計な心配をしてしまった。バイオリンは一部の骨董品以外は発する音による楽器としての評価が厳然とある。
 
 バイオリンは大きさや容積、形に大きな違いはないが価格の差は激しい。しかしたとえ同じ弦を張ったとしても弾き比べてみると同じ音がする楽器はない。テレビ番組で高価な楽器と廉価な楽器の弾きくらべで回答者は区別がつかないということがある。弦楽器の音は演奏者の音であり良い楽器はテクニックによって色々な音を引き出すことができる。演奏者の意志を表現できる能力がある楽器と決まった音しか発することができず十分な表現がしずらい楽器の差だと思っています。
 
 その後調子が良くてしばらく弾いていたが最近冴えない発声になってしまった。なぜか不明だが特にA線の音に深みがない。そこで特徴書きを参考にINFELD(RED)という弦に替えることにして早速音出しするがやはり冴えないのは変わらず。そこでエンドピンをはずして穴から覗いてみた。またトラブルが見つかるかもしれないと期待したが特に隙間、剥がれなどは認めずそのうち魂柱がまた倒れてしまった。自分で再度立てて弦張って弾いてみるが、、ますます冴えない。もう自分ではなんともならないので工房に持ち込んで診てもらうと割れ、剥がれはないが魂柱の位置は調整する必要があるとのことで数日間あずかりとなった。表板を外して徹底的リペアーも相談するがやっても改善するかは不明とのこと。時間と労力とお金をかけても改善しない場合もあるのはまあそうだろうなと思う。実行する時は不服申し立てはしないという念書を書かなくてはならないだろう。
 今日受け取りに向かった。修理内容は現在の魂柱を立て直しただけだがその場で弾いてみると確かに改善を認める。パワーも入るしダイナミックレンジは広い。ただ低域から高域まで幅広い帯域に雑音のような尾鰭のような高調波のようなものが付帯するように感じる。弦が(INFELD)新しいのも関係があるかもしれない。初めて使う弦でもあるししばらく弾き込んでみることにします。工房の方の話では魂柱が当たる面にパッチが欲しいとのこと。修理部分が多く現在も修理で加えた材に当たっているらしい。やはり表板を開けて内部を見てみたいし修理のメニューも相談したい。このバイオリンについては素人が弄る余地はないと自覚しています。
 
 その後酷暑の酷使でエアコンが故障して交換となったが最近は気候も良くて一年で一番過ごしやすい季節になった。それは弦楽器にとっても当てはまりどの楽器もとてもよく鳴ってくれています。グランチーノが我が家に来て1ヶ月半経ちました。当初は板の剥がれなどトラブルもありその後もなかなか調子が出ずにヤキモキしていたのですが最近はとても好調だと感じます。G線からE線、ローからハイポジションまで破綻なく力強く響きひっそりと鳴るガブリエリとは対照的な音。本来持っているであろう高いポテンシャルに近づきつつあるのではないだろうか。ボーイングを磨いて多彩な表現をしたいと思うし気付かされたことも多い。これは良い出会いだったと思います。
 

2023/9/8(fri)

 3ヶ月ぶりにレッスンに出かけた。曲は中断前のプレリュードとアレグロ。ずっと弾き続けていたがやはり思ったようには弾く事ができない。なぜか譜面を追うのも一苦労する。不思議だ。プレリュードもアレグロも細かな指摘があった。一人でどれだけ練習していても進歩はないだろうと思うような的確な指摘。次のレッスンも引き続いて、、となりそうだったがこちらからお願いして次の曲に移ることにした。また積み残しの曲が増えてしまったがこの曲はずっと弾き続けると思う。予定を大幅に超過したレッスンに感謝した。次の曲はおなじクライスラーのコレルリのテーマによるバリエーション。これも以前レッスンを受けた曲。先生としてはほかにやらせたい曲があるようだがこちらの希望を通してしまった。

2023/9/19(tue)

 法事とイベントがあって帰省した行き帰りに1ヶ月前に破損したJ.B.Gabrielliを修理した。往復の新幹線を名古屋で途中下車して持ち込んだ。割れの部分

写真でわかるだろうか?パフリングで割れている。修理は表板は開けずに膠を流したらしく修理代は7700円(税込)。購入直後だったので無料かな、、と少し期待したのだがしっかり請求された。確認の試奏した時に展示してあった新作◯ャコンヌがあったのでそちらも試奏させてもらった。少し音を出してると担当の方が「ちょっと30秒ほど手を加えさせてほしい。表ばかり光が当たっていたので裏面にも光をあててバランスを取りたい(!)」と持って行った。しかし私の腕と耳では処理前後の違いはよくわからなかった。新作◯ャコンヌ以前はとてもドロドロしていたニスで展示品なのに完全硬化していないこともあったのだが最近のニスはそんなことはないらしい。音は低弦が特に充実していたと思う。とても上品に響いて怪しいオールドバイオリンを購入するよりもいいかもしれない。特にバリバリ練習する人には耐久の面で向いているかもしれない。肝心なGabrielliはちゃんとリペアーされていて帰宅して1ヶ月ぶりに弾くことができた。

 そしてついにPecchini Vascoとお別れをした。20年以上弾いた楽器だったがようやく別れの決心がついた。人間よりもはるかに長生きして美しい音楽を奏でることでしょう。今までありがとうございました。

2023/12/8(fri)

 レッスンではBACHのviolin concert2をやっている。ペータースで練習して行ったがインターナショナルが良さそうで買い直した。参考にしている演奏は高木凛々子氏のものでyoutubeで楽章ごとに公開されている。先生も高木さんのボゥイングをコピーされてありがたい。今日は2楽章と3楽章だが高木さんはとにかく音が美しく陶然とする。なんとか近づきたいものだ。

 

2023/12/某日

 オークションでバイオリンを入手した。ラベルは19世紀1867年のフランス製Joseph Louis GERMAINとなっている。早速web検索して画像を見比べるが確かに似ている。そんなに超高額名器というわけでもなさそうでこれはラベル通りの可能性が高い(と思う)。

Joseph Louis GERMAIN

誕生:1822年、ミルクール(ヴォージュ)      死去:1870年、ミルクール(ヴォージュ)

ジョセフ・ルイ・ガーミンは、パリにあったCh.fr Gand's workshopに入社する前に1840年にミルクールで見習いを始めた。1840 年から1845 年にかけてCh.Fr GANDで働き1845年からジャン=バティスト・ヴィヨームの工房で1850年まで務めた。そしてワークショップのディレクションの担当でCh.Adophe GANDに呼ばれた。 1862年にrue Saint Denis364 に会社を設立し1870年に息子のエミール ガーミンが跡を継いだ。

ワークショップ
サン ドニ通り 364  パリ

協力者と後継者
ガーミン・エミール(息子)
モワネル・フランソワ

ラベル&スタンプ
2 つの異なるラベルがあり最初のラベルは 1862 年から1867 年までで、2 番目のラベルは 1867 年以降

-------------------------------------------
Louis Joseph Germain Luthier
A Paris année 18..  
-------------------------------------------
Joseph Louis Germain; à Paris
Année ..
-------------------------------------------

 Joseph Louis GERMAINは1822年ミルクール(フランス)生まれで48歳で同地で亡くなっている。ラベルは2種類あって楽器と見比べると前期のもの(1862年〜1867年)と一致しラベルに記入されている製作年1867年とも整合する。

 外径は少し大きめでこれは外枠方式で作られたものかもしれない。外枠方式は主に大量生産された楽器の製作方法で中にはブロックを省略しているような粗悪品もあるらしいが一概に劣っているわけではなくもちろん丁寧に正確に組み立てられているものもある。表板をはぐってみないと確定的なことは言えないらしいが発声はとても大きくてしっかり製作されていることが感じられる。A線の声質がすこしハスキーだったので弦を手持ちの古いオリーブに交換したのだが(E線だけ新品のドミナント)改善せずあらためて新品ドミナントで判断することにして注文した。

    

   

 ドミナントと交換してみたがやはりA線あたりにノイズが入る。どこが原因だろう。翌日工房に持ち込んでM氏に相談すると、、しっかり作られている、150年ほど経過している割に傷みが少ない、魂柱の位置を変えただけでも発音に変化があると思う、ペグ穴は大きく現在のペグと全く適合していない、などの評価。今回は魂柱、駒、エンドブリッジ、顎当て、ペグを新調しそれに伴ってペグ穴はブッシング(一度塞いで穴を開け直す)をお願いすることになった。納期は2週間ほど先の年明け。楽しみに待つことにします。

 

2024/1/8(mon)

 新年早々の1/1 16時すぎに能登半島を震源とする震度7の大地震が発生した。私が帰省していた近隣の新潟県でも震度5強の揺れがあって炬燵にあたりながら頭には座布団を乗せて揺れが収まるのを待った。能登半島地震の被害は甚大で犠牲者もは100名を超えた。現在も全容は不明で消息のわからない人たちの救出作業が続いている。翌日には大型旅客機と被災地救援に向かう海上保安庁機が羽田空港のC滑走路上で衝突し炎上した。さいわい旅客機の乗員乗客は全員無事だったが被災地の救援に向かう方々5名の命が失われた。

 2024年は不穏の年明けとなってしまった。世界各地の戦争はいまだに続いている。これらは直接関わっていない人の心にも暗い影を落とす。こんな時に自分は何ができるのだろう。無力なのはわかっているがせめて苦しんでいる人たちへの想いは持ち続けたいと思う。

 前日までよく晴れてたのに大雪警報が出るくらいの天候になった。気温も低いが明日から少し緩むとのことでなんとか凌いでほしい。

 

 東京駅で「幸せの黄色い新幹線」に遭遇した。黒山の人だかり。富士山も上越新幹線や東京からもくっきり見えた。

 予定よりも遅れて帰省先より帰宅した。早速フレンチバイオリンを受け取りに向かったのだがお互いの認識の行き違いで未完成。残念!

2024/1/13(sat)

 昨日セットアップをお願いしていたJoseph Louis GERMAIN を受け取った。やはりしっかり作られているという評価だが160年前の楽器にしては綺麗(すぎる)というのは少しひっかかる。ネックの取り付け角度が若干大きかったので駒も高くなったが発音が良好なのでこのままで良いのではないかという意見。早速音を出してみると低域から高域までのバランスが良好で雑音が少なく大きな音が出る。気になったのはD線の音ががすこし薄い感じ。しばらく弾き込んでみます。

 新年早々にバイオリンの師匠が転倒して怪我をされてしまった。レッスンはしばらくお休みになります。若い時には何でもない所でも年齢と共に体が動きづらくなって怪我をすることがある。家の中でも危険なところはないか普段からチェックが必要だ。田舎の高齢独居の母親が心配になる。

 

2024/1/25(thr)

 バイオリンを収納する棚を購入した。形状をよく確認せずに棚板の幅だけで注文したら柱から横にはみ出す部分があって使えない。仕方ないので改造して何とか収めた。

 

 

2024/2/8(thr)

 師匠が転倒、怪我されて1月のレッスンは全休だった。幸いに2月より復帰され私のレッスンは明日から再開となった。この間一人で弾いているわけだがやはり壁を感じる。同じ曲を弾き込めば指も少しは回るわけだが表現が豊かになったとは感じない。一回のレッスンで得るものは大きい。

 最近国内オークションを眺めていると某有名製作者作のバイオリンがバラバラの出品者から同時に数丁出品されている。それもすべて市場価格◯◯◯万円みたいなタイトルがついている。過去の売買のデータをみるとこの作家のバイオリンは今までも数多く販売されていてどうやら仕入れのルートがあるらしい。一旦国内に持ち込まれてオークションで販売されたものが転売されているのかもしれないが売却価格は以前からほとんど変わりはなく転売しても利益が出るわけではなさそう。製作されたのは数十年前でこれから良い音になっていく可能性はあるとは思うし写真で見ると確かに魅力を感じるものもある。この作家はとても才能ある優秀な方だったらしいが晩年は自身の作ではないものにもラベル貼って販売していたという解説もある。楽器を入手する時は当たり前に手間と交通費をかけても可能な限り試奏すべきと思う。(どの口が言う?)そして本当に優れた楽器は最後まで手放されることはなくなかなか流通しないのではないか。

 

2024/2/9(fri)

 2024年になって初めてのレッスン。師匠は大怪我だったにも関わらず思ったよりもお元気そうでよかった。課題はBACH V. concert 2 の第3楽章だったが第1もお願いした。第1の連続しながらこーどが進行していくパートで「もっと抑揚を抑えて敬虔なニュアンスで」との指導。以前も言われていて意識していたのがやはり出来ていない。これは宿題となった。第3の出だしの3拍目の音、これも宿題。しかし今日でこの曲は一旦終了となる。あとはドッペルだが一旦お休みして次回から無伴奏ソナタ1をすることになった。

 

2024/2/10(sat)

 部屋の空気が乾燥してケースに入れているバイオリンの弦がゆるむ。ケースには湿度計と加湿のためのスティックがついている。

 

あまり使ったことはなかったが音も少しカサカサする気がして水を少量含ませた。プラスチックの筒のなかに綿が入っているが綿は外には取り出さないと思われる。筒には穴がたくさん開いていてを短時間水に浸して良く拭いて戻してみる。湿式のレコードクリーナーと似た構造だがくれぐれも水の量に注意。これでメーターを観察してみます。

 

2024/2/22(thr)

 岡山市で弦楽器の展示調整会があって楽器持参で出かけた。

 展示のバイオリンは30丁ほど。高額商品とそうでないものと部屋が分かれていた。スタッフはチーフとそのほか4名ほどでメンテナンスや毛替えなどもあって平日の初日だったが結構忙しそうだった。私のリクエストはA線にもう少し潤いのある音が欲しい、、という漠然としたものだったが魂柱の調整をしていただいた。正直何が変わったか確証はないがとにかく対応していただいた事に感謝、料金も格安だった。すべてのバイオリンを試奏させてもらった。ほかに試奏する人がいなかったので恥ずかしくて遠慮気味に行ったのだがやはりすべての楽器が異なる発声だった。全体的に良い印象なのは反響のある部屋だったのかもしれない。自分の楽器とも引き比べてなかなか良い経験だった。ラベルのない製品が結構多かったのとオールドの楽器は表板があまり美しくなかったのが印象的。素晴らしい楽器というのは音もさることながら容姿も素晴らしいということかもしれない。夕方の帰宅ラッシュの中帰路に着いた。

 

2024/3/30(sat)

 弓の毛替えをお願いした。毛替えの時期はよくわからない。ただ少し弾きずらいとか音が冴えないなど感じたら行うようにしている。工房の方が弓を見ての感想 1すこし曲がって(捻れて)いる 2弓の根本1/3あたりが少し太いようだ 3湾曲が近代の弓のように先方向が最下点でなく真ん中あたりになっていて少し古典的か 4弾力が弱い(これは私の意見でもあります) という内容だった。この弓はフランス製でプーロ(だったと思うが)という名前。購入したのは四半世紀前。もう1本の弓と弾き比べるとやはりそちらの方が弾きやすい。

 前回のレッスン時、前日から少し体調がすぐれない。一度終わりまで弾いたのを聴いて先生曰く「今日はやめにして来週にしましょう」『!』これは初めてのことだったので少し驚いた。自分ではそこまで体調が悪いわけではないと思っていたのだがレッスンに集中していないと見抜かれてしまったのだろう。帰宅して血圧を測ると少し高い。年取ると無理はできないということか。

 BACHの無伴奏だが三重音、四重音の弾き方がすこしわかってきたように感じる。重なっていてもコントロール下にあるべきだし雑に弾き飛ばさないこと。最後に残る二重音の響きは特に大切。

 

2024/4/21(sun)

 久しぶりにバイオリンリサイタルに行ってきました。

 傘寿を迎えた守屋美枝子氏による能登半島大地震のチャリティーイベントで教会で行われた。1時間くらいの短いコンサートだったが礼拝堂いっぱいの200名以上の聴衆。普段youtubeやパッケージ音源を聴き慣れているわけだがLIVE独特の臨場感にいろいろと思うところがあった。今日は雨で前半は少し篭り気味の音だったが次第に音が出てくるのがわかる。そしてBACHの演奏は長年音楽に向き合ってきた姿を映し出す。ずっとずっと追い続けていって、いけどもいけどもたどり着かない。そういうものなのだろう。

 

 

 


バイオリン日記

2022-03-02 12:50:13 | バイオリン

 中断していたバイオリンレッスンを再開した。私のレッスン歴は7歳〜15歳の8年間のスズキメソッド、42歳〜57歳の15年間のSバイオリン教室で合計23年間(!)受けている。才能のなさと生来の怠癖と逃避癖で腕の方はサッパリで今だに人前で演奏できるレベルでは無い。小さい子が素晴らしい演奏をしている動画を見るたびに世の不条理を呪う日々。レッスンは退職前あたりから中断していたのだがそろそろ再開したくなって久しぶりにS先生の門を叩いた。第6波のコロナ禍で私は3回目のワクチンもまだだったのでどうかな、、とは思ったが幸い再入門を許されて昨日再開第一回目のレッスンを6年ぶりに受けてきた。前回(6年前)までは週1回のレッスンだったが仕事の関係でなかなか全出席はできずレッスン日の変更も難しく平均しても月3回には届かなかったと思う。今は時間の余裕はあるが精神的な負担も顧慮して月2回のレッスンとさせていただいた。

 6年ぶりの教室は時間が止まっていたのでは無いかと思うほど変わっておらずこれには驚いた。唯一バイオリン販売店が配る写真入りのカレンダーだけが違う。私を欺くなにか大きな力を感じる(病気かも)。何から再開するかだがこちらの希望で新しいバイオリン教本4巻からとさせていただいた。小野アンナ先生(オノヨーコさんの叔母さん)の音階エチュードをしてから曲を、、という流れは以前と同じ。今日は4巻2曲目の「ロッシーニの主題によるエア・バリエ」から。

 この日記ではレッスンされた内容に加えてyoutubeなどでも解説される動画を参考にレッスンメモとして記録しておこうと思います

 

4-2「ロッシーニの主題によるエア・バリエ      /  Dancla」

2022/3/2(wed)(初回) 2022/3/17(thr)(2回目)

 Andante(ゆっくり歩くような速さ)

  ゆっくり 松葉を意識 休符を意識 シ-ラ、ミ-ファは松葉 ミ-ファはあざとくならない エコーはやりすぎない

 1-3 レード ニュアンス 3-1 から3-2 に向かって

 Piu lento(今までより速く)

  3小節目シーラ シーソ 気持ちを込める。3段目下降音程 次の上行は3連譜弾き ラーシは1拍ゆったりと ただし演奏は譜割り通りでないことも 4段目最初の1拍しっかり

  2-3 16分音符タイム 3-2 2つの駆け上がりは繰り返しではない

 cantabile(歌うように)

  1小節目 弓小さく 3小節目1拍目切る 3段目の下降そよそよと タータ タータ 5段2小節目拍の頭しっかり

 Brillante(輝かしく)

  3段目音程 2小節目スピッカートのリズム スピッカート後の音符の長さ 弓の根元を使ってコントロール

 coda

  下降は4より0を多用

 

2022/3/3(thr)

 香川県高松市で開催された高松亜衣さんのコンサートに行ってきた。

 

会場のサンポートホール高松 となりは30階建ての高松シンボルタワーで時間があったので高速エレベーターで最上階まで行ってみたがほぼ無人。閉店したレストランもあって見た目の華やかさと裏腹に実態はきびしそうだ。

 氏は東京芸大生時代からのyoutuberで23歳の現在も活発にアップしている。今回は全国6ヶ所の無伴奏ツアーで4名の作曲家の作品とアンコール1曲の実質1時間程度の内容。コロナ禍で心配されたが今日は無事に開催されて観客は60名くらい、6列目の真正面でいい席だった。超絶技巧オンパレード、ほとんどノーミスの演奏に圧倒されたが特に感心したのはボウイングで弓の端から端までのスピードが速く正確、音がキンキンせずに柔らかい。重音が縦横無尽に鳴り響くといった感じであまりの凄さに参考にすらならない。私と同じスズキメソッド出身というから彼女もきらきら星から始めたと思うが同じ楽器なのに違う世界に住んでいる事を実感させられた。「BACHは今後人生の年輪を重ねていくとどういう演奏になっていくのか楽しみだ」などと評論家みたいな事をむりくり思いながら聴いていた。

 さすがクラシック界のアイドルで演奏が済んでの撮影タイム、客もおじさんが多い。CD買ったがコロナのせいでサイン会はなし。そのかわり1000円高いおなじCDがあってオンラインサイン会とある。購入すると自分の名前入りCDが送られてくるらしく商魂逞しい音楽事務所。ただしちょっと納得できるのはこの状況下の観客数ではチケットの売り上げだけではなかなかペイしないのではないかということ。どのアーティストも物品販売は収益を支える大きな柱だろうと思う。

 

2022/3/5(sat)

 プロの音が掠れないのは何故だろう。今日は最近知った地元の弦楽器工房に普段使わない弓を毛替えに出した。以前に他店で替えたのだがどうもしっくりこなかった弓。今回のお店に別の1本を先月毛替えして調子が良かったので本命の弓も替えてもらうことにした。腕の悪さは棚に上げてできることはやっておこう。この工房は数年前に開設されたらしいが弦楽器担当のM氏は偶然にも私が楽器を購入した名古屋のお店に勤めていた方。この大手の販売店は年一回岡山の会場でメンテナンスや毛替えを行なっていて利用していたのだがコロナ禍での中止もあってしばらく受けていなかった。帰省の新幹線を途中下車してお願いしようかと思っていた矢先だったので本当にラッキーだし今後も安心。古いオーディオ機器や車などと一緒でメンテナンスショップの有無が趣味を続けられるか否かを大きく左右する。

 

2022/3/13(sun)

 張り替えた弓は好調。不調の時は松脂と相性が悪いかもしれないと思って数個買い込んでいた。1個当たり2000〜3000円なのだが1個だけ数倍高いのがある。レザーウッド(だったかな?)というメーカーで松脂がレザーに包まれた木製の樋に入っていて見るからに高級そう。最近youtubeを見ていたら松脂による出音の違いというのがあってこの松脂がダントツに良いという。実力がないので違いがわからないのが本音だがそう言われたら使わない手はなく早速筆頭常用となった。

 

2022/3/17(thr)

 今日はレッスン日で朝から落ち着かない。ただし今回は「鬼練」はしないと誓っている。鬼練とはレッスン直前の猛練習のことでレッスンで恥をかかないように体裁を保って切り抜けるためのあがきで今まではこの連続だった。今回は心を入れ替えて鬼練脱却宣言して有言実行。退職して自由になる時間が増えたし体裁を保つだけような行動は自分を貶めるだけだと信じて。。いつまで続くかわからんが。今日でダンクラのエアバリエが終わってしまった。次回まで3週間あるのでちょっと大曲に取り組んで次回のレッスンを受ける事にした。

 2回で終了を告げられて最初は次の曲は、、となっていたがやはりもうしばらく続ける事にした。綺麗な音色、スピッカートを安定させる、早いパッセージも粒が揃うように。ちゃんと音楽になっているか?他の人に聴いてもらえるレベルをめざす。

 

2022/3/24(thr)

 深々とした美しい音を出すのはどうしたいいのだろうと思う。私の指は昔の巨匠のように大きくて太い。特にハイポジションでは指を退かさないと隣の音を押さえることができないのでこれがとても嫌だったし音程が定まらない言い訳にしていた(と思います)。しかし太い指による大きなビブラートが彼ら独特の音を創っていたとも言われるのであながち欠点ばかりではなさそうに思う(いや思いたい)。ビブラートの練習は最近はしたことがなかったが意識して大きくかける練習をしています。意識すると難しく自然にできるようになるには時間がかかりそう。

 最近メンテナンス時に今まで使ったことのない弦に張り替えてもらったのだが短期間でちょっと冴えなくなってしまった。弦に付着した松脂のせいかもしれないと思って念入りに掃除するもあまり変わらない。弦の張り替えは私くらいのレベルなら年1回発表会の前の交換が普通ではないかと思います。4本交換すると高いものは¥10,000もしくはそれ以上掛かるので練習しかしないものにとっては頻繁には交換できない。現在はたくさんの種類が流通しているので弦による違いは気になる所です。性能を長く維持するか否かは大きな要素にちがいない。

 

 

2022/4/7(thr)

前半は音階Edur ダンクラ 後半は

4-3「アンダンテ・レジリオーソ      /  F.Thome」

 最近メンテナンス時に3/24(半回)4/7(半回)

 祈り、宗教的

Andante

 1-3小節目 3-5小節 ドレ 丁寧に

Poco piu mosso

 8-5 丁寧に 10-2 ファはミのフラジオで確認

Tempo 1

 音符はしっかり伸ばす。

Largamente

 1-6シのあとしっかり間

Tempo 1

 1-2 0ではなくG2を

次回(2週間後)から4-4 コンチェルト イ短調 No,1  /Accolay

 

2022/4/16(sat)

 コンチェルト イ短調 No,1  /Accolay は練習曲として「新しい、、」と「篠崎、、」の各々4巻に掲載されている。日本の三大バイオリン教則本はこれに「SUZUKI」を加えたもので各々に特徴があるらしい。現在のレッスンは主に「新しい、、」を使っているが私の持っている一番古い「SUZUKI」教則本は1964年発刊と書いてある。半世紀以上経っている酸性紙は結構脆く古文書のようになっているのもあって買い直した巻もある。子供の頃は教則本は永遠に続く道みたいな印象だったが本来は短期間で効率良く技術が習得できることを目標にしていて改めて見渡すと確かにそう感じる。半世紀前のレッスンを思い出して(昔の記憶は結構鮮明、最近のはすぐに忘れる)もどかしく感じる事もあるし教則本に収められている曲には変更はなくちょっと不思議な気もする。

 同じ曲が異なる教則本に載っている場合運指やスラー、編曲が異なっていることがある。あるYouTubeチャンネルを見ていたらこの曲の楽譜は「SUZUKIより篠崎の方が良い」という意見でこの機会に篠崎教則本全巻を大人買いした。。

 早速「新しい、、」と「篠崎、、」の同曲の譜面を比較すると結構違いがある。出だしから「新しい、、」はp(ピアノ)だが「篠崎、、」はf(フォルテ)!で真逆だし拍の頭をスラーに入れるかなど。参考にさせていただきます。

 netに掲載されていた楽譜の冒頭の記号はmf(メゾフォルテ)で作曲者の指示がなければなんでもありだ。他にも途中三連符が続くところもその冒頭がサルタートなのかテヌートなのかなど。

 コンチェルト イ短調 No,1  /Accolayは練習曲として知られているがパールマンなども弾いている映像も(多分観客へのアンコールサービスだと思うが)あってさすがに巨匠が弾くと全く違った曲に聞こえる。こんな風に弾きたいので解釈はできるだけ真似しよう。この曲はコンチェルトの練習曲と言われるが魅力的な旋律と構成で個人的にはとても好きな曲。頑張って練習しよう。

 

2022/4/30(sat)

 今年のGWは久しぶりに旅行に出かける人が多いらしい。2年続けて外出自粛が叫ばれていた反動かと思うがまだまだオミクロン株による新型コロナ感染は続いている。もし自分が感染しても命に対するリスクは低いのだろうという認識が若い人を中心に広まっての行動でwith colonaの観点からこれは仕方ないしマスク着用の習慣も次第に緩和されていくのだと思う。ただ自分も家族も十分に老人だという認識は忘れないようにしたい。リスク回避のための行動制限は個人の意識によってレベルは違うがこの先ずっと続いていく。

 この次のレッスンは5月5日。以前はレッスン日が近づくと憂鬱な気分になっていた(!)が最近は楽しみに思う。ちょっと気になるのはここしばらく左手の小指の第2関節が痛むこと。練習のしすぎではないが気になる。

 スピッカートがうまくできない。サルタートは元弓で何とか。弓を弦に落とすのではなく掴んで離す感覚と言われる。どの弓の位置でも方向でもスピードでも自在にコントロールできるようにしたい。

 

2022/5/9(mon)

 GWが終わってやはりコロナ陽性者は増加した。観光地はどこも賑わっていてこれは予想通りらしい。日本では外出時はほぼ100%の人がマスク装着している。法事があって県外に移動したがカミさんはフェイスシールド付きのマスクを使っていてちょっと浮いてる。逆に海外の映像を見るとマスク姿が全くないのもあって(結構感染者が出ている国なのに)考え方の違いが鮮明。今後しばらくは海外へは行きずらそうに思う。

 左手小指の不調に加えてアウトドアで右手親指を少し痛めてしまった。指を使うアーティストは家事を一切せずにドアの開け閉めもマネージャーが行うみたいな話を聞いたことがある。本当であればそこまで意識を高めて芸術に対峙する姿勢には感心するが芸術の特別感にちょっとうざくも感じる。指が痛いと練習に支障が出てちょっと気持ちが滅入った。次回のレッスンは5/12に変更になった。

 

2022/5/10(tue)

 3ヶ月前にバイオリンのメンテナンスを行なっていただいた際に弦を交換した。勧められたのは分数バイオリンの時は使ってたような気がするがこのバイオリンになってからは初めての弦「ドミナント」。一番ポピュラーではないかとおもうし価格も比較的リーズナブル。ところが交換直後は輝かしい音で良かったのだが2週間ぐらいでくぐもった音になってしまいがっかりして早くも次の弦の物色をしていた。そのまま弾き続けて現在に至るのだが不思議なことに最近は良く鳴っている気がするし深みが増したような音になってきている。皐月の天候の関係も大きいとは思うがこれが本来のドミナント弦の音かもしれない。音色のコントロールが手の内にあるような感じで練習が楽しく感じる。

 

2022/5/13(fri)

 コンチェルト イ短調 No,1  /Accolay  2022/4/21    2022/5/13

 場面転換に伴う細かなニュアンスの指示が多い。膝を柔らかく細かなフレーズに気持ちを。繰り返し時の表現、三連符のカウントはきっちりと(伸ばす)。2小節ごとの輪郭を考える。到達する音がキーならばきちんと意識する。音の終わりを丁寧に。弓のスピードを必要に応じて、ゆっくりすぎると音が詰まる。録音してのチェックは有効だと思う。

 一応2回のレッスンで終了。

 次回から(すでに行なっているが)セヴィシックop.1 No,11 をレッスンに取り入れることになった。クロイツェルよりセヴィシックを。エックレスのソナタに。

 左小指が以前から痛む事を相談するとオーケストラでも悩んでいる人は多いとのこと。やはり小指の問題が多く運指を変更して対応する場合があるらしい。手の大きさと小指が割と動くのが数少ない利点だと思っていた自分だがやはり加齢でいろいろと問題が出るみたい。

 

2022/5/19(thr)

 ヘンリー・エックレス(1660〜1742)は江戸時代中期の英国の作曲家。エックレスの名前はあまり一般的ではないと思うがこの曲はバイオリン学習者にとっては有名な曲で誰もが一度は弾いていると思う。検索するとヨセフ・スークが弾いているのが見つかって参考になる。

 

 エックレスのソナタの楽譜はバイオリン教則本の「新しいバイオリン教則本」4巻 「スズキメソッド」8巻に載っている。youtubeの解説でこれらはオリジナルとかなり異なっているとあったので新たに楽譜を購入した。出版はインターナショナル社だが同社からはエックレスのソナタのコントラバス版も発売していてうっかりそっちを買いそうになった。ちなみにTheodore Presser Companyからはアルトサックス版が出版されている。インターナショナル版は曲の構成は同じだが音はかなり異なっている。盛り上がる部分がオクターブ低くなっていてこれならコントラバスで弾いたら迫力があるだろうな、、と思う。バイオリンの場合は教則本のオクターブ高い方が華やかに聞こえる。どちらがオリジナルに近いかはわからないがインターナショナル版には教則本にはなかったテンポの指定があるので購入してよかったと思う。YouTubeで検索するとコントラバス、ビオラの演奏が聴ける。やはり素晴らしく思わず聴き入ってしまったがコントラバスはハイポジションが多くビオラはかなり編曲がされていて各々難易度が高そう。

 

2022/5/27(fri)

 なぜか今頃(5月末)になってバイオリン教室に今年のカレンダーが送られてきたらしく受け取った。バイオリン専門店が毎年制作しているのだが非常に美しい過去の名器といわれる写真が載っている。今年はアマティの弟子だったジョヴァンニ・バッティスタ・ロジェリ。全盛期は1690年頃らしいのでこのバイオリンも作られて330年くらいは経過しているのだろうと思う。拙宅にある一番古いバイオリンカレンダーはレッスンを始めた2001年でそれから随分経過した。

 今日からレッスンでセヴィシックのop1 NO,11をする事になった。毎日練習して臨んだがダメ出しが多く練習したところまで行き着けず。準備運動のようなものだからレッスンの一番初めに行う。完成はなくてアスリートの準備運動のように日々繰り返して行うもの。

 エックレスのソナタレッスン1回目。弓大きく、休符しっかり、音符通りしっかり伸ばす、  重音は単音で終わらない、重音の弓は手前に傾けて。重音後に弓が離れると次の単音がばたつく、(ピアノの伴奏から)タイトとレガートをしっかり分ける。やはり2楽章が難しい。先生には申し訳ないが自分が納得するまで続ける事にします。

2022/6/6(mon)

 

 倉敷演劇鑑賞会 例会 「アルジャーノンに花束を」劇団昴公演 倉敷芸文館  

 ダニエル・キイス原作の本作は何回かテレビ、舞台化されている。テレビではユースケ・サンタマリア(2002年)、ヤマP(2015年)主演、演劇も複数の演出があるらしい。この公演はキャストを交代しながらすでに450回以上のロングランとのこと。無駄のない素晴らしい舞台に引き込まれて原作本も購入してしまった。舞台の余韻に浸りながらこれからじっくり読む事にします。コロナ禍がひと段落なのか観客も結構多い。前回例会の「くず〜い 屑屋でござい」(もともと子供向け演劇)もよかった。

 

2022/6/10(fri)

 エックレスソナタ2回目。3,4楽章の予定だったがもう一度最初から聴いてもらう。第1楽章まあまあ、第2楽章やっぱりダメ。重音に勢いがない、食い気味に弾くのはOK、低減2本を引っ掛けてから鞭を打つように高弦2本を重音に。もっと張りのある音で。伴奏をよく聴いて。第3楽章フレーズ感しっかり。退屈な。ダメ出し多い。第4楽章ヴィバーチェ速すぎないで。アクセントは1拍目。キコキコだめ。

 一応次の曲へとなったがやはりダメだと思う。弾き込んだら上手くなるのだろうか、、?私のような高齢の上達法は感性のままに弾いてもダメだと思う。ちょっと情けないがお手本の演奏があってそれをコピーするようなやり方が良いように思う。また弦楽器は発する音にニュアンスを付け加える事ができるわけなので(弓の速さ、強さ、ビブラート、左手の動きなど)1音に気持ちを込めて弾き飛ばさない。

 

2022/6/16(thr)

 先生からのアドバイスで練習の一番初めにセヴィシック op1 NO,11を弾いている。右手のウォーミングアップなのだが欠かさず行なっていると少しづつの進歩を感じる(気がする)。弓が弦を擦って振動させてその振動が弓を伝って弓を持つ指をはじめとする身体に感じるわけだが何となくその道筋がはっきりしてきた。振動のループの過程で発声されるがこのループが強固であるほど揺るぎない安定した音が出る。決して一方通行の一発勝負ではない。

 

2022/6/24(fri)

 今日からHendel Violin Sonata 2 。HendelのViolin Sonataは6曲あるが本人作は1と4の2曲のみと言われているらしい。聞く事があるのはこの2曲と2と3の第2楽章くらい。楽譜もそれしか持っていない。そのうち全曲入手しようと思っていたがそのままになっている。緩徐な第1、第3楽章とアレグロな第2、第4楽章なのだがやはり第1楽章が難しい。しっかり歌う(歌わせる)にはどうすればいいのか?まず立って弾こう。つい座って練習する事が多いが気がつくと姿勢が悪くなっているし足裏への体重のかけ方が疎かになる。立った方がニュアンスがとりやすい。次に自分の演奏する姿を録画してみよう。以前は録音だけだったが画像があった方が良いとのアドバイス。試しにiPhoneで撮ってみたが音質の悪さに閉口した(腕の悪さも当然だが)。そこで外付けのマイクを注文した。Lightningに挿すタイプなのでステレオ録音には縦置きに限られるかもしれない。ちょっと映像を見てみると音だけの時も「棒」だったが映像が加わると余計に感じる。音の溜め、しなやかさ、送り込みいずれも不足している。早いパッセージをアップアップしながら機械のように弾いている。酷さ加減に今更ながら暗い気分になった。

 

2022/6/27(mon)

PLAN75 早川千絵監督 倍賞千恵子主演

 

 座席は半数ほど埋まっていた。PLAN75とは高齢化社会に対応するために国家が推進する制度で75歳になったら自死を選べるというディストピア映画。現実に迫りくる深刻さに自分を重ねてとても嫌な気分になったのは予想通り。身寄りのない倍賞千恵子は当事者、磯村勇斗は進める側の公務員、、、、はPLAN75を申し込んだ老人を緩和ケアする若者、ジェニファー・、、はフィリピンから日本に出稼ぎに来て介護職からより高給な死体処理業務に転職した手術が必要な病気の子供を持つ母親。

 テーマや人物設定は良いと思うし印象的なシーンもあった。しかし圧倒的にもの足りないのは何故か。安楽死や尊厳死などと共に多くの議論や深い考察が必要だろうし本人の希望とはいえ死刑執行のような扱いを受ける様子は現実味が薄い。このテーマで韓国映画がリメイクしたらと考えてしまう。

 

2022/9/17(sat)

 事情で10週間ほど留守にしていた。楽器を持っていかなかったので帰宅して久しぶりに音出しをした。おそるおそるケースを開けてみる。昼間は家人は居ないので夏場のダメージを心配していたが糸巻きと弓のネジが少し張り付いていた。発音はそう変わっていない気がするがしばらく弾いていくうちに様子が変わるのかもしれない。指が動かず運指を忘れているのは予想通りだったが練習のパターンまで考えないと出てこないのは練習が身についていない証拠だと思う。頭の悪さは今に始まった事ではない。

 

2022/10/21(fri)

 3ヶ月お休みしていた月2回のレッスンは10月から再開した。今日でHendel Violin Sonata 2は終了。やはり当たり前に曲の解釈の大切さを感じた。曲想を意識するだけで発音が変わる。今日のレッスンでは音階の指のタッチをもっと鋭くして音を明瞭にと。次回から4巻モーツァルトのアダージョで以前のレッスンでは跳ばした曲。

2022/11/7(mon)

 渋柿をたくさんもらったので例年の干し柿と今年はじめての柿酢を作った。

 

 柿酢の作り方は簡単でヘタをとって瓶に入れるだけ。洗ってもいけない。これで時々かき混ぜて1ヶ月から3ヶ月でできる。1ヶ月過ぎたのをザルで濾した。梅酒用に売ってる瓶2個で1升くらいか。少し飲んでみたがアルコール発酵もあってちょっと酔っ払ってしまった。私は酒が全く飲めない。瓶に移しても発酵は進むらしいのでちょっと加熱してアルコール分をとばさないといけない。早速生姜の微塵切りと混ぜて調味料を作ったり、ワカメの酢の物にしたり。しばらく楽しめそう。干し柿は第2弾が50個ほど吊されている。搾りかすは肥料にした。

 

2022/11/11(fri)

 4巻モーツァルトのアダージョのレッスン。やっぱりCDの模範演奏だけでは分からなかった細かな指示があった。ボゥイング、トリルの入り、初音の入り、抜けのニュアンス、など。3週間あったので結構弾き込んで行ったのだが音楽にするには「大雑把に弾ける」ではとても届かない。でも次曲のヴィニアスキーに行くことになった。

 「スペシャルエディション」と称してThe Beatlesの新譜のCDとLPが出ている。今までも当人たちも不満だったと言われているアルバム「LET IT BE」が別テイクを用いたりやリミックスされてCD化されたことはある。

 今回はLPを購入した。LPレコードは米国ではCDの1.7倍の売り上げだそう。サブスクで無料感覚で聞くかお金出してLPで聴くかの2極化しつつある。今回のバージョンの特徴は音源を分解してデジタルミックスし直していること。当時はモノラルからステレオへの移行期であれだけ凝りまくって製作したモノラル音源だがステレオパッケージにする時はエンジニア任せだったという。今聞いてもむりやり不自然に左右に振り分けられた物が多く(それも当時を偲ぶものとしては悪くないのだが)今回は演奏、ボーカルを抜き出して再構成するという現代ならではの手法。サブスクでも聞くことはできるが古くからのファンはパッケージが欲しい。ちょっと迷ったがLPバージョンを入手した。Beatlesのアナログレコードは希少価値のあるもの(初版、回収された版など)は100万円以上する物がある。

 すでにリミックス音源は聴いていたので新たな感激は薄かったが重量版レコードだったこと、綺麗なジャケットでやはり所有することの喜びを感じる。スクラッチノイズのない新品レコードはやっぱり新鮮で気持ち良い。ジャケットは飾っておいても十分にオサレだし。数十年前に購入したLPは米Capital版だったので「Dr,Robert」などが勝手にカットされていたものだった。(そういえばJONEが亡くなった時の追悼文に「Dr.Robertはもう間に合わない、、」と言うのがあったのを思い出します。)

 2022/12/2(fri)

 数日前に弦を張り替えた。今年初めに楽器を久々のメインテナンスに出した時以来なので10ヶ月ぶり。弦や弓の毛替えは1年に一度くらいがアマチュアの標準だと思っている。その時は「ドミナント」という多分最も多く使われていると思われる弦を張っていただいた。こちらから指定したわけではなくお店のスタンダードなのだが実は私は初めて使う弦だった。どの弦もそうなのだが張り替えたばかりは輝かしい音がして嬉しくなる。ところがこのドミナント弦は10日位で最初の輝きは失われてしまった。これには少し驚いて何が原因だろうかと考えたが思い当たる事はない。価格がリーズナブルということもあってこういう性格のものだとその時は納得した。ところがそのまま使い続けていくと次第にまた変化していった。燻んだように感じていた音がまた燻銀のように輝き始めたと言えばちょっと大袈裟かもしれない。音を表現するのは難しいが外に向かって響きすぎない、暴れない音、コントロールがしやすい音。弱音器をつけると自分が上手くなったように感じる事がある。これはギターにエフェクターとしてコンプレッサーを入れるとアタックが弱まって音が持続するのだがそんな状況に近いのかもしれない。そしてその状態は長く続いたと思う。これが本来のドミナントの音かもしれないと思った。

 今回採用したのは「エヴァ・ピラッツィ」

 これも良く使われている製品で価格は11,500円程度、円安のためか以前より値上げしていた。早速張り替えると予想通り全く違う。まず大きな音が出る。高音がキンキンする。オクターブで隣の解放弦が大きく振動してちょっと気持ち悪いくらい。ドミナント弦では弱音はいい加減な演奏でもでもそれなりに聞こえてたのがアラが曝け出される。。誰に聞かせるわけでもないが変な癖がつかないためにもやっぱり弦の張り替えは必要だ。

 前回のレッスンはWineiawskie オベルタス だったがダメ出しが多かった。付点スタッカートのリズム、重音の音程、、トリッキーな曲をカッコよく弾くのは難しい。結構ハッタリもありと思うがそれでは練習にならない。また重音時に解放E線が鳴らない事が多い。これには本当に悩んでいて弦の交換で解決するかと思ったがやはり変化ない。少し太めのE線を選んのだが。調整で何とかなるのだろうか?

 

 2022/12/9(fri)

 Wineiawskie オベルタス はやっぱり難しい。不満足だったが私のギブアップで終了となった。この曲は過去一度レッスンを受けていてその時もギブアップだったので二度目の、、となるがこの先三度目のレッスンはあるのだろうか?。次の曲はビバルディ。オベルタスがうまくいかなかったので腹が立って(だと思うが)「この曲(次のレッスン曲)にはビバルディらしい魔法を感じない!」などという暴言を先生に吐いてしまって後悔した。ビバルディ先生ホントに失礼しました

 エヴァ・ピラッツィは次第に落ち着いてきてキンキンしなくなった。

 

 2022/12/15(thr)

 Handel(ヘンデル)のViolin Sonataは6曲あるのだが真作は1番と4番のみとされている。この2曲はSUZUKIのバイオリン教本に掲載されている。新しいバイオリン教本には2番と3番の第2楽章が載っているのだがそれら以外の曲も弾きたくなって6曲を網羅しているinternational出版の上下2冊の楽譜を入手した。バイオリン教本と比較すると運指やボウイングが結構異なり今まで身についているのを変更するのはちょっと面倒だと思う(老人のアマチュアは融通が効かない)。3番の2楽章は有名な曲で子供たちの発表会ピースなのだがそれ以外の楽章を初めて弾いてみた。参考にしようとyoutubeを探すがさほど演奏動画は多くない。ところがそのうちの1本の解説にSUZUKIの教本6巻に載っている曲と書いてある!これはどういうことだろうか?私のSUZUKI教本6巻(1967年)には載っていない。Amazonで検索して掲載曲を比較すると確かに3番全曲が載っていてその代わり旧教則本の後半の数曲がカットされていた。internationa版と比べて運指も多分易しいのだろうという期待を込めて早速注文した。SUZUKIの教本は1960年に発刊されたと聞いている。途中で改訂されたということを初めて知った。曲目以外でも運指やボウイングが変更になっている曲があるかもしれない。出版社の楽譜は昔からの巨匠が監修しているものが多くアマチュアには結構弾きにくいものもある。うまくなれば表現の幅が広がるのだろうが道は険しくつい安易な方を採ってしまう。

 届いたSUZUKI教本の巻末に改訂のことが記載してあった。1970年代に現在の内容に変更されたらしい。旧版に収められている曲も指導者と相談して弾いてみたらどうか、、とあった。そのほかの曲のボウイングもやはり変更されている箇所は多い。

 

 2022/12/23(fri)

 最後の曲ビバルディのソナタ。ダメ出し多いがいちいち納得する。

 

 2023/1/13(fri)

 年が明けて最初のレッスン日。10日ほど帰省していたのでその間楽器に触ってなくてやっぱり先生に見破られた。でもビバルディは今日で終わってしまった。レッスン時に完結しないのは残念だが普段もう少し弾き込みたい。次回から「新しいバイオリン教本」5巻に

 

 2023/1/27(fri)

 ビオっティのコンチェルト。結構弾き込んでいったのだがやはり表現について細かい指示があった。ローラ・ボベスコのレコードがあるはずなのだが最近見当たらない。もう少し探してみよう。ジェットコースターのようなフレーズが多いのだが「スチューデントコンチェルト」的な曲だと聞いて少しがっかりする。SUZUKI教本でも4巻にザイツのそれが数曲あるが最近はあまり弾かなくなっている。1回のレッスンでOKがでて次回からローデに。

 

 2023/1/29(sun)

 岡山市にあるシンフォニーホールで行われた角野隼人コンサート

 

 ここでのコンサートは3回目だそう。席は3階だがステージ真正面。満席の観客の男女比は2:8くらい。写真撮影OKの時間帯で

 

 今回はフルコンとアップライトという変わった編成。とくにこのアップライトピアノは左手で何か操作していたが音色が変えられる機能があるらしい。籠ったピアノらしからぬ木管楽器のような音が出ていた。youtubeではトイピアノや鍵盤ハーモニカまで駆使している氏の演奏は自身の作曲も交えてクラシックにとどまらず。アンコールもバズった曲をやっていた。

 昨年は有名youtuberのかてぃん氏がショパンピアノコンクールに出場したりファイナル以外の演奏がwebで公開されたりで世間のピアノへの関心が高まったと感じる。やはりスターはジャンルを問わず不可欠な存在だ。

 

 2023/1/30(mon)

 解放時のE線が調子悪い。十分に鳴らずに掠れてしまう。全体の正弦振動にならず分割振動になる。特に重音で顕著でしばらく前からこれには悩んでいた。市内にある弦楽器修理工房にメンテナンスを兼ねて診てもらうことにした。すると今日電話があり「テールピースの位置が低弦方向に少し(1〜1.5mmほど)ずれている」『!』この楽器を弾き始めて20年以上になるが初めて指摘された。指板がずれているわけではなく製作時からのものらしい。処置はテールピースの穴を埋めて新たに穴を開け直すというもの。表裏板を剥がさなくてもよいらしく早速お願いした。1903年製造のPecchini Vasco というmantova(イタリア)の楽器なのだが製作者の年表からちょっと辻褄が合わず(8歳時の作になってしまう)そのうち販売店に質問してみよう。これで悩みが解消すればいいのだが出来上がりは5日後、楽しみに待ちます。

 

 2023/2/7(mon)

 4日ほどで作業完了の連絡があった。エンドピンの位置移動は2mmほどで早速弾いてみると若干の改善が認められる。特に4弦同時に鳴らす時に解放のE線が鳴らなかったのだが弾いていると様子が変わるのがわかるのでもう少し時間の経過を待ちたいと思います。そしてA線、E線の鳴りが良くなっている。クリアでメリハリのある音でこれは家族にもわかったほど。楽器のポテンシャルはまだある予感がした。そして大発見が、、この楽器の製造年はずっと(入手当時から)1903年だと思っていたのだがそうではなく1973年らしい!そうすればPecchini Vascodさんの没年が1975年なので亡くなる2年前の作品という事で辻褄は合う。ラベルの文字が見えにくく'0'と'7'を取り違えていたらしくこれは本当に驚いた。丁度50歳の楽器はまだ伸び代があるのではないかとすら感じる。響きの良い楽器で弾くと発せられた音に耳が行き、音のコントロールの幅を広げることを意識するようになる。

 

 2023/2/12(sun)

 弦によって発音が異なるのは当たり前だが最近は特に気になっている。弦は大きく3つに分類されガット弦、スチール弦、ナイロン弦。ガットは腸のことで天然素材。ただいずれもe線以外の話でこれらを芯にして金属線でワウンドされている。各々の定番があって例えばガット弦ではpirastro社のolive、ナイロン弦ではドミナントなど。この2種類がバイオリン界では双璧だと思うが現在それ以外でも数十種類が販売されている。私は以前はolive,そして昨年ドミナント、pirastro社のエヴァピラッツィと変更したのだが違いは大きくまた時間の経過と主に変化する様子も異なっていた。今回のエヴァピラッツィはとにかく爆音、大きな音が出て大きなホールでバリバリ弾くソリスト向きかもしれない。反面ちょっと影がない明るい音は私にはちょっと眩しすぎるかもしれない。また弦の裏返り(こういうらしい)も気になるところで弦のカタログを見ると「裏返りにくい」という特徴の弦も紹介されていて困っている人は私だけではなさそうで少し安心した。

 「HOMARE」という肩当てを注文した。バイオリンの肩当てはKUNというメーカーが有名だが私は20年ほど前からMACH ONEという木製のものを小改造して使っている。ただ私の肩への適合はちょっと不安定ではないかと常々感じていた。youtubeのあるチャンネルで紹介されていたHOMARE(ほまれ)は国産のアクリル製肩当てで肩当てとしては非常に高価。購入してもし合わなければ勿体無いことになるがその時はまた考えよう。

 

 2023/2/26(sun)

 HOMAREが届いて使っている。話題の製品だがとても良いと思う。バイオリンの振動を体で感じて音を体によって響かせるような意識は初めて持った。そして左腕が動かしやすくバイオリンの下の空間が広く感じる。高いのが難だが長期間使えて弦2セット分と考えれば納得かも。

 エヴァピラッツィの音が冴えなくなったがこれは急激に来た。あっという間にカサカサで弦以外の原因があるかもしれない。弦は交換してまだ3ヶ月経っていない。一応もう1セット注文したのだがもし交換してもあまり状況が変わらなければ弓の毛替えも考えよう。というかこちらを先にすべきだったかも。

 ビオッティとローデが終わった。両方ともスチューデントコンチェルトだそうでちょっとガッカリする。しっかり引き込んでレッスンに臨むのだが緊張して普段つかえないところで止まったりする。適当に弾いてたのが曝け出される。

 

 2023/3/2(thr)

 今日弓の毛替えに出した。受け取りは明日。先日はエヴァピラッツィ交換時になんとA線が破断してしまってoooo円が消えた、、。古い弦も頻繁に切れるがなぜだろう? 弦を替えても以前のような爆音にならず毛替えを決意した次第。ところがあまり使っていないもう一本の弓で弾くがやはり冴えない。。とりあえず明日弓が帰って来てからまた考えよう。

 

 2023/3/1(tue)

 3年ぶりに開催された倉敷音楽祭。倉敷管弦楽団コンサートに行ってきた。

 前半はクラシック、後半はジブリの映画音楽。久しぶりに大編成のオーケストラを楽しんだ。サン・サーンスの「死の舞踏」は高松亜衣さんのyutube動画演奏に感銘を受けてこれからレッスンをお願いしていた曲だが今回のコンサートではソロバイオリンをフューチャーしたオーケストラバージョン。おどろおどろしい題名だがマイケルジャクソンのスリラーみたいな楽しい曲。途中でウクライナにルーツを持つ少女の「ふるさと」の歌唱があったりマンドリン、アコーディオン、ピアノの客演があったりと色々と内容があるプログラムだった。

 

 2023/3/24(fri)

 「死の舞踏」のレッスン。事前にボウイングは指示されていたので弾き込んで臨むが指示修正多数。弓の木部で弾く部分もあったがここは通常通りに。相変わらず緊張してうまくいかず歯がゆい思い。後にあたらめてリベンジするとしてこの曲のレッスンは終了した。最近このパターンが多いのが情けないが自分の中で熟成させてあらためて指導を受けたいと思います。プロのように鮮やかに弾きこなしたいが現実は厳しい。

 

 2023/4/5(wed)

 Weirのジプシーダンス レッスン初日。冒頭のリズム間違いほかダメ出し多数。「ギトリスみたいに弾きたい!」という願い虚しく勝手な解釈は即修正される。それにしても前にも増してフラジオが出ない。音も冴えなくて悶々として練習していたが2ヶ月前にエンドピンの位置替えをしてもらったばかりだったが決心して市内のバイオリン工房さんにメンテをお願いすることにした。そうしたら、、「D線のところにA線が張ってあります、、」『!!』前回の張り替え時にA線を切ってしまって焦ったのだがまさかそんなことになっていようとは、、。その場でD線だけ在庫のエヴァ・ピラッツィに交換すると当たり前にあっけなく改善した。

 バイオリンは顎当てのずれの修正やクリーニングもおねがいすることにして数日預けることにしたのだが顎当てはオリジナルの製品を見せていただいた。凹凸がはっきりしていてなかなかよさそうだがお値段も結構して悩む。そしてその顎当てが装着されていたオリジナルブランドのバイオリンをその間に貸していただくことになった。製品は新作の中国製品で30万円台のもの。お店で試奏すると特にD線の音の抜けが気持ちいい。雑音が少ない。高音域がうるさくない。自分以外のバイオリンを引く機会が滅多にないのでこれは新鮮だった。

 近年バイオリンの価格が高騰しているのはよく聞くが実際のところはどうなのだろう?と常々思っていた。バイオリンなど弦楽器はイタリア製品が頂点とされているが1丁が数百万円で売れるのであれば年に数丁制作するだけで十分に生活できそうでそんな世界なのだろうか。クレモナなどイタリアの代表的な産地の工房数は一時はかなり少なくなってしまったらしい。これは日本産の普及製品が大量に出回ったためらしいが1950年以降はクレモナを含めて復興されている。しかし近年のヨーロッパではイタリア産新作はあまり売れていないという話をきいた。イタリア産の新作の売価は200万円程度らしいが工房に入るお金はずっと少ない。特に日本ではクレモナがブランド化されているために高額で売買される。バイオリンは古くなっても捨てられることがない。数百年前のものでもメンテナンスを施すことで使用に耐える状態に維持される。適切な材料と技術で製作された楽器は年数を経て良い音になるとされる。その期間は数十年以上100年単位で自分の人生だけでは達成できないためすでに年数を経て熟成されたオールド製品がもてはやされる。また近年の中国産は技術的な進歩があって新作の比較ではイタリア新作と差が少ないどころか上回っている場合も多いという話を聞いた

 

 2023/4/11(tue)

 連絡があってバイオリンを受け取りに伺った。顎当てのクッションがずれていたのを修正されていた。顎当てのバイオリンに接する部分の面積が大きすぎてバイオリンを傷めることもあるらしく削るのも金具に当たって難しい事が多いらしい。お借りしていた中国製の新作もお返しした。数日間弾いた感想は、D線の抜けが良くて箱鳴りがする。弓の違いがわかりやすい。高音がキンキンしないので長く練習しても耳が疲れない。気になった点は音の密度が(比較して)低い。A線の輝きが少ない。高音域全体の倍音成分が少ない 全体の重心が高い感じがする。オーディオ装置の周波数特性はよく測定されるが楽器も可能ではないだろうか。弓で弾いた比較でもいいしボディに発信機を取り付けて離れたところで測定しても良いかもしれない。これらは行っている研究者もいると思う。

 楽器の良し悪しの判断は難しい。たまたま不調の場合もあるだろうし弦の状態でも全く異なる発音となる。しっかりメンテされて弦もいい状態の時に比較しないと正確な判断は難しい。多くの楽器を弾き比べている人は弱点を補正した状態まで想像して判断している。新しい楽器が弾き込まれることによってこれからどのような変化が起こるかまで予測する。オールドの場合は当てにならないラベルと楽器を見比べて真贋の見極めまで加わる。素人の出番は全くない。

 数日ぶりに帰ってきたPecchini Vascoは予想以上の鳴りで嬉しくなった。G線の量感のなさは相変わらずだがそれ以外は輝かしい音がする。この間オークションを覗いたり目についた製作者を検索したりと楽しい時間を過ごさせてもらった。どのバイオリンもほぼ同じ形をしているが値段は全く異なる。ひょっとするととんでもない掘り出し物があるのではないかという期待で射幸心は刺激される。インターネットオークションがひろまって楽器の掘り出し物を見つけたいという傾向は美術品、骨董品などと共に高まっていると考える。内部に貼ってあるラベルも写真付き鑑定書も当てにならない。楽器なのだからもし新たに購入する時は労力を惜しまずに現物を手に取って試奏してからにしよう。試奏を断るような業者はロクでもないと思って間違いない。しかしお店ではとんでもない価格で売られているのであろう名器(らしきもの)が安価で出品されていると理性が吹っ飛んで湧き上がってくる欲望を抑えるのに必死だ。特にバイオリンをはじめとする弦楽器は高価なので危険なことこの上ない。

 例えば今出品されている200年前のフレンチオールドバイオリン「******」は百件以上の入札が続いているが元は昨年12月に他の業者が弓、松脂、肩当て、ケースなど細々したものを含めて1円で出品し今回出品されている方が10万円程度で落札し10日後に本体、ケースだけ出品したもの(古いバイオリンは1丁づつ特徴があるので写真で十分に判断できる)。即売価格は80万円から70万円に下げられたが大勢の人々がオークションに群がっている。元の写真や説明では大きな傷や剥がれなど丁寧に説明してあったが落札後に弦だけ張り替えて写真を撮り直しての出品と思われる。最近の取引だったので元々の写真や説明が残っているのでわかったことだが期間が経過すれば経歴は閲覧できなくなり闇の中に。オークションの骨董取引きは(もちろん全部とは言わないが)多分こういった事例が横行しているのだと思う。一攫千金を夢見て落札した人は送られてきた現物を見てびっくりすると思うが本当に価値のあるものだという可能性は0%ではない。

 

 2023/4/18(tue)

 結局オールドフレンチバイオリンは200件以上の入札の末に本体、ケースのみで入手時の2.5倍の金額で落札されていた。お金をかけてメンテナンスしてしっかり素性を調べたらとても良いものだったというシナリオも残っている。幸運を祈ります。

 今週県外に出かける用事があるので楽器店を訪問しようと思っていてとても楽しみにしています。今弾いている楽器を購入したお店なのでが店舗に行ったことはない。(バイオリン教室に何本か持って来られてその中から選択した)もしグレードアップするとしたらどの程度のものになるのか?持参する予定の現在の楽器の評価はどの程度か?(このお店で購入したのだからボロクソには言われないだろうし下取りの場合でも極端な安値の提示はないのではないか思うが)。実際に音を出してみて納得するものがあるのだろうかという不安と期待。

 

 2023/4/22(sat)

 名古屋市にある弦楽器専門店 ◯ャコンヌ名古屋店 を訪れた。愛知県で行われた法事の帰りに寄ったのだが名古屋駅から地下鉄東山線で一駅の伏見駅から徒歩10分といったところにあるビルの3F。名古屋市科学館の球状プラネタリウムの真正面でわかりやすい所にある。事前の予約をして苗字を伝えていたら初めての訪店だったのだが過去の販売記録があるらしく現在のバイオリンをグレードアップするなら、、と見繕ったバイオリンが5丁用意してあった。価格の低い方から新作シャコンヌ2丁、チューリッヒ、忘れた、フィレンツェ。新作シャコンヌは以前のようなドロッとしたニスではなくなっていてちょっとオールドがかった雰囲気になっていた。価格は180万円程度でよく音が出ていたと思う。シャコンヌ独自のチューンで表裏側板全てにコツコツ叩いた時に同じ音になるように製作、調整するのが基本らしい。次のチューリッヒ(作家がチューリッヒに居た時に製作)は現在使用しているマントバのものに一番近い鳴りだった。特にG線にその傾向で価格は◯00万円。一つ飛ばしてフィレンツェ(実はこれを最初に試奏した)の価格は◯50万円で税込で◯00万円を超える。形は非常に独特で表裏の隆起が大きくボリュームがある。F字孔の形が独特。1700年代のものでイタリア産だが形はドイツのシュタイナー派に似ているというもの。価格も飛び抜けていたが音も他とは随分異なって個性的だった。箱の容量の大きさが表れているようで低域の量感がありそのうえ高域もよく伸びる。気になったのは表板に長い筋があってひょっとしたら割れているのを裏から補修してあるかもしれない(適切な処理であれば問題ない)。

 現在のバイオリンの評価だがコツコツ叩くと異なった音の部分あったり(表板をはずして削って調整するのだろうか?)ブリッジ、魂柱も改善の余地ありとのこと。調整の方法は日々進化している(歴史がある楽器だが調整のスタンダードは引き継がれなかったということか)。下取り時の買取価格を尋ねると(色々と理由があるらしいが)残念ながら購入した当時の半額以下になるらしく少しがっかりする。有名な専門店から購入する大きなメリットの一つに「価値が保証されていること」があると思っていたがそうでもないらしい。他のお店に持ち込んでの買取価格は情け容赦なくもっと叩かれるのかもしれない。バイオリンなどの弦楽器は一般の商品と違って古くなっても価値は下がらないというのは幻想だということがわかる。インフレかカテゴリーの市場価格が上がり続けなければ高値下取りは成り立たない。そういえばオーディオブーム真っ盛りの頃に古いオーディオ機器を扱っているお店の広告で「10年後に同価格で引き取ります」というのがあった。広告主は市場価格が上がり続けると信じていたわけだが残念ながら10年たたないうちにこのお店は閉店してしまった。

 自分以外の楽器の音色にあまり関心がないまま随分長い期間が経過した(その方が幸せかもしれない)が今回の訪問で楽器の実力が少し分かったように思う。同じように見えるバイオリンも同じ音は2つと存在しないのも納得した。これは自分で弾き比べないと聴いているだけではなかなか分かりづらいかもしれない。さてこれからどうなるだろうか。

 

 2023/4/23(sun)

 Weirのジプシーダンスの次の客は同じ教則本の次曲 Tchaikovsky Meditation にしていたのだが先生からメールがあって「この曲は今まで指導曲として用いた事がなく難解な割に得るものが少ないと思うので違う曲にしませんか」 という内容。そこで急遽クライスラーの前奏曲とアレグロ に変更になった。この曲は初めての発表会で弾いた曲だが後半のクロマチックで登っていくところで1段階すっ飛ばしてしまっていつかリベンジしたいと思っていた。もともとイツァーク・パールマンの演奏に感動してバイオリンを再開したという思い出の曲。全く弾けなくなっていたので思い出すのに四苦八苦している。

 

 2023/5/3(wed)

 オークションでバイオリンを購入した。ラベルには「シュタイナーのコピー ドイツ製」とだけ英語で書いてある。シュタイナーコピーらしく胴の厚みはあるがいろいろ問題を抱えている。工房の方に見てもらい問題点を指摘してもらうとネックの取り付けが角度がつきすぎていて再セットが必要とのこと。その他にもいろいろと問題がありそうでやはり安価で良いバイオリンというのはなかなか望めない。このあたりは古い車の修理に似ているようにも思うがすべてお任せすると部品代金と工賃で思わぬ出費となり修理完了の車とかかった費用の合計が釣り合うかを取りかかる前に検討する必要がある。現物を前に舞い上がってしまったアマチュアは後先考えずに食いついてしまう。プロはこの点はシビアで利益が出ない車には決して手を出さない。古い車の場合はパーツの手配に苦労するがバイオリンのパーツは少なく場合によっては手作りできる場合もありアマチュアがいじるにはもってこいかもしれない。今回のように自ら駒、魂柱交換、指板の削合、ペグ調整から交換と色々楽しんでいるのは高額楽器ではないから。ただ素人の作業で状態が改善するかは疑問で逆に破壊することが多いわけで常に可逆的な作業なのかを考えながらおこなう。今回も肝心の音質改善はうまくいかず最初より悪くなっていると思う部分もある。

 

 2023/5/4(thr)

 ヘンデル バイオリンソナタ 6番をチェロのO氏と合わせた。たまたま教則本の楽譜がチェロとのアンサンブルの記載だったのでお誘いした。熱心なO氏はご自分のレッスンでこの曲を指導を受けていた。練習初日は第一楽章がやっとだったが楽しい時間を過ごすことができた。続きをぜひやりましょう。

 

 2023/5/9(tue)

 GWは入手した古いバイオリンの整備を楽しんだ。ペグの交換が残っているし肝心の音は冴えないままなのだが専門家に頼ろうかもうすこし遊んでみるか迷っている。

 5月のレッスンは今日からで前奏曲とアレグロ(クライスラー)を開始した。早速いろいろとダメ出しが入る。左指も直しがありもっともだと納得した。ピアノ伴奏はコードのみでテンポもリズムも自分次第という場所があるがいかに音楽性がないかが露呈する。NHKのど自慢の横森良造さんのアコーディオン伴奏を気にかけずに自分の世界に浸るおじいさんに全然敵わない。体の中に音楽がある人とそうでない人との差だろうが、子供の頃は「このお爺さんはなんて音痴なんだろう!」などと笑って見ていたが自分がジジイになってみるとあまりの空虚さに我ながら驚くくらい。仕方ないのでまずある程度のテンポで余裕を持って弾くくらいまでは自主練で到達しておきたい。表現はその先のはなし。

 

 2023/5/21(sat)

 メインのバイオリンを交代することにした。現バイオリンは1999年5月25日購入のものだったで24年ぶりとなる。新たなバイオリンはG.B.Gabrielliと思われるノーラベルのオールドで今日受け取った。今までのバイオリンも整備して使い続けることにした。整備の内容は確定していないがかなりの大手術になるらしい。

 

 2023/5/24(wed)

 メルカリでバイオリンケースを入手した。かなり古くて一部壊れているがなんとか修理して使います。もともと良いものらしいのでこちらも大切にします。

 新しい楽器はいろいろな音を持っているようでその時に必要なものを演奏者が取り出すわけだが繊細なコントロールが求められる。やはり楽器の選択は自分のステップアップのためにも重要だと再認識したしだい。また弾いてみると弓の違いがよくわかる。美しい響きのためには溜めが必要で溜めのためには準備が必要。今更ながらだが新たな発見がある。

 

 2023/6/2(fri)

 前のバイオリンのメンテナンスメニューとその見積もり、そしてメンテした場合の予想できるパフォーマンスについてのコメントをお願いした。やはり弾く機会は減っているので手を入れて持ち続けるか潔く手放すかの思案のしどころ。長く弾いていたので愛着があるが決別できないのは私の性格からでバイオリンに限ったことではない。一方で相変わらずハイアーチのバイオリンに目がいってしまう。

 

2023/7/7(fri)

 不慮のトラブルで足を骨折して1ヶ月ほど入院していた。入院中はG.B.Gabrielliよりも怪我をする直前にオークションで入手した古いバイオリンが気になって仕方がなかった。退院して真っ先に仮のセットアップをして音を出してみた。

 弦はドミナント、駒の調整は全く不十分だが全体のバランスも良く大きな音が出る。A線の量感が少し足りない気がするがもう少し弾いてみてから(外出できるようになって)専門家に相談しようと思います。今回入手したメインのバイオリンはちょっと精彩がない音で少し心配している。とりあえず弦を交換してみようと注文した。

 

2023/7/18(tue)

 弦は届いたがまだ交換せずにいる。最近はオークションで入手したバイオリンのセットアップ、調整ばかりでGabrielliを弾く機会が少なかった。暑い日が続いているので昼間はなるべくエアコンを切らないようにしている。高温はもちろん有害だが乾燥のほうが問題が大きいのではと感じる。エアコンの冷気が直接かからないようにこまめにケースへの出し入れをおこなうのだがケースに内蔵されている湿度計の針の動きを気にかけている。たまに弾くとますます冴えない気がして気が滅入る。オークションバイオリンの音がとても華やかなのでハイアーチのオールドバイオリンの控えめな音が余計そう思わせるのかもしれないと思っていた。ところが昨日は久しぶりに時間をかけて弾いてみたのだが最初はくぐもった音だったのがしばらくすると外へ出てくるような音に変わっていく。この傾向はA線が特に顕著なのだがすべての弦に認められた。Gabrielliは環境の影響を受けやすくまたスロースターターらしい。しばらく引き込まないと本来の音が出てこないのは古いバイオリン全般に言えるのだろうか。そういえばバイオリン販売店の方が地方出張する際に先生宅を訪れてしばらく弾き込んでもらってから向かうみたいな話を聞いたことがある。やはり毎日の音出しが状態を良好に保つには必要なのは確実だ。

 オークションバイオリンは魂柱、駒の調整をした。ペグボックス内でペグと弦が当たっているところがあってこれは問題。このバイオリンのスクロールは小さくペグボックスも華奢に見える。一応ペグシェーパーを注文したが根本解決にはならない。上ナットを外して少しかさ上げしたがまだ当たっている。

 

2023/8/14(mon)

 明日は台風が接近する。セッセとリハビリに通っているが悪いことは重なり帯状疱疹が発症した。初発症状は腹痛だったのだが受診すると異常なし、次の日に帯状疱疹が現れた。バラシクロビルとアセトアミノフェンの処方で瘢痕化したが腹痛はを始めとする痛みは一時より軽くなったとはいえまだ続いている。そんなわけでどこへも出かけることができない夏になったので冷房の効いている室内でバイオリン三昧の日々を送っている。

 2台目のオークションバイオリンはその後ペグ交換を2回行って何とかペグボックス内の弦の干渉を無くした。一応セットアップが済んでGabriellと交互に弾いている。車の運転ができるようになったら工房に持ち込んで今後のことを相談しようと思っている。レッスンはお休み中なのでクライスラー、バッハ、ヘンデルを中心にさらう毎日。

  

  

 

バイオリン日記(2)に続きます。