金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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白銀の翼(動乱)434

2015-04-15 20:47:22 | Weblog
 都、洛陽は朝から賑わっていた。
外郭四門から内郭四門へと続く東西南北四つの大路には、
この日の為に特別に許された露店が軒を連ね、
都人だけでなく近郊からも人々が押し寄せ、祭りか市のような活況を呈していた。
 やがて昼近くになると王宮で銅鑼が打ち鳴らされた。
呼応して外郭四門でも銅鑼が打ち鳴らされた。
それを合図に大路を行き交っていた人々が道の端に、左右に割れて真ん中を開けた。
 襲来した鮮卑の撤退が確認されてより三日後のこと。
鮮卑の騎馬隊と交戦し、撃退に努めた軍勢が凱旋することになった。
東門よりは、「一番の功績」と認められた董卓将軍と、彼が率いる部隊。
西門からは何進大将軍麾下であった国軍部隊。
南門よりは袁紹、曹操等の貴族豪族の混成部隊。
北門よりは都で募られた民兵と、近郊より掻き集められた在郷兵の混成部隊。
ただ何進大将軍は病気を理由に凱旋を辞退していた。
 銅鑼を合図に、東門の外で待機していた董卓麾下の軍が整列した。
国軍と董卓家の兵、赤劉家の兵、混成部隊であった。
董卓将軍が騎乗して、みんなを見回した。
「派手な格好だな」溜め息をついた。
 戦の終わりを告げる凱旋なので、戦で草臥れた鎧兜でも一向に構わないのだが、
多くの兵は洗い立ての衣服の上に、真新しい鎧兜を身に着けていた。
董卓が溜め息をついたのは、鎧の下の派手な色使いの衣服。
「目立とう、目立とう」としていて、実にいじらしい。
 そういう董卓自身も似たようなもの。
彼等に負けぬ色使いの衣服。
鎧兜も、このような時の為に買い揃えていた逸品。
その兜が陽射しを受けて輝いた。
みんなを見回して号令した。
「のんびり参るぞ」
 董卓が隊列の先頭に立った。
李儒と郭夷が従い、供回りの騎兵が続いた。
少し間隔を置いて国軍の騎馬隊。
董卓家の騎馬隊。
赤劉家の騎馬隊。
それらは生き残った者達のうち、騎乗に耐えられる者達だけで編成されていた。
耐えられぬ者達は今頃、董卓将軍管轄の牧場で酒を酌み交わしている筈だ。
「飲める体力がある者は」だ。
 物足りなさを感じた董卓は後ろを振り返った。
「四人を連れてこい」と郭夷に命じた。
 外郭東大路沿いの店の二階に赤劉家の女達がいた。
窓際にいるのは方術修行中の姫五人。
劉麗華、劉林杏、劉紅花、劉深緑、劉水晶。
この店が赤劉家と親しいことから、二階の一部屋を借り切り、
凱旋を見物することにした。
赤劉家騎馬隊の晴れ舞台を見たい一心であった。
彼女達は今か今かと、窓際から大路を見下ろしていた。
 部屋の中に居るのは姫達だけではなかった。
姫それぞれの守り役の女武者五人と、華雄の娘の華雪梅がいた。
「来た」という声に、華雪梅が敏感に反応した。
飲みかけのお茶を卓上に戻し、窓際に駆け寄って来た。
それを劉林杏が抱き上げ、窓に腰掛けさせた。 
 大きな歓声が上がった。
東門より騎馬隊の入城が始まった。
先頭の一騎は言わずと知れた董卓将軍。
親しまれているのだろう。
「いよっ、将軍」と野太い掛け声。
董卓は声の方を見て、気さくに片手を上げて応じた。
ところが董卓に続いて入った四騎を見て、みんな固唾を呑んだ。
四騎は鎧兜姿ではなかった。
 金髪碧眼の呂布は赤い衣服の上に虎の毛皮を巻き付けていた。
傍目には彼が双眼を怒らせているように見えた。
黒い衣服の上に狼の毛皮を巻き付けた華雄は、周囲を脅すように睥睨。
今にも噛みつきそう。
白い衣服の上に熊の毛皮を巻き付けた許褚は、我関せずといった顔。
三人からは血の臭いしか漂って来ない。
ところがマリリン一人は違った。
女物としか思えぬ色鮮やかな衣服に身を包み、背中には「風神の剣」。
薫風を漂わせ、悠然と騎乗していた。
 彼等の出で立ちは姫達が見立てたもの。
「恐いくらいに似合ってるわね」と劉水晶。
「本当、恐い恐い」劉麗華が含み笑い。
「そうよね、恐いわね」と劉紅花。
「はっはっは」華雪梅が大きく口を開けて笑う。
 劉麗華の守り役である朱郁が誰にともなく呟いた。
「あの格好で宮殿には入らないわよね」
「入らない予定よ。・・・まさかね」劉麗華が首を傾げた。
 すると劉林杏が、
「董卓将軍は酔狂な方と聞いています」と言うではないか。




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