国王・ブルーノ足利は騎士団が傭兵団を捕縛したのを見届けると、
風魔法使いの助けで地上に舞い上がった。
不自然に空いた穴の隣に着地すると王妃・ベティが駆け寄って来た。
「お怪我はありませんか」勢いのまま抱きつく。
もうちょっと力が強ければ二人して穴に落ちるところであった。
「おおっ・・・、大丈夫だ」
「よかった。
・・・。
敵の頭目は如何しました」
「生かして捕えた。
治癒魔法のお陰で口も利ける。
きっちりと喋らせてやろう」
二人の周りに国の首脳陣が集まって来た。
代表して菅領のボルビン佐々木が自分の胸に手を当て、
片膝ついて朗らかに言う。
「ようござました。
この老骨、寿命が縮みましたぞ」
「心配かけたな」ブルーノは歩み寄って老人の肩に手を置いた。
「ええ、心配しましたとも」
「相変わらずのようで安心した」ブルーノは言いながら、全員を見回した。
評定衆に、王族の当主達、そして側近の者達。
顔が見えぬのは今回の件で怪我して伏せているか、亡くなったか。
そして、あいつ。
王弟・バーナード今川公爵がいた。
ブルーノはバーナードを一番怪しんだ。
国王の脱出経路に詳しいと思える人物で、
琉球オアシスと台湾オアシスの間で新たに見つかったオアシス、
その所有権を左右できる人物と繋がっているのは彼しかいない。
薩摩地方と大隅地方、そして薩南諸島、
これらの寄親に何代にもわたって任じられている貴族、島津伯爵家。
爵位こそ伯爵だが、西部方面の重鎮である。
だからして彼の家の長女が王弟・バーナードの正室に迎え入れられた。
そのバーナードと視線が絡み合った。
他の者達同様に片膝ついてはいるが、挑む目色。
この期に及んで、何かを企んでいる気配。
ブルーノは彼に真正面から尋ねようと思った。
「ご無事でようございました」
そう声がかけられた。
左近くに兄のカーティス北畠公爵の顔があった。
長子ではあるが側室の子である為、王位継承権はブルーノの下、
今も下位にあるが、それでも一切文句を漏らさない人物で、
王族内での評判はすこぶるいい。
カーティスの従者が一つの長物を背後から主人に手渡した。
袋に入れられてはいるが、明らかに長剣と分かった。
受け取ったカーティスが両手で大事そうに持って、進み出て差し出した。
「これを瓦礫の中から見つけました。
鑑定させたところ、陛下の物ではないかと」
ブルーノは受け取り、袋からそれを取り出した。
見事な長剣が現れた。
鞘といい、鍔といい、拵えだけで価値が見て取れた。
しかし身に覚えはない。
「私のではないな」
「そうですか、それは残念」
ブルーノは長剣を袋にしまい、戻そうとした。
カーティスがそれを受取ろうと、両手を差し出した。
魔力の発動。
ブルーノは唖然とした。
目の前の空気が揺らいだ。
カーティスはこの時を待っていた。
逃さない。
弟が無防備な今しかない。
密かに習い覚えた無詠唱で、攻撃魔法を放った。
火魔法、ファイアボール。
最短距離で弟を直撃した。
破裂すると自分も巻き込まれるので、それはない。
代わりに貫通する様にした。
ブルーノは時が止まった様に思えた。
最短距離で放たれた火球がゆっくり自分に迫る。
身動きできぬ自分。
胸元に走る衝撃。
誰もが我が目を疑った。
目撃者が大勢いる中での、この突然の出来事。
皆が皆、思考が停止した。
声はブルーノが上げた悲鳴だけ。
風魔法使いの助けで地上に舞い上がった。
不自然に空いた穴の隣に着地すると王妃・ベティが駆け寄って来た。
「お怪我はありませんか」勢いのまま抱きつく。
もうちょっと力が強ければ二人して穴に落ちるところであった。
「おおっ・・・、大丈夫だ」
「よかった。
・・・。
敵の頭目は如何しました」
「生かして捕えた。
治癒魔法のお陰で口も利ける。
きっちりと喋らせてやろう」
二人の周りに国の首脳陣が集まって来た。
代表して菅領のボルビン佐々木が自分の胸に手を当て、
片膝ついて朗らかに言う。
「ようござました。
この老骨、寿命が縮みましたぞ」
「心配かけたな」ブルーノは歩み寄って老人の肩に手を置いた。
「ええ、心配しましたとも」
「相変わらずのようで安心した」ブルーノは言いながら、全員を見回した。
評定衆に、王族の当主達、そして側近の者達。
顔が見えぬのは今回の件で怪我して伏せているか、亡くなったか。
そして、あいつ。
王弟・バーナード今川公爵がいた。
ブルーノはバーナードを一番怪しんだ。
国王の脱出経路に詳しいと思える人物で、
琉球オアシスと台湾オアシスの間で新たに見つかったオアシス、
その所有権を左右できる人物と繋がっているのは彼しかいない。
薩摩地方と大隅地方、そして薩南諸島、
これらの寄親に何代にもわたって任じられている貴族、島津伯爵家。
爵位こそ伯爵だが、西部方面の重鎮である。
だからして彼の家の長女が王弟・バーナードの正室に迎え入れられた。
そのバーナードと視線が絡み合った。
他の者達同様に片膝ついてはいるが、挑む目色。
この期に及んで、何かを企んでいる気配。
ブルーノは彼に真正面から尋ねようと思った。
「ご無事でようございました」
そう声がかけられた。
左近くに兄のカーティス北畠公爵の顔があった。
長子ではあるが側室の子である為、王位継承権はブルーノの下、
今も下位にあるが、それでも一切文句を漏らさない人物で、
王族内での評判はすこぶるいい。
カーティスの従者が一つの長物を背後から主人に手渡した。
袋に入れられてはいるが、明らかに長剣と分かった。
受け取ったカーティスが両手で大事そうに持って、進み出て差し出した。
「これを瓦礫の中から見つけました。
鑑定させたところ、陛下の物ではないかと」
ブルーノは受け取り、袋からそれを取り出した。
見事な長剣が現れた。
鞘といい、鍔といい、拵えだけで価値が見て取れた。
しかし身に覚えはない。
「私のではないな」
「そうですか、それは残念」
ブルーノは長剣を袋にしまい、戻そうとした。
カーティスがそれを受取ろうと、両手を差し出した。
魔力の発動。
ブルーノは唖然とした。
目の前の空気が揺らいだ。
カーティスはこの時を待っていた。
逃さない。
弟が無防備な今しかない。
密かに習い覚えた無詠唱で、攻撃魔法を放った。
火魔法、ファイアボール。
最短距離で弟を直撃した。
破裂すると自分も巻き込まれるので、それはない。
代わりに貫通する様にした。
ブルーノは時が止まった様に思えた。
最短距離で放たれた火球がゆっくり自分に迫る。
身動きできぬ自分。
胸元に走る衝撃。
誰もが我が目を疑った。
目撃者が大勢いる中での、この突然の出来事。
皆が皆、思考が停止した。
声はブルーノが上げた悲鳴だけ。